森林の多様な機能の持続的発揮を図る観点からの
山村の活性化方策と集落整備に関する検討会

林 野 庁 〜

   

 森林の多様な機能の持続的発揮を図る観点からの山村の活性化方策と集落整備に関する検討会が、4月12日〜7月10日の間に4回開催され、山村の活性化等が検討されてきた、第5回(8月6日)、第6回(9月3日)検討会が開かれ検討結果をとりまとめることとしている。各委員の主な発言内容は次の通り。


◎第5回議事概要(主な発言)

1.国土の6割以上を占める森林をどう活かすかが重要。地球温暖化等、いろいろなところで吸収源となる森林の働きが認められつつあり、本報告書においても森林の価値をもっとアピールすべきではないか。
 
2.山村地域の首長の大きな問題が、林業で生活している人たちの事業量の確保であり、市町村有林の仕事を積極的に発注して事業量を確保している状況。林業従事者は、一旦林業から離れてしまうとなかなか他の業種から帰ってこないのが現状であり、どこも事業量の確保に頭を悩ませている。
 
3.山村は人口圧、都市圧が最も小さく、計画的な土地利用の実施が可能。本検討会においても、計画的な土地利用のモデルとしての山村、中山間地域を提言すべきではなしいか。
 
4.森林整備の担い手の確保に当たっては、移動距離が一時間程度の広範な地域をカバーし、効率的な作業を行える林業事業体を育成することが必要。同時に、そういう者だけで森林の整備はカバーできないので、地元の集落等に補助的な労働を行うIターン者等が必要。
 
5.本検討会のまとめに当たっては、体系的な整理が必要であり、営林類型のような形で提示できないか。また、公益性を重視する地域と経済性を重視する地域の考え方を分けて整理すべきではないか。
 
6.林業が厳しいということを聞けば聞くほど、どこから民間資金を期待すればいいのかと思う。介護保険制度が始まるときには、新たなビジネスが農山村に開発され、就業の場が広がると期待されたが、制度が始まって半年で民間業者は引き上げてしまうような結果となった。期待だけではダメであり、どう結びつけるかを考えることが重要。
 
7.山村と都市との連携は一つの大きな柱だと思う。これまでの取組は山村地域への工場誘致などミニ都市化を図るような傾向があったが、都市とは違った形での発展をつくり出すというのが非常に重要。
 
8.今後、失業者は確実に増える見通しであり、これらの者に対して林業技術等のトレーニングを行うことは失業対策としても有効であり、今後の山村の担い手の育成という観点からも推進すべきではないか。
 
9.国産材を振興するためには、他産地消という視点が重要で、地域材を使用した住宅に対して都市住民の理解を得ることも必要だが、まずは地域の人に十分理解してもらい使ってもらうことが重要。地域の人が地域材で家を建てなければ説得力もなく本末転倒ではないか。

   

◎第6回議事概要(主な発言)
 

1.集落の機能について、過疎白書において、主として3つの機能が書かれている。一つは地域資源の維持管理機構、二つ目は相互援助機能、そして三つ目が生産補完機能であり、2番目、3番目は時として行政が代替えしたり或いは既に空洞化していたりするが、一番論点となるのは地域資源の維持管理機能の再編が迫られているということだと思う。
 
2.山村の小さな学校はどんどん統合されており、山村の特徴として小人数でしかできない教育もできるようにすれば、逆に都会から子供たちがやって来るのではないかと思う。そういう意味で山村における教育の多様性も必要ではないか。
 
3.山村への定住については、必ずしも多くの富を得て定住するというわけではないので、保険とか労災保険とかいったような形のものや、或いは事業体でいえば林業に対する保険料は非常に多くの経費が必要ということがあり、こういったものへの支援が必要ではないか。
 
4.山村地域に高校がないため、中学校を卒業したら外にでる必要があり、そのための学費や下宿生活のための経費が負担となる。このため育英制度は重要。このことは、そこに住み着いている人たちにとっても問題であるが、Iターン者にとっても、親の都合で山村にきたことで子供を犠牲にしたくないという思いもあって重要な問題。
 
5.地域住民による自然環境、景観、文化等の地域資源の認識については、地域に根ざした景観づくり、町づくりをやっていくことが重要。
 
6.都市と山村の交流を図る上で、都市住民が経費をかけずに長期間山村に滞在できるような制度が必要。ある住宅ビルダーは、年間の居住権を1週間単位で刻んで、利用者の季節的な二一ズに合わせて提供するような制度、言い換えると居住権の証券化のようなことに取り組んでおり、このような一般の所得層もセカンドハウスが利用できるような制度が必要。
 
7.山村に滞在する際に、食料まで持ち込んで、地元と何も交流しないといった例もあり、折角山村に人が来ても、地元にとって何にもならない場合もある。このため、滞在施設を整備するときに、半日でもそこで活動する人にはいくらか安く施設を提供するといった方法もあるのではないか。
 
8.山村ボランティアは若者だけとは限らない。都市ではなかなかボランティアの場もないので、年輩の人もやってみたいと思うのではないか。そういう人の二一ズと山村を結びつけていけば、ボランティアの作業から帰ってきた時の食事の提供など、新しい就業の場が広がるということも期待できるのではないか。

 

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