平成18年度全国山村振興連盟関東ブロック会議が、7月18日(火)〜19日(水)の二日間にわたり静岡県山村振興協議会(全国山村振興連盟静岡県支部。支部長 杉山嘉英 川根本町長)の主催により静岡県川根本町の川根本町文化会館において各県の会員、支部事務局等約84名が参加して開催された。
 最初に、杉山嘉英静岡県支部長の主催者挨拶があり、ついで、来賓として出席した農林水産省農村振興局農村政策課 林友和山村振興係長、総務省自治行政局地域振興課 堀将英係長、静岡県農業水産部農山村整備総室 藤田譲司室長からそれぞれ挨拶があった。続いて農村振興局地域整備課 松下洋山村振興事業係長、農村振興局農村政策課 杉山裕秀総括係長、関東農政局地域整備課 野口光三係長、静岡県山村振興協議会監事 又平琢己川根町長、静岡県農業水産部農山村整備総室 岡本伸子技監、静岡県志太榛原農林事務所前田保憲所長、が紹介された。全国山村振興連盟からは、米田博正常務理事及び川島洋子主査が出席した。
 次に、議事に入り、先ず、連盟米田常務理事から7月7日に閣議決定された『基本方針2006』の山村地域に関係する部分の内容、中山間地域フォーラムの設立、農作物鳥獣被害対策アドバイザーの登録制度の発足、地球緑化センターが実施している緑のふるさと協力隊等について報告が行われた。続いて、各県からの提出された要望事項について協議が行われ、提出支部から説明がなされた後、農林水産省農村政策課の林係長、総務省地域振興課堀係長からそれぞれの所管に関わるものについて見解が述べられた。
 次に、事例発表に移り、「茶を中心とした地域づくり」と題して、川根本町に所在している農事組合法人「あすなろ」代表理事組合長 小林 基氏から発表が行われた。この法人は、平成7年に構成員39人で設立され、平成6年度から山村振興等農林漁業特別対策事業を活用して茶工場を整備している。平成12年には静岡県製茶工場コンクールで農林水産大臣賞を受賞している。
 次に講演に移り、「地域食材を活用した中山間地域の活性化」と題して、川根本町に所在している特産品販売所「四季の里」代表 藤森文江氏から講演が行われた。「四季の里」は昭和61年に藤森氏が仲間とともに常設店としてオープンしたもので、農村女性が経営する特産物販売の草分けとして、テレビ、新聞、雑誌等に数多くとりあげられ、現在は年商一億円余を計上している。
 最後に、次回開催県については埼玉県と決定され、埼玉県支部 諸貫 堯事務局長から挨拶が行われた。
 翌19日は、川根本町の「JA大井川 川根茶業センター」及び特産品販売所「四季の里」、川根町の「(有)川根茶ぬくも園」及び畑総事業「抜里地区」を視察し、施設管理者等から施設の概要、事業の内容等について説明を受けた。

 各県から提出された要望事項は、次のとおりとなっている。

各県提出の要望事項(要旨)

1. 野生鳥獣害に対処しうる「人材」の具体的な要件の提示と、その育成に向けた国の取組方針の策定について(群馬県支部)
 山村地域においては、シカ、イノシシ、サル等の野生獣害が激しく、結果として、耕作放棄地や放置森林が増えている。農林水産省においては、「農作物野  生鳥獣被害対策アドバイザー」の登録制度を創設し、被害の軽減を図る取組を開始したが、基本的な個体数調整まで踏み込んでいないため、いわゆるワイルド・ライフ・マネージメントとは程遠い内容となっている。
 こうし取組は、環境省と農水省が連携し、個体調整を行いうる「人材」を育成しなければ野性鳥獣との「共生」など不可能である。環境省においては、これまでの野生鳥獣保護管理検討会の内容を踏まえ、具体的な人材を定義するとともに、その育成方針を策定することを要望する。
2. 山村地域に対する地方交付税及び国庫補助金の充実強化について(埼玉県支部)
 山村は、人、食料、水、エネルギーを都市に供給し、国の発展のために貢献してきたばかりか、二酸化炭素の吸収源として森林を整備するなど、国土の保全や地球温暖化の防止にも寄与し、さらに都市地域の人々のやすらぎの場の提供など多くの貢献をしてきたところである。
 こうした機能を維持し、さらなる充実を図るためにも、税源が乏しく地方交付税や国庫補助金に依存している山村地域における、地域社会や住民の生命、生活の維持に必要な財源が確保されるよう、地方交付税による適切な財源保障を行うとともに、国庫補助金の補助率のかさ上げなど、充実強化について強く要望する。
3. 平成18豪雪による森林被害の対策について(長野県支部)
 昨年12月中旬から今年にかけて立て続けに降り続いた異常降雪と異常低温により、杉の木を中心に、幹折れ、根返りによる倒木被害が多数発生した。被害を受けた林家からは、「何らかの救済措置ができないか」、「支援策はないのか」という声が上がっている。放置しておくと周辺の木も押し倒し、被害が拡大する恐れがあると共に、今後積雪があると土砂災害が発生する危険がきわめて高くなり、悪影響を与えるのは目に見えている。被害木の除去は、危険が伴い、熟練作業員が装備を万全にしてできる人命にかかわる作業なので、一般林家では容易に手が出せない。ついては、倒木整理作業促進を図り、被害森林の再生の基礎づくりに向けた緊急支援措置対策を要望する。
4. インターネット・携帯電話等の情報通信基盤の整備について (静岡県支部) 
 インターネットの普及状況を見ると、大都市ではほぼ全体にブロードバンド基盤が整備され、携帯電話の不通地域の解消も進んでいる一方、山村地域では住宅密度の低さや地理的な条件から、通信インフラ整備や利用コストなどで不利な状況にあり、利用できる情報システムは非常に少なく、民間事業者や地方自治体の整備にはコストなどの点で限界があるのが実情である。中山間地域のもつ多面的機能を考えるとき、これらの地域での情報インフラ整備は、単に地域の振興に寄与するばかりでなく、食料の安定的供給や自然環境の保全、さらには都市住民と山村の交流といったさまざまな効果が期待され、国民全体が恩恵を受けられるものと考える。
 このようなことから、山村地域における情報インフラ整備については国レベルでの戦略的な施策を要望する。
5. 振興山村地域の道路網の整備について(静岡県支部)
 振興山村では、人の移動やものの輸送の多くを自動車に依存しており、道路の担う役割、機能は欠くことのできないものである。しかし、振興山村における道路整備は地理的あるいは地形的制約から都市部と比較して大きく遅れており、特に静岡県の振興山村の道路改良率は全国の振興山村の平均を下回っている状況にある。
 また、静岡県では想定される東海地震や豪雨などの災害時には、避難路、迂回路としての利用も位置づけられているため、道路網の整備は利便性の向上のみならず、地域の安全性を確保する上でも、最優先しなければならない課題である。
 このようなことから、道路整備関係事業のなお一層の強化と振興山村への優遇措置を要望する。

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