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 総務省は、このほど平成17年(2005年)の国勢調査結果速報値を公表した。
 それによると、平成17年の我が国の人口は1億2,776万人で5年前に比べ83万人増加しているものの、平成16年の推計人口に比べ2万人 減少しており、我が国の人口は減少局面に入りつつあると見られるとしている。
 都道府県別にみると、5年前に比べ、15都府県で人口が増加し、32道県で減少しており、このうち奈良県、宮城県、長野県など9県でこれまでの人口増加から人口減少に転じている。
 市町村別にみると、5年前に比べ、2,217市町村のうち、7割強の1,605市町村で人口が減少している。このうち人口減少率が10%以上の市町村は102となっている。市町村合併により、市町村数は2,217(前回3,230)と1,013減少し、町村数は1,466(前回2,558)と1,095減少しており、人口5千人未満の町村数も723から361へと半減している。

 平成17年国勢調査結果の概要は、次のとおりとなっている。

T 全国の人口

1.

 我が国の人口は1億2,776万人、5年前に比べ83万人の増加、増加率は0.7%で戦後最低を更新
 平成17年国勢調査による10月1日現在の我が国の人口は1億2,776万人で、平成12年(1億2,693万人)に比べ83万人、0.7%(年率0.1%)の増加 となった。
 男女別にみると、男性は6,234万人で0.4%の増加、女性は6,542万人で0.9%の増加となっている。
 5年ごとの人口増加率の推移をみると、昭和20年〜25年はいわゆる第1次ベビーブームにより15.3%と高い増加率となったが、その後は出生率の低下に伴って増加幅が縮小し、35年〜40年には5.2%となった。その後、第2次ベビーブームにより、昭和45年〜50年には7.0%と一時的に増加幅が拡大したものの、50年〜55年には4.6%と再び縮小に転じ、平成12年〜17年には0.7%と 戦後最低の人口増加率となっている。

2.

 1年前の推計人口に比べ2万人の減少、我が国の人口は減少局面に入りつつあると見られる。
 1年前(平成16年10月1日現在)の推計人口(遡及補正後)は1億2,778万人となり、今回の国勢調査人口(1億2,776万人)は、これを2万人下回っている。10月1日現在の人口が前年を下回ったのは、戦後初めてである。
(注)遡及補正とは、国勢調査結果により過去の推計人口を遡り補正すること。     

(今回は、国勢調査及び人口動態統計の速報値を用いることで暫定的に算出。過去の毎月人口に対し1か月当たり約2千人の上方補正となっている。)

 人口の変動は、自然増減(出生者数−死亡者数)と社会増減(入国者数−出国者数)により生ずる。このうち、人口動向の基調と考えられる自然増減は漸減している。一方、社会増減は不規則に増減しており、その変動幅も大きい。このため、今後もしばらくは毎月の推計人口は変動が見込まれるものの、我が国の人口は減少局面に入りつつあると見られる。

「参考」(本稿で挿入)
厚生労働省が公表した「平成17年 人口動態統計の年間推計」によると、平成17年の出生数は106万7千人(前年比4万4千人減)、死亡数は107万7千人(前年比4万8千人増)で、1万人の自然減となっている。

3.  高齢化の進展により人口性比(女性100人に対する男性の数)は低下が続く
 平成17年国勢調査による人口を男女別に見ると、男性が6,234万人、女性が6,542万人で、男性が女性より308万人少なく、人口性比は95.3となって いる。我が国の人口の男女別構成の推移をみると、大正9年から昭和10年までは男性が女性をわずかに上回っていたが、20年には、戦争の影響で男性の割合が大きく低下して人口性比は89.0となった。その後、人口性比は96台の水準で推移していたが、昭和55年以降は低下が続き、平成17年は95.3となり、女性の割合が高まっている。
 近年、女性の割合が高まっているのは、高齢化が進む中で、平均寿命の差により女性の高齢者(65歳以上)が男性に比べて増加していることによる。

4.

 人口は世界で10番目、人口密度は世界で4番目
 国際連合の推計によると、平成17年(2005年)の世界の人口(年央推計人口)は64.6億人で、各国の人口を見ると、中国が13.2億人と最も多く、次いでインド(11.0億人)、アメリカ合衆国(3.0億人)と続いており、我が国の人口は世界で10番目となっている。 なお、我が国の人口は、平成12年(2000年)には世界で9番目であったが、17年はナイジェリアの人口が我が国を上回った。
 また、主要先進国の平成12年〜17年の人口増加率をみると、ロシアで減少となっている。


U 都道府県の人口

1.

人口300万人以上は10都道府県
 平成17年国勢調査による人口を都道府県別にみると、東京都が1,275万人と最も多く、次いで大阪府(882万人)、神奈川県(879万人)、愛知県(705万人)、埼玉県(705万人)、千葉県(606万人)、北海道(563万人)、兵庫県(559万人)、福岡県(505万人)、静岡県(379万人)と続いており、これら都道府県が300万人以上となっている。
 このほか、200万人以上300万人未満が10府県、100万以上200万未満が20県、100万未満が7県となっており、鳥取県が61万人と最も少なくなっている。

2.

東京都、神奈川県、沖縄県など15都府県で人口増加、32道県で減少
 平成12年〜17年の人口増加数を都道府県別にみると、東京都が51万人と最も 多く、次いで神奈川県30万人、愛知県が21万人などとなっており、15都府県で人口増加となっている。」

 「人口増加の15都府県」
 東京都、神奈川県、沖縄県、愛知県、滋賀県、千葉県、埼玉県、兵庫県
 福岡県、静岡県、栃木県、三重県、岡山県、大阪府、京都府

また、人口増加率をみると、東京都が4.2%と最も高く、次いで神奈川県(3.2%)、沖縄県(3.2%)となっている。
 一方、人口減少率をみると、秋田県が3.7%と最も高く、次いで和歌山県(3.2%)、青森県(2.6%)となっており、32道県で人口減少となっている。 
 平成17年国勢調査の人口に基づく人口密度を都道府県別にみると、東京都が 5,748人/ k?と最も高く、全国平均(343人/ k? )の16.8倍となっている。次いで大阪府(4,656人/ k? )、神奈川県(3,639人/ k? )と続き、全国平均を上回っているのは17都府県となっている。
 一方、人口密度が最も低いのは、北海道の72人/k?で、次いで岩手県(91人/ k? )、秋田県99人/ k? )など30道県で全国平均を下回っている。

3.

奈良県、宮城県、長野県など9県で人口増加から人口減少に転ずる
 平成12年〜17年に人口が増加した15都府県について人口増加率をみると、前回結果(7年〜12年の人口増加率)に比べ、東京都(2.5%から4.2%)、神奈川県(3.0%から3.5%)、愛知県(2.5%から3.0%)、岡山県(0.0%から0.3%)の4都県は人口増加率が更に上昇しており、大阪府(0.1%)は前回結果と同率となっている。
 一方、人口が減少した32道県について人口減少率をみると、奈良県、宮城県、長野県など9県では人口増加から人口減少に転じ、広島県(0.1%)は前回と同率となっている。また、和歌山県(1.0%から3.2%)、青森県(0.4%から2.6%)、岩手県(0.2%から2.2%)など、他の22道県では人口減少率が前回結果に比べ更に高まっている。

 「人口が増加から減少に転じた9県」
 宮城県、茨城県、群馬県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、奈良県

4.

男性人口が女性人口を上回るのは神奈川県、埼玉県、愛知県、千葉県の4県
 人口性比を都道府県別にみると、神奈川県が102.2と最も高く、次いで埼玉県(101.6)、愛知県(100.6)、千葉県(100.1)と続き、この4県で男性 人口が女性人口を上回っている。このほか、東京都(99.2)、茨城県(98.9)、栃木県(98.7)など8都県を合せると12都県で全国平均(95.3)を上回っている。
 一方、長崎県及び鹿児島県が共に87.8と最も低く、次いで高知県、宮崎県(共に88.7)と続いている。高齢者(65歳以上)に占める女性の割合が大きいことから、高齢化の進んだ都道府県ほど人口性比が高くなる傾向がみられる。


V 市町村の人口

1.

人口100万人以上の市は12市で、そのすべての市で人口が増加
 平成17年国勢調査による人口を平成17年10月1日時点の境域で市町村別にみると、東京都特別区部)が848万人と最も多く、次いで横浜市、大阪市、名古屋市、札幌市、神戸市、京都市、福岡市、川崎市、さいたま市、広島市及び仙台市の合わせて12市が人口100万以上となっている。
 これらの人口100万以上の市すべてで、平成12年に比べ人口が増加しており、人口増加率をみると、川崎市が6.2%と最も高く、次いで横浜市、福岡市(共に4.4%)などとなっている。
 人口50万以上100万未満の市は、政令指定都市の北九州市(99万人)、千葉市(92万人)、静岡市(70万人)のほか、堺市、浜松市、新潟市など14市となっており、北九州市、静岡市、東大阪市の3市で平成12年に比べ人口が減少しているが、その他の11市では増加している。また、人口増加率をみると、八王子市が4.5%と最も高く、次いで千葉市(4.2%)、相模原市(3.8%)などとなっている。

2. 全国2,217市町村のうち、7割強の1,605市町村で人口が減少
 平成17年10月1日現在の全国2,217市町村について、同じ境域で5年前の人口の増減をみると、人口が増加したのは610市町村(東京都三宅村を除く。)で、全体の27.5%を占めている。一方、人口が減少したのは1,605市町村で、全体の72.4%を占めている。

3.

人口増加率が10%以上の市町村数は21、人口減少率が10%以上の市町村数は102
 市町村の人口増減率を平成17年10月1日の調査時点の境域で見てみると、人口増加率が10%以上の市町村は21で、人口減少率が10%以上の市町村は102となっている。
 平成12年〜17年の人口増加率が最も高かった市は、千葉県浦安市の16.8%で、次いで愛知県日進市(12.0%)、奈良県香芝市(11.8%)などとなっており、そのほとんどが政令指定都市の周辺市で占められている。
 一方、人口減少率が最も高かった市は、北海道歌志内市、北海道夕張市及び北海道三笠市で、いずれも12.1%となっており、北海道の市が上位を占めている。
 また、人口増加率が最も高かった町村(東京都三宅村を除く。)は、京都府精華町の29.9%で、次いで富山県舟橋村(24.2%)、埼玉県滑川町(20.2%)などとなっている。 一方、人口減少率が最も高かった町村は、群馬県上野村の 33.0%で、次いで長野県南相木村(27.7%)、青森県西目屋村(22.0%) などとなっている。

「人口減少率の高い町村(単位 %)」
上野村(群馬県)  33.0  南相木村(長野県) 27.7  西目屋村(青森県) 22.0 
川上村(奈良県)  20.1 栗山村(栃木県)  19.8 音威子府村(北海道) 19.8
宇久町(長崎県)  19.3 東祖谷村(徳島県) 16.3 西祖谷村(徳島県)  16.0
中川町(北海道)  14.5 足尾町(栃木県)  14.4 天川村(奈良県)   14.4
初山別村(北海道) 14.3 神流町(群馬県)  14.1 上関町(山口県)  14.0
家島町(兵庫県)   14.0 大豊町(高知県) 13.9 伊是名村(沖縄県) 13.8
利尻町(北海道)  13.6 高野町(和歌山県) 13.5

 「参考」(本稿で追加)

 上野村及び南相木村においては平成9年から東京電力の純揚水式発電所建設のための上部ダム(南相木村)、下部ダム及び発電所(上野村)の工事が行われており、そのため平成12年の両村の人口は一時的に増加している。平成17年の人口減少率が高いのはその影響と思われる。
 ちなみに、平成17年の人口を平成7年の人口と比べると、上野村0.4%減、南相木村14.1%減となる。

4.

市町村合併の影響で、人口1万未満の町村は半減
 市町村合併が進む中、前回の平成12年国勢調査時点で3,230であった市町村数が今回調査時点では2,217へと1,013の減少となっている。
 市についてみると、町村の合併等により平成12年時点の672から今回調査時点の751へと79の増加となった。これを人口階級別にみると、人口5万以上20万未満の市が339から390へと51増加し、市の増加数全体の6割以上を占めている。
 また、町村についてみると、合併、編入等により平成12年時点の2,558から17年時点の1,466へと1,092の減少となった。これを人口階級別にみると、人口5千以上1万未満の町村数は833から425へと、また、人口5千未満の町村数は723から361へと、それぞれ半減した。特に、人口5千未満の町村数については、12年までは増加を続けていたが、今回は5割を超える減少となった。

 「人口階級別町村数」( )の数値は平成12年
  5千未満  361(723) 5千〜1万未満 425 (833)
  1万〜2万未満 430(686) 2万以上  250 (316)

 「人口5千人未満の町村数の推移」
  昭和60年 570  平成2年 629 
  平成12年 723  平成17年 361

5.

人口が回復した「平成7年兵庫県南部地震」、「三宅島雄山の噴火」の被災地域
 平成7年以降に大きな災害に見舞われた地域のうち、平成7年1月の「平成7年兵庫県南部地震」、平成12年7月の「三宅島雄山の噴火」の被災地域における人口の回復状況を見てみる。
 平成7年兵庫県南部地震で観測史上最高の震度7を記録した神戸市、西宮市、芦屋市、宝塚市について、震災前の平成2年と震災直後の平成7年の人口増減率をみると、神戸市は3.6%減、西宮市は8.6%減、芦屋市は14.3%減、宝塚市は0.3%増となっている。平成2年〜17年の15年間の人口増減率をみると、神戸市は3.2%増、西宮市は9.0%増、芦屋市は3.5%増、宝塚市は8.9%増とすべての市で震災前の人口を回復している。三宅島雄山の噴火により平成12年9月に全島民の避難が行われた三宅村の人口をみると、7年10月には3,831人であったが12年10月は0人となった。17年2月に避難解除されたものの、17年10月は2,439人と、平成7年に比べ36.3%減となっている。


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