全国山村振興連盟主催の「平成18年度山村振興実務研修会」が、去る6月8日(木)全国町村会館2階ホールにおいて開催された。今回の研修会には、市町村、都道府県の山村振興行政・実務担当者等約120名が参加した。 研修会は、全国山村振興連盟米田博正事務局長の開会挨拶で始まり、午前中に農林水産省の担当官2人よる講演があり、午後は、農林水産省農村振興局田辺農村政策課長から来賓挨拶があり、関係各省庁の担当官4人よりそれぞれのテーマについて講演が行われた。 |
【全国山村振興連盟 米田事務局長の挨拶要旨】 |
全国各地から多数の方に研修会に参加いただき、ありがとうございます。本日の研修会においては、山村振興施策を現地において推進していく上で重要となるテーマについて中央省庁において企画立案に携わっている担当の課長補佐に講演していただくこととしています。ご多忙の中、講師を引き受けていただいた皆様に心から感謝申し上げます。 本日は日程の関係もあり、6項目のテーマについて講演をいただくこととしていますが、「三位一体の改革について」(三位一体改革の実績、平成19年度以降に向けての動向等)及び「野生鳥獣被害対策について」(野生鳥獣被害防止マニュアル、農作物鳥獣被害防止アドバイザー登録制度、関係予算等)の2項目について資料を作成し配布しておりますので、参考として下さい。 今回の研修会が有意義なものとなりますよう、よろしくお願い致します。 |
【農林水産省 田辺農村政策課長挨拶要旨】 |
農林水産省農村政策課長の田辺です。今日の研修会にお集まりの皆様ご苦労様でございます。また、平素より山村振興対策の推進等に対しましてご尽力いただき厚く御礼申し上げます。 私事でありますが、以前国土庁地方振興局に勤務しておりまして山村振興法の認定法人制度を作る時に多少係わったことがありまして、そういう意味で、また改めてこういう立場で山村振興に取り組むということで縁があるなあと実感しているところであります。 山村地域は厳しいと、それぞれの地域で取り組んでいる皆様には切実に感じておられるのではないかと思います。山村振興対策はこれまでずっとやってきているわけでありますけれど、山村地域は、国土の保全とか、環境保全といったことなど、都市の方を含めまして大変大切なものだとの位置づけでやっているものであります。あまり明るい話題が無いわけですが、私ども農村政策課で都市と農山漁村の共生・対流に取り組んでおります。 去年、世論調査を内閣府にお願いして行ったのですが、都市住民の8割近い方が農山漁村と交流したいという答えをしており、それ以外にも定住をしてみたい、日帰居住といって週末に農村で暮らしてみたいという方が随分いるということであります。 特に、団塊の世代が来年から定年退職の時期を迎えるという時期ですので、都市のニーズを山村につないでいけるような取り組みを進める施策の方向性を打ち出したいということで、今、検討を進めているところです。これは、安倍官房長官の下で再チャレンジについて政府全体で取り組んでいくという方向が出されておりますが、第二の人生をより豊かにということもありますので、そういった面からも都市の方の農山漁村への定住促進というような施策の充実について取り組んでいきたいと考えています。 「立ち上がる農山漁村」、これは官邸の方で全国の優良な取り組み事例を選定しているものですが、山村地域のそこにしかないような産物を売り込むとか、あるいは都市との交流とか、そういう形で活性化している事例があります。地域の創意工夫をいかに発揮していただくかというこではないかといこと思っています。我々もそういったものを支援していく必要があると思っています。 山村振興法改正から約1年経ったわけでありまして、特に、都道府県の皆様にいろいろとご協力いただいて基本方針を策定していただき、これから市町村で良い計画を作っていただいて実際の推進を図っていただくことになろうかとも思います。 山村振興計画について、それぞれの山村振興の実が上がるように我々としても引き続き山村振興に力を入れていきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。 本日の実務研修会は、関係各省庁の担当官から山村振興施策について講演されるとお聞きしております。本研修会が地域の皆様に有意義なものとなりますようご祈念申し上げまして私の挨拶と致します。 |
【農林水産省農村振興局農村政策課 渡辺昭彦課長補佐】 | ||
○ 都市と農山漁村の共生・対流の推進について | ||
◆ | 都市と農山漁村の共生・対流、グリーンツーリズムの現状、元気な地域づくり交付金(グリーンツーリズム)等について説明がなされた。 | |
◆ | 政府では副大臣会議を中心に一体となって推進しており、また、民間では平成15年6月に設立された「オーライ!ニッポン会議(代表:養老孟司氏)」が推進している。 | |
◆ | グリーンツーリズム推進のため、規制改革を推進し、また、元気な地域づくり交付金(グリーンツーリズムの振興) をはじめいくつかの予算措置を講じている。 | |
◆ | 地球緑化センター(NPO法人)では「緑のふるさと協力隊」として山村に若い人を1年間派遣している。派遣先に定着している人も多い。現在平成19年度の受入市町村を募集している。農林水産省でもこの事業を支援している。 |
【農林水産省農村振興局農村政策課 石田良行課長補佐】 | ||
○「山村振興対策について」 | ||
◆ | 山村振興法の沿革と概要、山村地域の現状、山村振興に関する各種優遇措置等について説明がなされた。 | |
◆ | 山村振興法は山村地域の方々の運動の成果として議員立法により、昭和40年に制定され、10年ごとに延長され、内容の充実が図られてきた。昨年3月に4回目の延長が行われ、計画体系の変更、配慮事項の追加等がなされた。 | |
◆ | 優遇措置としては、山村地域に対する特別事業、道路の都道府県代行等の特別措置、補助率の嵩上げ、採択基準の緩和、認定法人制度等がある。 | |
◆ | 改正後の法律に基づいて各都道府県において「山村振興基本方針」が定められたが、今後、各市町村においてそれぞれの地域で創意工夫して「山村振興計画」を作成していただきたい。 |
【総務省情報通信政策局地域通信振興課 國定勇人課長補佐】 | ||
○「山村地域における情報化の推進について」 | ||
◆ | ユビキタスネット社会を実現する地域情報化戦略について、IT新改革戦略の推進、地域情報化、デジタル・ディバイドの解消に向けた取組み、全国地域情報化推進協会等について説明がなされた。 | |
◆ | いつでも、どこでも、誰でもITの恩恵を実感できる社会を実現するため、IT新改革戦略を推進している。 | |
◆ | 地方公共団体、住民、企業、地域の公共的な機関、NPO等多様な主体をユビキタス・ネットワークでつなぐことで、情報・知識の共有を図り、地域課題の解決めざすため、地域情報化を推進している。民間による整備に加え、不採算地域では公共ネットワーク、CATV網、加入者系光ファイバ網設備整備事業も活用し住民アクセス網を構築するとともに、テレビを身近なインターフェイスとするなど、より簡単・便利な住民アクセスを目指している。 | |
◆ | ブロードバンド・サービス未提供市町村及び未提供世帯は約7%であるが、数年後には解消することを目標として取り組んでおり、所要の予算措置を講じている。 |
【国土交通省道路局地方道・環境課地域道路調整室 吉田敏晴課長補佐】 | ||
○「山村振興と道路の役割について」 | ||
◆ | 道路行政の現状、地方部における道路整備の現状、地域再生の道路整備等について説明がなされた。 | |
◆ | これまでのストックの有効活用を徹底し、道路の機能が最大限に発揮されるよう道路行政の原点に立ち返った改革(「道路ルネッサンス」)を基本方針としている。 安全で安心できる暮らしの確保、道路交通の円滑化、地球環境の保全と景観の創造、都市と地域の活性化を重点に取り組んでいる。 |
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◆ | 地方圏での移動は9割以上が道路交通に依存しており、引き続き道路整備が必要である。山村地域においては人口の減少・高齢化、集落の消滅等憂慮すべき構造変化が生じており、道路行政の面でも緊急時の医療支援、都市的サービスの享受等の視点からの取組みが必要である。 | |
◆ | 地域経済の活性化、地域における雇用機会の創出など「地域再生」を支援するために地域再生法が制定されている。この法律により作成された地域再生計画に基づいて、市町村道、広域農道、林道の各事業がこれまでの枠を超えて、地域の実情に応じて弾力的に実施できることとなっている。」 |
【林野庁森林整備部計画課森林総合利用・山村振興室 井上康之課長補佐】 | ||
○「森林・山村の諸問題について」 | ||
◆ | 森林・林業の現状と課題、森林山村の諸問題、平成17年度森林・林業白書について説明が行われた。 | |
◆ | 森林に対する国民のニーズは変化しており、木材生産を主体として政策から森林の有する多面的な機能の持続的発揮を図るための政策へ転換している。 森林の適正な整備及び保全を図るには、山村において林業生産活動が継続的に行われることが重要であることから、定住の促進等による山村の振興を図ることが重要な課題となっている。 |
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◆ | 山村は、近年林業をはじめ第一次産業の衰退が山村の経済面や社会面に影響を及ぼしているとともに集落の小規模化が進み、不在村者所有森林が私有林の4分の1を占めるなど、その活力の維持だけでなく、森林の適正な管理にも支障をきたすことも危惧される。 このため、集落機能が発揮されるよう就業機会の確保や生活環境の整備を行うとともに、都市と山村の共生・対流を進め、山村住民だけでなく都市住民等にとっても魅力ある地域づくりを進めている。 |
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◆ | 山村力(やまぢから)誘発モデル事業は、地域の力で持続的に森林整備を行い得る強い山村づくりのため、都市等と連携した交流活動等に関する意欲的で先導的な地域の取組を国が直接公募・支援し、モデルを構築するものである。 |
【農林水産省農村振興局地域振興課中山間整備事業推進室 荒木俊安課長補佐】 | ||
○「元気な地域づくり交付金について」 | ||
◆ | 平成17年度における農林水産省の補助金改革、元気な地域づくり交付金等について、説明が行われた。 | |
◆ | 平成17年度に創設された「元気な地域づくり交付金」は、農山漁村の活性化に資する「農村の振興」、「グリーン・ツーリズム、都市農業の振興」、「農業生産基盤の整備」、「中山間地域等の振興」の4つを助成対象メニューとしている。 これまで補助金に比べ次のような改善が図られている。 ・計画作成の一本化・交付事務の簡素化を図っている。 ・「地域提案メニュー」を創設し、地域が目標達成に必要であると提案し 知事が認めた独創的な取組も対象としている。 ・予算配分における地域の裁量の拡大、事前審査の簡素化を図っている。 ・平成18年度からは、住民の創意工夫に立脚した活動を支援してきた ソフト事業に係る交付金の大部分が税源移譲され交付金の対象から 除外されている。 |
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◆ | 元気な地域づくり計画には、目標、目標設定の考え方、目標を定量化する指標(数値目標)、取組方針、施策内容、計画に対する住民意見の配慮事項等を記載することになっている。元気な地域づくり交付金(中山間地域等の振興)においては、必須指標は、地域産物の販売額の増加、定住人口の確保、交流人口の増加、耕作放棄地の防止の四つのうち最低一つとなっている。 | |
◆ | 地域の裁量性・自主性が発揮できるようになったが、一方では、事業実施結果に対する責任を負うことでもある。計画目標と実績を十分把握して適切に対応していただきたい。 平成16年度までの新山村振興等農林漁業特別対策事業の実施に際し作成が義務づけられていた資料(施設の規模の根拠、管理運営のシステム、事業計画、収支計画等)については、この事業を実施する際にも是非作成していただきたい。 |