全国山村振興連盟理事会開催される

    

 全国山村振興連盟は、去る7月25日(水)午後2時から永田町の全国町村会館2階ホールにおいて保利会長出席のもと、農林水産省農村振興局 吉村農村政策課長、国土交通省都市・地域整備局 平岡地方整備課長等関係省担当官の来賓を得て、平成13年度第1回理事会を開催した。その概要は次のとおりである。

【保利耕輔会長挨拶】

 暑い最中、全国山村振興連盟の理事会に御出席を頂き有り難うございました。今日、お諮りする事項は重要な事柄が沢山ございますが、忌憚のないご意見を頂戴して立派に議事が進みますようにお願いを申し上げます。
 山村の問題につきましては、申し上げるまでもなく、いろいろと我々がやっていかなければならないこと、また、世間にPRしていかなければならないことが沢山あると思います。つい最近の地球環境を巡りますいろいろな議論の中で、森林の果たす役割が非常に大きく評価をされたということは、私どもの仕事にとって大変人きな励みになるのではないかと思っております。日本は美しい山、そして立派な山から沢山の酸素を供給しているという大事な機能を、皆様方によってしっかり守っていただくということは大変大きな意味合いがあろうと思います。かかる意味において大変重要な役割を果たすこの連盟の理事会、こうして皆様方にお集まりをいただきまして大変有り難うございました。心から厚く御礼を申し上げ、会長としてのご挨拶にさせていただきます。有り難うございました。

【来賓挨拶:農林水産省吉村農村政策課長】

 山村振興につきまして、保利会長をはじめご参集の皆様方には大変なご支援、ご尽力をいただいておりますことに対し厚く御礼申し上げます。
 本年1月の中央省庁再編によりまして、山村振興法の所管が旧国土庁から国土交通省、総務省、農林水産省の3省共管となり、農林水産省が取りまとめ窓口となりました。私ども皆様方のご協力を得ながらこの任務を進めていく考えでありますのでよろしくお願い申し上げます。
 農林水産省におきましては、山村振興対策の取りまとめ窓口という役割の発揮はもとより、所管しております各種の事業の中で新山村振興等農林漁業特別対策事業の円滑な実施、また、13年度から実施の中山間地域等直接支払制度等を一層定着していくということで努力をして参る考えてあります。また、新しい事業のひとつとして、本年度から、山村地域からの提案に基づく個性ある取り組み、ソフト活動を支援していくこととしています。
 先の通常国会におきまして、森林・林業基本法が成立しましたが、その中で森林の多面的機能の持続的な発揮に重点をおいて今後施策を進めていくことにしておりますし、多面的な機能に関しましては農業、森林の持っている機能を定量的に評価をするために、昨年末に日本学術会議に検討を依頼しありまして、この報告が11月には頂けることになっております。このようなことも活かしながら、今後山村地域の役割・重要性について国民的な理解を深めていきたいと考えております。
 また、皆様方、ご心配を致しております事柄として、経済財政諮問会議で「骨太の方針」が出され、一部には都市重視で地方軽視につながるのではないかといった受け止め方もされているところであります。農林水産省といたしましては、武部大臣が先頭に、立って経済財政諮問会議の対応に当たってきております、都市と農山村地域が対立するという形ではなく共生し対流する社会構造を造っていくということで働きかけをしてきているところであります。
 さらに、今般、「農山村振興研究会」を立ち上げまして農山村地域に多様な人々が参入できる基礎的な条件は何かということ、また、ヒューマン・セキュリティーの観点からの自然と共生する環境の創造・整備の在り方等を検討することとしております。こういった取り組みを通して山村振興をこれまで以上に実のある対応が出来るように関係省と連携を取りながら努力して参りたいと考えておりますので今後ともご指導の程宜しくお願い申し上げます。

     
【来賓挨拶:国土交通省 平岡地方整備課長】

 保利会長をはじめ山村振興連盟の皆様方には日頃から山村振興に限らず地域整備全般に渡りまして、大変ご尽力をいただいておりますことに対し厚く御礼申し上げます。
 吉村課長からのお話にもありましたが、都市再生といわれる中で地方についてもそれぞれの地域の個性を活かした活性化、発展が大事であるということで取り組んでいるところでございます。日本の国土が全て都市になるというようなことは、絶対にあり得ないわけでありまして、都市があり地方があり、農村があり山村があり漁村があって、はじめてこの多様性のある日本という国が成り立っているのであります。そう言った意味でこの山村振興対策は、大変重要な施策であるという認識のもとに関係省連携して取り組んで参りたいと考えております。国土交通省地方整備課は、地方の整備を担当する訳ですが、都市と農山漁村地域の交流ということも含めまして地方の整備に取り組んでおります。国土交通省といたしましては山村振興連盟のご支援も頂きまして山村振興はじめ地方の整備につきまして取り組んで参りますので宜しくお願い申し上げます。
 続いて、黒澤会長代行の議長のもとに議事が進められた。
○第1号議案「特別会費の費目の改訂に関する件」を議題として、三井事務局長から『従来の事業に加えて、農林水産省所管の平成13年度新規事業「山村振興等対策(個性豊かな山村社会の構築に向けた支援事業)」を加えること』の提案理由を説明し、承認された。
○第2号議案「平成12年度収支決算に関する件」を議題として、三井事務局長から提案理由を説明するとともに、監事の長野県川上村長から『去る7月17日に山梨県早川町長とともに、三井事務局長他職員同席のもと、連盟の会計決算について監査した。その結果、平成12年度全国山村振興連盟収支決算は、諸帳簿、証拠書類とも符合し、正確かつ適正であった』旨の監査報告があり、原案通り承認された。
○第3号議案「役員の承認に関する件」を議題として、黒澤議長から『現常務理事・事務局長の三井嗣郎氏には7月31日をもって勇退したい旨の申し出があり、やむを得ないものと認め、連盟規約に従い理事会の承認を求めます。また、後任の常務理事・事務局長には、米田博正氏を御承認いただくようお諮りいたします。』との提案があり承認された。
○第4号議案「平成13年度山村振興関連予算の要望に関する件」
○第5号議案「山村市町村の合併に関する特別要望に関する件」
○第6号議案「山村市町村の自主財源確保上の新たな税制・財政措置に関する特別要望に関する件」
 第4号議案から第6号議案についてそれぞれ三井事務局長から提案理由の説明があり原案通り承認された。

   
【主な質疑概要】
   
(A理事)

 山村振興関連予算要望の中の中山間地域等直接支払制度について伺いたい。制度の中で集落協定は5年間ということになっているが、山村地域では後継者が少なく5年間続けることを特に悩んでおり大変厳しい状況にあるので、そこのところをご認識いただき緩和して頂きたい。
(農林水産省農村振興局地域振興課中山間地域振興室 三浦室長)
 直接支払制度については、条件不利な地域に講じている施策であるが、お話あった集落協定の要件の5年間については、直接支払制度の趣旨として中山間地域の多面的な機能が発揮されて耕作放棄の防止が図られるようにということである。このような趣旨から見て一定の期間まとまりのあるところで農業生産活動が継続されるということが制度的に決められており、短期間ではない一定の期間みんなで農業生産活動等を行うという措置が講じられたものであり、この5年間は基本的な要件としている。当然のことながら、山村地域等の厳しい状況を踏まえて特に講じている施策でありご理解を頂きたい。
 いろいろな集落協定の締結に当たっては、例えば、様式を示して簡便な方法で作成出来るようにするとか工夫をしているが、さらに私どももお話を伺いながらどのような措置が適切かと言うことを農政局や都道府県を通じて相談に応じており、個別、具体的なお話があればご相談いただきたい。
   
(B理事)
 山村市町村の合併に関する特別要望について、反対ではないが、町村合併の検討は急激に進んできており、このような要望だけでは不十分ではないかと考えている。山村は合併町村の中心部にはなれず、合併によってさらに隔絶した地域になるのではと大変心配している。
 どうしても合併をせざるを得ないことであれば、住民が不安を抱かないような具体的な要望をすべきではないか。今の状況の中では、強制をするなと言うことだけでは難しい、という感じがしている。
   
(C理事)
 5号議案とも関連するが、ただ単に町村合併を強制するなど言うようなことを言うだけの収り紺みでは、現在は通用しない。条件闘争的な流れに変えるべきだ。そう言う意味で6号議案については、賛成だが、これももっと具体性のあるような要求をしていく必要があるのではないかと思う。
例えば、先日ボンで行なわれた会議の京都議定書の問題では、日本のC02削減目標6%に対して森林・山村がその約3.9%を削減する機能を認めるということであり、6%削減のために国が必要とするお金は幾らなのか。
 森林・山村が3.9%削減の機能を持つとすれぱその部分を山村に還元しても国としては損失にならないわけであるから、そういうことを数字的に積算して要求するような取り組みも必要ではないかと思う。
   
(三井事務局長)
 合併の強制については、全国町村会でもいろいろ議論されていることはご承知の通りであり、全国町村会の主張は、「合併の強制は絶対するな」ということである。
 連盟も全国町村会と基本的には、同じ母体にあるわけであるが、山村地域という平場とは異なる条件も有している。合併の内容的なことに踏み込むべきではないかと言うご意見があることは承知しており、これについては、町村が小規模で隔絶した地域にあって合併そのものが住民の意向に関わらず難しいというところもある一方、県の指導等もあってかなり進んでいる町村があるなど格差があり、現時点では提案のような内容に留まっているが、状況をみながら適切な対応が必要であると考えている。
 総務省は、合併は強制しないと言うことは重ねて表明しているが、現実には山村等への地方交付税が大変厳しくなっており、実質上強制していることになっている。
 今後は、合併の内容に一歩踏み込んだ形でのご意見も聞き、ご意向を踏まえながら進めるべきと考える。
  
(保利会長)
 町村合併の問題は、大変難しい問題である。私が自治大臣当時に樋口宏忠さんを会長にして町村合併を推進していくためのグループが出来て、議論された。その中の議論として、現在の地方自治体は非常に細切れになりすぎているところがある。大きな自治体がある一方で、まことに小さい自治体があり、大小に差がなく議会もあり、役場もあり行政コストがかかり過ぎるのではないか、これを全国的視野から見てまとめていくべきではないかという、意見があった。
 私は、地域性などいろいろなことがあることをよく承知しており、合併は強制すべきものではないと自治大臣当時もかなり強く言ってきたが、一般的には、こういうメンバー、第三者から見ると、もっとまとめるべきだ、と言う状況があるので、そこのところをどう調整していくかという問題だろうと思う。
 なお、町村合併を進めると行政サービスが低下するのではないかと言うことに関しては、いろいろな説があり一つは、郵便局を有効に使った行政サービスをするという考え方がある。いま政治上の大きな問題になっている郵政の民営化という問題があるが、私は国の力である程度郵政を維持し、そこを使っていろいろな住民に対する行政サービスを行っていく、IT化といわれている時代ではそう言うことが出来るのではないかと考えており、総務省も郵政省と自治省を編成し、そういう形で行うという一つの方向性があることを知っておいて頂きたい。
 町村合併については、自治大臣経験者として総務省とも相談していかなければならないと思っているが、決して、急いで300自治体にしていくと言うような考えは持っていない。
   
(三井事務局長)
 ネーミングは別として、森林、環境、国土保全という問題に対して今後の財源、税源措置と言ったことにもう少し具体性のある根拠をつくるべきとの主張については、連盟として、今後の検討課題として詰めていくべきことだと思う。現時点としては、提案のような、要望をしたいと言うことでご理解頂きたい。
 以上の質疑が行われ、理事会終了後、決定された要望事項について、総務省、国土交通省、農林水産省、環境省の幹部に対する要請行動が副会長及び理事により行われた。また、国会議員に対しては事務局から要請を行った。

  

第4号議案 平成14年度山村振興関連予算の要望書
   

 山村地域の振興につきましては、日頃から格別の御配慮を賜り厚く御礼申し上げます。
 農地・森林の持つ国土保全・環境保全等の役割が並々重視され、この機能を高めていくことが緊急の課題となるとともに、都市住民等の憩いの場としての豊かな自然環境への期待が高まっております。なかでも国土の2分の1を占める山村が果たしている公益的・多面的役割をより高度に発揮するためには、山村振興法に基づく各般の施策が今後一層充実し、山村の持続的発展が図られる必要があります。
 しかるに今日、山村では少子化・高齢化の進行、定住人口の減少、自治体財政の逼迫など、山村の維持・存立自体が懸念される状況が続いております。平成13年1月から、中央省庁再編により山村振興行政の所管が農林水産省・国土交通省・総務省の三省に移管されましたが、これを機に21世紀に向けての新たな展望に、立って活力のある山村を復活させるため、政府・国会におかれましては、以上のような施策上の要請を十分御理解いただき、下記事項の実現・確保が図られるよう強く要望致します。

(農林水産省関係)
1.山村自治体の自主[性を尊重しつつ、関係各省との連携の下に第五期山村振興対策を計画的かつ着実に推進すること。
1.「新山村振興等農林漁業特別対策事業」について、地域の実情に即した適切な事業内容の採択・実施等により事業の円滑な実施を図ることと相まって、平成14年度以降の事業実施地区数及び予算枠を十分確保すること。
1.農業生産条件の不利を補正する中山間地域等直接支払制度の円滑な実施を図ること。
1.中山間地域等の条件不利地域の振興を図る観点から、これら地域を対象とする各種事業の総合的・計画的推進と支援措置の強化を図ること。
1.山村と都市との交流促進のための支援措置を充実・強化すること。
1.山村における農林業の労働力対策の充実・強化を図ること。
1.山村におけるほ場、道路等の生産基盤整備の充実を図ること。
1.山村地域の厳しい現況に対処し、地域林業の持続的な担い手を確保する施策・制度の拡充・強化を図ること。
1.地域材の需要拡大と森林資源の循環的・環境保全的利用の推進を図る施策を充実・強化すること。
1.森林の果たす国土保全等の公益的機能をより高度に発揮させるため、保安林、森林の管理・保全等に関する施策の充実・強化を図ること。
1.森林の多面的機能の持続的発揮と山村の活性化を図るため、直接支払方式の導入を含め、森林・山村対策に関わる施策の充実・整備を図ること。

(国土交通告関係)
1.山村地域の住民生活における交通上の便益が確保されるよう、地方バス路線維持対策・安全運行対策の充実・強化を図ること。
1.山村地域と中核都市等とを結ぶ国道及び都道府県道の計画的整備促進を図ること。
1.市町村道の改良・舗装等を促進するため、市町村道整備事業の拡大強化を図ること。
1.関係各省との連携のもとに、山村・水源地域における防災対策の充実・強化を図ること。

(環境省関係)
1.生活排水対策としての合併処理浄化槽の整備促進を図ること。
1.ダイオキシン等の有害物質の発生防止対策として、廃棄物処理施設の新設・改造等に関わる助成捨置の充実と防止技術等の向上・確立をはかること。
1.野生鳥獣の農林業被害の防止技術等の確立及び保護管理の適正化を図ること。

(総務省関係)
1.山村における医療・福祉関係を含む各種の情報・通信サービスの都市地域との格差是正を図るため、情報・通信施設等の整備・充実を図ること。
1.辺地債及び過疎債を大幅に増額すること。
1.山村社会の厳しい現状を早急に打開するため、森林・山村対策及び国土保全対策に関わる施策の充実・整備を図ること。

   
第5号議案 山村市町村の合併に関する特別要望書

   
 全国山村振興連盟では、従来から市町村合併については「地方自治の理念」に基づき地域住民の意志を十分尊重し、合併を強制することのないよう強く要望してきたところでありますが、現在、合併に関して国が進めている数値目標や期限の設定、地方交付税の段階補正の見直しなどによる合併の誘導措置等は、かかる理念に反するものであります。
 今日、山村では地勢・立地の制約、住民の生活実態等からも国・都道府県が指導する方向での合併が困難な状況が数多く見られ、これらに対し合併を迫ることは、山村自治体の存立と山村住民の生活を崩壊に導き、これらの者が果たしている国土・環境の保全等の機能を大きく損ない、下流域の都市住民等にも著しい損失をもたらすものであります。
 よって、国及び都道府県は、いかなる形であれ市町村合併を強制しないことを重ねて強く要望致します。

      
第6号議案 「山村市町村の自主財源確保上の新たな税制・
財政措置」に関する特別要望書
   

 地方分権の実現と山村市町村の自立に向けての自主財源の確保は、山村市町村にとって必要不可欠でありますが、現行の地方交付税制度では「人口要素」を基本として財源配分上のルールが定められており、近年総務省が実施中の「地方交付税算定の簡素化」に基づく段階補正の縮小等のもとで、山村市町村への地方交付税配分額は逐年減少される趨勢にあります。
 これらの状況にみられるとおり、住民サービスの均衡を本旨とし人口要素を財源配分上の基本とする地方交付税制度のもとでは、「面積要素」を重視した財源配分には限界があることにかんがみ、現行の地方交付税制度に加え、別途の税源・財源措置により、国土の半分を占める山村市町村がその担う国土・環境の保全等の役割を全うすることが出来るよう、「面積要素を基本とする自主財源確保のための新たな税制・財政措置」を講じることを強く要望致します。


  

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