農 山 村 振 興 研 究 報 告

・−・−・−・ 農林水産省農村振興局 ・−・−・−・

   

 農林水産省は、平成13年7月に学識経験者等により構成される「農山村振興研究会」を設置し、農山村振興に関する基本的方向について5回にわたり検討を行い、この度、同研究会において報告が取りまとめられた。
 わが国の農山村は、これまで食料の安定供給はもとより、国土・環境の保全や伝統文化の維持・継承など様々な面で重要な役割を果たしてきた。しかし、近年、生活環境や情報通信基盤の整備の遅れ等に伴い人口減少・高齢化の進行が著しく、一部には集落の崩壊のおそれがある地域も出てきている。
 一方で、都市住民をはじめとする多くの国民の間には、健康志向・環境意識の高まりや、ゆとりややすらぎ、美しさを求めた農山村へのUJIターン希望者の増加等の新たな兆しが出てきている。
 このような中にあって、近年、都市再生に関する議論は盛んに行われているが、一方の農山村は忘れられがちであり、ともすれば都市と農山村が対立軸として捉えられることすらある。しかしながら、都市と農山村はどちらか一方だけで自立できるものではなく、両者は共存・共栄しつつ車の両輪となって将来のわが国社会を支えていくべきものである。
 このような状況を踏まえ、研究会は、「都市と農山村の共生・対流」に向けた基礎条件の整備や「自然と共生する社会」に向けた質の高い自然環境の保全・創造といった視点を中心に、中長期的な農山村の振興に関する調査・検討を行うため、農村振興局長の私的研究会として開催された。


 その概要は次のとおりである。

農山村振興研究会とりまとめの概要

農林水産省農村振興局


1.農山村の位置付け
 
(1) 現状と新たな兆し
・人口減少、高齢化、耕作放棄地等の増加、市町村の再編の動き
・田舎暮らしブーム、価値観の変化、健康志向、環境意識の高まり等
(2) 農山村の魅力
・美しい景観、多様な伝統文化、自然と共生する農のある生活、環境型社会のモデル、新たなライフスタイルの実現の場

2.農山村振興の基本的方向
 
(1) 農山村での生活、就業、活動を通じて自立的に自己実現を図ろうとする人々が、農山村で暮らす・過ごすという選択肢を幅広く提供
(2) 都市と農山村の間において「人・もの・情報」が循環する社会、「都市と農山村の共生・対流」を実現
(3) おいしい水・きれいな空気・美しい自然等の良質な自然環境に囲まれた豊かな生活環境の確保

3.農山村振興方策への提言
 
〈農山村の魅力の再認識と発信〉
(1) 外部からの視点を取り入れた客観的な魅力の評価と発信
(2) 情報通信ネットワークの双方向性を活用した情報交流
(3) 情報通信ネットワーク整備
 
〈新たなコミュニティの形成と共通社会基盤の整備〉
(1) 旧市町村や小学校区程度の規模・広がりを持つコミュニティヘの再編
(2) コミュニティの広域的な連携による圏域(合併市町村や広域市町村圏)の形成
(3) 新たなコミュニティ間の連携と役割分担に基づく効率的かつ質の高い共通社会基盤の整備(ワンストップ・サービス等)
 
〈農山村の魅力の保全と活用を図る土地利用の確立〉
(1) 住民参加による土地利用計画を構築する枠組みとして(市町村)土地利用調整条例を積極的に評価
(2) 食料の安定供給、農業の持続的発展、多面的機能の発揮という目標といかにして調和を図れるかという課題の検討と併せ、現在の個別法による規制から土地利用調整条例及びその中で位置付けられる契約的手法に基づく農林地の保全のための土地利用調整への移行を検討
(3) 少数の人による農林地の安定的・継続的な利用・管理(新たなコミュニティの中での土地利用調整や農林複合事業体の形成)
 
〈多様な参入に向けた条件整備〉
(1) 個々人の価値観・ライフスタイルに応じた多様な参入を積極的に評価(本格的に農業に就業、クラインガルテン、退職後の居住、トラスト的参加等)
(2) 情報発信、共通社会基盤の整備、住宅取得の円滑化、農林業・農林地への様々な関わり方を可能とする制度的枠組み

 
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