政府は、「日本再興戦略ーJAPAN IS BACKー」を平成25年6月14日の閣議において決定した。
 安倍政権は、日本経済の再生に向け、@大胆な金融政策、A機動的な財政政策、B民間投資を喚起する成長戦略という3つの政策を、「3本の矢」として同時展開していくこととしているが、「日本再興戦略」においては、第1の矢「大胆な金融政策」、第2の矢「機動的な財政政策」を受け、企業や国民の自信を回復し、「期待」を「行動」へ変えるべく、基本的な考え方を「成長への道筋」として整理している。
 全体の構成は次のようになっているが、ここでは、第Uの二の「テーマ4:世界を惹きつける地域資源で稼ぐ地域社会の実現」を紹介します。

  第T.総論
  1.成長戦略の基本的考え方
  2.成長への道筋
  3.成長戦略をどう実現しくか
  4.進化する成長戦略
  5.「成長への道筋」に沿った主要施策例

  第U.3つのアクションプラン
  一 日本産業再興プラン
   1.緊急構造改革プログラム(産業の新陳代謝の促進)
   2.雇用制度改革・人材力の強化
   3.科学技術イノベーションの推進
   4.世界最高水準のIT社会の実現
   5.立地競争力の更なる強化
   6.中小企業・小規模事業者の革新

  二 戦略市場創造プラン
   テーマ1:国民の「健康寿命」の延伸
   テーマ2:クリーン・経済的なエネルギー需給の実現
   テーマ3:安全・便利で経済的な次世代インフラの構築
   テーマ4:世界をきつける地域資源で稼ぐ地域社会の実現

  三 国際展開戦略
   1.戦略的な通商関係の構築と経済連携の推進
   2.海外市場獲得のための戦略的取組
   3.我が国の成長を支える資金・人材等に関する基盤の整備


 テーマ4:世界をきつける地域資源で稼ぐ地域社会の実現

 社会像 :世界を惹きつける地域資源ブランドを成長の糧とする誇り高い地域社会
 戦略分野:農林水産物食品・6次産業、コンテンツ・文化等の日本ブランド
 市場規模:【農業】(国内)農業・食料関連産業生産額100兆円⇒120兆円(2020年)
                うち、6次産業の市場規模 1兆円⇒10兆円(2020年)
            (海外)世界の食市場規模(※)340兆円⇒680兆円(2020年)
                            ※AT カーニー社推計
        【観光】訪日外国人の我が国国内での旅行消費額
                         1.3 兆円(2010年)⇒4.7 兆円(2030年)
 雇用規模:【農業】新規就農し定着する農業者を倍増し、10年後に40代以下の農
            業従事者を約20万人から約40万人に拡大
        【観光】訪日外国人の旅行消費がもたらす雇用効果
                           25万人(2010年)⇒83万人(2030年)



(1) 2030年の在るべき姿
 日本各地には世界を惹ひきつける高品質な農林水産物や観光資源などの魅力的な地域資源が豊富に存在し、「日本ブランド」ともいうべき価値が存在している。こうした地域の資源を活用し、世界の消費者や企業を惹きつけることで、自律的・持続的に稼ぎ、豊かに発展していく地域社会を成り立たせる。
 このため、次の2つの社会像の実現を目指す。
 @ 世界に冠たる高品質な農林水産物・食品を生み出す豊かな農山漁村社会
 A 観光資源等のポテンシャルを活かし、世界の多くの人々を地域に呼び込む社会

(2) 個別の社会像と実現に向けた取組
@ 世界に冠たる高品質な農林水産物・食品を生み出す豊かな農山漁村社会
T) 社会像と現状の問題点
 消費者志向のマーケットインの発想と地域の特性を活かした農林水産業とのマッチングにより、日本の優れた農林水産物・食品が世界中に輸出され、地域の農林水産物・食品が世界市場に広く行きわたるようにする。多面的機能を適切かつ十分に発揮しつつ、農林水産業が成長産業となり、若者・高齢者・企業等様々な主体と農林水産業のコラボレーションが進み、イノベーションの創出拠点となる活発な農山漁村社会の実現を目指す。
 このような農林水産業の成長産業化は、我が国の経済再生を支える分野であるが、現状を見れば、日本の農業は、生産者の減少と高齢化の進展、耕作放棄地の増加等の構造的な問題を抱えている。これらの課題を解決するためにも、強みを引き上げ、弱みを克服する非連続的な施策を導入し、農業の構造改革を進める必要がある。また、日本は、優良な農地や豊富な森林・海洋資源に恵まれ、安全・安心かつ高品質の農林水産物を生産する技術を有しており、多様性に富む農林水産物が豊かな食文化を形成しているなど、多くの面で比較優位にあるものの、産業として捉えた場合、本来有する国際競争力を活かしきれていない。

U) 解決の方向性と戦略分野(市場・産業)及び重要施策
 農林水産業の競争力を強化する観点から、生産現場の強化や需要面の取組、それらをつなぐ6次産業化等を一体的に進めるとともに、経営所得安定対策(旧.個別所得補償制度)を適切に見直し、あわせて、農林水産業の多面的能の発揮を図る取組を進め、新たな直接支払制度の創設の検討を行う。農林水産業を成長産業とし、今後10 年間で6次産業化を進める中で、農業・農村全体の所得を倍増させる戦略を策定し、実行に移す。その着実な推進のため、官邸に設置した「農林水産業・地域の活力創造本部」において、今後の政策の方向性を「農林水産業・地域の活力創造プラン(仮称)」として、できるだけ早期に取りまとめる。
 具体的には、まず、農地を最大限効率的に活用できるようにするなど、生産現場を強化する。担い手への農地集積・集約や耕作放棄地の解消を加速化し、法人経営、大規模家族経営、集落営農、企業等の多様な担い手による農地のフル活用、生産コストの削減を目指す。今後10 年間で、全農地面積の8割(現状約5割)が担い手によって利用され、資材・流通面での産業界の努力も反映して担い手のコメの生産コストを、現状全国平均(1万6千円/60kg)から4割削減し、法人経営体数を2010年比約4倍の5万法人とすることを目標とする。
 このため、以下の取組について、本年秋までに具体的スキームを固め、速やかに法制度・予算措置を含む必要な措置を講ずる。その際、農業界と経済界の連携や民間活力の活用に十分留意し、信託の活用についても検討する。

 ○担い手への農地集積、耕作放棄地の発生防止・解消等による競争力強化
 ・担い手への農地集積と集約化により、農業構造の改革と生産コストの削減を強力に
  推進するため、農地の中間的受け皿として都道府県の段階に農地中間管理機構(仮
  称)を整備し、活用する。
   具体的には、農地中間管理機構が地域内農地の相当部分を借り受け(準公有状
  態)、大区画化等の基盤整備を行った上で、担い手(法人経営、大規模家族経営、
  企業、新規就農者等)への農地集積・担い手ごとの農地の集約化に配慮して貸し付け
  ることにより農地利用の再配分を行うスキームを確立し、積極的に活動できるようにす
  る。その際、農地中間管理機構は、市町村・民間企業等に業務委託を行い、地域の
  総力を挙げて取り組む体制とする。
 ・耕作放棄地については、耕作していた所有者の死亡等により耕作放棄地となるおそ
  れのある農地(耕作放棄地予備軍)も解消対策の対象とするとともに、耕作放棄地
  の所有者に対し農地中間管理機構に貸す意思があるかどうかを確認したり、所有者
  不明の耕作放棄地について、公告制度を使いやすくし、裁定により同機構に利用権
  を設定する等、手続きの大幅な改善と簡素化を図る。
 ・これらの措置と併せて、地域の農業者の徹底した話合いにより担い手への農地集積
  の合意形成を図る「人・農地プラン」の作成・見直しを推進し、農地の集積・集約
  化を着実に進める。
 ・なお、2009 年に完全自由化されたリース方式による企業の農業参入を、農地中間管
  理機構も活用しながら積極的に推進する。また、農業生産法人の要件緩和などの所
  有方式による企業の農業参入の更なる自由化について、2009年に実施したリース方
  式での参入の完全自由化と農業生産法人の要件緩和後の参入状況の検証等を行う
  とともに、農地の集積・集約化の推進に与える影響も考慮しつつ、検討する。
 ・生産性向上に結び付く農地集積をサポートするため、都道府県等が行う大区画化等
  の農地整備や農業水利施設の整備を農地中間管理機構も活用しながら推進する。
 さらに、新技術の活用、異業種連携等により、農業にイノベ.ションを起こす。この中で、マーケットインの発想を定着させ、6次産業の市場規模を現状の1兆円から、2020 年に10 兆円とする。

 ○農商工連携等による6次産業化の推進
 ・農林漁業成長産業化ファンドの本格展開や、異業種連携等の促進により6次産業化
  を推進する。
 ・健康に着目した食の市場拡大による健康長寿社会の実現と国内需要・市場拡大、福
  祉・教育・観光等と連携した都市と農村の交流の拡充等を図るため、食の科学的知
  見の体系化に向けた産学官の体制整備、食習慣と健康の関連性の調査等を来年度
  から実施する。また、食育を国民運動として推進するため、農林漁業体験を経験した
  国民の割合を5年後に35%とすることを目標として食や農林水産業への理解増進を図
  る。  ・新品種・新技術の開発・普及や知的財産の保護と積極的な活用により「強み」
  のある農畜産物の創出を進め、年内に品目ごとの新品種・新技術の開発・保護・普及
  の方針を策定・公表する。また、海外での遺伝資源獲得の円滑化や知的財産権の侵
  害対策等、我が国の種苗産業の共通課題の解消を総合的に推進するための取組体
  制を整備する。
 ・異業種との連携による地域における消費拡大や学校給食等における利用拡大等の取
  組とともに、多様な事業者からなる協議会が主体となる「食のモデル地域」を本年
  中に設け、国産農林水産物の利用拡大に向けた取組を推進する。
 ・再生可能エネルギーを活用した農林漁業の発展を図る取組を推進するための枠組み
  の構築等を進めつつ、今後5年間に約100 地区で地域のバイオマスを活用するなど
  産業化とエネルギー導入を重点的に推進する。

 また、日本の農林水産物・食品の輸出促進等による需要の拡大を図る。2020年に農林水産物・食品の輸出額を、現状の約4千5百億円から1兆円とすることを目指す。このため、国別・品目別輸出戦略を策定する。また、世界の料理界で日本食材の活用推進(Made FROM Japan)、日本の「食文化・食産業」の海外展開(Made BY Japan)、日本の農林水産物・食品の輸出(Made IN Japan)の取組を、日本貿易振興機構(JETRO)等とも連携を深めつつ、一体的に推進する。

 ○国別・品目別輸出戦略の策定
 ・日本食を特徴付けるコンテンツ(水産物、日本酒などのコメ・コメ加工品、牛肉、
  青果物等)の輸出拡大を図る観点から、品目別の農林水産物・食品の輸出額に係る
  数値目標、輸出環境の整備等に係る目標を年内に設定する。
 ・植物検疫などの輸出に必要な手続を卸売市場で行うことにより、スピーディーな輸
  出を実現するとともに、産地間連携による日本の農林水産物を年間を通じて安定的
  に供給できる体制の構築を実現する。
 ・日本の食品の安全・安心を世界に発信するため、海外の安全基準に対応するHACCP
  (危害分析・重要管理点)システムの普及を図る観点から、マニュアルの作成や輸出
  HACCP取得支援のための体制の整備を来年度までに実施するとともに、輸入手続の
  際に提出を求められることがある自由販売証明書の発行体制を今年度中に構築す
  る。

 ○食文化、食産業のグローバル展開
 ・日本食材と世界の料理界とのコラボレーションの促進や、日本食の普及を行う人材
  育成等を通じ、日本食材の活用を推進(Made FROM Japan)する。
 ・ビジネス環境の整備、人材育成、知的財産の侵害対策、出資による支援等を通じて、
  日本の「食文化・食産業」を海外展開(Made BY Japan)する。
 ・国別・品目別輸出戦略の策定、ビジネス環境の整備、出資による支援等を通じて、
  日本の農林水産物・食品を輸出 (Made IN Japan)する。
 ・上記の食産業のグローバル展開の実現に向け、官民共同による意見交換の場の設
  置、専門知識や経験を持つ人材を確保・活用する仕組みの構築、フードシステム全体
  の海外展開を図る取組を来年度から実施する。
 ・また、「食」がテーマの「2015年ミラノ国際博覧会」等への出展を通じ、我が国農林水産
  業・食関連産業の強みや日本食・食文化の魅力を発信する。

 さらに、新たな育種技術や高機能・高付加価値農林水産物の開発、IT・ロボット技術等の科学技術イノベーションを活用した生産・流通システムの高度化等を通じ、こうした市場・産業の拡大・発展を図る。

 ○新技術による農林水産物の高機能化、生産・流通システムの高度化
 ・ゲノム情報等を活用した農林水産技術の高度化(重要形質を改良するための育種技
  術の開発等)、高機能・高付加価値農林水産物の開発(予防効果等のある付加価値
  の高い食品を個人のニーズにあわせて供給するシステム(「テーラーメイドシステム」
  の構築、医学・工学などとの融合等))を2030年までの実現を目指して、研究開発を
  推進する。
 ・IT・ロボット技術等を活用した農林水産物の生産・流通システムの高度化(大規模資源
  ・省力・軽労化栽培・生産体系の開発等)、微生物やバイオマスによるエネルギー生産
  技術の開発・普及を目指して、研究開発や大規模実証を推進する。
 ・高い生産技術を持つ篤農家の知恵を人材育成や収益向上等、多面的に利活用する新
  たな生産方式の構築を2016年までに達成するとともに、農場から食卓までをデータで
  つなぐトレーサビリティー・システムの普及によるバリューチェーンの構築に取り組む。
  これらのIT 利用技術により、生産された農産物と当該技術の海外展開を2017年度以
  降成長軌道に乗せる。

 また、新たな木材需要の創出や国産材の安定的・効率的な供給体制の構築、施業集約化等を進めるとともに、国産水産物の消費・輸出拡大、適切な資源管理等を通じた収益性の高い持続可能な漁業・養殖業の推進等により、林業及び水産業の成長産業化を図る。
  


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