本書は、戦後の高度経済成長期以降貫徹するようになった経済原理の中で、外材輸入政策により林業資源の活用を失った山村が、人口流出と高齢化の波に巻き込まれた中で、苦しみ、工夫をくりかえしつつ、それでも山村としての存立基盤を徹底したフィールドワークをベースに見出してきた事例を、全国各地に求めてきた地理学研究者による成果である(本書の「はじめに」の冒頭部分)。
 本書の構成は、次のとおりとなっており、各章を13人の研究者が分担執筆している。
 なお、第13章及び第15章を執筆されている西野寿章 高崎経済大学地域政策学部教授は、平成16年10月に群馬県利根村において開催された「全国山村振興シンポジウム」のプログラムの一つである「自立と持続〜分権新時代の新たな山村ビジョンの模索〜」をテーマとしたパネルディスカッションでコーディネータを務められている。

  はじめに
  第1章  山村政策の展開と山村の存立基盤
  第2章  中山間地域等直接支払制度の意義と制度的課題
  第3章  山村における企業による農業参入
  第4章  林業労働力確保対策の現段階    
        −「緑の雇用」事業の評価を中心に−
  第5章  水資源開発と山村地域
  第6章  伝統的建造物群保存地区山村と観光
        −岐阜県白川村と長野県白馬村を例にー
  第7章  長野県遠山郷における地域づくりの展開と「神様王国」  
  第8章  山村における生活様式の特色とその変容
        −長野県栄村秋山地区を事例としてー
  第9章  山間地域集落の生活機能とソーシャル・キャピタル
  第10章 奥三河地域における山間集落の現状からみた限界集落論
        −新城市鳳来地区3集落を事例として−
  第11章 非合併山村におけるむらづくりの可能性に関する一考察
        −岐阜県賀茂郡東白川村を事例として−
  第12章 浜松市に併合された北遠州の山村・旧水窪町の変容過程とその存立基盤
  第13章 平成の大合併と山村の再編成
        −中央日本を事例として−
  第14章 山村の経済問題と政策課題
  第15章 山村政策への新たな視点      (A5・394頁 3,780円)

  発行所 株式会社 原書房
〒160-0022 東京都新宿区新宿1-25-13 電話03(3354)0685
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