自由民主党に新たに設置された鳥獣捕獲緊急対策議員連盟(会長 武部 勤 衆議院議員)は2月8日以降関係各省庁から被害の状況、被害防止対策の内容等について説明を受け、対策の強化に向け検討を行っているが、4月13日に開催された第7回会合に全国山村振興連盟から「鳥獣被害防止対策に関する提言・要望」により要望を行った。
 なお、この提言・要望は、いくつかの市町村から寄せられた提言・要望とそれをとりまとめた全国山村振興連盟としての提言・要望とで構成されている。

鳥獣被害防止対策に関する提言・要望
全国山村振興連盟
 山村地域における有害鳥獣による農林産物の被害は、生息環境の変化、耕作放棄地の増加、集落コミュニティの崩壊に伴う農村環境の変化、里山において鳥獣の区域と人間が居住する区域の間の緩衝地帯機能が減少したこと、地球温暖化等の理由による鳥獣生態系が変化したこと、狩猟文化の衰退及び食文化が変化したこと等により、被害が年々深刻化、広域化している。
 このような状況を踏まえ、各地域において鳥獣被害防止のため、地域で連携して有害鳥獣の駆除、侵入防止のための防護柵の設置等に取り組んでいるが、有害鳥獣対策に要する市町村負担の増大、有害鳥獣対策についての専門家、担い手の不足等により今後とも継続して被害防止対策を講じていくことが極めて困難な状況にある。
ついては、下記事項を実現していただきますよう提言・要望します。

T 国の予算、支援体制
1. 国の鳥獣被害防止緊急対策事業(鳥獣被害防止総合対策交付金)は、平成23年度
 限りとなっているが、鳥獣被害対策は一定のレベルで継続して取り組むことで効果が
 発揮されるものであり、平成24年度以降も引き続き補助事業を継続実施すること。
 その際、事業実施主体の拡大、広域的事業の充実等制度の一層の充実・強化を図り、
 所要の予算を確保すること。
 (拡充の例:捕獲檻(ワナ)等の捕獲機材の導入事業や耕作放棄地の解消等の取り組
 みについては、ソフト対策枠の上限額(現状200万円)を引き上げる。
2. 市町村で独自に行っている有害駆除の各種補助金等に対する財政支援(交付金・交
 付税措置など)を充実・強化すること。
3. 「鳥獣被害防止計画」の着実な推進に対する支援を強化すること。

U 関係機関の連携強化、広域的取組み
1. 自治体相互の連携、捕獲活動も含め、総合的な対策を強化すること。
2. 近隣市町や関係機関との連携による広域的な取り組みを指導すること。
3. 県域を越える取り組みだけではなく、県内の複数の市町村が連携して行う広域的な鳥
 獣被害対策や人材育成に対する国の直接採択事業による支援を行うこと。
4. 被害の範囲は、人工林はもとより貴重な原生林や高山植物にまで深く及んでおり、
 市町村や都道府県の枠を超えた視野で、様々な生態系を見据えた施策を国として実施
 すること。
5. ニホンザル、ツキノワグマなどは、市町村の行政区域を越えた広範囲を行動すること
 から、国または都道府県単位での有害鳥獣についての対応の統一的な基準を作成する
 こと。

V 生態把握、有効な被害防止対策
1. 鳥獣被害が増加した原因の徹底的な解明を行うこと。
(例:鳥獣の種類、頭数、生態系、狩猟実態等)
2. 山間地域の野生動物の生態調査を正確に行うこと。
3. 鳥獣による被害の正確な把握に努め、個体数を緊急に適正な頭数に減少させるこ
 と。
4. 猿による被害について、効果的な防止対策を指導すること。
5. 有害鳥獣対策への取り組みを指導できる専門的知識を有した指導者の派遣及び人
 材の育成への支援を行うこと。

W 適確な捕獲
(狩猟者の育成、確保)
1. 新規の狩猟免許者の減少や高齢者がやめていく傾向にある。狩猟者の増員と育成を
 図ること。そのための助成も行うこと。
2. 有害鳥獣の個体数調整が仕事として成立し、猟師(ハンター)という職業で生活ができ
 るような社会システム(個体調整への助成制度の確立)の構築を早期に図ること。
3. レジャーやレクレーション趣味等の範囲で銃等の所持をしている者との更新手続きの
 区分の制度化図り、猟銃所持許可規制を緩和すること(特に、免許の更新時の射撃教
 習、精神科医の診断書)。
4. 狩猟税、狩猟免許申請・更新手数料等を軽減すること。
(規制緩和)
1.狩猟期間については、地域の実態に合わせて拡充すること。
2.夜間捕獲の禁止、銃器使用時間帯の制限、同時に31以上のわなを使用する方法の
 禁止等の規制を緩和すること。
3.国有林などの鳥獣保護区における駆除の条件付き解禁等、地域の実態に即した制度
 の改正を図ること(鳥獣捕獲禁止区域の解放)。
4.西中国地域のツキノワグマについて、被害への迅速な対応を行うため、狩猟禁止措置
 を解除すること。
(自衛隊の活用)
1.自衛隊の派遣・協力に係る内容について、自衛隊法の改正も視野に入れた仕組みづく
 りを検討すること。
2.有害鳥獣駆除を自衛隊に要請できるようにすること。

X 捕獲鳥獣の処分・活用
1. 捕獲鳥獣を地域資源として活用するため、食肉への利用促進など幅広い有効活用方
 策の検討を行うこと。
2. 捕獲鳥獣の広域的な処理加工施設、販売施設等の整備促進を図ること。
3. 猟友会を川上とした捕獲鳥獣のサプライチェーンの確立と連携強化するような鳥獣の
 食文化の推奨を行うこと。
4. 猪、鹿の肉を使った料理(「マーボー豆腐の素」「カレーのルー」等レトルト食品)の製
 造加工等に対する助成措置を講ずること。
 また、捕獲鳥獣の処理加工施設等整備事業において一時飼育施設(牧場など)整備事
 業も補助対象事業として採択できるよう弾力的に運用すること。
5.捕獲鳥獣を適正処理するための処分施設等を整備すること。

Y 森林、緩衝帯の整備
1. 野生鳥獣の生息環境にも配慮した森林整備を行う。
2. 列状間伐による搬出間伐を推進し、伐採跡地に山栗、どんぐりなどを植栽して野生生
 物のエサの確保を図る。
3. 人と野生獣との棲み分けを図る緩衝帯の整備方策について指導、助成を行うこと。
4. 放置林対策を検討すること。


振興山村市町村から寄せられた
鳥獣被害防止対策に関する提言・要望


北海道 白糠町
 北海道では、エゾシカによる被害を防止するため、その絶滅回避と安定的な生息水準を確保することを目的として「エゾシカ保護管理計画」を策定し、個体数管理や各種調査を進めておりますが、生息数の増加が続き、目標としている適正頭数には程遠い状況となっております。
 本町におきましても、15年ほど前からエゾシカの食害対策として、牧草地への電気牧柵の設置や地元猟友会に対して、有害駆除業務を依頼するなどの自衛措置を講じてまいりましたが、生息数の増加傾向には歯止めがかからず、全道の農林業被害は平成8年度の50億円をピークに、平成20年度におきましても40億円超となっており、特に釧路管内の農業被害にあっては、実に全体の4分の1を占める9億3千万円にのぼり、地域経済に与える影響は甚大であります。正にエゾシカによる食害を通り越し、「災害」といえる深刻な状況にあります。
 各市町村におきましても駆除対策を講じておりますが、広域的に移動する動物を1つの市町村で駆除することには限界がありますことから、一刻も早い抜本的な対策を講じていただけますよう要望するものであります。

1 エゾシカによる被害の正確な把握に努め、個体数を緊急に適正な頭数に減少させるこ
 と。
2 夜間捕獲を禁止している「鳥獣保護法」の改正等を図ること。
3 地方公共団体が捕獲事業などの事業主体等となり、事業実施した場合の財政支援制
 度を創設すること。
4 国有林などの鳥獣保護区における駆除の条件付き解禁等、地域の実態に即した制度
 の改正を図ること(鳥獣捕獲禁止区域の解放)。
5 狩猟期間については、地域の実態に合わせて拡充すること。
6 自衛隊の派遣・協力に係る内容について、自衛隊法の改正も視野に入れた仕組みづ
 くりを検討すること。
7 エゾシカを地域資源として活用するため、処理加工施設等の整備促進を図るとともに、
 食肉への利用促進など幅広い有効活用方策の検討を図ること。


山形県小国町
 本年度、本町を始め多くの市町村でツキノワグマが人家近くに大量出没し、農作物等の被害はもとより人身事故も発生し、住民の生命や財産がおびやかされております。
 本町においては、139件の目撃情報等が寄せられ、前年と比較し、118件増加している状況であり、被害防止対策等について喫緊の対応が求められております。
 また、ニホンザルによる農作物等の被害が増加している中で、近隣自治体において、ニホンジカやイノシシの生息が確認されており、将来的に本町での生息及び農作物被害の更なる増加が懸念されております。
 しかし、被害防止や緊急時対応の役割を担っている猟友会では、高齢化や会員数の減少により、有害鳥獣捕獲等を効果的に実施していくことが年々難しくなっております。
 つきましては、次の項目についてご配慮いただき、住民の安全確保を図ってくださるようお願い致します。
  ◆ 有害鳥獣対策にかかる予算の確保・充実
  ◆ 「鳥獣被害防止計画」の着実な推進に対する支援の強化
  ◆ 狩猟免許取得及び更新にかかる経理への支援
  ◆ 自治体相互の連携、捕獲活動も含め、総合的な対策の強化
  ◆ 森林の適切な保全、里山空間の創設など国民的な議論の展開


茨城県常陸太田市
 茨城県常陸太田市のイノシシにおける農作物被害及び生活環境被害については、生息分布域の拡大により里山からその周辺農地まできており、耕作放棄地が増加をもたらし、これが更なる被害を招く悪循環を生じさせている。
 鳥獣による農作物等の被害を防止するには集落等地域主体の取り組みを推進することが効果的だが、近年、農業者の高齢化や狩猟者人口の減少も深刻な状況である。
【狩猟者の確保】
  年々狩猟者人口が減っていく(若者離れ)理由の1つとして、狩猟者登録に係る経費が
 高額である(年間約3万から4万円で登録税や会費等になっている)。この経費を軽減す
 る方策が必要である。
【個体数調査】
  年間イノシシを地域住人からの要請で100頭以上捕獲しているが、本当に増えすぎて
 いるのかどうかわからない。(ただ被害は出ている)
  またイノシシ等野生鳥獣には行政界はない(山はつながっている)。よって、捕獲しても
 隣の町村から入ってくる(出ていく)。
  国・県等が実施主体となり、個体数の調査を実施してほしい。
【放置された竹林】
  直接有害鳥獣ではないが、放置林が急増していることから、今後この問題も関係機関
 で協議をしていただきたい。


埼玉県 ときがわ町
 近年、ときがわ町を含む山間地域では、有害鳥獣被害が増加傾向にあり、深刻な問題となっています。
 特定外来生物のアライグマによる農作物被害も深刻ではありますが、イノシシ・シカ・ハクビシン等による、農林産物の被害が拡大しております。
本町では、農林産物被害を未然に防止し、農業経営の安定と耕作放棄地の増加防止を図るため有害鳥獣対策事業に取り組んでおります。まず、ときがわ町鳥獣被害防除対策事業により、電気柵等の防除施設を設置した農業者に対し、鳥獣被害防除施設設置費補助金を交付し、被害防止対策を図っております。また、くくり罠、猟銃等による有害鳥獣捕獲を近隣町村と連携しながら、年3回実施しております。
さらに昨年においては、鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律(平成19年法律第134号)に基づき、平成22年2月に、ときがわ町鳥獣被害防止計画を作成しました。また、平成22年5月に農業者・猟友会・町職員等により、ときがわ町鳥獣害対策協議会を設立し、一体となって取り組んでおります。
捕獲の取り組みを行うにあたり、有害鳥獣捕獲されたイノシシ・シカ等については、適正処理をすることとされており、町と猟友会にて埋設や焼却による処理に努めてきましたが、従事者の負担が大きくなり現在限界になっております。このような状況から、適正処理をするための処分施設等の設置または確保を強く要望します。
また、捕獲したイノシシ・シカにつきましては、食肉としての利活用の取り組みが各地で行われており、近県では群馬県や東京都においてイノシシ・シカの食肉加工施設が稼働しております。埼玉県におきましても、平成20年を初年度とする「第10次鳥獣保護事業計画」のなかで捕獲物又は採取物の処理等について、「商業目的の利用について検討するなど、資源の有効活用を図るものとする。」とあり、今後の利活用への取り組みが期待されます。
そこでときがわ町としては、資源の有効活用と特産品化の面から、有害鳥獣捕獲個体の利活用を要望します。特にイノシシ・シカについて複数の市町村での捕獲個体を受け入れることのできる広域的な食肉加工施設及び販売施設等の設置を要望します。


長野県 佐久穂町
当町では、重点施策として毎年二千万円以上の経費を費やして鳥獣害対策を実施していますが、シカ等の大型獣による農作物被害は減ることがなく、さらにハクビシンやミンクといった中型獣による農作物や住居被害も増加しています。 
また、その獣害範囲は山林原野にも及んでおり、人工林はもとより貴重な原生林や高山植物にまで深く及んでいるため、農地を柵で囲い、獣の個体調整を各々の市町村が行うという現状の対策では限界があり、市町村や都道府県の枠を超えた視野で、様々な生態系を見据えた施策を国として実施されることを切望いたします。
さらに、有害鳥獣の個体数調整が仕事として成立し、猟師(ハンター)という職業で生活ができるような社会システム(個体調整への助成制度の確立)の構築を早期に図られることを切望します。


山梨県南アルプス市
 鳥獣被害については、本市においても非常に深刻な問題となっており、南アルプス市の基幹産業である農業経営において甚大な被害となっております。
 鳥獣被害を減少させるためには、サル、シカ、イノシシといった鳥獣の絶対数を減少させるとともに田んぼや果樹地帯といった人間の生活域と、獣たちの住む生活域を物理的に分断する必要があります。
 そのためには、電気柵の設置が最も効果的と考えるわけですが、設置する区間が長くなればなるほど費用も莫大になり、市単独事業として事業実施することはできません。
 つきましては、国からの補助金や交付金の増額をお願いしたいと共に、市町村単位、都道府県単位ではなく、県境を跨いで一丸となって連携し、鳥獣被害を最小限にすることができるような広域的な事業を行っていければと思っております。


静岡県 川根本町 
○ 鳥獣被害が増加した原因は様々な意見があるが、町では下記に記載した原因が考
 えられた。
 @ 里山において、鳥獣の区域と人間が居住する区域の間の緩衝地帯機能が減少した
  ため鳥獣が出没し被害がでているのでは。
  *緩衝地帯機能とは。
    居住する人間が、生活の糧となるものを採取又は製作(例:墨・竹製品等の製作、
   特用林産物の採取)を行った結果、山林と畑の間に人間の生活拠点があった。又、
   直接的防護機能の「柵敷」というものが存在した。
 A 地球温暖化等の理由による鳥獣生態系の変化。
  *地域の人々から、鳥獣が子を産む回数が増加していのるではないかと言う意見もあ
   る。このことは地球温暖化の影響で鳥獣の生殖機能が高くなっていること、又、イノシ
   シの例だが、他の動物(飼育されている豚)との接触により、イノシシと豚との合成種と
   なっていることで、子の数が増えてしまったことも考えられている。
 B 狩猟文化の衰退及び食文化の変化
  *昔(明治時代以前)は鳥獣を食する文化があったことがあると聞いている。この為、
   狩猟も盛んに行われ、自然と個体数が調整されていたのではないかと考えられる。
   近年は、野生鳥獣を食するという文化が衰退しているのは事実である。この為、狩猟
   は食というより趣味になってきている。全国にある唯一の狩猟の組織「猟友会」は、
   高齢化も理由のひとつであるが、国民の生活様式の変化も理由の1つではないかと
   考えられる。
○ 上記原因を踏まえて、町では下記事項を要望したい。
 1.専門的なスタッフによる、鳥獣被害が増加した原因の徹底的な解明。
   (例:鳥獣の種類、頭数、生態系、狩猟実態等)
    *エリアが広く専門スタッフが少ないため、年数が掛かると予想される。
 2.里山対策
   里山にある山林と畑の間に防護的役割をする方策の助言及び援助。
    *高齢化が進む地域では、防護する手段がない状態。
 3.狩猟文化の推進及び食文化の推奨
  「猟友会」組織の強化と、狩猟頭数を増やす方策として、猟友会を川上としたジビエ肉
  のサプライチェーンの確立と連携強化するような鳥獣の食文化の推奨。


新潟県 村上市
○ 高齢化等に伴う狩猟者の減少を食い止め、かつ捕獲隊員の確保を図るための狩猟
 者登録などへの個々の財政的な負担を低減させるため、鳥獣被害防止総合対策交付
 金を拡充させ活用すること。
○ ニホンザル、ツキノワグマなどは、市町村の行政区域を越えた広範囲を行動すること
 から、国または都道府県単位での有害鳥獣についての対応の統一的な基準を作成する
 こと。


福井県 おおい町
 従来から悩まされていた鳥獣による農作物の被害については、近年益々深刻化してきております。町はその対策として、駆除と防除(侵入防止柵設置)を推進していますが、一向に被害が減らないのが現状です。
 被害の中心は、ニホンジカ、イノシシ、サルで、特にニホンジカについては、年間1,000頭を超える捕獲をしていますが、それ以上に個体数が増えているような状態です。
 侵入防止柵につきましても、毎年約20kmの設置(新規・更新)をしており、年間20,000千円近くの事業費を費やしていますが、追い付かない状況です。
 農作物への被害額は、町が把握しているだけで平成19年度は10,299千円、平成20年度は1,185千円、平成21年度は34,613千円となっています。農業者にとりましては、被害額の大小ではなく、苦労して育てた作物を台無しにされてしまうという精神的な被害が大きく、耕作放棄の原因にもなっています。  また、近年は、農作物被害だけにとどまらず、車両との接触や住居近くの花木の食害、糞による汚染など、農家以外の方への被害も相次いでいます。
 このような状況下、もはや従来の圃場を囲う侵入防止柵だけでは限界にきており、町全域を対象とした山際金網柵の設置などが必要です。しかしながら、この事業には莫大な事業費が必要となり、国の補助をいただかなくては実施が困難です。  鳥獣被害防止緊急対策事業は非常にありがたい補助事業ですが、平成23年度限りの事業との事ですので、平成24年度以降も何らかの国庫補助事業の実施をお願いいたします。


愛知県東栄町
 有害鳥獣による農林産物の被害は、生息環境の変化、耕作放棄地の増加、集落コミュニティの崩壊に伴う農村環境の変化等により、被害が年々増加しており、本町においても農業・林業の振興を図る上で鳥獣害対策を推進することが急務となっていいます。
 近年、農林作物の被害を食い止め、農家・林家の生産意欲をなくさないようにするため、中山間地の自治体では様々な取組みをしています。
 本町を例にすれば、電撃柵の設置補助金、有害鳥獣の駆除費補助金、カモシカ捕獲委託料など、財源の乏しい自治体では非常に厳しい予算の中で何とか工面している状況であります。  一方で海岸沿いにある自治体の漁港から古くなった魚網や海苔網を無償でいただき、必死で鳥獣害の被害から農林産物を守り育てています。
 このような状況を鑑み、以下の事項を要望します。
○ 本町で独自に行っている有害駆除の各種補助金に対する財政支援(交付金・交
 付税 措置など)を要望する。

 1頭でも有害鳥獣を減少させ、安心して農林産物を育てるためにも、猟友会の存在は、本町にとって重要な役割の一つであります。しかしながら、少子・高齢化、過疎化も相俟って狩猟する人口(猟友会員)は、急激に少なくなっています。また、狩猟法の改正で銃の所持が非常に厳しくなり、幾日も仕事を休まなければ免許の更新等の手続きができません。猟銃は、山間地域で暮らす住民にとって生活を守る、農林産物を守る上で欠かすことのできない「生活必需品」と言っても過言ではありません。このようなことから以下の要望を行います。
○ 過疎法が適用されている自治体の住民が所持する場合の猟銃については、所
 持許可規制を緩和していただきたい。特に銃刀法が改正され免許の更新時には
 射撃教習が必 要になりましたが、銃の事故は射撃教習を受けてから少なくなるも
 のではありません。
  また、精神科医の診断書が必要になりましたが、精神的な疾患をもっていること
 が事件を発生するのではなく、性格的なものであり、家庭医のような普段から対象
 者の行動を熟知している方の判断が事故を未然に防ぐことのできる手段でありま
 す。
○ 銃の使用目的が有害駆除の場合、許可手続きにかかる費用と必要な書類など
 は、極力省略するなど配慮し、山間地で安心して農林業を営むことができるよう要
 望します。
○ 野生動物の生態調査を正確に行っていただきたい。一般的に山が植林され食
 料が少なくなったから里で野生動物が活動しているといわれているが、根拠はある
 のでしょうか。山間地域に住んでいるものの実感として、野生動物は確実に増加し
 ています。
 20年前には生息していなかった獣や野鳥が急増していますが、いなくなった地域
 はありません。



岐阜県白川町
 野生鳥獣の生息分布区域が拡大し、特に中山間地域では、野生鳥獣による農林産物の被害が激増している。猪や鹿1匹が食べる量は多くはないが、田畑に侵入すると全部を引っ掻き回し荒らしていく。せっかく育てた農作物が一夜にして台無しとなる悔しさ、悲しさは農業をしている者にしか分らない。人間と野生生物の共生のため、固体整理もやむを得ない。また、食料自給率の向上を図るためにも、不作付けの要因となっている鳥獣被害対策は必要不可欠である。
 @ 鳥獣被害防止総合対策費の増加(直接経費の増加)
  鳥獣被害防止総合対策事業を継続するとともに、捕獲檻(ワナ)等の捕獲機材の導入
 事業や耕作放棄地の解消等の取り組みについては、ソフト対策枠の上限額(現状200
 万円)を引き上げるなど、地域の実情に合った支援の拡充

 A 人口植林山が増加して、野生生物のエサとなる植物が少なくなったことは事実であ
 る。現在、戦後の植林山は間伐期に入っており、列状間伐による搬出間伐を推進し、伐
 採跡地に山栗、どんぐりなどを植栽して野生生物のエサの確保を図りたい。

 B 害があるからと言って捕獲して殺処分するだけではなく、山村の貴重なタンパク源と
 捉え、食肉としての利活用を積極的に図ることが必要と考える。特に猪は小さな ウリ坊
 が柵に入ることが多く、これらを放牧して育てる「イノシシ牧場」の整備を考えている。
 猪、鹿の肉を使った料理(「マーボー豆腐の素」「カレーのルー」等レトルト食品)の製造
 加工等に対する助成措置と捕獲鳥獣の処理加工施設等整備事業におい て一時飼育
 施設(牧場など)整備事業も補助対象事業として採択できるよう弾力的な 運用をされ、
 是非ともこの提案を認めてほしい。食肉加工施設と猪肉の安定供給が可能となれば、ジ
 ビエ料理による地域活性化を図ることができる。
 C 県域を越える取り組みだけではなく、県内の複数の市町村が連携して行う広域的な
 鳥獣被害対策や人材育成に対する国の直接採択事業による支援。


兵庫県市川町
 【シカ個体数調整について】
 現在、猟友会による有害鳥獣駆除をほぼ通年で実施しているが、シカによる農作物被害が一向に軽減されない。
 また、防護柵新設事業にも積極的に取り組み、町内ほぼ全域において防護柵を設置しているが、シカが防護柵を飛び越えるため被害を軽減(人里への出没)できていないのが現状である。
  この様な原因として考えられるのは、
  @シカの個体数が異常に増えている。
  Aシカの餌場がない、というよりシカにとっての餌場が田畑であると学習してしまってい
   る。(子供の頃から田畑が餌場になっている。) 
  Bシカ肉は、安価で比較的需要がないので、猟師が好んで捕獲をしない。
  C猟友会員の高齢化及び会員数の減少

         要   望   
  @シカ捕獲(銃・わな等)1頭につき、報奨金を支払う。
   (目安金額:5,000円〜10,000円/1頭)
  A新規猟友会員の増員と育成
  Bシカ駆除を自衛隊に要請
  C猟期の拡大(要望時期:4月〜6月)
  D銃器使用時間帯の緩和等


島根県 雲南市

【要望事項】
1.鳥獣対策費の特別地方交付税による全額措置化
2.平成23年度に実施予定の国の「鳥獣被害緊急総合対策」に係る予算額の増額と次年
度以降の継続
3.島根県におけるツキノワグマの狩猟禁止措置の解除
【趣  旨】
雲南市では、毎年、鳥獣による農作物などへの被害が多数発生し年々増加傾向にあります。平常でも不利な営農条件に加え被害が発生するため、営農意欲の著しい低下につながり、離農や耕作放棄を増加させる大きな要因となっており、これが更なる鳥獣被害の発生を招く悪循環となっています。
雲南市でも毎年多額の財源を投入し駆除と防除の両面から対策を図っていますが、鳥獣の出没増や財政上の制約などから被害発生を低減させることが困難になっている状況です。
こうした中、鳥獣対策費に対し特別地方交付税により8割の措置が図れていますが、対策費は年々増加しており市の負担も比例し高まっているため、特別地方交付税による全額措置化を要望いたします。
また、平成23年度に実施予定の「鳥獣被害緊急総合対策」については、1年限りの対策として大幅に予算増額をされていますが、1年間という短期間で市全体の被害対策を取り組むには期間も予算も不足しています。鳥獣被害対策は一定のレベルで継続して取り組むことで効果が発揮されるため、予算額の増額並びに事業の継続を要望するものです。
さらに、近年ツキノワグマの出没も増加しており、昨年は市内で人身事故が発生しました。このため、農家を始め地域住民は大きな不安を感じ、市に対する強い駆除要請がありますが、島根、広島及び山口県に生息する西中国地域のツキノワグマは、環境省により狩猟が禁止されており、被害への迅速な対応が困難となっています。このため、狩猟禁止措置の解除を要望いたします。

岡山県吉備中央町
○ 狩猟税、狩猟免許手数料等の軽減措置
○ 鳥獣保護法の規制緩和
○ 近隣市町や関係機関との連携による広域的な取り組みの指導
○ 野生鳥獣の生息環境にも配慮した森林整備及び緩衝帯の整備の指導・助成
○ 有害鳥獣対策への取り組みを指導できる専門的知識を有した指導者の派遣及び人材
の育成への支援
○ 猿による被害について、効果的な防止対策の指導
○ 有害鳥獣駆除を担う狩猟者の高齢化や法改正による規制強化が要因とみられ、更な
る狩猟者の減少により有害鳥獣の捕獲に影響が出ることが懸念されるため、狩猟者確
保のための対策の助成


広島県庄原市
【要望内容】
  鳥獣被害緊急対策について、平成24年度以降も制度を継続すると共に、制度の拡充
 も含め、必要な予算を確保すること。
【提案理由】
  中山間地に位置する本市では、イノシシを中心とした野生鳥獣による農作物、農業用
 施設への被害が年々拡大し、農業者の生産意欲の低下と耕作放棄地の増大を招いており、
 大変深刻な状況となっている。
  平成21年度の農業被害は約1億3300万円に上っていたが、本年度はさらに増加
 し、2億円を超える状況となっている。
  広島県においても、平成21年度の農業被害は約6億6800万円に上っており、全国で
 もワースト7位になっている。
  このような状況の中、有害鳥獣被害防止に向けた対策として、広島県及び県内各市町
 においても、独自事業に取り組むほか、国の制度を活用した対策を積極的に実施し、平
 成23年度においても、鳥獣被害防止総合対策交付金事業に取り組むこととしている。
  しかし、野生鳥獣の生息分布域が拡大し、被害が増大している今日において、単年度
 のみの取り組みでは効果的な防止対策とならないことから、平成24年度以降も制度を
 継続すると共に、事業実施主体へ農業団体や自治会等の組織を含めるなど、制度の拡
 充も含め、必要な予算を確保されることを強く要望するものである。


大分県 佐伯市
 【要 望】
   鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律第12条で「同時に31以上のわなを使
  用する方法」は禁止されているが、このわなの数を61以上に緩和していただきたい。
 【理 由】
   銃の所持要件が厳しくなる中、狩猟者は急速に減少しており、シカ等の鳥獣を適正な
  生息頭数に保つための捕獲ができなくなってきています。
   こうした中、鳥獣を適正な頭数に保つための捕獲を行うには、わなの数が1つでも多
  ければ多いほど捕獲の可能性が高くなるため、1人当たりのわなの設置数の上限をさ
  らに増やすことが最も効果的であると考えます。仮にわなの設置数が倍になれば、現
  在減少を続けている狩猟者が2倍に増えたのと同じ効果が期待できると思われます。
   なお、わなを1日に見回われる数の上限は設置する場所によって大きく変わり、当然
  30以下であっても場所によっては見回れない場合もあり、逆に60でも近くに設置す
  れば十分に見回ることが可能であると考えます。


宮崎県西米良村
 現在、鳥獣被害については、有害鳥獣捕獲班による駆除を行っている。その捕獲班からの意見でもあるが、狩猟免許や更新、銃の所持許可等の申請が年々困難になっている。そのため、新規の狩猟免許者の減少や高齢者が止めていく傾向にある。免許取得や更新、銃の所持許可等について緩和できないか。実害が累増する地域では極めて切実な問題です。
 現に、鳥獣被害が発生し、被害防止対策として、有害鳥獣駆除等の実施に参加し努力している者とその必要性が無く、レジャーやレクレーション趣味等の範囲で銃等の所持をしている者との更新手続きの区分の制度化図って戴きたい。(例:3年以上の経験がある者で狩猟の実績がある者については、更新時の射撃を免除する等)
 農林業の獣害は年々増加し猟銃による駆除が最も効果的だと、被害農林家や議会等から狩猟免許所持者による捕獲班の強化が強く求められているが、上記の件から困難な状況になっている。




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