自由民主党山村振興委員会(委員長:若林正俊参議院議員)が、去る12月1日(水)正午から衆参国会議員20名出席のもと自民党本部706号会議室において開催された。
 今回の委員会は、山村振興法の延長及び改正に向けた検討を行うため開催された11月10日の第1回の会合に引き続いて開催されたもので、今回は第2回目の会合となる。
 委員会は、「山村振興法延長・改正に向けた検討課題について」を議題として、吉野正芳事務局長・衆議院議員の司会の下に進められた。
 はじめに若林委員長及び松岡委員長代理から挨拶が行われ、委員会に出席した9省庁を代表して農林水産省川村農村振興局長から挨拶が行われた。
 ついで、前回の委員会で提出された検討課題について、関係各省庁から現状及び今後の取組方向について説明が行われた。その後、質疑が行われた。
 今後の委員会の進め方としては、これまでの2回の会合での議論を踏まえ、山村振興法改正の骨組み作りを行うこととされ、その内容は、若林委員長、松岡委員長代理及び吉野事務局長に一任された。
 なお、関係各省から説明された「山村振興法延長・改正に向けた検討課題」は、次のとおりである。

課題1.  都市部の子供たちを山村に行かせて教育の一環として自然や伝統文化を学ばせるべきではないか。
【現状及び今後の対応方向】
(文部科学省)
 学校における体験活動については、「豊かな体験活動推進事業」において、都市部から農山漁村や自然が豊かな地域に出かけ、農林漁業体験や自然体験を行うなど、異なる環境における豊かな体験活動を促進するため、「地域間交流推進校」を指定している。
 また、青少年の社会性や豊かな人間性をはぐくむため、自然体験活動等の体験活動の機会を充実することが重要であるとの観点から、2週間程度の長期間、野外教育施設や農家などで共同生活をしながら、自然体験活動に取り組む「青少年長期自然体験活動推進事業」、地域の身近な自然環境等をテーマに、都市と農村の交流活動や農業体験等を通して体験型の環境学習を行う「省庁連携子ども体験型環境学習推進事業」等のモデル事業を実施しているところである。
 今後も、各種事業等を通じて、山村等の自然豊かな環境のもとで、子どもたちの自然体験活動等の体験活動の推進を図ることとしている。 

課題2.  山村地域の振興が、山村地域の住民のためだけでなく、全ての国民のためのものであることの認識を深めていくため、山村と都市との交流を促進していく必要があるのではないか。
【現状及び今後の対応方向】
(農林水産省)
 国民の「物の豊かさ」から「健康的でゆとりある生活」、「やすらぎ」、「自然」を求めるトレンドを背景に、農林漁業・農山漁村体験を希望する都市住民が増加傾向にある。
 また、山村地域等においては、過疎化、高齢化が進行する中で、都市との交流を通じた地域活性化に取り組む事例が増加している。
 政府としては、関係各省の副大臣から構成される「都市と農山漁村の共生・対流に関するプロジェクトチーム」を設置するとともに、平成16年度より政策群の一つとして位置付けるなど、都市と農山漁村を双方向に行き交うライフスタイルの実現に向けて、関係各省が連携しながら、各種規制改革、予算措置等により農山漁村の魅力の向上などに取り組んでいるところであり、今後ともその促進に努めてまいりたい。

課題3.  市町村合併に伴い行政区域が広域化している中にあって、引き続き、法期限を10年として、現行の旧市町村の単位で指定されている振興山村の振興を図っていくことが重要ではないか。
【現状及び今後の対応方向】
(農林水産省)

@

 振興山村の地域指定は、林野率及び人口密度を基に旧市町村単位で行われている。このため、現在の振興山村を含む市町村1,150のうち約57%は、市町村内のうち山村の特徴が著しい一部の地域のみが指定されている市町村(一部指定市町村)である。

A

 市町村合併が行われた場合でも指定地域自体に変更はなく、合併前の指定地域が引き続き指定地域となるが、今後進展する市町村合併の結果として、振興山村を含む市町村の多くが一部指定市町村になるとみられる。

B

 このような広域市町村においても、山村の振興の意義と必要性が十分認識され、必要な対策が行われるよう、旧市町村単位で指定されている振興山村を対象として計画を策定し支援を行う現行対策の継続が必要である。
 なお、このことと関連して、第2次地方分権推進計画(平成11年閣議決定)において、山村振興計画の作成は市町村が行う方向で検討することと記されている。

C

 法廷長の期間としては、山村振興はある程度の期間を必要とすることから、10年は適当ではないかと考えられる。

課題4.  山村振興法に基づく認定法人が保全事業等の用に供するため取得した機械・建物等に対する特別償却制度を拡充していく必要があるのではないか。
【現状及び今後の対応方向】
(農林水産省)
 民間企業の立地が困難な振興山村においては、地域産業の振興や雇用の確保のため、山村振興法に基づく認定法人の数の増加や活動の活発化が望まれるところであり、その支援措置(税制措置)の延長が必要と考えている。
 さらに、現行税制は、保全事業を行う法人が対象となっているが、地域の農林産物の製造・加工・販売、交流事業のみを行う法人についても対象となるような対象事業の要件緩和を行うことが有効と考えており、こうした方向で平成17年度税制改正要望を行っている。

課題5.  平成7年の山村振興法改正により、「情報の流通の円滑化及び通信体系の充実」についての配慮規定が盛り込まれているが、山村地域において高度情報通信(携帯電話用の鉄塔整備やブロードバンド化、地上波デジタル放送への対応)が必要ではないか。
【現状及び今後の対応方向】
(農林水産省)
<現状>

@

 移動通信用鉄塔施設整備事業
 携帯電話の利用可能な地域を拡大し、地域間の情報通信格差是正を図るため、過疎地等において、市町村が移動通信用鉄塔施設を整備する場合、国がその設置経費の一部を補助している。

A

 加入者系光ファイバ網設備整備事業
 山村地域、過疎地域等の地方公共団体が、モデル事業として地域公共ネットワークを活用しつつ、加入者系光ファイバ網を整備する際に、所要経費の一部を補助している。また、地方公共団体が単独事業により行う場合に、過疎対策事業債、辺地対策事業債、地域活性化事業債の起債対象となっている。

B

 電気通信基盤充実臨時措置法に基づく高度通信施設整備事業に係る無利子・低利融資及び特別融資
 電気通信基盤充実臨時措置法に基づく高度通信施設(光ファイバ、DSL関連施設等)を整備する民間事業者等に対して、日本政策投資銀行が無利子・低利融資を行っているほか、低利融資に係る利子について、独立行政法人情報通信研究機構が、下限金利から最大2%の幅で助成金を交付している。

C

 広帯域加入者網普及促進税制及び新世代通信網促進税制
 電気通信基盤充実臨時措置法に基づく高度通信施設を整備する民間事業者に対して、国税及び地方税の特例措置が適用されている。

D

 高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法に係る税制・金融支援
 デジタル放送設備に係る投資負担を軽減するため、税制支援措置や金融支援措置により、デジタル化投資の円滑化を図っている。

E

 民放テレビ・ラジオ放送難視聴等解消施設整備事業
 民放テレビ放送等の難視聴解消を図るため、市町村が中継施設及び共同受信施設を整備する場合、国がその一部を補助するものである。

F

 地域イントラネット基盤施設整備事業
 地域の教育、行政、福祉、医療、防災等の高度化を図るため、学校、図書館、公民館、市役所などを高速・超高速で接続する地域公共ネットワークの整備に取り組む地方公共団体等を支援。
<今後の対応>
 平成17年度予算においても、所要額を要求している。
 携帯電話の不感地域解消については、一般財源の移動通信用鉄塔施設整備事業に加え、特定財源(電波利用料財源)による新たな方策の創設を要求しているところ。
 なお、三位一体改革の推進のため、地域公共ネットワーク基盤整備事業は平成17年度に、また、加入者系光ファイバ網設備整備事業は平成18年度に廃止することとする方針である。

課題6.  地方交付税措置について、山村のみならず、離島、過疎、半島、沖縄等のハンディキャップ地域への対応をどうするのか。
【現状及び今後の対応方向】
(総務省)

 現在、山村地域等のいわゆるハンディキャップ地域においては、以下の経費について交付税の基準財政需要額に算入しているところ。
【都道府県分】

都道府県が行う過疎代行事業に係る経費

へき地があることによる増嵩経費
【市町村分】

過疎債、辺地債における元利償還金

隔遠地であることによる増嵩経費

農業、林業、水産振興地域における当該従業者数等の多寡に応じた割増等

 その他、山村、離島、過疎、半島、沖縄等の団体が課税免除又は不均一課税を行い、一定の要件を満たす場合には、当該減収部分について、基準財政収入額から控除される「減収補てん制度」を適用しているところ。

課題7.  平成7年の山村振興法改正により、「医療の確保」についての配慮規定が盛り込まれているが、山村地域の住民に対し年金の割増支給や社会保険料の控除を行うことはできないのか。
【現状及び今後の対応方向】
(厚生労働省)
 現行の公的年金制度(国民年金・厚生年金)は国民を対象とする一般的な社会保険制度であり、給付については原則として納付の実績に応じて行い、また、免除については被保険者の所得に応じて行っているものである。制度の趣旨・目的に照らして考えた場合、受給者や被保険者の居住地域といった特別の事情に応じた差異を設けるべきものではなく、山村地域の住民に対して、年金の割増支給や社会保険料の免除を行うことは困難である。



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