山村も真剣に高齢化対策を (山崎)

 今日の課題は、山村の個性化であるが、これからの山村は、高齢化対策を本格的にやらなければならないと思っている。山村の中にはすでに高齢化社会を体験されている村もあり、大変な状況になっている。あと20数年たつと秋田県は、日本一の高齢化社会になると予想されている。このための対策を山村も真剣に考えなければならない。(BR)  最近各地を回って感ずることは、基本的に農家の人のモチベーションがどんどん下がっているということである。いろいろな事業を町が、行政が用意しても、それに乗る人がいない。これは高齢化という要因もあるが、先が見えないという点が大きな要因であると思う。(BR)  グリーンツーリズムのおたずねもあったが、グリーンツーリズムで一番大事だと思っているのは、農家の皆さんが新しい収入の道を探す、そのため農業プラス観光面では、例えば、農家の人達が朝ご飯しか出さないような民宿をつくったり、グループをつくり農家レストランを経営するとか、あるいは直売活動をやっていく。あるいはソフトクリームハウスをつくる。そういうような新しいビジネスが広がっていく。それが実は農村の新しいツーリズムであり、観光という資源に広がっていくということである。(BR) (島森)(BR)  いま、高齢化・過疎化という言葉がずい分出されました。また、若者をどうやってとどめるか。あるいは若い人たちにどれだけ魅力ある村づくり町づくりができるかということは皆さん共通のテーマになっていたように思う。前川さんのところは人口が増えておりますが。


 

庁舎建替と一緒に宅地開発 (前川)

 町で人口の増えた分は、他から移り住んでいただいた人たちが大部分を占めている。
 これは、昭和60年に役場庁舎の建替えと一緒に宅地開発を行った。その後造成地も売却され、その資金で役場庁舎も建てる。また、同時にそこへ町外から移り住んでいただくといった一石二鳥、人口増加につながった。
 (島森)
 あゆかわさん先ほど若者の発想を行政が支えるというお話がありましたが、若い人たちの発想がどういう形ででてきて、それを行政がどうかみ合わせていくのか、お話いただけれと思いますが。


 

楽しみながら活動を (あゆかわ)

 西木村を中心とする周辺町村は、高齢化率も高く、ところによっては30%を超える村もある。その西木村にサラダハウスという若者たちのグループがある。このグループは歴史もあり若者たちの地域おこし運動が最盛期のころできた。当時は、会員100名のグループであった。
 彼らは最初に何をやったかというと、村を活性化しなければダメだ、我々の力で西木村の将来展望を開こうと催したのが、中央から歌うグループを招き、野外ステージをつくってコンサートをやる、コンサートをやれば地域が生き生きするといわれた頃である。彼らは100人ぐらいのメンバーで、周辺の町村の若者たちも集まって盛況を極め、最初のうちは300万円位の黒字がでる予定が、最終的には大きな赤字を抱えることになる。
 そこで赤字をどうするか頭を抱え始めたら100人いたグループが10人になってしまった。10人が500万円の借金を抱え、どうしようと路頭に迷ったときに、彼らは発見するのである。地域を活性化しようだとか、村の将来を考えて一肌も二肌も脱ごうなどということを考えて地域おこしをやっても、何の役にもたたない。じゃあどうするかというと、我々が楽しめば、地域はそれでいいんだと、極端に言えば村はどうなってもいいんだと。そこで彼らは、今度自分達で楽しむような企画をする。例えは、駅弁売りや特産キノコ、クリのたっぷり入った弁当、列車の中でのカラオケ大会、仮装大会をやったりして自分達で楽しむのである。
 だんだん元気になって、今から数年前のこと、我が村には、423.4メートルの深さを持つ素敵な田沢湖がある。423.4メートルといってもあまりピントこない、そこで湖面に423.4メートルのアドバルーンをあげる。2年続けてやって1回目は失敗したけれども、翌年成功して、ギネスブックに登録申請したら、そういう前例がないのでダメだと断られたりしている。
 次は、何か423.4メートルだから4月23日の午後4時に湖上結婚式をやろうということで全国に湖上結婚式の募集をしたらいっぱい集まる。今度は責任がある、大変ではあったが結婚式をやって大成功したのである。
 そういうことで今彼らは自分達が楽しむ活動をやっている。イベントも年1回では力にならないから年間を通じて幾つかの面白いことをやる。そのたびに若者たちが集まるといった具合である。他にもいろいろと面白い例があるが………。
(島森)
 山村はもう大元気という感じです。
 大間さんは、若くしてUターンされたが動機等を含めてお話を、


 

山村で充実したいなか暮らし (大間)

 帰ってきた要因の一つは田舎暮らしに憧れていたのかもしれない、今思えば、ログハウスを建てて、郊外に住み子供はもしかして小・中学校一緒の校舎に通わせる。そして、かたわら野菜づくりもしてみたい。しかし、現実はなかなか厳しい、でも夢は持っている。今の住居からは、山もあれば近くに海もあるという恵まれた環境である。
 3年経ち、腰を落ち着けて住んでみて、やっぱり出会うべくして出会ったという人たちも生まれてきた。前は、オフコースのバンドでただ駅に着いて、あるいは飛行場に着いて会場を往復して、ファンとの交流も何もない感じであった。今は一人のプロデューサーとして、より身近に一人一人と接して友達もだんだん広くなってきた。僕の仕事は、いわば本当にこれからかなと思っている。
(島森)
 時間もなくなってきました「個性ある山村の構築をめざして」というテーマでありますが、もっと言っておきたいこと、また、具体的な提案でも結構です。どうぞ。


 

横の連携軸をとった山村対策を (前川)

 おそらく次期山村振興対策になるだろうと思うが、この際是非お願いしたいのは、国土庁、農水省も今度は省庁再編でどうなるか動きがあるようですが、今までの各省庁別縦割りでなく、横の連携軸を取った山村振興対策をぜひやっていただきたい。
 また、高齢化社会は、どんどん進行するので、あとつぎというか担い手をある程度高齢者の方々にも受け持ってもらえるような、そういう対策を我々はしなければならないのではないか、そして、従来から元気で生活しているお年寄りは勿論のこと都会や外から町や村に帰農してもらう、定年帰農してもらえるような運動を展開していく必要があるのではないだろうか。そして、むしろ外部から入ってきた人が住民の皆さんに刺激を与えるようなそういう形の山村振興も是非考えていかなければならないと思っている。


 

農家個人への支援策が必要 (山崎)

 これまでの農村振興、山村振興というのは、地域振興、地域をまとめて何とかしようという発想だったと思う。しかし、これが効果が見えなくなったというのが現実だと思う。建物を作ったが、時間が経ってみればお荷物になってしまう、男の発想かも知れないが、大きいことはいいことだとずっと言ってきた。それが今破綻をしてしまった。
そういう時代は終わりに近づいているのではないか。  これから先に出てくるのは、簡単に言えば個人への支援体制であり、そのあり方の検討が必要だと思う。これまでの日本の行政は、個人への支援は、個人の資産を増やすこととして嫌ってきた。そういう国民性でもある。しかし、地域振興という広い世界ではなく、これからは個人がやる気がある人、あるいはやりたいと役場に訴えた人には助成する、そういう制度に切り替えてもよいのではないかと思う。
 グリーンツーリズムの世界でいうと、農家が民宿をやるのに金がかかる。国は一切面倒を見てくれない。しかし、地方自治体によっては、独自の条例等をつくり、若干ではあるが、補助金を出しているところもある。ヨーロッパ、ドイツでは、個人に240万円ぐらい出してもらえる。また、UIターン者のように志しを持ってふるさとに帰った人に対する初期投資の一部助成といった制度も今後必要ではないだろうか。
(島森)
 皆さんからいろいろテーマが出されました。やはり一番共通のテーマは、高齢化、過疎化の問題であった。そして若者をどう定着させるか。一方では、帰ってきたいという人たちをどう受け入れるか、その土壌がどれだけつくられているかという問題も出された。
 また、実際にそこで暮らしている人たちがどれだけ豊かで元気で納得できるような生活ができるかをまず考える必要がある。いま都会から地方へ志向する人が増えているという話題も出された。そういう意味では、地方、地方で魅力的な場所をつくり出すという意味において、今日みなさんからいろいろヒントになる発言をいただいたと思う。結局、アイデアはどこか空中に漂っているのではなく、皆さんの足元にあるということが共通した意見ではなかったかと思う。
そして、町おこしにつながるイベントも何か打ち上げ花火で終わるというような時代は終わって、地道に自分たちの足元からアイデアを考えを引き出すというのが今日の共通した課題として示された。まだ、この他にもいろいろ提言があった。環境問題も大事である。都市と地方との関係ももっと有機的に考えていただき、また、横の関係山村同士の連携も一層強めて、個性ある山村の構築のため積極的に取り組んでいただきたい。 以上総括し、約2時間にわたるパネルディスカッションを閉じた。

 本特集号は、シンポジウムでの発言及び講演内容を要約したものであり、文責は、すべて全国山村振興連盟事務局にある。




前ページ