「都市と山村との交流・協働」、「地域資源を活用した就業機会の確保・創出」及び「定住の促進」に寄与する優れた取組み事例を表彰するとともに、その取組みを広く紹介することで、山村が元気になる取組みが全国に波及していくことを目的に、林野庁補助事業の「山村再生総合対策事業事業」の一環として(財)都市農山漁村交流活性化機構が実施している「山村力コンクール」の各賞がこのほど選定され、3月11日に東京都港区虎ノ門のニッショーホールにおいて開催された「第6回オーライ!ニッポン全国大会」において表彰された。
 第3回山村力コンクール各賞受賞の概要は、次のとおりとなっている。

【個人の部(4件)】

林野庁長官賞
   タイトル:ボランティア「百樹の森」
   団体名等:柿崎ヤス子
   自治体名:山形県真室川町
(概要)
 柿崎ヤス子氏は、山形県真室川町生まれ。結婚と同時に農林業に従事。夫の富榮さんとともに山林50ha、畑80aを経営するかたわらタラの芽(約1.5ha)、マイタケなどを栽培する。
 1998年、自宅の裏山を「百樹の森」と命名し、150種以上の樹木を植え、樹木の名札を付けたり、遊歩道を整備した。また、「森の談話室」と命名した手づくりの二階建てログハウスや「百樹の森資料館」などを設置。ボランティア活動の一環として、障害のある方、目の不自由な方、いろいろな事情で家庭を離れて児童養護施設で暮らす子どもたち、さらに地元の小学生、高校生などを招待し、森にじかに触れてもらったり、音楽や手づくり料理でもてなしたりして、癒しと励ましの場を提供している。
ボランティア活動のすべては、著書である「森の詩〜山村に生きる〜」「百樹の森で」「森の贈り物」「森の愉しみ」の売上金で行っている。

全国山村振興連盟会長賞
   タイトル:民有林ワイズユース・マニュアルとインターネットによる
        新規ビジネス展開
   団体名等:山中慎一朗
   自治体名:北海道鶴居村
(概要)
山中氏は、静岡県出身、東京で映像制作プロデューサーとして活躍後、1994年に北海道の林業に移る。1998年株式会社北都の現場代理人として造材・造林・治山の経験を積み、2006年にプライベートフォレスト山崎山林の運営管理をとりまとめる「山崎山林マニュアル」を確立し、地元の鶴居村・釧路市の宿泊施設・飲食・アウトドア事業者等と連携を進めて、2007年「山崎山林」を北海道内唯一・全国民間初の森林セラピー基地認定に導く。
 アウトドアガイドの立ち入りを許可していない宮島岬フィールドを商業ベースで活用させてもらえるように、山崎山林の隣り合わせの「宮島岬」の地権者にワイズユース山林活用システムを提案。2008年「宮島岬マニュアル」を確立し、釧路湿原の聖地「宮島岬」エコツーリズムシステムをプロデュースし、5月から運営を試験的に開始した。 旅行代理店等との全国展開、メディアへの出演、インターネットによるPRを展開している

審査委員会長賞
   タイトル:木製福祉遊具の開発、活用
   団体名等:福祉遊具工房きのした 木下正明
   自治体名:神奈川県横浜市
(概要)
木下氏は、劇団四季、劇団木馬座等の舞台美術やスタッフを経て、10年ほど前から、木製遊具、福祉遊具の制作活動を開始。現在、福祉現場(高齢者)で遊具を取り入れたレクリエーションや介護予防運動の専門員として活動中。
 その活動の中で今まで製作してきた木製遊具を取り入れたレクリエーションや機能訓練が高齢者や現場職員の皆様に今までにない反響をいただいた。身体機能の低下(片麻痺、筋力低下)や認知症などで運動やレクリエーション活動に参加の意欲が低下されている方にも、木製遊具の機能訓練やレクリエーションには参加の意欲を見せたり、興味を持たれたりし、また肌ざわりや木の香りといった木の特性がプログラムにとって必要な継続や運動効果に大変役に立っている。孤立しがちな高齢者の皆様の他者との交流手段としても役立っている。

審査委員会長賞
   タイトル:都市と山村の交流 かしも山歩倶楽部
   団体名等:株式会社中島工務店 中島紀于
   自治体名:岐阜県中津川市
(概要)
中島工務店は、地域から産する「東濃ヒノキ」等国産材を使った産直住宅を通じて都市部での住宅建設を行っている。しかしながら、地域と都市部との真の交流は、業務上のつながりでは限界がある。一方、都市側には、森林に入り自然と親しむ機会へのニーズが高いことから、中島氏は、山村に住む者として、都市住民を山村に招き、自然に親しみ、山村の暮らし体験を通じて、森林・林業への理解を深める活動として、「かしも山(さん)歩(ぽ)倶楽部(くらぶ)」を平成14年から行っている。
「かしも山歩倶楽部」では、年4回、約10kmの木曽越林道を歩きながら加子母の新緑や紅葉を堪能し、山菜てんぷらなど地元の味を楽しむ。歩きながら、山の話しをたくさんすることにより、だんだんと山のこと、木のことを分かっていただける。この他、プレカット、内装材加工工場の見学も併せて実施している。会社業務を通じて知り合った都市住民の方々やくちこみによる参加者が増加し、年間参加者は延べ250人を超えている。

【団体の部(8件)】

林野庁長官賞
   タイトル:「森の町内会−間伐に寄与した紙−」の使用を通じた
        企業群による間伐促進の新たな取り組み
   団体等名:環境NPOオフィス町内会
   自治体名:東京都
(概要)
環境NPO「オフィス町内会」は1991年にオフィス古紙の共同分別回収に関する企業ネットワークとして発足し、現在では千代田区・中央区・港区の3区を中心に1,120社が参加し、年間約7,000トンの古紙を回収するに至っている。
 「森の町内会」は、2005年に着手した新プロジェクトであり、「間伐に寄与した紙」の使用を通じて「一般企業の経済活動」と「地域における森林整備」を結びつける新しい仕組みである。企業が従来の紙代より10%程度割高となる「間伐に寄与した紙」を購入・使用することで、間伐費用の不足分を負担し、間伐を促進する。「間伐に寄与した紙」を使った印刷物には「森の町内会」ロゴマークを表示できるほか、紙の使い手となる「間伐サポーター企業」には間伐促進への貢献を証明する「森の町内会証書」が発行される。
 現在、間伐サポーター企業が71社に増え、「間伐に寄与した紙」の使用が年間約360トンの規模になり、年間約25haの間伐を実施できる力を確保するまでになった。
今後、「森の町内会」は、各地での同様な展開を支援していく。

全国山村振興連盟会長賞
   タイトル:宇気郷・山里ひなまつり〜元開集落を楽しむ〜
   団体等名:宇気郷公民館「雛(ひいな)クラブ」
   自治体名:三重県松阪市
(概要)
松阪市の山奥に位置する宇気郷地区は、高齢化率70%にせまる50世帯ほどの集落である。若年世代の女性が少なくなった現状で村に明るさをとりもどすため、あでやかな「おひなさま」を村中にならべることにより、村の人自身が楽しみ気分を若返らせたいと言う女性の希望を受け、実行委員会が立ち上がった。
 山里の春の花が咲き誇る時期(平成20年3月29日〜4月6日)に旧暦に習い、村中26箇所におひなさまを飾り付け、開催期間中は、和装の女性による野点のもてなしもあり、他地区から延べ2,200人もの方が訪れ、村の人々と素朴な交流が行われた。
 これまで女性の活動は自粛され、深く悩み・引きこもり・重度の精神的疾患をかかえる等限界集落としての道を突き進んでいたが、山里のひなまつりを実施する過程で、村の各地で井戸端会議が増え、行事終了後も15人程度の公民館クラブまで発展した。

審査委員会長賞
   タイトル:わしらにも撮れたぞ!銀幕デビュー
   団体等名:田んぼ de ミュージカル委員会
   自治体名:北海道むかわ町
(概要)
合併前の旧穂別町で取り組まれていた「マザーズフォレスト賞」の受賞者である崔洋一映画監督が、2001年、来町した。監督の話しを聞いたお年寄りが「カントク、わしらでも映画つくれるべか」「できる、できる」−この一言から、お年寄りによる映画制作の芽が生まれ、昔青年団で演劇経験のある方が監督、出版経験のある役場OBが脚本、といった具合に全くの素人集団による映画集団を立ち上げ、高齢者による映画制作が、崔監督の指導のもと始まった。
2003年、第1作「田んぼdeミュージカル」は、戦後米作でがんばってきた農家が息子へ世代交代する中でメロン農家に変わる苦悩と戦争のため結婚式を上げられなかった夫婦に孫たちが結婚披露宴をプレゼントする話。2005年、第2作「田んぼdeファッションショー」は、戦後おしゃれを楽しむ余裕もなかったお年寄りが一念発起してファッションショーに取り組むもの。2008年、第3作「いい爺いライダー」は、実際に大きな論議を巻き起こした市町村合併をめぐる様々な苦悩をお年寄りと若者の対立の中から表現したもの。
 第1作の公開後から様々な評価や受賞を得、また、各地域との交流も膨らみ、高齢者の大きな励みとなっている。

審査委員会長賞
   タイトル:「カエルの学校」 〜「カエル」と「キノコ」の里からむらづくり〜
   団体等名:元気川内を創る会
   自治体名:福島県?川内村
(概要)
 過疎化が一層進む中で、貴重な財産である大自然を守り後世に引継ぎ、村を活性化させていきたいという住民の熱い思いから、23名の有志が平成15年に「元気な川内を創る会」を発足させ、「カエルの学校」として「体験と交流、地域の資源掘り起こし」をテーマに3つの事業を平成17年度から展開してきた。
 「農楽塾」を開設し、都会の人を中心とした参加者に田植えから収穫まで有機米の栽培体験を通じた都市と農村の交流。「野生キノコ」の地域資源を活かして「野生キノコ指導者養成講習会」の開催と「あぶくまのキノコ」ガイドブックの作成。米の転作と遊休農地の活用を進め、「川内高原うどん」や古代米を原料にした地酒「天山十三夜」の商品開発など
 これらの取組が契機となり、平成20年に初めて村の観光協会が設立され、また、現在では約60世帯、140人ほどのIターン者を受入れる村になっている。

審査委員会長賞
   タイトル:火山と共に生きるサルトリイバラで島興し!
        〜花言葉は「不屈の精神」〜  
   団体等名:株式会社 伊豆緑産
   自治体名:東京都三宅島
(概要)
三宅島は、平成12年の大噴火によって島の約半分(2500ha)の森林が被害を受け、現在でもかなりの土地が荒廃地(不毛の土地)になっている。
 そんな荒廃地で自生するサルトリイバラは、火山ガスに強く、またクリスマスなどの切り枝として出荷も可能なことに着目し、(株)伊豆緑産では、平成18年よりサルトリイバラを活用した緑化と産業化に取組んでいる。
 これまで、@サルトリイバラ苗の生産と荒廃地への試験植栽、Aサルトリイバラの切り枝出荷とクリスマスリースづくり、Bサルトリイバラ根茎の製品化のための研究、Cサルトリイバラ染めTシャツの製作・生産Dサルトリイバラの植林体験などに取組んできた。
 ビジネスとしての採算性が低いが、サルトリイバラ根茎の効能に非常に期待が持てるため、根茎の研究と商品化を進めビッグビジネスを目指している。

審査委員会長賞
   タイトル:いのちと平和の森造り事業
   団体等名:特定非営利活動法人 いのちと平和の森
   自治体名:長野県松本市
(概要)
聖路加国際病院理事長、新老人の会会長の日野原重明先生が、「自分の生きた証を1本の木に託して植えやがて森にして次世代に遺そう。その樹にメッセージを添え、いのちと平和の大切さを訴えて行こう。」とその希望を語りました。それを受けて有志が立ち上がり、NPO法人いのちと平和の森が平成19年に設立され、松本市にその森が発祥しました。
 いのちと平和の森では、葛で覆われていた山を間伐し、植樹のためのスペースが造られました。新老人の会の会員を中心に県内は元より樹寿会員が東京、大阪、九州からも植樹に来られ、樹の傍らに陶製の個人モニュメント(メッセージ)が置かれています。日野原先生のいのちの樹は「オオヤマサクラ」、メッセージは「森の樹々と共に魂も呼吸を続ける」です。
 このほか、間伐された樹は、全て活用され、小学生の造形教育の教材「木っぱくん」になりました。そして、その出前授業は長野県内のみならず東京都、横浜市などへも「いのちの授業」共々、出前されています。

審査委員会長賞
   タイトル:地球を学ぶ!こども環境劇場in京北
   団体等名:特定非営利活動法人 フリンジシアタープロジェクト
   自治体名:京都府京都市
(概要)
「地球を学ぶ!こども環境劇場in京北」は、演劇や自然体験を通じて、現在の環境問題を子ども達と一緒に考え「現在から連なる未来」を疑似体験し、更に体で表現してもらうワークショップで、2007年初年度、2008年度と好評を博し、2009年度も実施が確定している。
 京都・大阪の都市部から集まった子ども達と、北山杉の林業・山村地区である京北地区の子ども達が、プロの俳優(講師)とともに、夏休みに合宿を行う。合宿では、環境問題についてディスカッションをしながら台本をつくり、練習をし、最終日に環境問題の啓発劇の発表会を行う。演劇の練習と連動して、川遊び、野草でのおもちゃ作り等楽しい自然体験のみならず、放置されてしまった里山見学など、京北地域で陰陽様々な体験をする。その体験が、台本と演技にリアリティをもたらし、子ども達の学びと体感をより深いものにする。発表会は、京都市内の大学でも実施し、学識者をパネラーとするシンポジウムを併催することで、高い波及効果が発揮されるよう工夫している。

審査委員会長賞
   タイトル:地域自治の確立による元気な村づくり
   団体等名:ながの村
   自治体名:広島県?神石?高原町
(概要)
 「ながの村」は、帝釈峡に接する世帯数87戸、人口241人、高齢化率45.2%の集落であり、地区住民が名付けた住民自治組織の通称である。
平成3年集落機能の低下に危機感を抱いた地元若者有志が、地域の活性化と集落の維持を目的に「永野を考える会」を結成。これまで「幻の鍾乳洞」の発掘調査活動、渓谷コンサートや住民手作りによる公園整備など様々な活動やイベントを展開してきた。
平成14年に廃校となった小学校が改修され、都市農村交流の拠点「ふれあいセンターながの村」として生まれ変わり、平成15年から「ながの村自治振興会」が町から指定を受けて管理している。ながの村自治振興会の自治活動やふれあいセンターの運営は全て通称「ながの村」と呼び、その総合ディレクター的な役割を担う人材は「村長」として公募により選出された。ながの村では、各種の自治活動、イベント開催や国際交流、広報誌「ながの村」の毎月発行などを盛んに行っている。ふれあいセンターの宿泊客は、平成15年の379人が平成19年には3,104人と年々増加、特に中国からの研修生が集合研修に利用し始めてから急増している。

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