21世紀にふさわしい山村地域の形成を

[国土庁長官官房審議官 薦田隆成氏挨拶要旨]

 全国山村振興シンポジウムは、国土の保全、水資源の涵養、自然環境の保全など山村が担っている多様な役割とその重要性について国民各層の理解を得るとともに、山村地域から情報を積極的に発信していくことを目的として毎年開催しているものである。
 さて、現在我が国は、金融不安の嵐の中にあり、地域経済への影響も心配されている。
加えて、山村地域においては、基幹産業である農林業の不振が続く中で、若年層を中心とした人口の流失や高齢化の進行など構造的な問題を抱えており、国土の保全や活力ある地域社会の維持に懸念が生じるところとなっている。
 しかしながら一方では、近年、山村の特性や地域資源を活かして都市との交流事業等地域の創意工夫を活かした個性的な取り組みが活発にとられるようになってきており、活力に満ちた山村社会を実現している事例も数多く見られるようになってきている。
 こうした中で、本年3月に閣議決定された新しい全国総合開発計画においては、中小都市と中山間地域等量かな自然環境に恵まれた地域を21世紀の新たな生活様式を可能とする国土のフロンティアとして位置づけており、地域内外の連携を進め都市的なサービスとゆとりあろ居住環境、豊かな自然を併せて享受できる誇りの持てる自立的な圏域として「多自然居住地域」を創造することを提唱している.特に、緑豊かな美しい山村は「多自然居住地域」を創造するための重要な地域であり、うるおいある生活環境と美しい自然景観を維持・形成することが求められている。
 また、現在、総理大臣の諮問機関である国土審議会山村振興対策特別委員会において、新たな山村振興対策について御審議をいただいており、山村を取り巻く状況等を整理・分析しながら、21世紀における新たな山村振興対策のあり方について見解を取りまとめていただいている。
 このような状況を踏まえ、国土庁としては、引き続き関係の省庁と連携を密にしながら、山村地域の格差是正と地域活性化のための社会資本の整備に努め、21世紀にふさわしい魅力ある山村地域の形成を図るため、山村振興対策のより一層の推進に向けて力を尽くしてまいりたい。




山村は国の宝

[全国山村振興連盟会長 玉澤徳一郎氏挨拶要旨]

 我が国経済は、金融問題をはじめ依然として厳しい状況が続き、度重なる景気対策にもかかわらず、容易に好転の兆しが見られず、地方においても地場産業の不振、リストラ等によって地域経済の地盤沈下、所得の低下を来し、住民の不安が増大している。
 国会は、このような現状を十分に分析をして、金融再生法案、銀行の早期健全化法案、補正予算などを成立せしめ、一日も早く経済の回復を図るべく、日夜奮闘努力しているところである。
 山村振興については、国土庁において、次期山村振興対策が国土審議会山村振興対策特別委員会で審議され、12月半ば頃に答申が出される見通しとなっている。また、内閣においては、新農業基本法の制定に向けた食料・農業・農村基本問題調査会の答申が、さる9月17日に出されたところである。
 農山村の最大の関心事の一つは、中山間地域への公的支援のあり方である。調査会の答申においては、当連盟が当初から主張してきたように中山間地域に対する所得の直接支払の方向が示されたことは、一定の評価ができるところであるが具体的にこれをどう実現するかがこれからの問題である。我々山村の立場から十分検討して最も適切な施策の実現に向けて全力を挙げて努力してまいりたいと考えている。
 山村は、多くの公益的機能を果たし、国民の生命と財産を守ってきた国の宝である。この宝を将来子々孫々まで守っていかなければ我が国の民族の繁栄はありえない。
 山村に人々が住み、森林や農地を管理し、国民が豊かで健全な生活を営む上でかけがえのない地域としてこれを維持・発展するための対策がこれまで以上に必要である。
 私は、国会議員として、また、全国山村振興連盟会長として、これらの諸問題を解決するため、皆様とともどもに先頭に立って予算の確保、山村地域の振興のために頑張ってまいる決意である。  本シンポジウムが今後の山村振興に役立つことを祈念する。



個性ある山村の構築を

[秋田県知事  寺田典城氏挨拶要旨]

 秋田県は、農業県で積雪寒冷地帯という厳しい条件下にありながら、広々とした土地や水資源に恵まれ、「あきたこまち」の銘柄で知られる全国有数の米どころとなっている。反面、米に大きく依存した生産構造が様々な政策上の課題をもたらしていることから、平成7年に県独自の農業農村対策大綱を策定し、経営の複合化による足腰の強い農業構造への転換に取り組んでいるところである。
 また、昨今の厳しい農林業情勢の中にあって、山村地域では過疎化、高齢化の進行に伴い地域活力の低下が危惧されており、このため国の各種の制度に加え、都市住民との交流の拡大等独自の施策を展開し、山村地域の活性化に努めているところである。
 山村の活力を高めるためには、地域のそれぞれ固有の自然と歴史を住民自らが再認識するとともに次代に伝えていこうという強い意志を持つことが必要である。そういう意味で、本日のシンポジウムのテーマである「響け・山村の魅力21世紀に向かって」は、誠に時宜を得たテーマであり、個性ある山村の構築について真剣に考えるきっかけになることを期待している。





歓迎御挨拶

[秋田県議会副議長  吉田久男氏挨拶要旨]

 御承知のとおり、私どもの生活は、飛躍的な経済発展と軌を一にして年を追うごとにそのレベルを上げてきている。誰もが豊かで便利な生活を享受できる環境にあることは、まことに喜ばしい限りであるが、その一方で、都市部を中心に、生活環境が悪化し、さらには、ストレスの蓄積により人間らしさが失われつつある等新たな問題も引き起こされてきている。
こうした中にあって、これまでともすれば華やかさの蔭に隠れがちであった山村の存在が、今後大きくクローズアップされてくるものと考えている。緑の豊かさ、空気のきれいさ、水のおいしさ、そしてまた人々の素朴な温かさといった山村ならではの環境と風土は、人間の原点を取り戻すために大きな役割を果たすからである。
 これからの山村の振興を考える時、生活基盤の整備はもとより都会の人々との共生を図ることを新たな視点に据え、その受皿をどう構築し、また、実現していくか私ども関係者はそのために知恵と汗を惜しんではならないと思うのである。
 この度のシンポジウムでは、こうしたことを含めて皆様方の活発な意見交換や御検討をいただき21世紀にふさわしい山村の振興に向けて実りある成果をあげられることを願ってやまない。




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