2.奥田 貢 和歌山県北山村長

【村の概況】
 私共の村は、和歌山県でありながら、三重県と奈良県に囲まれた村全体が飛び地となっている全国唯一の村です。村から外へ出る時は、必ず、三重県か奈良県を通らなければなりません。こういう特殊な村であります。かって、人口が2千人くらいいましたが、現在は残念ながら475人に減っています。典型的な過疎、少子化・高齢化の村になってしまいました。
 過疎だ過疎だといって悩んでいても仕方ありませんので、我々は今この470人そこそこの人口がこの北山村という地域に一番似合ったものだと発想を変えて、皆さん我々自分自らがこの地域を守るのだということで頑張っております。
 平成の大合併も拒否しました。全国180以上の村の中で下から8番目に人口の少ない村、本州では一番人口の少ない村です。平成の大合併で残念ながら和歌山県唯一つの村となりましたが、我々は地域の基本は村であるとの考えで、村を大事にして村をなくしたくないという思いで頑張っております。

【地域づくりの基本理念】

 北山村の地域づくりの基本理念ですが、小さな村だからこそできることが沢山あります。自治体の良し悪しが人口の多少で議論されることがありますが、人口の少ないところは少ないなりにやれることが沢山あります。まず、そのいいところをとって地域づくりをしたいと思っております。
 地域資源を活かした自立性の高いむらづくりということで、基本は「3+1」、つまり、「筏・じゃばら・ICT+教育・子育て」を柱としております。地域資源を活かし環境に配慮した筏・じゃばら、そして地の利の悪さを逆手にとってのICT、この3つをしっかりやっていく。プラス1は教育・子育てです。人材育成ということであります。子供達は地域の宝、これをいかに育てていくかということです。
 地域住民参加型自治と自立の推進ということが一番大事だと思っています。自らの地域は自ら守るということです。筏・じゃばら・温泉事業は全て村の直営事業で、役場職員が最先端で頑張っています。北山村株式会社ということになりますが、民間企業感覚と発想でやっています。
 地の利の悪さを活かすといくことで、ICTの活用を推進しています。10年後の地デジ移行を念頭に、平成14年に全世帯に光ケーブルを導入し、地デジ対応とブロードバンド化は完了しました。

【高齢化社会への対応】

 高齢化社会への対応ですが、高齢化率は47.6%で、皆元気です。この地域をこれまで守り育ててくれた諸先輩達へ恩返しのためにも、いろんな対策に取り組んでいます。

【観光筏下り】

 地域資源活用としての観光筏下りですが、北山村で伐った材木を新宮まで北山川で流す北山川の筏の歴史は600年以上あります。残念ながら昭和30年代に電力施策により北山川にも10を超すダムが出来ました。私の村にも上流と下流に二つのダムが出来て、完全にダムに挟まれた村になりました。その時に筏流しも終焉したわけでありますが、先人達は寂れていく故郷をなんとかしようということで、筏流しを観光としてやって行こうということで取り組んだのが観光筏下りであります。全国でここだけです。
昭和54年に復活し、すでに34年の歴史があります。これが村の大きな産業です。

【北山村特産物じゃばら】

 「じゃばら」ですが、これは、北山村だけに元々自生していた独特の柑橘です。スダチなどの仲間ですが、世界にもここにしかないということで、種苗登録をしましてしばらくは地域外に出ることはなかったのですが、期限が切れて現在は何処でも栽培できます。「じゃばら」といえば北山村が本家本元であります。
 かってはお荷物でしたが、ICTなどで大ブレークして、今や北山村の大きな産業となっています。私が村長に就任した時には年間大体2千万円くらいの売上でしたが、今では10倍を超えました。これを加えて、村の直営事業の売上は年間4億円になっています。「じゃばら」は6次産業化の最先端です。生産、加工は村で、販売は村の直営事業で、インターネット、スーパー、百貨店を通じて年間2億円販売しています。村の税収は6千万円ですが、それに対して4億を超える直営事業の収入であり、非常に大きな産業になりました。

【環境負荷の低減】

 環境負荷への低減ということで、バイオマスボイラーとカーボンオフセットを掲げております。これはやはり、森林資源をいかに有効に活用するかということです。
 おとくろ温泉にバイオマスボイラーを導入ましたが、これは薪を直接投入するものです。二酸化炭素を減らし、有効に間伐材を活用することができることになります。それからじゃばらまる10本1,200円に100円の寄付金を加えたカーボンオフセット商品を購入してもらい、その資金を山の手入れに充てることにしています。

【ICTの活用】

 ICTの関係では、ブログポータルサイト「村ブロ」を行っています。自治体が初めて運営し始じめたのが私の村でして、19年からいろいろ議論をしまして、20年から開始しました。今は色んな機能がありますが、当時はブログがメインでした。現在会員数が1万7千人程度、1日のアクセス数が約25万です。機能は、ブログ機能は当然ですが、ECサイト、ビレッジ機能など沢山あります。これらが評価されて日経地域情報化大賞日経MJ賞も受賞しました。現在、北海道上士幌町、長野県筑北村等とブログを通じて交流・連携を図っています

【子育てと教育】

 教育と子育てですが、人材育成は大事でありますし、子供達は地域の宝、それをしっかりと光る宝にするというのは我々行政の仕事でありますから、一生懸命取り組んでいます。人数が少ない子供達を都会の子供達に負けないようにしっかり育てていく必要があります。
 都会の人が何故北山村に来て住まないのかなとお母さん方と話すと「塾がないから」と言います。塾がないのなら村で塾を作ろうかということで無料村塾を開いています。英会話などの英語、数学、書道を教えていますが、これからの国際化に向けて特に英語に力を入れています。小中一貫ということで小中学校連携授業を行っていますが、ここでも英語教育に力を入れておりまして、正規の倍の時間をとっています。その集大成として、中学校の修学旅行は海外研修旅行としています。2年生と3年生が一緒になり2年に一度実施しています。2週間の日程で、22年はアイルランド、24年はシンガポールに行っています。


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