全国山村振興連盟東海・北陸
ブロック連絡会議開催される

    

 全国山村振興連盟東海・北陸ブロック連絡会議が、9月4日福井県支部(支部長 美山町長 藤田海三氏)主催で武生市において会員、支部事務局員ほか約100名が出席して開催された。
 会議は、地元福井県支部橋本事務局長の司会のもとで進められ、最初に地元福井県支部藤田支部長の挨拶があり、続いて来賓として出席された国土庁地方振興局山村豪雪地帯振興課振興第一係長 原嶋広行氏 農林水産省北陸農政局農政部長 森本豊志氏 福井県農林水産部次長 梅田幸重氏からそれぞれ挨拶があり、その後来賓の紹介がなされた。挨拶の中で国土庁原嶋係長からは、平成13年度予算については、来年1月からの中央省庁再編後の最初の予算として、山村町村の振興にかかる提案型の予算を要求していること。また、山村振興法の所管が総務省、国土交通省、農林水産省の3省共管となるが、このことによって山村の振興にいささかの齟齬も起こらないように対策を継続、推進していくことが強調された。
 また、北陸農政局森本農政部長は、食料・農業・農村基本法に基づき本年3月に策定された「食料・農業・農村基本計画」の中で、中山間地域の振興が重要な柱として位置付けられ、直接支払制度や中山間地域総合振興対策の推進並びに山村振興対策の基幹である新山村振興等農林漁業特別対策事業について平成13年度以降についても予算拙置をはじめとして推進することとしている、ついては、事業の効果等を十分検討して山村振興に役立つものとなるよう活用されることをお願いする旨述べられた。
 福井県農林水産部梅田次長は、山村は少子・高齢化の流れの中で厳しい状況にあるが、一方では、省資源型社会、地球環境保全と云った観点から森林・農業の持つ公益的機能、とりわけ中山間地域の役割は極めて重要である。このような観点から福井県においても新しい食料・農業・農村基本法の制定に伴い21世紀に向けてどのような構想で進むか検討をしている最中である旨述べられた。


 次に、藤田支部長が議長となり、議事に入った。まず、全国山村振興連盟三井嗣郎常務理事から最近の山村をめぐる中央情勢について報告があった。その中で、
(1)来年1月からの中央省庁再編により3省の共管となるが、今後における山村振興行政が一慣性を持って、また後退することなく連携して進められるよう強く要請していること(2)山村振興に関わる農林水産省関係予算、特に中山間地域等直接支払交付金、新山村振興等農林漁業特別対策事業の予算枠の確保、また、国土庁が要求している関係省庁連携の下に山村自治体からの提案に基づき、伝統技術や地域資源を生かした地場産業の育成、地域交通の確保、山村文化の継承等広範な分野にわたる先進的な施策を支援する「個性ある山村地域の再構築実験事業」の創設(3)行政改革の一環として各種事業の費用対効果ということが云われているが、山村における事業の中には、安らぎや環境の保全と云った機能を持つ事業について費用対効果が測定が困難なものも少なくないので、考慮して貰いたいこと(4)町村合併については、当連盟の従来からの主張通り「国、都道府県は、市町村及び地域住民の意思を尊重し、合併を強制しないこと」を求めていくこと等が強調された。
次いで、各府県より提出された議題について、それぞれ提出県から代表者が登壇し提案理由の説明があった。これに対し国土庁原嶋係長、農林水産省北陸農政局農政部構造改善課 藤田佳志課長補佐からそれぞれ所管事項について見解が述べられた。
 提出議題については満場一致で採択され、要望事項については関係機関に対し強力に働きかけていくことを申し合わせた。
 なお、平成13年度の開催県は、岐阜県に決定した。

翌日は池田町志津原地区の「ふるさと体験道場」等及び美山町の歴史館「伊自良氏館」等を視察した。当日提出された議題は、次のとおりである。

【各県提出議題】

1.新山村振興等農林漁業特別対策事業及び山村振興等農林漁業特別対策事業における採択数及び予算の確保等について(岐阜県支部)
平成11年から第五期山村振興対策が始まり、新山村振興等農林漁業特別対策事業により山村等中山間地域の振興を促進しているところであるが、本年度、山村振興計画を樹立し、新山村振興等農林漁業特別対策事業の実施を希望する全ての市町村が平成13年度に採択され得るよう、採択数の確保をされたい。
また、山村振興等農林漁業特別対策事業にあっては、残事業計画の着実な実施が図られるよう、事業実施最終年度にあたる平成13年度の予算を確保されたい。

2.中山間地域等直接支払制度の要件緩和について(岐阜県支部)
1) 交付金の返還
協定違反が生じた場合、内容によっては協定農用地全てが協定認定時に遡って返還となっている。返還を求められるのは、既に受け取った額のみではあるが、共同利用活動に支出した分も含めて、返還金の徴収は誰に責任があるのか、また、それを誰が行うのかと協定農家から問われると交付金の返還は非常に困難と考えられる(集落協定の責任者に誰もなりたがらない)。
よって、交付金の返還を下記のとおり緩和されたい。
・農地を宅地へ転用すること等により協定違反が生じた場合、協定違反農用地のみを協定認定時に遡って返還とし、他の協定農用地は協定違反が生じた年度以降について交付金の交付対象としないこととする。
2) 団地の設定
一団の農用地について下記のとおりとされるよう、見直しを検討されたい。
・一団の農用地とは農用地面積が1ha以上の団地または協同活動を行う集落内の複数の団地の面積が1ha以上の農用地

3.都市と山村との格差是正とへき地医療の充実(愛知県支部)
都市と山村との格差が人的にも経済的にも増大しつつあり、道路整備と生活環境に影響が見られていることから、定住条件の整備の最優先課題として道路の整備は重要であり、また、急速に進む高齢化、保健・福祉・医療に対する要望の多様化により、へき地中核病院として、療養型病床群の完全型への移行、訪問看護ステーションの設置、医療機器の新規整備を行い、地域住民に一層信頼される病院を築きあげることが必要となっている。

4.中山間地域等直接支払いに係る地方交付税措置の拡充について(三重県支部)
中山間地域等直接支払いに係る地方財政措置については、平成12年度に措置されたところであるが、その算定に当たっては実施状況を反映した配分となるよう、さらなる拡充をお願いする。

5.新山村振興等農林漁業特別対策事業の事業種目について(三重県支部)
事業種目については、地域の特性を活かした多様な産業の振興や都市との交流等を図るため、事業の実施が市町村の自由な発想により可能となるように改められたい。

6.新山村振興等農林漁業特別対策事業における高齢者対策について(三重県支部)
奥山間・中山間地域の農林業の従事者は、殆ど高齢者であり、高齢者向きの交流施設も(憩いの家、コンベンションホールなど)特認事業として認められたい。

7.新山村振興等農林漁業特別対策事業における農業生産基盤整備種目の復活について(三重県支部)
近年の農林業家においては高齢化が著しく進むとともに、高品質の農作物等の主流化に対応するため、資本整備に相当な経費を費やしている。このような状況の中で、作業の省力化を図るとともに、コストを下げるためにも基盤整備の充実が最も必要不可欠であり、専一業種目の復活を強く要請する。

8.第五期山村振興対策の推進について(新潟県支部)
地域特性を生かした産業振興対策を強化するとともに、生活環境施設の整備を促進するなど、総合的な地域振興施策を講じることが必要であることから、次の事項について特段の配慮をされたい。
1 省庁再編後の山村振興対策の円滑な推進
2 山村振興対策事業の拡充

9.山村振興等農林漁業特別対策事業の推進について(新潟県支部)
中山間地域では、本年から導入された中山間地域等直接支払制度を契機として地域活性化を図るため、制度実施全集落において集落協定とあわせ持続的な農地保全活動や都市との交流による地域活性化方策等を内容とする活性化プランを策定しており、集落協定や活性化ブランを具体化するため、山村振興等農林漁業特別対策事業は大きな役割を担っていると考えている。
ついては、地域の二一ズに即し効果的に事業実施ができるよう予算の確保とともに採択地区数枠の弾力的な運用について特段の配慮をされたい。

10.辺地及び過疎対策事業債の地方債計画額の拡充並びに山村振興対策事業債(仮称)の創設について(富山県支部)
財政力の脆弱な山村市町村を支援し、山村振興対策を強力に推進するため、
1)辺地及び過疎対策事業債の地方債計画額を大幅に拡充するとともに、振興山村分に係る分を別枠としていただきたい。
2)充当率100%で、元利償還金の80%を地方交付税の基準財政需要額に算入する新しい地方債(仮称:山村振興対策事業債)を創設していただきたい。

11.野生鳥獣対策への充実強化について(富山県支部)
近年、野生鳥獣、特にニホンザルによる農作物被害が増大し、地域住民の生産意欲の減退が懸念される等、山村地域における深刻な課題となっている。
このため、猿害対策の確立が急務となっているが、知的動物であるサルの学習による慣れや被害農地の点在等から、いまだ決め手となる対策が見出せない状況にある。
つきましては、ニホンザルを中心とした野生鳥獣被害に対する効果的な防止対策の早期確立及び抜本的対策確立に向けての支援について、特段の配慮をしていただきたい。

12.山村の活性化に対する国土保全対策の拡充・強化について(石川県支部)
山村では、近年の過疎化、少子・高齢化の進展により、その活力が低下し、それに伴い水資源のかん養、自然環境の保持等国土保全のための公益的な機能の低下も懸念されている。このような問題を市町村が総合的に推進する事業に対し、国土保全対策のハード・ソフト面の拡充・強化を要望する。

 
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