「ミレニアム」山村振興関連政府予算(案)が決定
中山間地域等直接支払交付金制度に期待
 政府は、12月24日の臨時閣議で、過去最大の総額84兆98百億円余(11年度当初予算対比3.8%増)の平成12年度一般会計予算案を決定した。
 12年度予算は、景気回復を確かなものにするため情報通信・科学技術・環境等の「経済新生特別枠」を設ける等いわゆるミレニアム予算として財政事情が厳しいなかでも積極型予算となった。
 この中で、山村振興対策で最も関係の深い農林関係予算は、総額3兆4,281億円、前年度比100.7%、うち公共事業費1兆7,648億円(前年度比100.3%)非公共事業費1兆6,633億円(前年度比101.0%)となった。
なお、非公共事業費のうち、一般事業費は前年度比4.5%増の1兆4,394億円となっている。
 予算編成の経過は、12月20日大蔵省からの内示を受けて、直ちに各省庁は復活要求等の作業に入り、翌21日は事務折衝、局長折衝を経て22日に大臣折衝を行い、23日の天皇誕生日を間に置いて24日の閣議で予算案が決定された。
 全国山村振興連盟は、21日午後2時から全国町村会館第3会議室において、町村長副会長並びに振興山村市町村長等の上京会員70余名の出席のもとに平成12年度山村振興関係政府予算確保対策本部の対策会議を開催した。
 会議は、始めに連盟副会長の中井勉岐阜県高根村長から要求予算額の確保に向けた決意表明があり、続いて三井事務局長から各省庁の山村振興関連予算の内示状況等の説明が行われた。このあと、直ちに副会長を先頭に出席者による陳情班を編成し、大蔵省、農林水産省等の関係各省庁及び国会議員に対し陳情活動を行った。
 一方、自由民主党山村振興対策特別委員会(委員長大原一三衆議院議員)は、12月21日午前9時30分から党本部704号室で特別委員会を開催し、23名の国会議員出席のもとに関係各省庁担当官からそれぞれ所掌する予算の内示状況、内示に対する復活要求の状況について聴取した。その後、出席の国会議員から今後の山村振興に対する党の対応や省庁の取り組みに対する意見が出され、最後に復活要求の重点事項について、委員長に一任することが確認された。なお、復活要求の重点事項は、(1)新山村振興等農林漁業特別対策事業(2)中山間地域等直接支払交付金(3)緊急間伐総合対策(4)消防防災設備整備である。
 また、自民党農林関係・農政推進協議会合同会議(農政推進協議会座長 谷洋一衆議院議員(総合農政調査会長))が、20日午後5時30分から党本部704号室において開催され、12年度予算重点項目として掲げた事項について関係団体からの要請が行われた。この中で、山村振興関係としては、三井事務局長から農林水産省所管の「中山間地域等直接支払交付金」、「新山村振興等農林漁業特別対策事業」予算の満額の確保を要請した。
 閣議決定した関係各省庁の要求額の概況は、次の通りである。
 国土庁関係では、山村振興対策の推進のための各種調査及び山村の担い手・産業育成を促進するための集落機能向上支援方策調査(新規)を実施するとともに、継続事業の多自然居住地域の創造等の調査を実施するための予算1億9百万円、また、振興山村開発総合特別事業費として山村の環境保全機能の向上、高齢者の労力の活用、都市との交流の促進等に必要な施設整備を行うモデル事業等を継続実施する予算4億4千万円(前年比90%)が計上されている。
 農林水産省関係では、山村振興の重要な柱である新山村振興等農林漁業特別対策事業費予算は、208億円の要求に対して内示額は190億円であったが復活折衝の結果、ほぼ前年並みの201億円が確保された。なお、本事業の中の鳥獣被害対策の補助率は、50/1OOを55/100に引き上げる要求が認められた。更に新規作物の導入等に対するソフト事業として特定農山村総合支援事業費予算7億1千万円が要求どおり認められた。また、最重点項目としている中山間地域等直接支払交付金予算は、内示では特認地域等への支払い部分が認められなかったが、大臣折衝の結果330億円満額が認められた。公共事業では、中山間地域総合整備事業費は、前年度対比2.3%増の643億2千6百万円が認められたほか、基幹的な農道等の整備等の予算がほぼ前年並みに確保された。
 林野庁関係では、最重点課題である5ヶ年間で150万haを実施する緊急間伐総合対策費予算について前年度対比37%増の475億6千3百万円が確保されたほか、林業構造改善事業費予算、公益的機能発揮のための森林整備事業費予算、森林の新たな利用総合対策費予算について、所要額が確保された。
 なお、中山間地域山村総合整備対策事業の中で林業従事者の住宅用地の整備が新たなメニュー費目として認められた。環境庁関係では、自然との豊かなふれあいの場づくりや自然エネルギー等を利用した環境共生施設の整備等を行う自然公園等事業費予算として175億8千6百万円が、また農林業被害が多発している地域の適切な保護管理を行う野生鳥獣保護管理適正化事業等予算として1億4千4百万円が確保された。
 文部省関係では、公立学校施設整備費予算が106億2千1百万円、スクールバス・ボート等購入費予算2億1千3百万円と前年同額が計上された。また、児童生徒数が減少する中で児童生徒対策費としてへき地児童生徒の寄宿舎、遠距離通学支援等予算5億2千2百万円(対前年度比91%)が確保された。
 文化庁関係では、山村等の子どもたちに優れた舞台芸術を鑑賞させる地方公演や地域の有形・無形の文化財の保護・伝承等を推進する経費、施設整備費予算として所要の額が計上された。
 厚生省関係では、へき地保健医療対策費として中核病院、診療所、医療情報システムの整備等予算がほぼ前年同の47億1千3百万円、また、簡易水道等整備費予算397億7千5百万円、(対前年比2.4%増)、合併処理浄化槽設置整備費のうち山村等の特定地域生活排水処理事業費予算として15億7千1百万円(対前年比1.5%増)が確保された。さらに離島等における訪問介護員の養成費及び高齢者生活福祉センター運営費等の在宅福祉事業費等予算として16億1千3百万円(対前年比45.9%増)が確保された。
 通産省関係では、地域の工場立地を促進するための産業再配置促進対策事業費予算33億9千1百万円(対前年比98.5%)、中核工業団地造成事業費予算(対前年比16.O%増)が確保された。なお、工業団地造成の利子補給金予算が対前年比55.3%に止まったのはむつ小川原の分が別計上になっているためである。
 運輸省関係では、地方バス運行の確保対策費予算として88億4百万円(前年同)、地域の特色を活用した観光基盤施設の整備費予算2億1千3百万円(対前年比90.O%)が計上された。
 郵政省関係では、地域・生活情報通信基盤整備の高度化、携帯電話等の鉄塔施設、テレビの難視聴地域での共同受信施設の整備等を行う電気通信格差是正事業費等予算83億1千3百万円(対前年比92.1%)が、また郵便局を活用した山村地域等振興対策費予算として14億2千1万円(対前年比12.1%増)が確保された。
 労働省関係では、山村地域等の雇用機会が不足している地域の雇用を開発していく経費としての予算114億9千3百万円(対前年比83.8%)、林業の担い手を確保する林業雇用改善推進事業費予算5億3千3百万円(対前年比92.7%)が計上された。
 建設省関係では、全国一括計上であり山村振興分として区分出来ないが、道路事業費予算が3兆4252億7千9百万円(対前年比103%、このうち山村において重要な生活ふれあいトンネル・橋梁整備事業は、平成11年の実績では全国73カ所のうち山村地域が34カ所となっている。)、治水事業費等予算1兆2295億7千5百万円(前年同)が確保された。
 自治省関係では、12年度計画額として辺地対策事業債790億円(対前年比97.2%)、過疎対策事業債3700億円(前年同)、一般単独事業債・豪雪対策事業分150億円(前年同)が確保された。消防庁関係では、防火水槽、消防団の拠点施設、消防車両、防災無線通信等の整備のための予算54億3千3百万円(対前年比11.4%増)が確保された。

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