平成26年度全国山村振興連盟関東ブロック会議が、10月27日(月)〜28日(日)の2日間にわたり埼玉県山村・林業振興協議会(全国山村振興連盟埼玉県支部(支部長 福島弘文小鹿野町長))主催により埼玉県秩父郡小鹿野町小鹿野文化センターにおいて管内の会員、支部事務局等98名が参加して開催された。
 会議は、埼玉県支部 冨岡茂雄 事務局長の司会のもとで進められ、その概要は次のとおりとなっている。

1.あいさつ
 主催者挨拶が福島弘文 埼玉県支部長から、来賓挨拶が高山次郎 埼玉県農林部長か
 らあった。
  来賓として、次の者が紹介された。(敬称省略)

   農林水産省農村振興局中山間地域振興課課長補佐  杉崎浩史
   国土交通省国土政策局地方振興課課長補佐      後藤高弘
   総務省地域力創造グループ地域振興室課長補佐    原  武
   林野庁森林利用課山村振興・緑化推進室課長補佐   松本康裕

  全国山村振興連盟の役員として、次の者が紹介された。(敬称省略)

   全国山村振興連盟副会長 長野県泰阜村長       松島貞治
   全国山村振興連盟常務理事兼事務局長         岸 廣昭 

2.議事
(1)情勢報告 全国山村振興連盟 岸 廣昭 事務局長
  山村振興法改正に向けての取り組み、予算・施策実現のための活動等連盟の活動状 況について報告が行われた。

(2)国の施策説明
  農林水産省、国土交通省、総務省及び林野庁から説明があった。
 @「山村振興対策について」
          農林水産省中山間地域振興課  杉崎浩史 課長補佐
  ○ 山村振興法の概要       ○ 山村振興法の経緯
  ○ 振興山村の現状と課題(振興山村の概況、振興山村の現状と課題)    
  ○ 山村振興施策の紹介(振興山村を対象とする特別措置)
   ・ 税制特例措置(製造の事業等を営む事業者が機械等を取得した際の特別償却)
   ・ 制度資金による支援(農林漁業施設の整備等に必要な資金を融資)
   ・ 予算措置(農山漁村活性化プロジェクト支援交付金、中山間地域等直接支払交付
      金、都市農村共生・対流総合対策交付金、鳥獣被害防止総合対策交付金)

 A「国土交通省の山村振興対策について」
          国土交通省国土政策局地方振興課 後藤高弘 課長補佐 
  ○ 国土をめぐる現状
  ○ 新たな「国土のグランドデザイン」の概要
    キーワードは、「コンパクト+ネットワーク」
  ○ 集落活性化推進事業         ○ 「小さな拠点」の形成推進
  ○ UJIターン施策の推進に向けて   ○ 新たな「公」の第2弾ロケット
  ○ 多様な主体による地方部の地域づくり活動支援体制構築事業

 B「総務省における山村振興関連施策について」
          総務省地域力創造グループ地域振興室 原 武 課長補佐
  ○ 地域おこし協力隊、集落支援員
    地域おこし協力隊を3年間で3倍の3000人にする。
    地域サポート人ネットワーク全国協議会(研修会の開催等)
  ○ まちなか活性化(RMO(地域運営組織)など)
    公民連携によるまちなか再生、RMOによる総合生活支援サービス
  ○ 子ども農山漁村交流プロジェクト
    文部科学省、総務省、農林水産省が一体となって事業推進
  ○ 過疎地域など条件不利地域の自立・活性化支援
    過疎法による過疎対策、過疎集落等自立再生対策事業他

 C「林野庁の山村振興対策について」
          林野庁山村振興・緑化推進室 松本康裕 課長補佐
  ○ 平成26年度予算額     ○ 平成27年度概算要求
  ○ 新たな木材需要の創出や国産材の安定的・効率的な供給体制の構築
      2020年度までに国産材の供給量を倍増、毎年52万haの間伐を実施
     CLT(直交集成板)の普及、公共建築物等における木材利用の拡大
     木質バイオマスの利活用、木づかい運動
  ○ 森林・山村多面的機能発揮総合対策  
  ○ 今後の森林整備(森林経営計画制度の見直し)
  ○ 鳥獣被害対策         ○農観連携               


3.事例発表
@「尾ノ内百景(冷っけぇ〜)氷柱の取組みについて」
          小鹿野町 尾ノ内渓谷氷柱実行委員会 北 孝行 会長
 秩父地域は、首都圏から比較的近く「安近短」として札所巡りや長瀞の岩畳、三峯神社、秩父夜祭と自然と文化に富んでいる。近年、小鹿野町では関東最大級の面積を誇る「ダリア園」、日本一の自生地である「節分草」など、花や山岳、札所巡り等で観光客は年間で150万人の入り込み客があると推計されているが、冬になると観光客は激減していた。
 そんな中、平成20年の冬、商工青年部三田川支部部員の発案から、「尾ノ内渓谷氷柱」が始まった。尾ノ内渓谷に散水し、人工的に氷柱を作り出すもので、最初はうまくいかなかったが、地区の人々の資材提供、取水、配管などへの協力、アドバイス等を得る中で、地元とのふれあいが生まれた。マスコミにも取り上げられ、町内外からぞくぞく見学者が訪れるようになり、「冬の一大観光地」となっている。
 商工青年部で始めた事業ではあるが、部員の減少から、今後の運営を円滑に行うため、平成23年10月に尾ノ内氷柱実行委員会を設立し、氷柱関係業務を担っている。平成25年度(25〜26年)の入場者は約3万5千人となっている(中学生以上は200円の入場料を徴収)。町内の飲食店にも大きな経済効果をもたらしている。
 この青年部の活動は、平成26年2月、第14回商工会青年部全国大会(徳島大会)において、全国青年部連合会顕彰(まち)(地域)づくり部門を受賞した。
この事業を契機として、「河原沢よってがっせー委員会」が平成25年4月に設立され、尾ノ内渓谷を中心とした遊歩道の整備、もみじ植栽等景観保全、観光農園、郷土料理・農産物の販売、氷柱交流会等各種イベントへの支援・参画、郷土料理に関する研修会、おもてなし講座の開催等の活動を行っている。
 魅力ある地域づくりは、その町に住んでいる「人」そのものが行動し、その事業を行っている一部の方々の満足や欲ではなく、広く波及や恩恵、又は利用することにより地域全体の活力の向上が出来るものと考える。

A アスガキボウ委員会の取組みについて
        横瀬町 アスガキボウ委員会 町田康雄 委員長
(1)アスガキボウ委員会発足までの経緯
   横瀬町芦ケ久保地区は秩父地域の東の玄関口に位置し、都心から70q圏内であり
  、国道(299号線)・鉄道(西武秩父線)も開通しており、比較的交通の良い地区である。
   しかし、中山間地域であり急激な少子高齢化が進み小学校は閉校、学校卒業後は
  地域外へ転出する人も多い(現在 200世帯 550人)。
   平成21〜22年度埼玉県事業中山間地域ふるさと事業(芦ケ久保地区)として埼玉県
  の支援により、横瀬町・JTB関東の指導・助言を受けワークショップ5回(21年度)を開
  催した。平成22年6月にアスガキボウ委員会を設立。会員は地区居住者・地区内勤務
  者及び賛同者(現会員 36名)。

(2)活動実績
  @ 芦ケ久保歩いて地域再発見(22年度 2回実施)
  A 鳥獣害対策セミナー(22・23・24年度各一回)
  B 川の応援団(22年度より6・9月各2回実施)
  C 食と地域の交流対策交付金事業(23〜25年度 農林水産省国庫交付金事業)
  D 先進地視察
  E 彩の樹の森づくり事業(23〜27年度 県補助事業)
  F 埼玉県ふるさと支援隊受け入れ(24年度〜)
  G 農との共生田園都市豊かなくらし満喫事業(県補助 25〜27年度)
  H アスガキボウふれあいまつり(24年度〜)協力 県立大学ふるさと支援隊・食生
     活推進委員・各種団体
  I あしくぼの氷柱事業(25年度11月〜)
  J 高齢者セーフティネットモデル地区整備事業(26年度6月〜)

(3)広報

  ホームページの運用(24年5月〜)、報告書の作成配布(22年度〜年一回)

4.講演
          「幸福な田舎のつくり方」  食環境ジャーナリスト 金丸 弘美 氏
  講師の金丸氏は、執筆活動のほか環境に配慮した持続社会を目指す活力ある地域づ
 くりアドバイス事業、食からの街づくりと商品開発のアドバイス事業、六次産業化と人材
 育成事業、食育と地域づくりを連携させた食のワークショップのプラニング、プローモーシ
 ョン、ツアーへの展開といった食のアドバイザー事業、また、学校を対象とした公開事業
 、大学から幼稚園まで各学校での食の講師などもてがけている。

  農業、食材に関しては、ここ15年間で北海道から沖縄まで全国の農村や町など1000ケ
 所を巡っている。
  多数の著書があるが、最近、「美味しい田舎のつくり方」(学芸出版社)を出版し、「そこ
 にしかない地域の価値を形にし、小さな規模で直接お客さんに届ける。生産と消費をつ
 なぎ、地方の仕事を生み、自らの営みで地域を巻き込む、ローカル・スモールビジネス。
 」を紹介している。
  当日の講演では、高知県等におけるいくつかの事例が紹介された。

5.次期開催県あいさつ
          次期開催県である、長野県の松島貞治 泰阜村長から挨拶があった。

  翌日は、次の個所を視察した。
 ○ ダリア園
  「両神山麓花の郷」は、平成17年から整備され、園内にはマグノリア類(木蓮の仲間)
  、カルミア、ビブルナム・リリーメルトンの樹木と通路に沿ってヘメロカリスが植えられ
  ている。ダリアの栽培は平成19年から行われ、平成26年は340種類、5,200株のダリ
  アが植え付けられてる。広さは、10,000m2。整備協力金として中学生以上400円が徴
  収される。9月〜11月初めまで開園。
 ○ (有)秩父ワイン
  1889年、秩父・両神村に生まれた浅見源作は、「ロビンソン・クルーソー漂流記」から
  ヒントを得てブドウ造りを開始し、1936年にワイン造りに成功。1940年に「秩父生葡萄
  酒」として売り出す。1959年にフランス人神父により「ボルドーの味」と賞賛されてから
  、秩父の銘醸ワインと評価も高まってきた。「生きた土からのみ本物のブドウの味が
  生まれる。すこやかに育まれたブドウから、手をかけて愛情こめてワインに造り上げ
  る。」との信念で「源作印ワイン」が製造されている。
 ○ おがの化石館
  赤平川右岸に高さ100m、幅約400mに及ぶ、今から1,500万年前に堆積した地層の
  大露頭がある(第三紀層。町指定天然記念物「ようぼけ」)。ここから、貴重な化石が
  多数発見されている。それらを展示している。





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