平成9年度林業白書

　「平成9年度林業の動向に関する年次報告」（林業白書）が、去る4月14日の閣議に報告され了承されるとともに、このほど公表された。
　今回の林業白書の主要な部分の概要は、次のとおりである。

Ⅰ 森林整備の新たな展開と林業・山村の振興
1	森林資源の現状と森林の役割
	○	わが国の森林は、徐々に成熟期に達しつつあるが、人工林の7割は、35年生以下であり、保育、間伐等が必要である。
	○	健全な森林は、発達した樹木の根や地面を覆う下層植林等が土砂の崩壊と流出を防ぎ、また、雨水の多くを地中に浸透させ、徐々に河川等に流すことで洪水を防止し、渇水を緩和している。さらに、二酸化炭素を吸収し、炭素として貯蔵する。

2	森林整備の新たな展開
	（健全で機能の高い森林の整備）
	○	国民の森林に対する多様な要請に対応し、森林の質的な充実と公益的機能の一層の発揮を図ることに重点を置いて森林整備を推進していくことが課題である。
	○	森林の公益的機能の発揮を図るため、間伐の重点的、集団的な実施、複層林施業、長伐期施業等の推進、広葉樹の育成等を通じて、多様な森林を整備していく。
	（市町村の役割の強化）
	○	多様な森林の整備を計画的に推進するため、森林整備における市町村の役割を強化し、地域の実情に応じた森林整備を推進する。
	○	このため、現行の森林計画制度を拡充するとともに、地方財政措置等により市町村が行なう森林整備への取組みに対する支援を強化する。
	（国民の幅広い支援による森林整備の推進）
	○	近年、下流の自治体等が上流の森林整備を行う取組みが増加し、その形態として、（1）森林整備費用の助成、（2）分収林契約、（3）水資源の取得などがあり、これらは、流域を単位とした森林整備の推進にとって重要な取り組みである。
	○	総理府の世論調査によると、何らかの形で森林づくりに参加したいとする国民の比率は7割に増加している。このため、緑の募金、ボランティア活動等により国民の森林整備への自主的参加の推進が必要である。

3	林業の振興
	○	効果的な林業生産活動を通じた森林整備を推進するためには、林業経営に意欲的な林家等を中心として、林地の取得や施業の受託による経営規模の拡大、特用林産物の生産による経営の多角化等を進め、経営基盤の強化を図ることが重要である。
	○	森林整備の重要な担い手である森林組合等の林業事業体を育成強化するとともに、林業公社、森林開発公団による適切な森林整備を推進する。






4	山村の振興
4	○	農林産物の供給、国土の保全等に重要な役割を果たしている山村の振興を図るため、地域資源の活用、生活環境の整備、都市との交流の促進等を通じて、魅力ある地域づくりを推進する。