森林の有する多面的機能の発揮及び林業の持続的かつ健全な発展の実現に向け、森林及び林業に関する施策のあり方について幅広い観点から論議・検討するため、副大臣会議に内閣官房副長官及び関係大臣からなる「森林・林業の再生に関するプロジェクトチーム」を設置することが、平成17年7月14日の副大臣会議において決定され、これまで7回の会合が開催され検討が行われてきた。 このほど、これまでの検討結果がとりまとめられ、平成18年6月1日の副大臣会議に対し「森林・林業の再生に向けた重点課題」として報告された。 その内容は、次のとおりとなっている。 |
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平成18年6月 |
森林・林業の再生に関するプロジェクトチームは、設置以来、森林・林業を取り巻く課題について自由な議論を行い、昨年の10月には、中間的な成果として、各省庁にまたがった課題を「森林・林業の再生に関する論点・課題の中間整理」という形に取りまとめた。 この中間整理を総理に御報告した際には、今後さらに具体的な森林・林業政策のあり方について検討を進めるように御指示をいただいた。 このため、本プロジェクトチームでは、森林・林業を取り巻く新しい動きも踏まえ、重点課題についてさらに議論を重ね、次のとおり認識の一致を見た。 今後、関係各府省連携して取り組み、できるだけ早期に実現を図ることとし、即座に具体化できるものについては、平成19年度予算編成において反映すべく取り組むこととする。 さらに、平成18年秋に策定が予定されている、新たな森林・林業基本計画については、この整理を十分体して取りまとめが行われる必要がある。 なお、輸入木材への対応など中間整理から引き続き検討事項となっている課題については、今後の情勢の変化も踏まえて、さらに検討を重ねることが適切である。 |
1.未来に向けた新しい風 | |
森林・林業を取り巻く環境は厳しいと言われているが、地域の一人ひとりのやる気と創意工夫により、次のような新しい風が吹き始めており、「今、手を打つこと」の重要性と有効性を強く認識しておくべきである。 | |
@ |
合板、集成材への利用が増加し、平成17年の用材自給率は、前年度の18%台から20%を超える見込みであるなど、国産材復活のきざし |
A |
人工林資源量は40年前の4.6倍に増加するなど国内資源の充実 |
B |
森林吸収源や違法伐採など地球規模の問題や山地災害の発生など身近な問題を通した森林への国民の関心の高まり |
2.森林・林業の再生に向けて |
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このような新しい風を大きな動きにしていくことが必要であり、国産材の利用拡大を軸とした林業・木材産業の再生を最優先の課題として、民有林を主体に国有林がこれを 補完して一体的に取り組む必要がある。 | |
(1) |
林業・木材産業の再生 |
国産材の弱点は、住宅メーカーの厳しいニーズに川上側も含め応じ切れていないところであり、このため、産業という視点をもった上で、小規模・分散・多段階な生産・加工・流通を抜本的に改革して、国内森林資源をフルに活用するためのトータルプランを描き、その下でユーザー直結の大ロット安定供給による国産材の競争力の確保を図るべきである。この場合、民有林と国有林が一体となった施業など連携した供給体制を整備する必要がある。 また、路網整備、高性能機械の導入、施業単位の大型化による合理的な施業システムを早期に確立し、森林所有者の自己負担の軽減にもつながる、より低コストで持続可能な林業生産活動の推進を図るべきである。 これと併せて、新たな発想、知見を有した主体の森林経営への参画を促進する仕組みの検討も含め、森林組合など地域の林業の先頭に立つべき主体を強化するとともに、緑の雇用などによる再生を支える人材の確保と山村への定着を図るべきである。 さらに、公共事業への利用の強化やペレット化、発電をはじめとする木質バイオマス利用など幅広い形での木材利用に関係者が一体となって取り組むとともに、戦略を持った木材輸出による国産材市場の拡大を図るべきである。 |
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(2) |
国民ニーズに応えた森林づくり |
憩いの場の提供など新たなニーズにも応えるため、間伐の推進や花粉症への対応に加え、広葉樹林化など多様で健全な森林づくりを推進するとともに、企業の社会貢献や国民が幅広く参加できる森林エコファンドの検討などによる国民参加の森林づくりをさらに広めるべきである。 | |
(3) |
安全で災害に強い国土づくり |
森林は国民のいのち・くらしを守る上で重要な役割を果たしており、特に国土保全、水源かん養上重要な役割を果たす森林については、緊急性、重要性の観点から治山対策の必要性を具体的に点検するとともに、民有林と国有林の一体的な対策、治水事業との連携などにより、水系全体を見据えた保全・管理を図るべきである。 |
3.100年先を見通した緑の社会資本づくり |
新たな社会経済情勢の変化へ対応していくためには、以上の取組に加え、「緑の社会資本づくり」として新たな一歩を進め、森林・林業再生の原動力としていく必要がある。 昨年2月に発効した京都議定書の目標達成は、我が国にとって極めて大きな課題であり、森林による吸収量の確保に向け、従来の枠にとらわれない格段の努力が必要である。 また、世界遺産の指定、生物多様性の重視など新たな地球規模での動きも踏まえた100年先まで見通した森林づくりが必要である。 さらに、少子化時代に対応して、森林・林業に必要な人材の育成確保とともに、青少年の育成や各世代の憩いの場としての森林の整備・利用を強化していく必要がある。 |
4.くらしを守り人を元気にする森林の再生(結びに) |
以上により、我が国の森林は、国土を守り水をはぐくむ能力を十分発揮し、うるおいのある豊かなくらしを支える、森林と人が共生する社会の基盤となると考える。 また、国産材がもう一度主役に返り咲くことにより、子孫に美林を残せる力強い林業・木材産業が復活すると考える。 これらのことが、地球環境問題への貢献につながり、京都議定書の目標達成にも結びつくのである。 |