保安林整備計画の変更行われる
第5期保安林整備計画(計画期間:平成6年〜15年度)
林 野 庁

  

 3月28日林野庁は、保安林整備臨時措置法に基づく、全国218の流域ごとに農林水産大臣が定めた第5期保安林整備計画(計画期間:平成6年〜15年度)を、森林・林業政策の転換をふまえ、一斉に変更し公表した。

 概要は次のとおりである。

1.保安林整備計画の変更の経緯
 保安林整備計画は、昭和28年に相次いで発生した大災害を契機に、森林の保安を抜本的に推進するために緊急かつ計画的に保安林を整備するために、「保安林整備臨時措置法」(昭和29年制定)に基づき、全国218流域に区分して流域別に農林水産大臣が定めたものである。
 現在は、災害の防止、良質な飲料水の確保、身近な緑の保全に対する要請が増大していること等を踏まえ、保安林の整備を計画的に行うこととし、平成6年度からの第5期保安林整備計画に基づいて、保安林の整備を推進している。このような中、森林及び林業を巡る情勢の変化を踏まえ、森林・林業基本法が制定(平成13年7月)され、新たな理念の下に森林の整備を推進することとしたところであり、保安林については、森林・林業基本計画(平成13年10月策定)において、森林の保全の確保のため、1)保安林の指定の計画的推進 2)保安林の指定施業要件の見直しを行うこととしたところである。
 このため、218流域全ての第5期保安林整備計画を一斉に変更し、保安林の指定計画を見直すとともに、保安林における森林施業の方法等を見直すこととするものである。

2.第5期保安林整備計画の変更の概要
(1)計画期間  平成6年度〜平成15年度(当初計画と同一)
(2)変更計画の重点項目

   
ア 保安林の指定に関する事項
 当初計画に追加して、適切な森林施業が実施されずに機能の発揮が危ぶまれている森林などについて、保安林としての指定を計画的に推進する。

追加分の指定の基準

1)

適切な森林施業が実施されずに機能の発揮が危ぶまれている森林及び山地災害危険地区周辺の森林等(水源かん養保安林土砂流出防備保安林土砂崩壊防備保安林

2)

保健・文化・教育の場として期待され、又は地域の取り組みが行われている森林等(保健保安林

3)

漁業関係者等による植林が実施されているなど、水産資源の保護上重要な河川両岸等の森林等(魚つき保安林

(参考)          当初計画の指定の基準

1)

災害の多発に対応した土砂流出防備保安林等の緊急かつ計画的な配備

2)

良質の水の安定的な確保のため、水源かん養保安林及び干害防備保安林の指定促進、特に簡易水道上流における緊急かつ計画的な配備

3)

市街地周辺等に所在する、自然環境、野生植物の生息・生育環境、又は生活環境の保全・形成のための保健保安林の指定の促進

  
○保安林指定計画量の変更の概要                     (単位:千ha)

保安林種 国有林 民有林
当初 追加計画 当初 追加計画 当初 追加計画
1)水源かん養保安林
2)土砂流出防備保安林
3)土砂崩壊防備保安林
4)干害防備保安林
5)魚つき保安林
6)保健保安林
7)その他の保安林
 合    計
188
40
6
24
0
62
1
321
713
122
1
5
2
4
0
847
901
161
7
29
2
66
1
1,167
193
139
18
91
1
86
9
538
56
44
3
1
17
8
0
129
250
184
20
92
18
94
9
667
382
179
24
115
1
147
10
858
769
166
4
6
18
12
1
976
1,151
345
28
121
20
159
10
1,834

注1 単位以下四捨五入のため、計が合わない。
 2 既に指定されている保安林に重複して指定されるものの面積を含んだ延面積である。

  
イ 保安林の区域内における森林施業に関する事項
 保安林の指定施業要件の基準の見直しを踏まえ、当初計画に追加して、主として平成14年〜16年度の間に主伐又は間伐を予定している保安林について、1)伐採限度(間伐率等)2)植栽(樹種・本数)等にかかわる指定施業要件を変更する。

○指定施業要件整備計画面積の概要

  国有林 民有林
当初 追加計画 当初 追加計画 当初 追加計画
 伐採限度の変更
 植栽の変更
 伐採方法の変更
      計
46
28
9
83
795
794
0
1,589
841
822
9
1,672
44
42
12
98
430
468
2
900
474
510
13
998
90
70
20
180
1,225
1,262
2
2,490
1,315
1,332
22
2,670

注1 単位以下四捨五入のため、計が合わない。
 2 同一の保安林で、伐採限度と植栽を同時に変更するもの等については、それぞれの変更面積を重複して
   合計した延面積である。

(参考)保安林の指定施業要件の基準の主な見直し

1

伐採制限の見直し
(1)育成複層林施業の実施に配慮し、択伐後に植栽する下層木の順調な生育等を図るため、植栽の義務が課せられている保安林に限り、択伐率の上限を40%(従来は一律30%)とする。
(2)十分な林内照度を確保し、下層木等の良好な成長を図るとともに、1伐2残方式のような効率的な間伐の推進を図るために、間伐率の上限を35%(従来は原則として20%)とする。

2

植栽義務の見直し
 多様な樹種による多様な森林整備を図るため、
(1)1ヘクタール当たりの植栽本数の下限を、樹種ごとに立地条件に応じて定める(従来は一律3,000本)。
(2)択伐後の植栽本数は、択伐率を乗じて算出する(従来は定なし)。
(3)天然更新木などが伐採跡地の一部を占有する場合には、その区域を除いた伐採跡地の面積により植栽本数を算出する(従来は規定なし)。

   

ウ その他(必要に応じた保安林の解除)
 当初計画に追加して、指定理由が消滅した保安林については、速やかに指定を解除する
 こととする。

○保安林の指定の解除計画の変更の概要                 (単位:千ha)

  国有林 民有林
当初 追加計画 当初 追加計画 当初 追加計画

解除計画量
0.1 0.1 0.2 3.9 0.4 4.3 4.0 0.5 4.5

注1 単位以下四捨五入のため、計が合わない。
 2 同一の保安林で、伐採限度と植栽を同時に変更するもの等については、それぞれの変更面積を重複して
   合計した延面積である

(参考)       保安林の指定の解除を計画する場合

1)

保安林が保護していた人家、集落などがなくなり、保安林として森林を保全する必要がなくなったとき。

2)

海岸浸食などの自然現象で保安林が破壊され、森林に復旧することが困難と認められるとき。

3)

森林施業を制限しなくても受益の対象を害するおそれがないと認められるとき。


《前へ》《次へ》