第19回山村振興近畿ブロック会議
開催される

   

 第19回山村振興近畿ブロック会議は、去る7月6日京都府山村振興対策協議会主催により、近畿ブロック内の各府県山村振興対策協議会の会長、副会長及び事務局長等が出席して京都市内のホテルセントノーム京都において開催された。
 会議は、京都府山村振興対策協議会田中事務局長司会のもとで進められ、最初に京都府山村振興対策協議会吉岡秀男会長(京都府大宮町長)の主催者挨拶のあと、来賓として出席した農林水産省農村振興局農村政策課 松井信行山村振興係長、京都府栗山正隆農林水産部長からそれぞれ来賓祝辞が述べられた。
 次に情勢報告に移り、三井嗣郎連盟事務局長から最近の山村をめぐる中央情勢や先に小泉内閣が決定した聖域なき構造改革としての「経済財政・構造改革の基本方針」について、今後山村等の地方にとって地方交付税制度や町村合併などがどのような展開になるかを固唾をのんで見守っているいること。山村振興連盟は、山村が担う公益的機能の重要性を国民に理解して預き、今後とも山村振興に揺るぎない政策が進められるよう振興山村市町村と一体となって運動を進める決意であること等の報告がなされた。
 その後は、各府県から提出された平成14年度予算に向けた要望事項について、それぞれ提案理由の説明があり、これに対し、農林水産省農村振興局農村政策課 松井係長、林野庁森林整備部計画課森林総合利用・山村振興室 池田直弥課長補佐、近畿農政局農村計画部 森田賢作農村振興課長からそれぞれ見解が述べられた。
 提案された要望事項は、原案通り決定し、関係各省に提出することを決め、京都府山村振興対策協議会及び全国山村振興連盟から、農林水産省等の幹部に要請することとした。
 なお、平成14年度の第20回山村振興近畿ブロック会議開催は、兵庫県で行うことを決定して散会した。

   

【各府県提出要望事項】
  
1.山村振興対策の推進について(滋賀県、兵庫県、奈良県、和歌山県、京都府)

 山村地域では、昭和40年の山村振興法制定以来、山村の振興並びに活性化のだめ各種施策を実施し、一定の成果をあげてきました。
 しかしながら、今日の山村の実態は、今なお過疎化に歯止めがかからず、担い手のの確保や若者が定住することに至っていない。
 依然として人口は減少し、高齢化は進み、将来の山村集落の存続が危ぶまれている。
 今日の山村社会を取り巻く状況が大変厳しい中にあって、山村に期待される経済、社会、文化等各方面にわたる役割を果たすため、地域住民が定住し得る山村振興のため、諸政策がより総合的な形で実施できるよう下記事項について特段の措置を講じられたい。
(1) 第五期山村振興対策を計画的、かつ着実に推進されたい。
(2) 新山村振興等農林漁業特別対策事業を計画的かつ着実な推進を図るため、平成14年度以降の事業実施地区数及び予算枠を十分に確保されたい。
(3) 山村等の産業基盤、生活環境を一体的に整備するため新山村振興等農林漁業特別対策事業において団体営級以下の農業生産基盤工種の復活を図られたい。

2.中山間地域等直接支払交付金制度について(兵庫県)
 農業生産条件の不利を補正する中山間地域等直接支払交付金制度の着実な推進を図るため、次の事項について特段の配慮を願いたい。
(1) 地域の実情に応じた制度の活用が可能となるよう弾力的な制度運用を図られたい。
(2) 実施にあたっては、町村に過度の負担とならないよう確認等事務の簡素化について十分配慮されたい。
(3) 町村の財政負担を軽減するため、地方財政措置の充実を図られたい。

3.山村地域における交通の確保について(奈良県)
 乗合バスは、山村地域に密着した住民共通の移動手段というだけでなく、地域福祉、教育等とも関わりの深い重要な交通機関である。
 しかしながら、平成14年2月から施行される改正道路運送法に基づくバス路線の退出規制撤廃に伴い不採算民営バス路線の撤廃が予想され、地域生活交通の確保が困難になるなど多くの弊害が懸念される。
 ついては、地域協議会における協議結果については、地域の交通手段をどう確保していくかということについて、地域の住民、関係者の協議・合意に基づいて講じられることから、その取り扱いについて最大限尊重するとともに、町村の負担増加とならないよう十分な財政措置を行うよう配慮されたい。

4.野生動物による農林産物への被害防止対策について
 (滋賀県、兵庫県、和歌山県、京都府)

 過疎化、高齢化の進む山村地域では、基幹産業である農林業の採算の低下や労働力の減少から農地や森林の適正な管理が困難な状況にある。
 こうした状況に加え、近年、サル、イノシシ、シカなどの野生動物による農林産物への被害が全国的に発生しており、被害を受けた生産者の中には、収穫や耕作そのものを放棄する例が見られるなど、地域農林業の振興上極めて大きな問題となっている。
 ついては、野生動物による被害防止のための抜本的対策を講じられたい。

5.森林・林業対策の推進について(滋賀県、和歌山県)
 森林は、水源涵養、国土の保全、災害防止等の公益的機能から地域社会の発展と住民生活の安全確保のために、重要な役割を果たしている。
 しかし、森林・林業・山村を巡る近年の状況は、林業経営の不振や林業労働者の減少・高齢化等により資源の有効利用が妨げられているなど非常に厳しい状況にある。
 このような状況の中、林業を地域産業として維持発展させるため、安定した林業経営者の育成と効率的な作業を担う林業事業体や林業労働力の育成・確保を図る必要がある。
 ついては、下記事項について特段の配慮をされたい。
(1) 第九次治山事業七箇年計画に基づく治山事業の推進をはかるための予算枠及び新規採択枠を確保されたい。
(2) 第二次森林整備事業計画に基づく森林保全整備事業及び森林環境整備事業の推進を図るための予算枠及び新規採択枠を確保されたい。

6.森林交付税交付金(仮称)の創設について
 (滋賀県、兵庫県、奈良県、和歌山県)

 森林は、精神的・物質的両面において豊かな恵みをもたらす存在であるとともに、国土の保全、水資源の涵養、水田稲作農業に不可欠な水の確保、豊かな海づくり等公益的機能の重要な役割を担っている。
 しかしながら、山村においては、木材価格の低迷や経営コストの増加等により、経営意欲の減退をまねき森林管理の担い手不足が深刻化するなど森林の管理基準が低下していている。
 こうした結果、森林の多様な機能が十分発揮されなくなることが憂慮される状況となっている。
 森林の持つ公益性、外部経済効果の大きさを認識しその機能を高度かっ総合的に発揮させ、森林を適正に維持管理することは、国家的永久の課題であり、森林をもつ町村に課せられた役割と責任は、重大と言わざるを得ない。
 ついては、森林面積に応じて配分されている地方交付税交付金を増額するとともに、この交付金制度とは別枠の森林交付税交付金(仮称)の制度を早急に創設されたい。

7.「山の日」の制定と普及・啓発事業の創設について(和歌山県)
 国土の3分の2を占める山は、森林を育み、国土保全や水資源の涵養、大気の浄化、保健休養の場の提供など様々な公益的機能を発揮し、国民生活を支えていくうえで重要な役割を担っている。
 国民全体が「山」のもつ多面的機能の重要性を認識し、森林やそれを支えている山村地域を国民共通の財産として守り育てる機運を醸成していくため「山の日」を制定するとともし、国民的な運動を展開するための普及・啓発事業を創設されたい。

8.「新ふるさと山村定住対策」の創設について(和歌山県)
 山村の公益的な役割を担う担い手確保のため、I夕一ン者等の新蜆就業者確保に対する下記の助成制度の創設をされたい。
(1) 定住住宅幣備のための助成制度を創設をされたい。
(2) 就業機会の拡大のため、公益性の高い森林の整備を市町村自らが行う新たな事業を創設されたい。
(3) 林業事業体が、新規雇用者に技術習得させる間の賃金を、事業体に助成する制度を創設されたい。

   
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