平成13年度山村振興関連予算の要望書
山村地域の振興につきましては、日頃から格別の御配慮を賜り厚く御礼申し上げます。
今日、山村では、少子化・高齢化の進行、定住人口の減少、自治体財政の逼迫など、山村の維持・存立それ自体が懸念される状況が続いており、この一方、森林・農地の持つ国土保全、環境保全等への役割が並々重視されるとともに、都市住民等の憩いの場としての豊かな自然環境への期待が高まっております。
これら森林・農地・山村の担う公益的・多面的役割を一層高めることと相まって、都市住民等が山村・山村住民への理解をより深める場としての役割を適切に果たすことの出来る「緑豊かな森林・山村の環境の整備」に山村自治体が率先して取り組み、これを山村の活性化への有力な契機としてゆくことは、今後の山村振興上の諸施策を国民的理解を深めつつ進めてゆく上からも最重要の課題であります。
平成13年1月には、中央省庁再編により山村振興行政の所管が農林水産省・国土交通省・総務省の三省に移管されますが、これを機に21世紀に向けての新たな展望に立って、活力の乏しい山村を復活させるため、地元の就業機会・雇用機会の拡大、生活環境の整備高齢者福祉、保健・医療、教育行政その他各般にわたる行政分野をより総合的な視点に立って推進する施策が山村自治体の自主性・創意工夫を活かし地域の実情に即して実施されること、併せて山村自治体の財政基盤の強化が図られることを切に望むものであります。
政府・国会におかれましては、以上のような施策上の要請を十分ご理解いただき、平成13年度予算の編成に当たっては、下記事項の実現を図り、所要の予算規模を確保されるよう強く要請致します。
記
[国土庁:再編後の農林水産省関係]
1. |
山村振興法の所管が農林水産省等に移行するに当たって、行政水準の一層の向上に資するよう、移管に関わる諸措置の円滑な実施と山村振興対策上の諸施策の充実・強化を図ること。 |
1. |
山村振興対策の総合的な推進を図るための調査費予算7千4百万円、及び個性ある山村地域の再構築実験事業など山村地域の活性化のための実験事業費予算4億8千1百万円を確保すること。 |
[農林水産省関係]
1. |
「新山村振興等農林漁業特別対策事業」について、地域の実情に即した適切な事業内容の採択・実施等により事業の円滑な実施を図ることと相まって、事業費予算209億2千5百万円を確保すること。 |
1. |
中山間地域等における耕作放棄を防止し、国土の保全、水源のかん養等の多面的機能を確保するため、農業生産活動等を行う農業者等に対し直接支払いを行う「中山間地域等直接支払交付金制度」に必要な予算330億円を確保し、所要の地方交付税措置と相まって事業の着実な推進を図ること。 |
1. |
間伐材の工事資材等としての活用や家畜排せつ物の堆肥利用等による地域資源の循環利用体制を構築する中山間地域総合整備事業費予算768億3千5百万円を確保すること。 |
1. |
山村の遅れている生活環境の整備を図るため、農業集落排水事業その他の施策を充実・強化すること。 |
1. |
山村におけるほ場、道路等の生産基盤の整備に必要な予算を確保すること。 |
1. |
山村地域における鳥獣による農林業関係被害を防止するための予算を確保すること。 |
1. |
森林の公益的機能の高度発揮に資する森林の整備を推進するため、長期育成循環施業の導入等を行う森林整備事業費予算1,935億3千2百万円、表土の流出等による崩壊が危倶される保安林等の森林整備を治山事業により行う事業費予算1,680億2千8百万円を確保すること。 |
1. |
緊急かつ計画的な間伐と間伐材の利用促進を図る緊急間伐総合対策に必要な予算532億4千7百万円を確保すること。 |
1. |
山村地域の活性化を図るため、木質バイオマス等山村の未利用資源の有効利用、生活環境施設の整備等を行う中山間地域山村総合整備対策費予算441億2千9百万円を確保すること。 |
1. |
地域の森林管理・経営の担い手の育成・確保を図るため、金融措置その他の公的支援措置を拡充するとともに、地域材の需要拡大施策の充実を図ること。 |
1. |
山村社会の厳しい現状を打開するため、森林・山村対策の継続・拡充を図ること。 |
[環境庁:再編後の環境省関係]
1. |
野生鳥獣の農林業被害の拡大等に対処して、保護管理の適正化を図るためのデーター収集、調査、研修等を行う事業費予算を確保すること。 |
[文部省:再編後の文部科学省関係]
1. |
山村における小・中学校危険建物改築等に要する経費等、公立学校施設整備費予算106億2千1百万円を確保すること。 |
1. |
へき地学校等の通学条件の改善を図るため、スクールバス・ボート等購入費2億1千3百万円を確保すること。 |
1. |
社会教育施設の高機能化・活性化事業費予算5億9千4百万円を確保すること。 |
1. |
小・中学校の寄宿舎居住費、遠距離通学費等へき地児童生徒援助費等予算4億7千5百万円を確保すること。 |
1. |
都市等の小、中学生等に自然体験等の機会を提供する「子ども長期自然体験村」事業費予算6千6百万円を確保すること。 |
[厚生省:再編後の厚生労働省関係]
1. |
へき地保健医療対策費予算56億9千7百万円を確保すること。 |
1. |
へき地保育所の運営に要する予算21億2千万円を確保すること。 |
1. |
簡易水道等施設整備費予算370億9千7百万円を確保すること。 |
1. |
合併処理浄化槽の整備推進に必要な予算252億5千1百万円を確保すること。 |
[運輸省:再編後の国土交通省関係]
1. |
山村地域における生活交通の確保のための地方バス路線維持対策予算86億6千4百万円を確保すること。 |
[建設省:再編後の国土交通省関係]
1. |
山村地域と中核都市とを結ぶ国道及び都道府県道の計画的整備促進を図るための予算を確保すること。 |
1. |
市町村道の改良・舗装等を促進するための市町村道整備事業費予算を市町村の実情に即して確保するとともに、地域連携による個性豊かな地域づくりを支援する交流ふれあいトンネル・橋梁整備事業、地域連携強化支援道路事業等の推進を図るための予算を確保すること。 |
[郵政省:再編後の総務省関係]
1. |
山村における医療・福祉関係を含む各種の情報・通信サービスの都市地域との格差是正を図るための電気通信格差是正事業費予算84億2千5百万円を確保すること。 |
[自治省:再編後の総務省関係]
1. |
辺地対策事業債790億円を確保すること。 |
1. |
過疎対策事業債3,700億円を確保すること。 |
1. |
一般単独事業債・豪雪対策事業分150億円を確保すること。 |
1. |
地方交付税法上の基準財政需要額算定に当たり、面積要素を重視し、山村の実情に即した算定方式に改めるなど、地方交付税制度の改善・充実を図ること。 |
1. |
山村社会の厳しい現状を打開するため、森林・山村対策及び国土保全対策の継続・拡充を図ること。 |
平成13年度税制改正に係る要望書
1. 山村振興法に基づく、振興山村区域において、森林・農用地の保全を推進し、山村が持つ国土保全等の公益的機能を維持・発揮させるとともに、山村における農林業の担い手の育成等を図るため、認定法人(第3セクター)が実施する森林・農用地の保全事業等の用に供する機械・建物等又は土地に係る以下の課税の特例措置を延長するよう特段の御配慮をお願いします。
(1)法人税
認定法人が保全事業等の用に供する機械・建物等に係る特別償却(機械等:15/100、建物等:8/100)制度の適用期間を2年延長すること。
(2)特別土地保有税
認定法人が保全事業等の用に供する土地に係る特別土地保有税の非課税措置の適用期間を2年延長すること。
2. 特定農山村法に基づく、特定農山村地域(中山間地域)において、農用地の有効利用を図るための権利移転を円滑に推進するとともに、第3セクターが実施する都市農村交流の促進及び地域農林業の担い手の育成を支援するため、以下の課税の特例措置を延長するよう特段の御配慮をお願いします。
(1)所得税、法人税共通
所有権移転等促進事業により個人又は法人が土地等の買換えをした場合の事業用貸産の買換特例制度(所得税:譲渡所得の80/100を繰延、法人税:譲渡所得の80/100を圧縮記帳)の適用期間を5年延長すること。
(2)法人税
一定の第3セクターが農林業等活性化基盤施設を取得した場合の15%(建物等は8%)の特別償却制度の適用期間を2年延長するとともに、対象施設に農林業担い手育成施設を追加する こと。
(3)不動産取得税
所有権移転等促進事業により農用地を取得した場合の課税標準の特例措置(4分の1又は5分の1を控除)の適用期間を2年延長すること。
(4)特別土地保有税
一定の第3セクターが農林業等活性化基盤施設の用に供する土地に係る非課税措置の適用期間を2年延長すること。
市町村の合併に関する緊急要望書
近年、地方分権の推進、少子・高齢化の進展、財政状況の悪化等を背景に、市町村の合併の推進が様々の場で取り上げられており、自治省では、昨年「市町村の合併の推進についての要綱」の作成を求める「市町村の合併の推進についての指針」を都道府県に通知し、現在これに基づく市町村合併に関る検討・協議等が各地域において行われております。
市町村の業務は、近年複雑かつ多様化する状況にあり、市町村の行財政基盤の充実が求められておりますが、これに対する取組みは、地方分権の趣旨からもそれぞれの市町村がその置かれた諸条件に即して自主的に判断・対処すべきであり、国が地方分権の受け皿整備等の観点から、市町村の合併を強制することは厳につつしむべきところであります。
とりわけ、山村地域の市町村は、その置かれた地理的条件等の制約もあり、合併した場合にその後の経済の発展、住民サービス等の面でより遅れをとることが過去の実績からも数多く見受けられます。
よって、国及び都道府県は、市町村合併について地域住民の意志を十分尊重し、合併を強制することのないよう、並びに市町村合併の強制と結びつくような地方交付税の配分及びこの算定の見直しは絶対に行わないことを強く要望致します。
決 議
山村地域では、少子化・高齢化の進行、定住人口の減少、自治体財政の逼迫など、山村の維持・存立それ自体が懸念される状況が続いている。
この一方、山村地域では森林・農地の持つ国土保全、環境保全等の役割がますます重視されるとともに、都市住民等の憩いの場としての豊かな自然環境への期待が高まっている。
これら森林・農地・山村の担う公益的・多面的役割を一層高めること、山村住民と都市住民等との交流・連携をより緊密化し、山村・山村住民への国民的理解をより深めることと相まって山村の活性化を図ってゆ<ことは、山村振興上の喫緊の課題であり、この度の中央省庁の再編を機に、関係各省の施策がこのためのより総合的な政策視点に立ち、山村自治体の自主性を活かし地域の実情に即して推進されること、併せて山村自治体の財政基盤の強化が図られることを切望するものである。
政府・国会におかれては、以上のような諸事情を十分こ理解いただき、平成13年度予算の編成に当たっては、下記事項の実現を図られるよう強く要望する。
記
1. |
第五期山村振興対策を計画的かつ着実に推進すること。 |
1. |
中山間地域等直接支払制度の着実な推進、中山間地域総合整備事業の充実を図ること。 |
1. |
長期育成循環施業の導入、計画的な間伐の促進等、森林の公益的機能の高度発揮に資する森林の整備・管理・保全等の施策の充実・強化を図ること。 |
1. |
地域の森林管理・経営の担い手の育成・確保に関わる支援措置の拡充を図ること。 |
1. |
山村と都市との交流の促進、山村における生活環境の整備、青少年が農山村で学習する機会を持つことへの支援措置の充実等を図ること。 |
1. |
山村の医療・保健、高齢者福祉対策の充実・強化を図ること。 |
1. |
山村における道路・情報等のインフラ整備、地方バス路線維持対策の充実・強化等を図ること。 |
1. |
振興山村所在市町村の財政力の強化を図ること。 |
1. |
辺地債及び過疎債を大幅に増額すること。 |
1. |
地方交付税法上の基準財政需要額算定に当たり面積要素を重視し、山村の実情に即した算定方式に改めるなど、地方交付税制度の改善・充実を図ること。 |
以上決議する。
平成12年12月7日
全国山村振興連盟臨時総会
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