農林水産省は、9月5日個性ある魅力的な農山漁村づくりに当たっての農林水産省の今後の施策の展開方向を示した「水とみどりの『美の里』プラン21」をとりまとめ公表した。
 このプランにおいては、農林水産関連事業における景観配慮の原則化、農山漁村の景観形成のための具体的数値目標を掲げた取組の推進、地域における景観の点検の実施、農村景観の観点からの法的規制の検証などを盛り込んでいる。概要は次のとおりである。
  
【水とみどりの「美の里」プラン21の概要】
1 農山漁村の魅力

(1)

農山漁村の美しさの意義

農山漁村の美しさは、外観だけでなく五感で感じる要素と地域の伝統文化などの要素が一体となって構成

(2)

農山漁村の現状

過疎化、高齢化による集落機能の低下

廃棄物の不法投棄、耕作放棄、手入れ不足の森林の増加

従前の農山漁村振興対策は、主として効率性や利便性向上に重点を置いた施設整備に重点

(3)

魅力ある農山漁村づくりをめぐる新たな動き

地方自治体において景観条例や土地利用条例など景観の調和のための取組み

「オーライ!ニッポン会議」の設立など都市と農山漁村の共生・対流の推進に向けた国民的運動の展開

  
2 施策の基本的視点

(1)

生産、生活の両面における空間的な調和
農地・森林と構造物の空間的調和を図るため土地利用制度の見直しや景観に配慮した事業を実施

(2)

健全で豊かな自然環境や景観の保全
二次的自然を含めた自然環境の保全・利用を図るため、水田、森林などが持つ自然循環機能を活かした農山漁村づくりを推進

(3)

地域の営みや伝統文化に根ざした地域社会の維持
伝統文化を育む農山漁村集落の維持を図るため、健全なコミュニティーの育成、就業・所得機会の確保等を推進

(4)

農山漁村の魅力を活かした都市との交流の展開
農山漁村を都市住民にも開かれた空間として活用するため、農山漁村の地域資源の観光活用を推進

  
3 施策の展開方向

(1)

景観配慮の原則化

農業農村整備事業の事業計画への景観配慮の反映

事業計画、田園環境整備マスタープラン(農村地域の環境保全に関する基本計画)に景観配慮に関する事項を具体化

設計基準等の策定、見直し

農林水産公共事業の設計基準等に景観形成に関する基準を導入

農業農村整備事業等の実施に当たり、景観配慮に関する参考事項をとりまとめた「景観配慮の手引き」の策定

景観アセスメント(景観事業評価)の導入

公共事業の実施前、実施中、実施後の各段階で景観配慮の観点から事業評価

景観に関する専門家会議等の体制整備

木材の利用拡大

「農林水産省木材利用拡大行動計画」に基づく「グリーン公共事業の推進」等の方針の下、公共事業等における木材利用を推進

(2)

具体的目標を明示した取組みの推進

水とみどりにあふれる美しい田園景観、農村空間の創造

美しい農村づくりを牽引するモデル事業の実施
【目標:今後5年間で全国50地区を整備】

水利施設、集落排水施設等の整備による美しい水の供給と親水施設の整備の一体的推進による美しい水環境に囲まれた農村空間の創出
【目標:今後5年間で全国50地区を創出】

景観との調和に配慮した水田、農道等の整備の推進
【目標:原則全ての水田、農道について法面緑化等の取組を推進】

家畜排せつ物等の循環利用の推進
目標:家畜排せつ物の処理を平成15年度〜19年度までに約280万トン増加
農業集落排水汚泥のリサイクル率 45%(平成14年度)→55%(平成19年度 )

美しい森林・里山景観、山村空間の創造

都市住民等との連携による山村の景観づくり活動を牽引するモデル事業の実施
【目標:平成20年度までに全国で50地区実施】

松くい虫被害対策の推進
【目標:保全松林における被害木の駆除を毎年度100%実施】

NPO等による森林整備のための協定制度、保安林の施業確保のための措置
【平成16年通常国会に森林法の一部を改正する法律案を提出予定】

里山林等における森林ボランティア活動等の促進
【目標:平成17年度までに450団体がボランティアネットワークに加入】

美しい水辺、漁村景観、漁村空間の創造

美しい漁村づくりを牽引するモデル事業の実施
【目標:平成18年度までに約30地区実施】

藻場・干潟の造成
【目標:平成18年度までに概ね5,000ha整備】

人工リーフ等の整備による砂浜の復元・創出
【目標:平成19年度までに約160ha整備】

景観や親水性に配慮した護岸等の整備
【目標:平成19年度までに約30km整備】

漁村周辺水域の水質の改善
【目標:平成23年度までに集落排水処理人口率を概ね60%(小都市並)に向上】

農山漁村の魅力を活かした都市との交流の推進

観光立村の実現も視野に入れ、グリーン・ツーリズムの先進的取組みの推進
【目標:平成15年〜18年度までに全国150地区で先進的取組】

「森業」の育成による雇用創出の推進
【目標:平成19年度までに全国で約50地区】

(3)

個性ある魅力的な農山漁村の維持・形成のための総点検、保全活動の実施

地域景観点検のためのガイドラインの作成

NPOや地域住民と連携した違法な農地転用等の監視体制(きれいな田舎まもり隊) の整備や苦情・相談窓口(景観ホットライン)の開設

国有林における森林パトロール及び「グリーンボラバイター」による森林の美化・清掃活動の推進

船舶等の放置禁止等の規制や放置艇の廃船処理の推進及び不法投棄の防止のための漁港管理者による巡視活動の推進

(4)

法的規制の検証・明確化・見直し

農村景観に配慮したむらづくりを促進する土地利用調整のあり方の検討

市町村条例を活用した新たな農地保全の枠組みの普及

違反転用に関する処理の手続の明確化

(5)

関係者の意識の改革・醸成

「都市と農山漁村の共生・対流推進会議」(オーライ!ニッポン会議)等を活用したコンセプトの普及

「田園自然再生活動コンクール」の実施(平成15年度は優良事例を7件表彰予定)

NPO等多様な主体の参画の推進

農山漁村景観保全強化月間の設置(平成16年度から実施)

(6)

個性ある魅力的な農山漁村づくりに関する情報の収集・発信、技術開発

「e−むらづくり計画」の推進を通じた情報発信

農山漁村景観等に関する情報のデータベース化や共生・対流ポータルサイト等を通じた情報提供

景観シミュレーション等を活用した農村づくり手法等の開発
   
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