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政府は、平成23年7月26日の閣議において「森林・林業基本計画」の変更を閣議決定した。 公表された「森林・林業基本計画の変更について」及び「森林・林業基本計画の抜粋」(まえがき、第1 森林及び林業に関する施策についての基本的な方針、第3、1(6)森林を支える山村の振興)を紹介します。 森林・林業基本計画(以下「基本計画」という。)は、森林・林業基本法(昭和39年法律第161号)第11条の規定に基づき、森林の有する多面的機能の発揮及び林業の持続的かつ健全な発展に向け、森林及び林業に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために策定するものであり、おおむね5年ごとに見直すこととされている。 このため、平成18年9月に閣議決定された現行の基本計画を変更するものである。 2.内容 基本計画には、施策についての基本的な方針、森林の有する多面的機能の発揮並びに林産物の供給及び利用に関する目標、森林及び林業に関し政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策等を定めることとされており、その主な内容は、以下のとおり。 森林及び林業に関する施策についての基本的な方針 @ 適切な森林施業の確保、施業集約化の推進、路網の整備、人材の育成など森林・ 林業再生プランの実現に向けた取組を推進するとともに、地球温暖化対策や生物多 様性保全への対応、山村の振興等を推進。 A 東日本大震災からの復興に向けて、海岸部の保安林の再生、住宅・公共施設の再 建に必要な木材の安定供給、木質バイオマス資源の活用による環境負荷の少ない 新しいまちづくりを推進。 森林の有する多面的機能の発揮並びに林産物の供給及び利用に関する目標 森林所有者等による森林の整備及び保全、林業・木材産業等の事業活動等の指針 とするため、「森林の有する多面的機能の発揮」と「林産物の供給及び利用」の目標を 設定。 @「森林の有する多面的機能の発揮」の目標については、木材等生産機能の発揮が 特に期待される育成単層林を整備するなど森林資源の循環利用を図るとともに、公 益的機能の一層の発揮を図るため自然条件等を踏まえつつ育成複層林への誘導を 推進することとし、5年後(平成27年)、10年後(平成32年)、20年後(平成42年)の目標 とする森林の状態を提示。 A「林産物の供給及び利用」の目標については、10年後(平成32年)における総需要量 を7,800万m3と見通し、国産材の供給量及び利用量の目標として3,900万m3を提示。 総需要量に占める国産材の割合は50%の見込み。 森林及び林業に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策 1 森林の有する多面的機能の発揮に関する施策 面的なまとまりをもった森林経営の確立、多様な森林への誘導、生物多様性の保全 等を推進。 @ 実効性の高い森林計画制度の普及・定着 A 適切な森林施業の確保 B 路網整備の推進 C 多様な森林への誘導と森林における生物多様性の保全 D 地球温暖化防止策及び適応策の推進 E 国民の安全・安心の確保のための効果的な治山事業の推進 F 野生鳥獣の生息動向に応じた効果的な森林被害対策の推進 G 森林を支える山村の振興 2 林業の持続的かつ健全な発展に関する施策 森林経営計画の作成とこれに基づく効率的な施業の実行、意欲ある者への長期的 な施業の委託、フォレスターなど森林・林業に必要な人材の育成等を推進。 @ 効率的かつ安定的な林業経営の育成 A 施業集約化等の推進 B 低コストで効率的な作業システムの整備・普及及び定着 C フォレスター・現場技能者等人材の育成 3 林産物の供給及び利用の確保に関する施策 効率的な加工・流通体制の整備、住宅の木造・木質化や公共建築物等の需要拡大 による木材利用の拡大を推進。 @ 原木の安定供給体制の整備 A 加工・流通体制の整備 B 木材利用の拡大(公共建築物、住宅、土木用資材、木質バイオマスの利用等) C 木材等の輸出促進 D 東日本大震災からの復興に向けた木材等の活用 E 消費者等の理解の醸成 4 国有林野の管理及び経営に関する施策 公益重視の管理経営を一層推進するとともに、国有林野の組織・技術力・資源を活 用して、林業技術の開発普及、人材育成をはじめとした民有林へのサポートなど我が 国の森林・林業の再生に貢献。 森林及び林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項 官民一体となった施策の総合的な推進、国民視点に立った施策決定の実現等。 森林は、国土の保全、水源の涵養、地球温暖化防止等の多面的機能の発揮を通じて、国民が安全で安心して暮らせる社会の実現や、木材等の林産物の供給源として地域の経済活動と深く結びつくなど、我が国が有する貴重な再生可能資源である。その恩恵を国民が将来にわたって永続的に享受するには、森林を適正に整備・保全することが重要である。 また、林業は、森林生態系の生産力に基礎を置いており、適切な生産活動を通じて、森林の有する多面的機能の発揮や山村地域における雇用の創出に大きな役割を果たしている。 政府は、森林及び林業がこうした役割を持続的に発揮できるよう、森林・林業基本法(昭和39年法律第161号。以下「基本法」という。)に基づき、森林・林業基本計画(以下「基本計画」という。)をこれまでに2回策定し、森林及び林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進してきた。 前基本計画が策定された平成18年以降においては、人工林を中心として森林資源の充実が図られるとともに、総需要量に占める国産材利用量の割合が上昇傾向で推移するなど、一定の成果を得られたところである。しかしながら、林業産出額及び林業所得の減少、森林所有者の経営意欲の低迷、国産材の流通構造の改革の遅れなど、我が国の森林・林業は依然として厳しい状況に直面している。 このような現状を打破するため、農林水産省は平成21年12月に「森林・林業再生プラン」を策定し公表した。「森林・林業再生プラン」は、「森林の有する多面的機能の持続的発揮」、「林業・木材産業の地域資源創造型産業への再生」、「木材利用・エネルギー利用拡大による森林・林業の低炭素社会への貢献」という3つの基本理念の下に、10年後の木材自給率50%以上を目指すべき姿として掲げている。この「森林・林業再生プラン」は、平成22年6月に閣議決定された「新成長戦略」において、経済成長に特に貢献度が高い施策である「21の国家戦略プロジェクト」の一つに位置付けられるとともに、同年11月、その実現に向けた検討の最終報告「森林・林業の再生に向けた改革の姿」(以下「改革の姿」という。)が公表された。ここでは、適切な森林施業の確保など森林計画制度の見直し、効率的な林業生産を行っているドイツ・オーストリア等の欧州諸国のような路網の整備、担い手となる林業事業体や人材の育成等、資源の利用期に適合した新たな森林・林業施策が打ち出され、その着実な実行が求められている。 このような中で、平成23年3月11日、東日本大震災が発生し、東北地方を中心に人命や財産、社会資本に未曾有の被害がもたらされた。森林・林業関係でも、製材・合板工場などの木材加工・流通施設や海岸部の保安林等に甚大かつ広域に及ぶ被害が発生した。このため、復旧資材の供給など当面の被災者の生活再建に向けた取組を進めるとともに、本格的な復興に向けて、海岸部の保安林の再生、森林・林業の再生の加速化による川上から川下までを通じた効率的な生産基盤の整備、地域材を活用した木造住宅等の建設の促進、再生可能なエネルギー資源である木質バイオマス資源の活用等を図り、被災者等の雇用の創出や森林資源を活かした環境負荷の少ない新しいまちづくりに大いに貢献していくことが求められている。 基本計画は、このような認識の下、今後の森林及び林業に関する各種施策の基本的な方向を明らかにするものであり、この基本計画を指針として、森林・林業に携わる関係者が各地域の条件に応じたアイデアを出し合いながら主体的に取り組むことを期待する。 なお、この基本計画は、今後20年程度を見通して定めるものとするが、森林及び林業をめぐる情勢の変化並びに施策の効果の全般にわたる評価を踏まえ、おおむね5年ごとに見直し、所要の変更を行う。 第1 森林及び林業に関する施策についての基本的な方針 森林の有する多面的機能の発揮と林業の持続的かつ健全な発展という基本法が掲げる基本理念を実現し、国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展を図るため、森林及び林業をめぐる状況等を踏まえた政策的な対応方向を明らかにして、新たな基本計画を策定する。その際には、分かりやすい施策の展開など政策改革の視点に立って、森林及び林業に関する施策を体系的に講じていくこととする。 1 森林及び林業をめぐる状況を踏まえた政策的な対応方向 (1)前基本計画策定後の推移等を踏まえた取組の推進 ア 森林の有する多面的機能の発揮に関する目標に係ること 前基本計画では、重視すべき機能に応じて森林を「水土保全林」、「森林と人との共 生林」、「資源の循環利用林」に区分し、各々の区分ごとに「望ましい森林の姿」、「誘導 の考え方」を明らかにした。そして、適正な整備及び保全の実施により、機能発揮に必 要な森林の面積・蓄積・成長量が確保され安定的に推移する状態を「指向する森林の 状態」として示し、これに到達する過程の10年後・20年後の森林の状態を目標として設 定した。 前基本計画の策定以降、育成複層林面積の増加はやや遅れているものの、京都議 定書の目標達成に向けた間伐等の森林整備は進展した。他方で、森林の有する多面 的機能の発揮に関し、次のような課題が存在している。 @ 森林資源の成熟化に伴う無秩序な伐採や造林未済地の発生とともに、里山林の放 置による植生の遷移(多様性の変化)や竹の繁茂、森林病害虫や野生鳥獣による森 林被害など、森林における生物多様性の低下が懸念されること。 A 適切な森林整備等に不可欠な丈夫で簡易な路網の普及に着手したばかりであり、 路網の整備水準はいまだ低位であることから、路網に対する関係者の知識と技術を 向上させ、関係者間の共通認識の醸成を図る必要があること。 B 森林の有する多面的機能の発揮を実現する林業については、林業事業体の多くが 小規模零細であること、高性能林業機械を活用した作業システムによる木材生産の 割合は約4割にとどまっており、その生産性・稼働率も低位な水準にあること、林業 産出額・林業所得が減少傾向で推移していること、林業就業者の雇用・就業環境の 改善が不十分な状況にあること。 C 小規模な森林所有者を中心として森林施業や経営意欲が低迷する中、効率的な森 林整備や木材生産に必要な施業集約化に向けて、森林施業プランナーの育成や森 林整備地域活動支援交付金などを活用した先進的な取組も進められているものの、 林業事業体に広く普及する状況までには至っていないこと。 D 森林・林業に関する専門的かつ高度な知識・技術を有する技術者・技能者等の育 成や配置が不十分であること。 イ 林産物の供給及び利用に関する目標に係ること 前基本計画では、望ましい森林の整備が行われた場合の木材の供給量とともに、需 給動向を見通した用途別の利用量の目標を提示した。 木材の総需要量は、平成16年から平成27年にかけて91百万m3の水準で推移すると 見込んだものの、前基本計画の策定以降、減少傾向で推移し、世界的な景気の急速 な悪化の影響を受けた平成21年には対前年比2割減の65百万m3となった。 他方、国産材の供給量(利用量)は、平成16年から平成27年にかけて17百万m3から 23m3百万に増加すると見込んだのに対し、平成20年には19百万m3まで増加したもの の、平成21年には18百万m3に減少した。なお、総需要量に占める国産材利用量の割 合(木材自給率)は、平成16年の19.0%から平成21年には28.2%に上昇した。 また、用途別の利用量については、次のとおりであった。 (製材用材) 11百万m3から14百万m3へ増加するとの見込みに対し、平成19年には12百万m3ま で増加したものの、平成21年には11百万m3に減少した。 (パルプ・チップ用材) 4百万m3から5百万m3へ増加するとの見込みに対し、平成21年には5百万m3に増 加した。 (合板用材) 1百万m3から3百万m3へ増加するとの見込みに対し、平成21年には2百万m3に増 加した。 このように、国産材の供給量及び利用量については、一部の品目で前基本計画の目 標に近づきつつあるが、次のような課題が残されている。 @ 木材生産の効率化が不十分であるとともに、供給が小規模・分散的で多段階を経 る構造にあり、安定的な供給体制の整備が不十分であること。 A 国産材を扱う一定規模以上(300kW超)の工場の数が、平成15年度の231工場から 平成19年度には270工場に増加するなど、製材・加工の大規模化については一定の 進展をみたものの、中小製材工場等の連携体制の構築が不十分であること。 B 集成材や乾燥材など品質・性能の確かな国産材製品の供給量は増加しているもの の、建築用製材品に占める人工乾燥材の割合が3割未満であるなど、依然として低 位な水準であること。 C 公共建築物等への木材利用について、戦後、国・地方公共団体が建築物の非木造 化を推進してきたこと等により、木造率は7.5%(床面積ベース)と低位な水準であるこ と。 D 国産のパルプ・チップ用材の供給量は増加しているものの、総需要に占める割合 は平成21年で2割弱と、依然として低位な水準であること。 E 収集や運搬コストの問題から間伐材の多くが未利用であり、1年間に発生する未利 用間伐材等の量は約20百万m3と推計されること。 これらの課題については、「森林・林業再生プラン」の実現に向けた具体的な方策 を明らかにした「改革の姿」の提言事項を着実に実施し、解決を図っていくこととす る。 (2)森林・林業再生プランの推進 「森林・林業再生プラン」の実現に向けた具体的な方策を明らかにした「改革の姿」で は、戦後造成された1,000万haに及ぶ人工林が本格的な利用期を迎える中、森林の 維持・培養と資源としての利用、すなわち、公益的機能の発揮と木材生産を両立させ る森林経営の確立を通じ、10年後の木材自給率50%以上を目指すこととしている。 この「改革の姿」では、これまでの森林・林業施策について、森林の造成に主眼が置 かれ、持続的な森林経営の構築に向けたビジョン及び実効性のある施策や実行体制 を確立しないまま、間伐等の森林整備に対し広く支援してきたため、施業集約化や路 網整備・機械化の立ち後れによる林業採算性の低下、需要者のニーズに応えられな いぜい弱な木材供給体制、さらには、森林所有者の林業に対する関心の低下という悪 循環に陥っていると指摘した上で、資源の利用期に適合した新たな森林・林業施策とし て、以下の抜本的な見直しを提言している。 @ 森林計画制度の見直し 市町村森林整備計画のマスタープラン化、面的なまとまりをもって集約化や路網整 備等に関する計画を作成する森林経営計画制度の創設など、持続的な森林経営を 確保するための制度的枠組みの整備等 A 適切な森林施業が確実に行われる仕組みの整備 無秩序な伐採の防止や伐採後の更新を確保するための制度の導入、森林経営計 画作成者を対象とする森林管理・環境保全直接支払制度の創設等 B 低コスト化に向けた路網整備等の加速化 森林経営計画等による施業集約化の推進、境界明確化の加速化、路網整備の考 え方の整理、林業専用道及び森林作業道の作設指針の策定、林道規程の見直し、 路網開設等に必要な人材の育成等 C 担い手となる林業事業体の育成 森林組合については、施業集約化・合意形成・森林経営計画作成を最優先の業務 に位置付け、また、流域や市町村を単位とした事業量の明確化、森林組合と民間事 業体とのイコールフッティングの確保 D 国産材の需要拡大と効率的な加工・流通体制の確立 川上から川中・川下までのマッチング機能を備えた商流・物流の構築、民有林と国 有林の連携による効率的な流通体制づくり、公共建築物等における木材の利用の 促進に関する法律(平成22年法律第36号)に基づく公共建築物における木材利用の 推進、新たな分野における木質系建材への利用拡大や石炭火力発電所での混合利 用など木質バイオマスの利用等 E フォレスター等の人材の育成 森林・林業に関する専門的かつ高度な知識・技術や実務経験など一定の資質を有 する者が市町村行政を支援するフォレスター制度の創設、森林経営計画の作成や 施業集約化を推進する森林施業プランナーの育成・能力向上、低コスト作業システ ムを実践する現場技能者をフォレストマネージャー(統括現場管理責任者)等として 登録・認定する制度の創設 この「改革の姿」における提言を踏まえ、森林計画制度等に係る森林法(昭和26年法 律第249号)の改正、森林管理・環境保全直接支払制度の創設、林業専用道及び森林 作業道の作設指針の策定、フォレスター等の育成に向けた取組が進められているとこ ろであるが、さらに、今回の基本計画において、「森林・林業再生プラン」の実現に向け た目標や施策を明らかにし、森林の多面的機能の持続的発揮、木材の安 定供給 体制の確立、雇用の創出による山村地域の活性化、木材利用の拡大等を通じ、輸入 材に対抗し得る競争力を持った林業・木材産業の育成及び環境負荷の少ない循環型 社会の構築に向けた取組を着実に推進することとする。 (3)地球温暖化対策、生物多様性保全への対応 地球温暖化が進行する中で、国際約束である京都議定書に基づく温室効果ガスの 排出削減の目標の達成はもとより、低炭素社会を構築することが必要となっている。 このため、森林の適正な整備及び保全を通じて森林による二酸化炭素の吸収量の 確保を図るとともに、木材及び木質バイオマスの利用拡大による炭素の貯蔵及び二酸 化炭素の排出削減に向けた取組を推進する。同時に、地球温暖化の影響の軽減を図 る適応策を推進していくこととする。 我が国の国土の約7割を占める森林は、多様な生物が生育・生息しており、生態系 ネットワークの根幹として豊かな生物多様性を支えている。生物多様性の保全につい ては、平成20年6月に生物多様性基本法(平成20年法律第58号)が施行され、平成22 年3月には同法に基づくものとしては初めてとなる生物多様性国家戦略が策定され た。また、同年10月に名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議で は、2011年(平成23年)以降の新たな世界目標である「戦略計画2011-2020(愛知目 標)」が採択され、「森林を含む自然生息地の損失の速度が少なくとも半減、また可能 な場合にはゼロに近づき、また、それらの生息地の劣化と分断が顕著に減少する」な ど森林・林業に関係する目標も盛り込まれている。 森林における生物多様性の保全については、既に、モントリオールプロセスの基準 の一つに位置付けられているほか、平成21年7月に林野庁が「森林における生物多様 性の保全及び持続可能な利用の推進方策」を取りまとめたところであり、このような 状況を踏まえ、森林における生物多様性の保全の方針など森林の取扱いの考え方を 明らかにし、育成林における間伐の実施、長伐期化、広葉樹の導入など、空間的にも 時間的にも多様な森林整備を推進していくこととする。 (4)国内外の木材需給を踏まえた対応 近年、我が国の木材需要は減少傾向で推移しており、今後とも我が国の人口が減少 すると推計されている中で、新たな需要の創出が期待できなければ、我が国の木材需 要は減少が続くこととなる。他方、人工林を中心に増加する森林資源を有効に活用し、 その多面的機能の発揮を図っていくためには、木材需要の拡大に向けた取組が不 可欠となっている。 このため、国内市場については、国産材需要の過半を占める住宅を中心とした建築 用材の需要拡大に加え、木造率が低位な公共建築時間的物の木造化や内装の木質 化などの木材利用、未利用間伐材をはじめとする木質バイオマスの利用拡大等を推 進する。 また、世界の木材需要が長期的に増加傾向で推移している中で、特に経済成長や 国民所得の向上から堅調に住宅建設等が進んでいる中国が製材輸入を増加させてい ることを踏まえ、我が国から中国をはじめとする海外市場に付加価値の高い木材製品 の輸出拡大を図っていくこととする。 (5)我が国経済の回復に向けた模索と山村の振興 平成20年秋以降、世界的に景気が低迷する中、経済の回復と新たな雇用の創出が 喫緊の課題となっている。平成22年6月に閣議決定された「新成長戦略」では、経済の 成長には内需拡大と雇用の確保が重要であるとした上で、森林・林業については、経 済成長に特に貢献度が高い分野の一つとして「森林・林業再生プラン」が国家戦略プ ロジェクトの一つに位置付けられるなど、大きな期待が寄せられている。 しかしながら、我が国の国土の約5割、森林面積の約6割を占める山村地域におい ては、過疎化・高齢化が進行し、集落の機能が低下するなど、森林の適正な整備及び 保全に支障を来すことが危惧される状況にある。さらに、山村などの集落周辺に位置 する里山林は、かつては薪炭の生産など人々の日常的な利用を通じてシイ・カシ・クヌ ギ・ナラなどの広葉樹を主体とする森林が維持されていたが、薪炭需要の減少に伴 い、その多くが放置された状態にある。 一方、近年は再生可能エネルギーの重要性が国民に広く認識されつつあり、山村集 落周辺の里山林は、チップ原料やエネルギー利用など木質バイオマスの供給源として の期待が高まっている。 このため、山村地域の主要産業である林業の再生を通じ、森林の有する多面的機 能の発揮、山村地域における雇用の創出、さらには、我が国経済の回復に貢献してい くこととする。 (6)東日本大震災からの復興に向けた取組 平成23年3月11日、東日本大震災が発生した。これにより、多数の建築物が全半壊 するとともに、飛砂・風害・潮害の防備など地域の生活環境や農地の保全などに重要 な役割を果たしてきた海岸部に所在する保安林等に甚大かつ広域に及ぶ被害が発生 した。また、山腹崩壊・地すべり・山火事や、林道施設や木材加工・流通施設の損壊な どの被害がもたらされた。 このため、復旧資材の供給など当面の被災者の生活再建に向けた取組とともに海 岸部の保安林の再生、山腹崩壊等の復旧、林道施設や山火事跡地の復旧等を進め ていくこととする。また、森林・林業の再生を図る中で、施業集約化、路網の整備、高性 能林業機械を活用した作業システムへの転換、拠点となる木材加工・流通施設の再建 等を通じて、地域の復興に必要な木材等を安定的に供給し、地域材を活用した木造住 宅等の建設の促進、木質系震災廃棄物を含め再生可能なエネルギー資源である木質 バイオマス資源の活用により、被災者等の雇用の創出や森林資源を活かした環境負 荷の少ない新しいまちづくりに貢献していくとともに、将来的に持続可能な林業経営・エ ネルギー供給体制を構築していくこととする。 また、国有林においては、その組織・技術力・森林資源を活用し、森林・林業の再生 を通じた復興への取組を推進していく。 このほか、東京電力福島第一原子力発電所の事故に起因する森林・林業・木材産 業への影響の把握に努め、適切に対応していく。 2 政策改革の視点 この基本計画は、今後20年程度を見通して森林及び林業に関する各種施策の基本的な方向性を示すものであるが、各種施策を推進する際には、以下の視点を踏まえつつ、既存の施策の見直しや新たな施策の導入を進めることとする。 (1)分かりやすい施策の展開 新たな施策の展開に当たっては、過去のしがらみや前例にとらわれず、真に効果の ある施策を重点的に講じていくことが必要である。 このため、複雑な施策体系を見直し、国民に分かりやすい施策に改善していくことと する。具体的には、現場で使いやすい森林計画制度への見直し、森林管理・環境保全 直接支払制度の導入による補助区分の統合、各種補助事業計画の一元化など施策 の簡素化を推進する。 (2)施策対象者の創意工夫を引き出す施策の展開 限られた予算を有効に活用していくためには、官と民、国と地方の役割を明確にしつ つ、施策対象者の創意工夫を引き出す施策を講じる必要がある。 このため、森林所有者のほか、その委託を受けて長期的・継続的に森林経営を行う 者も作成できる森林経営計画制度の定着、森林経営計画の作成者を対象とする森林 管理・環境保全直接支払制度による支援、路網の整備、フォレスター等の人材育成、 森林組合と民間事業体のイコールフッティングの確保など、国として必要な条件整備を 行う。 (3)国民の理解と具体的行動を促す施策の展開 森林の有する多面的機能の発揮のためには、森林の適正な整備及び保全並びに林 業・木材産業の健全な発展に向けて関係者が一体となって努力していくだけでなく、森 林を社会全体で支えていこうという気運を醸成し、国民の幅広い理解と具体的な行動 を促すことが必要となる。 このため、各種メディアやIT等を活用し、森林の有する多面的機能や林業・木材産業 の役割、木材の良さについて国民全体の認識を共有する取組(「木づかい運動」等)を 強化する。 第3 森林及び林業に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策 1 森林の有する多面的機能の発揮に関する施策 (6)森林を支える山村の振興 我が国の森林・林業を支える山村は、過疎化・高齢化が進み、集落機能を維持することが困難な地域が増えるなど依然として厳しい状況に置かれている。このような中で、山村の振興を図っていくためには、林業の再生に加え、山村の主要な資源である森林を活かした新たな産業の創出などの取組を推進することが重要であり、次の施策を推進する。 @ 地域特産物の振興等による山村の就業機会の増大 山村における就業機会の増大を図るためには、山村の主要産業である林業の再生 を進めるほか、山村における貴重な収入源となっているしいたけ等の特用林産物の 振興に取り組むことが重要である。 このため、きのこ原木等の安定的な確保に必要な原木林の改良など生産基盤の強 化、特用林産物の生産効率化、新たな用途開発など生産者の生産・販売力の強化(6 次産業化)による経営の安定・高度化を図るほか、特用林産物のトレーサビリティの導 入、適正な品質表示など消費者の安全と信頼の確保、輸出の促進、消費者への情報 発信などの取組を進める。 A 里山林など山村固有の未利用資源の活用 国民にとって身近な森林である里山林について、適切な管理・利用を進めるため、里 山林整備のためのガイドラインを作成するとともに、地域住民を含む多様な主体の連 携による里山資源の継続的かつ多様な利用を促進する。 また、エネルギー利用など新たな需要が見込まれる木質バイオマスの安定供給や二 酸化炭素吸収のクレジット化を推進するほか、山村の資源を活用した地域住民による 自主的な起業を推進する。 B 都市と山村の交流等を通じた山村への定住の促進 森林資源を適切に維持・管理するためには、山村を活性化し、定住を促進すること が重要であることから、生活環境の整備とともに、都市との交流促進を通じて山村の 理解者・協力者を増やす必要がある。 このため、CSR(企業の社会的責任)活動の一環としての森林の整備、森林環境教 育、山村での体験活動、健康増進や自然とのふれあいなどの都市住民等のニーズと、 地域ごとに異なる山村資源を適合させ、交流活動の円滑化を推進するほか、山村と山 村、山村と都市との連携を深めるためのネットワーク化を推進する。 |