U木材需給の動向と木材産業の振興
1 木材需給と木材貿易
平成8年の木材需要量は1億1,233m2となった。用途別では、製材用材、パルプ・チップ用材の需要が減少し、合板材の需要が増加した。
木材の供給では、集成材や木質ボード類の輸入が増加(対前年で45%、合板は13%、パーテクルボードは53%の増)した。また、産地別の輸入状況は、丸太では南洋材の割合が増加し、製材品では品質管理が徹底されている欧州材の割合が増加して、米材に次ぐ位置を占めた。
我が国が関税の引下げを段階的に実施する中で、国際的には更なる自由化に向けた動きがあり、これへの適切な対応が求められている。秩序ある外材輸入の下で、成熟しつつある国内の森林資源の活用が必要である。


2 木材産業の経営環境
近年、住宅の耐震性、高断熱性の向上、施工期間の短縮等に対応するため、木材の強度、寸法精度等が一層重視される傾向にあり、乾燥材、集成材等の高次加工材の需要が増加するなど木材の需要構造が変化をきたしている。
平成9年は、前年の新設住宅の駆け込み需要の反動、景気の不透明感等による新設住宅着工戸数の減少、製材品価格の下落等から製材業をはじめ木材産業の経営環境の厳しさが増大した。


3 木材産業の振興
林業、木材産業の活性化を図るためには、地域材の低コスト安定供給体制の確立が必要である。このため、地域の木材関係者による体制整備や施設整備が急務となっている。
また、森林所有者等と木材製造業者等との間で、木材の安定的な取引関係の確立や木材の総合的な加工・流通体制の整備を推進し、国産材を使用した高次加工材、乾燥材の生産拡大に取り組み、品質、強度等の性能が明確な木質製品を供給する。


4 国産材の利用推進の取組み
林業、木材産業の活性化は、雇用の場の創出等を通じて地域経済に寄与するものである。さらに、林業生産活動を通じた森林の整備に貢献することになる。
このため、(1)消費者ニーズに対応した多様な商品の開発や供給、(2)木材供給者、大工・工務店、設計者等との連携強化により、木造住宅の強度等の性能の明確化やデザイン性の向上、(3)地域の木材資源を活用した特色ある公共施設の整備等に取り組み、木材の利用拡大を幅広く推進する。


V持続可能な森林経営の達成に向けて
健全で多様な森林を造成するため、間伐、複層林の造成、伐期の長期化、広葉樹の育成等を推進するとともに、資源の循環利用のための路網整備、機械化等を推進する。
 また、森林の健全性、森林土壌や水系の状態等を把握するためのモニタリングシステムの整備を推進し、さらに、2つのモデル森林で我が国に適合した持続可能な森林経営を確立するための取り組みを推進する。
柔軟できめ細かな森林整備を推進するため、市町村の役割強化、上下流協力やボランティア活動、流域管理システム等を通じた森林整備の推進が重要である。  また、森林地理情報システム(森林GIS)を活用した森林計画の策定等が有効となる。
世界有数の森林国、木材輸入国である我が国は、世界の森林の持続可能な経営の達成に向けて、技術協力、国際機関への支援を積極的に進めることが必要であり、また、技術移転等を担う専門家、開発途上国の政策立案者、技術者等の人材の育成が重要である。