全国山村振興連盟では、山口県、全国山村振興連盟山口県支部との共催で第27回全国山村振興シンポジウムをさる9月4日・5日の両日山口県下関市内の「海峡メッセ下関」において開催した。
第27回シンポジウムは、本州の先端、古くから外国との交流の地として歴史的にも由緒ある下関市において、「いのち燦めく21世紀の山村へ」〜自立と協働・新たなる山村のフロンティア〜をテーマに行われた。
シンポジウムには、主催者として当連盟の黒澤丈夫副会長、二井関成山口県知事が出席、また、来賓として農林水産省農村振興局木下寛之局長 同局吉村馨農村政策課長、同課松井信行山村振興係長 中国四国農政局元杉明男局長 同局奥津光生農村振興課長、同課荒木俊安課長補佐、全国町村会経済農林部大場秋子参事、同部保原雅子主事、地元から山口県議会島田明議長、山口県町村会岡林久熊副会長など多数が出席し、350名を越える会員等の参加を得て盛大に開催された。
基調講演は、二井山口県知事が、「元気で存在感のある県づくり」の演題で約1時間にわたり講演された。
また、事例発表は、「人にとっておきの村づくり」と題して、村長に就任以来、農林業の振興と住民の生活基盤の整備に取り組み、今後とも信念を持って村政を推進する福栄村の末永昇村長が行った。
午後から、特別講演に移り、ノンフィクション作家で山口県が生んだ民俗学者宮本常一の生涯を描いた『旅する巨人』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した佐野眞一氏から「宮本営一の精神を生かすために」と題しての講演があった。
パネルディスカッションは、「自立と協働〜新たなる山村のフロンティア〜」をテーマに約2時間にわたって行われた。山口大学人文学部教授の小谷典子氏をコーディネーターに、パネリストとして山口中央農業協同組合理事 末永昌巳氏、山口県農山漁村女性連携会議副会長 三嶋八重子氏、高根フォーラム21代表 梅川仁樹氏、山口県豊田町長 吉本知則氏の4名の方々が参画された。
2日目の9月5日は、山口県阿知須町で開催中の「山口きらら博(きらめきみのりパーク他)」を見学した。
[国民が一致協力して山村・農林業を守ろう]
[全国山村振興連盟 黒澤副会長挨拶]
全国山村振興連盟保利会長が国会のご都合で出席できませんので、副会長の私、黒澤からご挨拶申し上げます。
このたび、全国山村振興連盟が「山村振興シンポジウム」をここ下関市で開催いたしましたところ、会員各位には全国から多数ご参加くださって、盛会裡に開催できましたことをここにお礼を申し上げ、ご同慶の至りに存じます。
また、農林水産省農村振興局長さん、山口県議会議長さん等、ご来賓の皆様には、ご多忙の中、時間を割いてご臨席の栄を賜り、私どもを励ましていただきまして、まことにありがたく、厚くお礼を申し上げます。
地元山口県には、開催に対しまして多大なご援助、ご協力をいただいておりまして感謝の至りに存じますが、さらに二井知事さんには基調講演をいただくこととなっておりまして、ありがたい次第に存じます。
さらに、本日、事例発表、特別公演、パネルディスカッション等をご担当いただく皆様には、会員一同へのご教導を深謝申し上げ、よろしくお願いいたします。
さて、本年のシンポジウムのテーマは「いのち燦めく21世紀の山村へ」であります。
今、私たちの山村の多くは、20世紀中ごろからの若者の都市への流出によりまして、過疎、少子・高齢化が急で、地域社会の崩壊が憂慮されるほど深刻な課題を抱えておりますが、このテーマは、この深刻な課題を克服する勇気と意欲を奮い起こし、その方策を探求実行して、新しい世紀を山村再興の世紀としようと願うものであります。
今、山村は衰退に苦しんでおりますが、人類の将来を思えば、世界人口の増加、食生活の向上、急速な地球環境の悪化が、山村における食料増産や森林による水源涵養、空気浄化等の公益創出を渇望する日が到来することは必至であります。我々は今、多くの人々、特に都市住民にこのことを啓蒙して、国民が一致協力して山村・農林業を守って、それを永続させるよう務めなければなりません。
それには、山村に若者を多くして、定住人口の安定化を図ることが喫緊の問題であります。しかし、今の人口に重点を置く地方交付税制度のもとでは、山村が広い農林地を守って、農林業を育て、若い定住者を安定的に維持するための財源を持ち得ません。ここに山村が、農林地等の面積に応じた税制度を求めるゆえんがあります。
市町村合併もまた、山村社会が崩壊する要因となりかねません。一般に人口の少ない山村社会は、多数決原理のもと、合併後の自治体では少数派となって、主張を貫き得なくなりますから、軽視されて住みにくくなり、定住者が減少するおそれが多いからです。
これら多くの難問を克服するためには、山村の政治運動の中核となるべき当全国山村振興連盟は、皆様と十分に協議して理論武装し、一致団結して国会、政府、都道府県等に訴えて、主張を貫こうとする決意と努力が必要と考えます。今連盟を預かる者はその決意ておりますので、皆様のご協力を切にお願い申し上げます。
終わりに、このシンポジウムが山村振興運動に活力を与える転機となって、山村の活性化に成功する日が一日も早く到来するよう祈りつつ、ご挨拶を終わらせていただきます。ありがとうございました。
[農林水産省農村振興局 木下局長挨拶]
ただいまご紹介いただきました農林水産省農村振興局長の木下でございます。
第27回「全国山村振興シンポジウム」の盛大なる開催、おめでとうございます。
ご案内のように、本年1月の中央省庁の再編に伴いまして、山村振興法の所管が旧国土庁から農林水産省、国土交通省、総務省となりました。農林水産省が取りまとめの窓口となったところでございます。
私ども農林水産省といたしましては、今後とも関係府省と力を合わせながら、山村振興対策に全力で取り組みたいと考えておるところでございます。
来年度の概算要求を取りまとめたところでございます。大変厳しい財政事情の中でございますけれども、私ども関係府省が知恵を絞りながら、新たな取り組みの展開や重点となる施策を進めていきたいというように考えております。
また、私ども農林水産省では、ことしの春から与党の中で農山村の取り組みの検討が始められましたので、それと軌を一にいたしまして、農山村の振興のための研究会を現在進めているところでございます。この中で新たな方向が見出せればと考えております。
先ほど申しましたように、概算要求の中の新たな取り組みのひとつとしては、皆様方既に新聞報道等でも承知されておると思いますけれども、おいしい水あるいはきれいな空気に囲まれた豊かな生活空間の確保を目指しまして、そのような基盤となります整備を関係府省と一体的に進めていきたいと考えております。私ども、「村づくり維新」というふうに言っておりますけれども、都市と農山村共生・交流、あるいは集落機能の再編をにらんだ対策でございます。もとより「村づくり維新」は、武部農林水産大臣が提唱し、関係府省に呼びかけているところでございます。この取り組みは農林水産省だけではなかなか難しいと思っておりますし、関係府省の連携のもとで、基本的には地元の町村の皆さん方のイニシアチブで進められていくものというように考えておりますけれども、この具体化を、今後暮れの概算決定までに詰めていきたいと考えております。
また、昨年度から実施をいたしております中山間の直接支払い制度でございます。12年度の例で申し上げますと、全国で54万ヘクタールの規模のまずまずの成績を収めたと考えておりますけれども、さらにこの直接支払い制度の浸透を図りたいというように考えております。皆様方の変わらぬご支援、ご協力のほどお願い申し上げます。
先ほどの黒澤副会長のご挨拶にもございましたが、戦後、20世紀を支えました大量消費型の社会あるいは一極集中型社会から、循環環境保全型社会あるいは多極分散型社会へ展開が求められております。山村地域の振興というのは、かねがね言われておりますように、水源のかん養一つをとってみましても、都市住民を含めまして、国民全体にかかる大変重要な課題でございます。21世紀に求められます循環あるいは環境保全的な社会を実現するためには、山村地域の振興を図り、その果たす役割を維持増進していくことが必要だと考えております。
このような中で本日のシンポジウムは「いのち燦めく21世紀の山村へ」というテーマで、国土の保全あるいは水資源のかん養など、山村地域の果たします多面的な役割とその充実につきまして国民の理解を深める、また山村地域から積極的に情報発信していくということを目指すものでございます。まさに時期を得たものといえようと考えております。
また、当山口県におきましては、二井知事のご指導のもと、美しく豊かな自然環境を活かして、県・市町村・地元一体となりまして創意に富んだ取り組みを実施されております。先日私も、その一例でございます仁保地区を見る機会がございました。本当に長年にわたります関係者の皆さん方のご努力、ご尽力に対しまして頭が下がる思いでございます。ますます今後発展をお祈りしたいというように思っております。
また、ここ山口県では、先ほどご紹介いたしました中山間直接支払い制度につきまして、全国でも先進的な取り組みをされております。いろいろな取り組みにつきまして、インターネットを活用するようなこともやられているようでございます。私ども中央にありましても、山口県での取り組みが非常に参考になっているというような次第でございます。このような取り組みをいろいろと各般に実施する中で、交流人口の拡大も積極的に取り組んでおられるようでございます。
まさに2001年という21世紀の最初の年に、ここ山口県におきまして本シンポジウムが盛大に開催されますことは、まことに意義深いものと考えております。2日間にわたり、盛りだくさんの内容となっていると承知いたしておりますけれども、山村振興を担う皆様方の相互理解と研鑽の場として、実り多いものとなりますようご期待申し上げますとともに、開催にご尽力いただきました山口県、全国山村振興連盟山口県支部、さらには全国山村振興連盟の方々並びにご参集の皆様方のますますのご発展とご活躍を祈念いたしまして、簡単でございますけれども、私の挨拶とさせていただきます。
本日はまことにおめでとうございました。
[21世紀に対応した豊かで潤いのある山村の改革、
構築を目指して]
[島田明山口県議会議長祝辞]
皆様方、本日はようこそ山口県におこしをいただきまして、心からご歓迎を申し上げます。
「第27回全国山村振興シンポジウム」が開催されるに当たりまして、地元山口県議会を代表いたしまして一言お祝いを申し上げます。
皆様方には、平素から全国各地で山村の振興・発展のため多大なご尽力を賜っているところであり、まずもって深く敬意と感謝の意を表します。
さて、申すまでもなく、山村は農林産物の安定供給や国土環境の保全はもとより、文化や自然、景観などを含む生活の場、さらには山村の象徴とされる都市生活者との交流の場、公益的かつ多面的機能を有しており、その振興は均衡ある我が国の発展に必要不可欠であること、各地域でそれぞれの実情に即したさまざまな施策が積極的に展開されているところでございます。
このような中、21世紀に対応した豊かで潤いのある山村の改革、構築を目指し、全国各地から関係の皆様方には一堂に会され、事例発表や講演、パネルディスカッションなどを通じて山村の持つ役割や課題を再認識されますとともに、全国各地の方々と地域での取り組みなどのさまざまな情報を交換され、交流を深められますことは、まことに意義深く、今後の皆様方の活動に大いに役立つものと確信をしております。
どうか皆様方には、本日のシンポジウムを新たな契機とされ、さらなる山村の振興発展にこの上ともご尽力を賜りますようお願いを申し上げます。
ところで、明日は「山口きらら博」の視察が行われると伺っております。後ほど私どもの知事の方からいろいろ話があると思いますが、山口の農業・農村が大半出ている「きらめきみのりパーク」を初め、さまざまなパビリオンや元気の出る多彩なイベント等で、山口県の元気を体験していただき、その元気をそれぞれの地域に広めていただきたいと思います。
終わりに、このシンポジウムの開催にご尽力を賜りました関係の皆様方に厚くお礼を申し上げますとともに、全国山村振興連盟の限りないご発展と、皆様方のご健勝、ご活躍を心から祈願いたしましてお祝いの言葉といたします。
(基調講演、特別講演、パネルデスカッション等は次号に掲載)
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