平成18年度予算は平成17年12月24日に閣議決定され、この国の予算に関連して、総務省において平成18年度の地方財政計画の策定作業が進められているが、地方公共団体における予算編成作業の状況にかんがみて、さしあたり現段階における地方財政の見通し、その他予算編成上留意すべき事柄について、このほど、自治財政局財政課長名で各都道府県総務部長あて通知が行われた(1月19日付け財政課長内かん)。
 この内かんでは、「国の予算等」、「地方財政対策」、「予算編成の基本的な考え方」、「歳入」及び「歳出」の5項目にわたって詳細に記述されているが、山村地域自治体に特に関連するものを取り出し整理すると、次のとおりとなっている。

T 三位一体の改革等基本的事項

1.

 「三位一体の改革」を着実に実施するためには、国と地方の信頼が必要であり、「三位一体の改革について」(平成16年11月26日政府・与党合意)及び「基本方針2005」 に沿って、地方公共団体の安定的な財政運営に必要な地方税、地方交付税などの総額を確保することが是非とも必要である。 このような観点に立って、地方財政対策を講じた結果、「一般財源総額」(地方税、地方交付税、臨時財源対策債、減税特例交付金、減税補てん債及び所得譲与税を除く地方 譲与税の合計)は55兆6,334億円、前年度に比し204億円の増となっている。

2.

 地方税収入見込額については、税制改正後において前年度当初見込額に対し 1兆5,794億円、4.7%増の34兆8,983億円(都道府県税にあっては8.1%増、市町村税にあっては2.2%増)になると見込まれる。

3.

 地方交付税に係る国の一般会計からの繰入れは、13兆7,425億円で、前年度当初に比し8,248億円、5,7%減となっている。
 地方交付税の総額は、これに交付税特別会計借入金1兆1,610億円、交付税特別会計における前年度からの繰越分1兆2,908億円等を加減した15兆9,073億円 (前年度比9,906億円。5.9%減)となっている。
 地方交付税の算定の改革については、行政改革による歳出削減や徴税の取組強化に伴い増加する経費に係る算定を引き続き実施するとともに、さらなる拡充を行うこととしている。(行政努力の実績を地域振興関係経費に反映する算定を検討中)

4.

 通常収支に係る地方財源の不足に対応するため、地方財政法第5条の特例として臨時財政対策債を2兆9,027億円(前年度比9.8%減)計上している。

5.

 平成16年度から平成18年度までの国庫補助負担金改革の合計額は4兆6,611億円となった。 このうち、税源移譲に結びつく改革は、3兆1,176億円であり、これについては、その全額を地方財政計画に計上するとともに、施設整備費の一般財源化に伴い特別の地方債が充てられるものを除き地方交付税の基準財政需要額に全額を算入することとしている。
 また、これに伴い、3兆94億円を所得譲与税として税源移譲するとともに、地方交付税の基準財政収入額に全額を算入することとしている。所得譲与税については、都道府県へ2兆1,794億円、市町村(特別区を含む。)へ8,300億円を配分することとしている。各市町村への配分は、4,463.6億円については平成17年度の所得 譲与税の各団体ごとの譲与額、3,826.4億円については平成17年度の市町村税 所得税割に係る納税義務者数及び課税納税所得金額等の額を用いて算出した各団体ごとの税源移譲見込額であん分した額、とする。
 なお、税源移譲することとされている施設整備費に係る国庫補助負担金のうち公立学校等施設整備費補助金(不適格建物改築事業に限る。)、次世代育成支援対策施設整備費交付金(公立保育所に限る。)及び地域介護・福祉空間等施設整備費交付金(都道府県交付金) については、地方公共団体において引き続き必要な事業が円滑に実施できるよう、従来 の補助金相当分(かさ上げ部分を含む)について特別の地方債を充当し、当該地方債の元 利償還金については、後年度その100%を地方交付税の基準財政需要額に算入することとしている。
U 山村に係る地方財政措置に係る事項

1.

「農山漁村活性化対策」として、 農山漁村地域の生活環境の整備や都市と農山漁村の共生・対流等を促進する地方単独事業や国の施策との連携事業に要する経費に対し所要の地方財政措置を講じることとしている。
 このうち、国の施策に応じて単独事業として実施する「農地・農業用水等の資源の保全向上対策」についても、地方財政措置を講じることとしている。

2.

「森林・林業振興対策」として、山村地域の基幹的産業である林業・木材産業の振興対策を推進し、また、森林の適正管理を図ることにより、地球温暖化防止対策に資するとともに、山村地域の活性化を促進するための経費について、地方交付税措置を講じることとしている。
 このうち、緑の雇用担い手対策については、国の制度の見直しに伴い、国と地方が連携し一体的に対策を実施するとともに、その後の就業者の定着条件整備も合せて行う新たな緑の雇用担い手対策として見直しを行い、国の施策に合せ平成22年度まで、地方単独事業に要する経費として、地方交付税措置を講じることとしている。
 また、平成18年度から森林の公益的機能を維持増進させるため、伐期延長や複層林化による人口林の天然林化を促進する地方公共団体の取組に要する経費について地方交付税措置を講じることとしている。また、森林の公益的機能を維持増進させるための取組を行う林業公社に対する地方公共団体の利子補給に要する経費については、特別交付税措置を講じることとしている。

3.

「国土保全対策」として、国土保全の見地から農地、森林等の管理対策、後継者対策、第3セクターの活用等に要する経費について、引き続き地方交付税措置を講じることとしている。

4.

「地球環境保全・創造対策」として、環境への負荷の少ない、自然と調和した循環型社会の形成を促進するため、地球温暖化防止対策、自然共生型社会の構築、廃棄物の発生抑制・リサイクル対策等に要する経費について、地方交付税措置を講じることとしている。

5.

「生活交通確保対策」として、地方バス運行に関し地方公共団体が地域協議会における 検討等に基づき、地域の実情に応じて路線バスの維持等の対策を講じるために要する経 費について、引き続き地方交付税措置を講じることとしている。

6.

「I T新改革戦略」(平成18年1月高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部策定)の趣旨を踏まえ、各地方公共団体においても、住民基本台帳ネットワークシステム、住民基本台帳カード及び公的個人認証サービス等を活用した電子自治体の実現をはじめ、地域の情報化を一層推進することが必要である。 このため、既存業務の見直しや都道府県単位等のシステムの広域的整備等により、住民サービスの向上、地方公共団体の業務改革及び地域における情報関連産業の育成などの効果をもたらす電子自治体の実現に向けて、積極的に取り組まれたい。
 このような取組を支援するため、「地域情報化推進事業」として、電子自治体の推進に要する経費及び地域住民の情報リテラシーの向上等誰もがICTを利用できる社会を実現するための取組に要する経費のついて、引き続き地方交付税措置を講じることとしている。

7.

「地域を支える人づくり事業」として、U、I、Jターンの促進等地域を支える人材の確保・定着や育成等に要する経費に対して、引き続き地方交付税措置を講じることとしている。

8.

「地域文化振興対策」として、住民の芸術文化活動の支援、創造的で文化的なまちづく り、地域文化財・歴史的遺産の活用による地域おこし等に要する経費について、引き続き地方交付税措置を講じることとしている。 

9.

「地域再生関連対策」として、国の認定をうけた地域再生計画に基づく事業について所要の地方財政措置を講じることとするほか、アウトソーシング等の促進、コミュニティ ・サービス事業等の活性化、ICTを活用した地域通貨の導入・普及、ひとづくり、安心・安全な地域づくり及び観光の振興に要する経費について、引き続き地方交付税措置を講じることとしている。

10.

「地域経済新生事業」として、ベンチャー企業等への支援や販路開拓支援等に要する経費に対しては、引き続き地方交付税措置を講じることとしている。

11.

「わがまちづくり支援事業」として、住民による話し合いの場づくりやその結果を受けた取組に対する市町村の支援に要する経費について、引き続き地方交付税措置を講じることとしている。

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