全国山村振興連盟九州ブロック会議が、9月1、2日の両日宮崎県支部(支部長:盛武義美北川町長)の主催で宮崎県綾町において会員、支部事務局員等約90名が出席して盛大に開催された。

 会議は、地元宮崎県支部松川英雄事務局長の司会により、まず盛武支部長の主催者挨拶があり、来賓として出席した農林水産省農村振興局地域振興課 富澤直満課長補佐、総務省自治行政局地域振興課 井上博士理事官、国土交通省九州地方整備局建政部計画・建設産業課 福永真一課長、宮崎県企画調整部 高柳憲一次長からそれぞれ挨拶があり、続いて来賓として出席された農林水産省農村振興局農村政策課 三浦学山村振興係長、林野庁森林整備部計画課 内山武明森林計画官、九州農政局農村計画部農村振興課 高野三朗課長、同課 福井徳彦課長補佐、同課 荒木逸郎山村振興係長が紹介された。

 次に情勢報告に移り、連盟米田常務理事から山村振興に関わる現在の中央情勢等を中心とした @平成16年度政府予算概算要求の概要 A三位一体改革の動き B今後の地方行政体制のあり方に関する地方制度調査会の中間報告等の概要 C国土・環境の保全を担う山村市町村に対する新たな財政措置・新たな税制措置(環境保全税(仮称)、水源税(仮称)等の創設に向けた要望 D地球温暖化対策税制の動向と連盟の要望 E山村振興法の延長に向けた連盟の検討会の設置等について報告が行われた。

 議事に入り、盛武宮崎県支部長が議長となり、各県より提出されている議題につきそれぞれ提出県を代表して提案理由の説明があった。これに対し、農林水産省農村政策課三浦係長、同地域振興課富澤課長補佐、林野庁森林整備部計画課内山森林計画官からそれぞれの事項について見解が述べられた。続いて、講演に移り、雲海酒造株式会社代表取締役社長中島勝美氏から「会社経営と地域振興」と題して、地域資源の活用、地域自治体との協調・協力、連携により地域の振興と会社の発展が図ることが出来たことについて話があった。 なお、平成16年度は、鹿児島県で開催することを決定した。

翌日は、綾町内の接ぎ木ロボットを導入した野菜の育苗施設等を視察した。

 
《 各 県 提 出 議 題 》
1.新山村振興等農林漁業特別対策事業予算枠の確保について
《福岡県支部》
[理由]当該事業予算については、平成13年度以降縮小傾向にあり、地域が必要とする事業を十分に実施できない場合が生じているため、予算枠の確保をお願いしたい。
《熊本県支部》
[理由]平成13年度以降の予算額は、前年度対比91%、68%、88%と連続してカットされたため、認定された事業計画に基づく円滑な事業実施ができなくなっている。事業の継続かつ着実な実施が図られるよう、平成16年度予算枠の確保をお願いしたい。
 また、事業期間4ヵ年の年度別予算配分が、4年目に集中しており、当初3年間での事業実施が困難な状況にある。円滑な事業実施を図るため、年度別予算配分の平準化をお願いしたい。
《大分県支部》
[理由]新山村振興等農林漁業特別対策事業を計画的かつ着実に推進し、事業効果を確実なものとするため、予算の確保をお願いしたい。
 また、事業要綱の改正により標準事業費の削減等、事業費の低減が図られており、総事業費が1億円(下限事業費)においても事業実施ができることも考慮し、事業採択においては地区数で制限するのではなく、事業費等からより多くの地区で事業を展開できるよう弾力的な採択及び採択枠の拡充をお願いしたい。

 
2.新山村振興等農林漁業特別対策事業メニューの拡充について
《福岡県支部》
[理由]過去に整備した施設の中で、老朽化している施設が出てきており改築等が必要となっているが、現在のメニューでは対応できないものがある。
 このため、既整備施設で耐用年数を超えて利用されている施設の改築について、メニューの拡充をお願いしたい。

 
3.新山村振興農林漁業特別対策事業の下限事業費について
《鹿児島県支部》
[理由]本事業は、山村等中山間地域の振興を促進するために、地域の特性を生かした農林漁業を始めとする多様な産業の振興、山村地域と都市との交流の促進と、これを支援する豊かな自然環境の保全及び地域の担い手の確保に必要な事業等を総合的に実施する上で、ある程度事業規模が必要であることは理解するが、地方財政が逼迫している現状況下、下限事業費を見直していただき、小規模事業でも効果が期待できるものは採択されるようにしていただきたい。

 
4.山村振興法の期限延長について
《佐賀県支部》
[理由]山村振興法が昭和40年に制定されて以来、本県においては、山村振興対策事業を活用し、農業近代化施設の整備や農業基盤の整備などによる生産性の向上や、集落道などの集落環境の整備による定住の促進などに一定の成果をあげてきたところである。
 今後とも山村の持つ多面的機能を維持していくためには、引き続き山村地域の振興を図る必要がある。
このため、平成17年3月をもって効力を失う山村振興法の期限を延長する必要がある。

 
5.中山間地域等直接支払い制度の継続について
《熊本県支部》
[理由]平成12年度に創設された中山間地域等直接支払い制度は、農業生産活動等を通じての中山間地域の多面的機能の維持や、地域の活性化に一定の成果を上げている。実践集落からは制度の永続的な実施を望む声が大きい。このことから、平成17年度以降における本制度の継続実施をお願いしたい。
《鹿児島県支部》
[理由]中山間地域等の農業生産活動が果たしている多面的機能について、国民の一層の理解促進に努め、直接支払い制度の充実に向け、@一段の農用地の要件緩和、A単価及び傾斜基準の見直しを行うとともに、B平成17年度以降も本制度を継続できるよう措置をお願いします。

@

山間地域では、農地面積1ha未満の集落があり、現面積要件では協定締結が困難である。1ha未満でも多面的機能を確保することができるものと考えられるので、地域の実情に応じたものにしていただきたい。

A

急傾斜農用地と緩傾斜農用地の単価差が大きい。急傾斜農用地のほうが農業生産活動が困難であるとは必ずしもいえない(急傾斜地であっても斜面に沿って農道が通っている場合などは、緩急傾斜地との差異はあまりない。)

B

協定を結んだ集落では中山間地域等直接支払い制度を活用した様々な取組みが行われてきている。農業用機械の共同購入、農作業の受委託など集落営農に取り組もうとしている。また、農産物直売所の建設を計画するなど、今までになかった動きが出てきている。これは、集落内の話合いが十分に行われ集落農業の将来を真剣になって考えられている裏づけであると思われる。しかしながら、本制度が平成16年度で終わるとすると零細農家が多い中での取組みは厳しいものがあり、平成17年度以降においても当分の間はこの制度を継続してほしい。

 
6.森林整備地域活動支援交付金事業の拡充について
《熊本県支部》
[理由]平成14年度に創設された森林整備地域活動支援交付金事業は、森林の適切な整備を通じ森林の有する多面的な機能の発揮を図る観点から、間伐等を中心とした保育事業を35年生以下(一部条件により45年生以下)を対象林として実施されている。しかしながら、水の安定的供給や、国土の保全等森林に対する国民の要望が高まる中、森林の適切な管理が行われず公益的(多面的)機能の低下した荒廃森林の増加が危惧されている。このような現状を踏まえ交付金対象外分の高齢級林においても一体的な取り組みが必要であり、豊かな森林資源の循環的利用を推進することから、全森林への交付金対象林の拡充をお願いしたい。

 
7.木材価格の上昇対策について
《宮崎県支部》
[理由]本件では、総面積の約76%を山林が占めており、そのうち約58%が人工林です。
 このようななかで、木材市場での価格は、柱適材で約13,000円と最盛期の約1/3にまで落ち込み、林業の後継者不足・林業への関心低下を加速させる原因となっています。
 したがって、外材の輸入制限・新築住宅及び公共施設への積極的な木材利用を促進し、木材価格の上昇を図る抜本的な対策が必要であります。

 
8.有害鳥獣抜本対策について
《宮崎県支部》
[理由]近年、イノシシ・シカ・サルによる農林産物の食害に悩まされています。従来から防護ネット・電気柵等を活用し被害の防止に努めてきているところですが、急峻な山が多く、集落や田畑が散在している山村には上記のような被害防止施設が十分整備されないのが現状であります。
 したがって、抜本的な対策として、有害鳥獣を忌避するために、奥山の雑木林を伐採し、仮称「野生鳥獣牧場」を造成し、森林地帯に特別なゾーンを設ければ人里には出没しなくなるのではないかと考えています。この問題は九州各県のレベルではなく、全国規模でこの対策を講じていただきたい。    

 
9.木質系バイオマスエネルギーの活用促進について
《宮崎県支部》
[理由]木材市況の低迷、需要量の減少等から、十分な森林の管理ができず、森林資源の持続的循環が果たせなくなっています。このようななかで、最近注目を浴びている木質系バイオマスエネルギーへの活用についての検討が必要と思われます。幸い森林資源は豊富にあることから、木質系バイオマスエネルギーの活用促進に対する更なる助成措置を講じていただきたい。


10.市町村合併後の振興山村地域について
《大分県支部》
[理由]平成17年3月末の合併特例法の期限切れを前に、現在、各地で「市町村合併」の取組みが行われていますが、現在の振興山村地域のなかには、昭和の大合併の際の旧町村が一部山村地域として指定されているものもあります。今回、それらの市町村が合併した場合、その一部山村地域は合併後の「新市」の一部山村地域として指定の継続がされるのでしょうか。
  
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