U 岐阜県白川町長 今井良博

 西は長野県、南は愛知県に接しています。人口は1万人を切ってどんどん減っていく、高齢化率は高まっていく、しかし高齢者は増えない、10年経っても一人も増えない、
ということはほとんど飽和状態になっているということで、現在38%くらいの高齢化率となています。一人で10町歩、20町歩も耕作する平坦地の農業と山村地域の農業はもともと違うと思っています。日本の国土は山村地域があるからこそ日本の国土があるのであって、都会だけで日本があるわけではありません。山村地域を支えていくことが最も大事なことではないかと思う一人であります。
 これまでどういうことに取り組んできたかということでありますが、地域はほとんど棚田ですが、極めて重労働であるということから、国のいろんな制度を活用して土地基盤整備を進め、大型機械が導入できるような田圃ができました。農耕牛馬で耕作していたのがトラクターやコンバインを導入するということになってお金がいるが、お米の価格は上がらず、農地を守るだけになっていた。出稼ぎ、二種兼業が増え、農作業への従事時間は少なくなってきて、苗を購入したり、化学肥料を投与したりするようになった。また、日本国民が減り、食べる量も減っていく、現在60kg食べないということでお米が余る。一袋(30kg)8千円くらいですから、1万6千円あれば1年間食べていける。もしベトナムの一袋250円のお米を輸入すると日本で一袋1千円となりますが、二袋2千円で1年間食べていける。
 こういう状況の中で、山村を守っていくためには、農業を守っていかなくてはいけないということで考えたのが集落営農組織であります。非常に少ない、小さな組織であります。自民党政権時代の5ha、10haという国の方針に従って組織しています。民主党政権になって、50ha、100haでなければ食っていけないという話がありましたが、そういうことでは山村は守れないぞということで、5ha、10haの営農集落組織を作ってきました。中には法人化したものもありますし、特定集団の認定も受けたところもあります。
 それから、都市と農村の交流ですが、農園付きコテージを19棟建てておりまして、月額6万円で5千円返していますので、月額5千5百円の家賃で、住民登録はしないでいいとうことにしています。できればふるさと応援寄付金をいただいて、それで税金分を賄えないかなと思っています。現在は全ての建物に入居しています。
6次産業化については、この集落営農組合の転作大豆を使って、20トンから30トン程度の豆があればいいのですが、その豆を使って、白川産大豆100%のとうふを町民向けに大体1丁150円で買ってもらっています。
 次に、味噌女(みそめ)会についてですが、これは法人化していません。味噌は難しいのですね、種付けして寝せておく時間が長く、全然働けない。味噌、醤油はいいのですが、なかなか会社を作ってまでやる状況にはありません。よくよく考えてみると日本の食料はお米、味噌、漬物にしても非常に安いですね。高いのは外国から入ってきているもので、それを食べて皆が喜んで日本の食生活は非常に上がったといっているが、全く間違っていると思っています。
 最後に第6回 全国水源の里シンポジウムのことですが、「日本の宝 水源の里」ということで実施しました。その結果を「水の源」の特別編ということで白川町で作成したパンフレットをお手元に配布しています。「上流は下流を思い、下流は上流に感謝する」という気持ちを大事にしていかないといけない。山村振興だけでは、どうしても日本の全体の経済を支えることはできません。でも、日本の国土を支えるのは山村であります。ですから、水源の里の重要性をもっともっと考えてもらいたいと思っています。明治大学教授の小田切先生の基調講演の最後に「都市の再生なくして、農山村の再生なし。農山村の再生なくして、都市の生き残りなし。」という言葉がありますが、これをサブテーマにして、「上流は下流を思い、下流は上流に感謝する」に付け加えて、しっかり全国にPRしていきたいと思っています。私どもは木曽川上流ですから、下流は名古屋であり、そこにどんどんPRしていかなくてはならない。現在、木曽川シンポジウムというのがあり、長野県と一緒になって講演に行ったところであります。
 次に記載している「緊急報告」であります。これも大変な問題で、日本の山林を中国資本、ヨーロッパなどの外資が狙っているとよく言われますが、日本の山が欲しいということは日本の豊かな緑と水が欲しい、水を取られているぞということで、昨年開催された大分県佐伯市でも問題となり、今回、その問題について東京財団の吉原祥子さんに報告をお願いしました。
 地元の実践報告も2つ行いました。一つは営農集団の取組、一つは総務省が一生懸命取り組んでいる地域交流応援隊の活動です。
そして、パネルディスカッションを行いました。
 最後に大会アピールを記載していますが、ここには森林環境税の問題、なんとか森林吸収源対策に少しでも財源が欲しい、山の手入れのために道を作ったり、間伐をしたりするお金がほしいということをアピールしました。
 後は現地視察ですが、三つのコースで行いました。その一つの東濃桧の里林業コース
ですが、ここには600キロの木質バイオマス発電施設である「森の発電所」があります。また、震災復興のための災害仮設住宅が注目されていますが、東海、東南海、南海地震が中部地方に何年先か知りませんが必ずくるということで、プレハブ住宅に負けないような木造の住宅を現在2棟展示しています。大体500万円くらいかかりますが、パネル式のもので、必要な時に、100棟、200棟単位で建てるというものです。 その他、いろいろ実施しました。
 最後のページに全国水源の里連絡協議会のことが記載してありますが、現在180くらいの自治体が会員となっていますが、前京都府綾部市長の四方さんが始めたもので、現在は山崎綾部市長が会長を務めています。山村地域だけの振興はない。しからばどうするかということですが、都市と一緒になってやるということです。我々は北海道のこととか九州のことを考えてもなかなか出来ません。でも、川の上流と下流というものは必ずくっ付いている、上から物を流せば下に行く。川上、川中、川下が同時に発展していかないとその地域は駄目になると思います。そういうことで水源の里としていいまちをつくるよう一生懸命頑張っています。皆さん一緒に頑張りましょう。

資料 白川町概要


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