全国山村振興連盟近畿
ブロック会議開催される

   
 第20回全国山村振興連盟近畿ブロック会議は、去る7月19日(金)兵庫県山村地域振興対策協議会(全国山村振興連盟兵庫県支部)主催により、近畿ブロック内の各府県山村振興対策協議会の会長、副会長及ぴ事務局長等が出席して神戸市内の新神戸オリエンタルホテルにおいて開催された。
 会議は、兵庫県山村地域振興対策協議会の黒田事務局長司会のもとで進められ、最初に兵庫県山村地域振興対策協議会十倉会長(兵庫県氷上町長)の主催者挨拶のあと、来賓として出席した農林水産省農村振興局農村政策課 松井山村振興係長、国土交通省近畿地方整備局建政部 横山計画管理課長、総務省自治行政局地域振興課 井上課長補佐、兵庫県 北原農林水産部長からそれぞれ来賓祝辞が述べられた。
 次に情勢報告に移り、全国山村振興連盟米田連盟事務局長から最近の山村をめぐる中央情勢、特に「経済財政諮問会議等における15年度の経済財政運営の方向、とりわけ国と地方をめぐる地方交付税、補助金等の問題」、「地球温暖化防止と森林整備をめぐる問題、環境税に関する動向」等について報告がなされた。
 その後は、各府県から提出された平成15年度予算に向けての要望事項について、それぞれ提案理由の説明があり、これに対し農林水産省農村振興局農村政策課 松井山村振興係長、林野庁森林整備部計画課 大貫課長補佐、近畿農政局農村計画部 森田農村振興課長、国土交通省近畿地方整備局建政部 横山計画管理課長、総務省自治行政局地域振興課 井上課長補佐からそれぞれ所見が述べられた。提案された要望事項は、原案通り決定し、この要望事項については全国山村振興連盟と兵庫県山村地域振興対策協議会が協議の上、関係各省庁等に要請することとなった。なお、平成15年度の第21回山村振興近畿ブロック会議開催は、和歌山県で行うことを決定して散会した。

  
【各府県提出要望事項】

1.山村振興対策の総合的・計画的推進について
(滋賀県、京都府、奈良県、和歌山県、兵庫県)
  
 山村地域では、昭和40年の山村振興法制定以来、山村の振興並びに活性化のため各種施策を実施し、一定の成果をあげてきたところである。
 しかしながら、今日の山村の実態は、今なお過疎化に歯止めがかからず、担い手の確保や若者が定住することに至っていない。
 依然として人口は減少し、高齢化は進み、将来の山村集落の存続が危ぶまれている。
 今日の山村社会を取り巻く状況が大変厳しい中にあって、山村に期待される経済、社会、文化等各方面にわたる役割を果たすため、地域住民が定住し得る山村振興のため、諸施策がより総合的な形で実施できるよう次の事項について特段の措置を講じられたい。

(1)

関係省庁の一層の連携強化のもと、体系的な山村振興対策を確立し、それに即して山村振興対策を総合的かつ計画的に推進されたい。

(2)

山村振興対策の基幹的事業である新山村振興等農林漁業特別対策事業を計画的に推進されたい。また、予算枠を十分確保されたい。
 
2.中山間地域等直接支払制度について
(京都府、奈良県、兵庫県)
  
 農業生産条件の不利を補正する中山間地域等直接支払制度の着実な推進を図るため、次の事項について特段の配慮を講じられたい。

(1)

地域の実情に応じた弾力的な運用を図るとともに、交付金単価を引き上げられたい。

(2)

実施にあたっては、町村に過度の負担とならないよう確認等事務の簡素化について十分配慮されたい。

(3)

町村の財政負担を軽減するため、地方財政措置の充実を図られたい。
  
3.山村地域における交通の確保について
(京都府、奈良県、兵庫県)
  
 乗合バスは、地域に密着した住民共通の移動手段というだけでなく、地域福祉、教育等とも関わりの深い重要な交通機関である。
 しかしながら、今後、改正道路運送法等に基づく不採算民営バス路線の撤廃等により、地域生活交通の確保は更に困難な状況となることが懸念される。
 ついては、地域協議会における協議結果を最大限尊重するとともに山村地域の負担とならないよう十分な財政措置を講じられたい。

 
4.野生動物による農林産物への被害防止対策について
(滋賀県、京都府、奈良県、和歌山県、兵庫県)
  
 過疎化、高齢化の進む山村地域では、基幹産業である農林業の採算の低下や労働力の減少から農地や森林の適正な管理が困難な状況にある。
 こうした状況に加え、近年、シカ、イノシシ、サル及び鳥類などの野生鳥獣動物による農林産物への被害が全国的に発生しており、被害を受けた生産者の中には、収穫や耕作そのものを放棄する例が見られるなど、地域農林業の振興上極めて大きな問題となっている。
 ついては、野生動物による被害防止のための抜本的対策を講じられたい。
 また、鳥獣害とともにヤマビルによる都市農村交流施設等における被害が拡大しつつある。そのための効果的な防除について検討を願いたい。

 
5.森林・林業対策の推進について
(滋賀県、和歌山県、兵庫県)
    
 森林は、水源涵養、国土の保全、災害防止等の公益的機能から地域社会の発展と住民生活の安全確保のために、重要な役割を果たしている。
 しかし、森林・林業・山村を巡る近年の状況は、林業経営の不振や林業労働者の減少・高齢化等により資源の有効利用が妨げられているなど非常に厳しい状況にある。
 このような状況の中、国においては、森林・林業基本計画が策定され、基本的施策が取りまとめられたところであるが、林業を地域産業として維持発展させるため、安定した林業経営者の育成と効率的な作業を担う林業事業体や林業労働力の育成・確保を図る必要がある。
 ついては、次の事項について特段の配慮を講じられたい。

(1)

災害に強い安全な国土づくり、水源地域の機能強化及び豊かな環境づくりを図るため、治山事業における予算枠及び新規採択枠を確保されたい。

(2)

第二次森林整備事業計画に基づく森林環境保全整備事業及び森林居住環境整備事業の推進を図るための予算枠及び新規採択枠を確保されたい。

  
6.森林交付税交付金(仮称)の創設について
(滋賀県、奈良県、和歌山県、兵庫県)
 
 森林は、精神的・物質的両面において豊かな恵みをもたらす存在であるとともに、国土の保全、水資源の涵養、水田稲作農業に不可欠な水の確保、豊かな海づくり等公益的機能の重要な役割を担っている。
 しかしながら、山村においては、木材価格の低迷や経営コストの増加等により、経営意欲の減退をまねき森林管理の担い手不足が深刻化するなど森林の管理基準が低下してきている。
 こうした結果、森林の多様な機能が十分発揮されなくなることが憂慮される状況となっている。
 森林の持つ公益性、外部経済効果の大きさを認識しその機能を高度かつ総合的に発揮させ、森林を適正に維持管理することは、国家的永久の課題であり、森林をもつ町村に課せられた役割と責任は、重大と言わざるを得ない。
 ついては、森林面積に応じて配分されている地方交付税交付金を増額するとともに、この交付金制度とは別枠の森林交付税交付金(仮称)の制度を早急に創設されたい。

  
7.「山の日」の制定と普及・啓発事業の創設について
(和歌山県)
 
 国土の3分の2を占める山は、森林を育み、国土保全や水資源の涵養、大気の浄化、保健休養の場の提供など様々な公益的機能を発揮し、国民生活を支えていくうえで重要な役割を担っている。
 国民全体が「山」のもつ多面的機能の重要性を認識し、森林やそれを支えている山村地域を国民共通の財産として守り育てる機運を醸成していくため「山の日」を制定するとともに、国民的な運動を展開するための普及・啓発事業を創設されたい。

  
8.「林業就業支援プロジェクト」の創設について   
(和歌山県)
 
山村・過疎地域の活性化を図るため、森林整備事業の充実等、多様な就業環境整備による受け皿整備と、Iターンを促進するための定住環境整備に対する恒久的な新しい環境保全対策を図る必要がある。
 ついては、次の事項について特段の配慮を講じられたい。

(1)

緊急地域雇用創出特別基金事業に係る森林作業員等を、基金事業終了後も継続的な雇用に結びつけるため、森林整備事業実施を支援する交付金制度を創設されたい。

(2)

労働人口の少ない森林・林業地域において、都会からのIターン者等を新規林業就業者として迎えるにあたり、地域の定住条件整備を支援する交付金制度を創設されたい。

  

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