盛大に第24回全国山村振興シンポジウムを開催
−個性ある山村づくり−


 全国山村振興連盟では、国土庁・秋田県・全国山村振興連盟秋田県支部との共催で第24回全国山村振興シンポジウムを去る10月14日、15日の両日秋田市内の秋田キヤツスルホテル放光の間において開催した。
 シンポジウムには、全国山村振興連盟玉渾徳一郎会長はじめ、国土庁から薦田隆成長官官房審議官、地元から寺田典城秋田県知事、吉田久男県議会副議長が出席し、又、来賓として農林水産省山下一仁地域振興課長、大隈満東北農政局長、宮田正櫨全国町村会経済農林部会副部会長他多数の出席をいただき総勢450名を超える会員の参加を得て盛大に開催された。
 今回のシンポジウムは、わが国の経済が金融問題をはじめ俵然として厳しい状態が続く中にあって、山村地域での過疎化、高齢化は一段と深刻の度を加え、21世紀を間近に控え、今こそ個性ある住みよい山村をいかにして構築していくか、また、山村地域は、国土の保全、水資源のかん養、自然環境の保全等公益的な重要な役割を果たしており、このような山村の重要性を再認識するとともに、広く国民の理解と協力を得る必要があること等から「個性ある山村の構築をめざして」をスローガンに21世紀に向けた個性と特色ある山村再生への方策を探るためのテーマを取り上げた。

特別講演
 まず、特別講演では、地元秋田県千畑町出身の東京大学法学部教授佐々木毅氏が「がんばれ・いなか」と題して講演され、都市と地方との関係について明治以降は農山村が日本を支えてきたが石油ショック以降は逆転し都市郡が農村部を支えてきている。
 しかし、金融問題などをはじめ都市部がいわば自爆した今日、田舎より都会のはうが多くの問題を抱え苦慮している。そして、都会の大きな組織が危機に直面しているのである。
 また、同時に都市というのは自然からどんどん離れていく、一方、農山村は自然の流れに沿っているといえる.実は、高齢化の進行や環境問題などは一種の自然の流れであって成長が望めない経済的困難の中で、今後は、ライフスタイルを含め座標軸を調整して進んでいかなければならないだろう。21世紀に向けた新しい都市と農村の関係づくり、日本の国のバランスが保たれるよう自然と共存する山村から活発なメッセージを出していただきたいと結んだ。

事例発表
 また、事例発表では、「白神山地とともに」と超して地元藤里町在住の、秋悶自然を守る友の会会長鎌田孝一氏から世界遺産にも登録された白神山地の美しい原生的なブナ自然林の景観とか、その保護・管理の状況、また、それが開発によっていたいたしい有り様になっている。
 さらに、それが水源の枯渇につながっているといった悪影響を及ぼしている状況についてたくさんのスライドを用いながら説明された。  

基調講演
 午後からは、基調講演に移り秋田県西木村出身の直木賞作家西木正明氏が「山村に生まれて」と超して講演され、少年時代の思い出とともに牧歌的な秋田のふるさとを四季の移りかわりとともに変わっていく景観やふるさとの姿について話され、とくに山村に残る行事・文化・伝統にこだわり、現実には都会の人と山村の人が実体験の差から認識にかなりの差がある。
 例えば、野生動物に対しても認識に大きなギャップがある。しかし、これらは、自然保護と生活とは別物ではなく山村の活性化と自然保護とを両立させていかなければならないと食糧の安全保障ともからませながら話された。

パネルディスカッション
 パネルディスカッションでは、「個性ある山村の構築をめざして」をテーマに取り上げ、広告批評寓集長の島森格子氏をコーディネーターに、パネラーとしては、元オフコースメンバーで音楽プロデューサーの大間ジロー氏J詩人、・エッセイストのあゆかわのぼる氏、振興山村岩城町長の前JII盛太郎氏、それに秋田県立農業短期大学教授の山崎博氏の5人の方々が出席された。
 各パネラーからは、それぞれ特色のある主張と活発な意見が述べられテーマに対しての課題や問題点については、自らの体験等をふまえ地域で取り組む様々な活動等を紹介しながら突っ込んだ意見や提言が出された。
 この中で今後の山村の課題としては、@山村の役割でも認識されているように日本の国土・自然環境は、これまでと同様に山村が維持保全し守っていく義務がある。そして山村がつくり出していくことが重要である。このための各種の対策を今後山村振興対策の中で講じていくべきではないか。
 Aまた、最近各方面でいわれている山村を維持保全する山村地域の住民に対し、個人的な助成を今後取り入れて実施すべきではないか。これは、今、直接支払制度なり、直接補償措置の問題について関係省庁で検討が進められているが、ヨーロッパ等の先進国のやり方を見れば、これは個人補償であり、個人的な支援を行っている。そういった問題にも触れ、かなり突っ込んだ意見が出されるなど活発なパネルディスカッションとなった。

現地視察
 2日日は、先進地事例調査として由利郡岩城町の山村振興対策の取り組みの実状を視察した。
 秋田市に隣接する岩城町は、藩政時代には亀田2万石の城下町として繁栄した由緒深い町である。現在、歴史資料等を保光客誘致にも力を注ぎ雇用の創出も含め過疎の村から人口増加の町へと町長、役場職員、町民一体となって町活性化に向けて取」の3城を存・復元する「天鷺城」、佐藤八十八氏のコレクションを展示する美術館「亀田城」、町の特産品プラムワイン等を製造する「ワイン城持ち、観り組み成功をおさめている.

 当日は、あいにくの荒天となったが、懇切丁寧な担当者の説明と約2時間余にわたる現地研修の後、雨の中、手を振って見送っていただいた町役場職員、関係者の皆さんに車の中から感謝の意とお礼をこめて別れを告げた。




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