平成12年度全国山村振興連盟臨時総会開催される

一保利耕輔新会長を選任一

総会閉会後関係各省庁に要請行動
〜市町村の合併に関する緊急、要望を決議〜

    

 全国山村振興連盟の平成12年度臨時総会は、12月7日(木)午前10時半から東京内幸町のイイノホールにおいて、衆参国会議員をはじめ政府関係者等の来賓多数出席のもとに連盟会員、支部事務局員など9百数十名が参加して盛大に開催された。
 総会は、山口副会長(岩手県新里村長)の開会の辞、黒澤丈夫会長代行の挨拶に続いて、扇千景国土庁長官、大原一三自由民主党・山村振興対策特別委員会委員長、山本文男全国町村会会長からそれぞれ祝辞が述べられた。
 続いて、出席された国会議員、政府関係者の来賓紹介があり、この後、連盟の三井事務局長から、i 政府の平成13年度予算編成方針、ii 中央省庁の再編のもとで山村振興法に基づく行政が国土庁から農林水産省・国土交通省・自治省の三省共管へと移行すること、iii 連盟としてはこれを機により抜本的・総合的な山村振興行政が展開することを要望するものであること、iv 町村合併については合併の強制に反対であるとの従来からの基本的考え方を再認識するとともに全国町村会との緊密な連携を図ってゆくことが重要と認識していること、v 連盟の事業活動として去る10月25日に福島県郡山市で第26回の全国山村振興シンポジウムが開催され盛会裡に終了したこと、vi 国土庁との共催による第9回ふるさと山村フォトコンテストを行い、10月17日の審査で国土庁長官賞など27点の入選作品が選定されたこと等の情勢報告があった。
 次いで黒澤会長代行が議長となって議事に入った。
・まず報告事項として先に理事会で承認された平成11年度の収支決算について事務局から報告があった。
・次に第1号議案のうち会長選任の件では、昨年秋以降空席となっていた会長職に保利耕輔衆議院議員が選任された。会長職は平成11年10月、玉澤徳一郎会長が農林水産大臣への就任に伴い会長を辞任されて以来空席となっていたところ、去る7月27日の理事会で保利耕輔議員を会長とする旨の総会議案を提出することが議決され、これに基づき、本総会において満場の賛同のもとに選任されたものである。
 このあと、保利新会長から会長就任に当たっての挨拶(別掲)があった。
 次に監事については、長野県高遠町の北原町長の監事辞任に伴い、後任の監事として長野県川上村の藤原忠彦村長が平成12年11月15日の理事会において選任され、連盟規約第7条に基づき本総会でこの承認が行われた。このあと藤原新監事から、職務を全うするよう努力していきたい旨の挨拶があった。
・続いて、第2号議案の「平成13年度山村振興関連予算の要望(案)に関する件」、第3号議案「平成13年度税制改正に係わる要望(案)に関する件j、第4号議案「市町村の合併に関する緊急要望(案)に関する件」について、それぞれ事務局から説明を行った上で、原案どおり可決された。
・第5号議案「決議(案)」については、多田副会長(徳島県宍喰町長)が決議案を朗読し、原案どおり可決された。
以上で議事を終了し、脇本副会長.(北海道知内町長)の閉会の辞のあと同副会長の発声により全国山村振興連盟の万歳を三唱し、総会を終了した。
 総会終了後、連盟の町村長副会長等を班長とする各省ごとの要請上の担当班を編成し、決議された要望事項についての関係省庁等への要請活動を行った。
 なお、この一環として町村合併の強制に反対することを主旨とする「市町村の合併に関する緊急要望」を自治省に対して行った。
当日の挨拶、祝辞を発言順に掲げると以下のとおりである。

  

    

会長代行挨拶
[全国山村振興連盟会長代行黒澤丈夫氏]


 本日ここに全国山村振興連盟臨時総会を開催いたしましたところ、会員各位には遠路上京してご出席を賜り、総会を盛んにしてくださって厚くお礼申し上げます。
 また、国土庁長官を初めご来賓の諸先生には、ご多用な折から貴重な時間を割いてご臨席の栄を賜り、私たちを勇気づけるとともに、総会に花を添えてくださり感謝の至りに存じます。
 さて、我が国は今、各般にわたる大きな変革の波の中にあり、幾多の改革が行われようとしておりますが、我々の山村は昭和30年代から始まった激しい若者の村外流出の結果、高齢化は言うに及ばず、出産適齢の男女のカップルが少ないがゆえに出生人口が極端に少なく、少子化に二重の拍車がかかっております。このような人口動態が続くならば、山村地域社会は遠からず崩壊するのではないかということが憂えられる状況にあります。
 この危機に対処するために、我々は若者の定住者を増やすように懸命の努力を続けておりますが、山村の力には限界があります。都会に住む人たちの理解を得て、都道府県や国政に応援していただく必要があります。国、都道府県におかれてはこの危機を山村だけの問題として捉えるのではなく、国土の半分を担っている国家の重大な社会問題として捉えて、積極的に支援をお願いしたいところであります。
 人類の限りない物質文明の追求が、地球上の生活環境を悪化させ、その回復のために山村・森林の果たす役割への期待が高まっているのであります。今こそ、国土の半分を占める地域の森林を預かる私たちが、声を大にして主張すべきときであります。
 全国山村振興連盟は、このような考えのもとに運動を展開し、主張し、訴えてきておりますが、本年も年末を迎えて国政が来年度予算を編成する時期を迎えました。本日の総会においては、昨年10月以降不在となっております会長を選任していただいて、新会長をお迎えして、来年1月からの中央省庁の再編による、山村振興法の所管が農林水産省、総務省、並びに国土交通省の三大臣の共管となることに対応して、三省連携のもとに、抜本的、総合的な山村振興政策が打ち出されるよう強力に運動を展開したいと存じております。
 このために、本日この総会にお諮りし、決定した重要事項について、政府、国会等に対して要望するものでありますが、これを貫徹して真の山村振興が図られることを切望するものであります。
 会員の皆様方には、山村の逼迫した現状や果たしている役割の重要性を広く説いて、政府・国会や国民の理解を深めて、要望する予算が確保できるようご活躍をお願いいたします。国政はとかく人口の多い都市の声に動かされがちでありますが、都市は都市だけで存立し得ているのではありません。水源を涵養し、空気を浄化し、国土を保全して都市を大きく支えているのは私たち山村住民であります。お互い自信を持って山村を主張して、要望を貫徹しようではありませんか。
 最後に、本総会を機に会員の団結と山村振興運動のさらなる推進が図られることを祈りつつごあいさつを終わらせていただきます。

  

    

祝  辞
[国土庁長官 扇 千景氏]


 本日ここに全国の山村振興連盟の皆さん方が平成12年度の臨時総会をお開きになるということで、お招きを受けました。私、まだ再任されたばかりですが、国土庁長官に任命されました。来年の1月6日、省庁再編までは4つの大臣を兼任するということで大変肩の荷が重いんですが、皆さん方に支えられ、皆さんと力を合わせて明るい21世紀を迎えるために、今日、皆さんがお開きになったこの臨時総会で足場を固めて、日本国民がきちんと土に足をつけて21世紀を迎えるという、そういうことで本大会は大変大きな意味があり、また、今日の時期をお選びになった皆さん方にタイミングに合う大会を開かれたことに心から御礼を申し上げ、お祝い申し上げます。
 昭和38年、全国山村振興連盟が設立されて以来、皆さん方は山村振興のために大きな力を発揮していただき、そして、山村振興の基本でございます山村振興法の制定に力を合わせて、一致団結して邁進されたことに私は心から敬意を表するものでございます。
 皆さん方から、日ごろから日本国土を守るために、多大なご協力をいただいてきました国土庁、そして皆さんとともに山村振興に励んできたこの国土庁が、本年度をもって歴史を閉じます。
 国土庁は、本当に日本の国土のことを考えようと思って設立されたわけですが、20世紀とともに国土庁も幕を閉じることになりました。けれどもこれは、発展的解消ということでございまして、21世紀に、大きな役割を果たすというもので、省庁再編では国土交通省の名称で「国土」の文字が頭にまいります。それは、いかに皆さん方の山村地域を含めた日本の国土を大事にするかということで、省庁の名前が国土交通省ということになるわけでございます。今まで以上に皆さんの今日までのご活躍と、その意義を大事にしながら、新しい21世紀に国土交通省となり得るように、私どもは頑張っていかなければなりませんし、またそのつもりで私も皆さんにいつまでも甘えることなく、皆さんと一緒になって英知を結集して、明るい21世紀をつくっていきたいと思っておりますので、力強いご支援を今後も賜りたいと申し上げておきたいと思います。
 また、ご存じのとおり、私どもも頑張ってまいりましたけれども、山村の皆さん方の現在がどのような状況であるのか。力を入れてきたけれどもまだまだ皆さん方の生活基盤の整備ということには足らざる点が多々ございます。例えば、水道の普及率、あるいは水洗の普及率等々、少なくとも昭和40年代前半には30%台でありました水道普及率というものも今は80%、倍にまでなっております。けれども、今申しましたように、まだ依然として山村から人口が流出しつつある、その現状は否定できないと思います。
 全国の人口は、昭和50年から平成7年にかけまして、高齢化が進んだものの12%増加したということですが、山村では14%も減少しているわけですね。そしてまた、65歳以上の占める割合というのも、全国では15%ですが、山村は24%にまでなっています。
 こういうことで、我々は、山村の後継者不足等々、活力を生むためにはどうしたらいいのかというのが21世紀の大きな課題であろうと思います。
 21世紀は女性の世紀だと言われます。なぜ女性の世紀なんだろう。日本の女性の平均寿命はおかげさまで、私も含めて84歳。この会場は男性がほとんどでございますけれども、残念ながら皆さんは平均寿命は76歳です。しかも、国連の発表では2050年には日本の平均寿命は90歳になると計算されました。90歳ですよ。その中の8割は女なんです。ことしの敬老の日も、100歳以上が1万300人おりましたその中の大半は女なんです。
 ですから私は、活力ある中山間地域づくりでは、「女性が元気な地域づくりの仕掛けと戦略」、これが山村問題と21世紀の日本の大きな要になると思っています。女性が長生きして元気であれば女性の活力を使ってください。そしておじいちゃんの面倒はおばあちゃんが見る、そういう明るい21世紀、老後は大丈夫よ、おばあちゃんの方が元気だから安心して年とってくださいと言えるぐらいな21世紀をつくっていくということが大きな日本の糧になろうと思います。
 いろいろございますけれども、こういう臨時総会で皆さん方とともに明るい21世紀を迎えるための準備なんだ、そして山村も元気なんだと、そう言えるような21世紀を皆さん方と力を合わせて迎えたいと思います。そういう意味で、今日、この時期に平成12年度の臨時総会をお開きになったことは、このタイミングといい、皆さんの決意といい、心から私のできる限りのことをして国土庁長官として、来年も、そして省庁再編になっても国土交通省だということを頭に置いていただいて、皆さんと一緒に頑張っていきたいと思います。
 本日は本当にありがとうございました。元気に21世紀を迎えましょう。

   
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