政府は、6月21日の閣議において、経済財政諮問会議から答申された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針 2005」を決定した。この「基本方針 2005」に基づき平成18年度予算編成が行われる。
 山村地域に関係する主要な部分は、次のとおりである。

第1章 日本経済の現状と今後の課題
1.“バブル”後を抜け出した日本経済
(構造改革の先にある21世紀の将来像)
 日本の経済社会は大きな環境変化に直面している。本格的な人口減少・超高齢社会の到来や地球規模でのグローバル化の進展など時代の潮流に適切に対応し、新たな成長基盤を確立できるか、緩やかな衰退の道をたどるかどうかは、ここ1〜2年の構造改革の進展が成否を決める。
 平成18年度までの2年間(重点強化期間)は3つの意味で重要である。
 第1に、新しい躍動の時代への扉を開くことができるかどうかの岐路としての期間であり、第2に、これまで取り組んできた構造改革に目処をつけるための期間であり、第3に、デフレからの脱却を確実なものとしつつ、新たな成長に向けた基盤の重点強化を図るための期間である。
(重点強化期間における課題)
 この重要な2年間には、とくに以下の3つの課題を重視する必要がある。
 第1は、「小さくて効率的な政府」をつくることである。高齢化の本格化がもたらす高負担圧力とともに、国民負担の増加をめぐる議論はいずれ避けられない。その前に、政府自らが身を切り、効率化を図ることが不可欠である。
 第2は、新しい躍動の時代に向けて、21世紀の日本経済にとって最も重要な環境変化である少子高齢化とグローバル化を乗り切る基盤をつくることである。
 第3は、デフレを克服するとともに、経済の活性化により、民需主導の経済成長を確実なものとすることである。
2.「基本方針2005」の課題
(構造改革の総仕上げによる「小さくて効率的な政府」の実現)
 「基本方針2005」は、この重要な2年間の取組を示すものである。前述の3つの課題に即して、取り組むべき事項を整理すると以下の通りとなる。

@

「小さくて効率的な政府」への取組
 「小さくて効率的な政府」への道筋を確かなものにするために、これまで取り組んできた“官から民へ”“国から地方へ”の改革を徹底し、次の3つの流れを変える取組を行う。また、財政構造改革により、資金の流れを“官から民へ”変える。
 第1は、資金の流れを変えることである。
 第2は、仕事の流れを変えることである。三位一体の改革を進めて国から地方に仕事を移す。
 第3は、人と組織を変えることである。国・地方の行革を徹底し、公務員の総人件費を削減する。また、公的セクター全体を視野に入れて公務員の改革を進める。あわせて、官民交流や府省間の人材交流などにより、公務員の体質強化を進める。

A

新しい躍動の時代を実現するための取組−少子高齢化とグローバル化を乗り切る−

B

民需主導の経済成長を確実なものに
 民需主導の経済成長をより確実なものとするために、規制改革、金融システム改革、税制改革、歳出改革の4つの改革を加速させ、経済を活性化することが必要である。
 経済の活性化に当たっては、次の「活性化のための政策三指針」に基づいて政策転換し、競争力を強化することが重要である。
 i.政策対象は“人”に:予算はモノから人材に重点を移す。
 ii.底上げから先端支援へ:広く薄い予算配分ではなく、大胆に集中させて競争力をつくる。
 iii.国内対策からグローバル競争へ:世界市場を獲得する競争力をつくる。

第2章 「小さくて効率的な政府」のための3つの変革
 「官から民へ」「国から地方へ」を徹底させるために、資金の流れを変え、仕事の流れを変え、人と組織を変える。政府自らが身を切り、効率化を徹底することで、「小さくても効率的な政府」への道筋を確かなものとする。
 また、2010年代初頭の基礎的財政収支の黒字化を目指すなど、これまで取り組んできた財政構造改革を引き続き強力に推進し、資金の流れを「官から民へ」変え、民需主導の持続的成長を実現する。
2.仕事の流れを変える

(1)

国から地方への改革
平成18年度までに三位一体の改革を確実に実現するため、以下の取組を行う。

@

平成18年度までの三位一体の改革の全体像に係る「政府・与党合意」(平成16年11月26日)及び累次の「基本方針」を踏まえ、改革を確実に実現する。そのため、経済財政諮問会議において、進捗状況をフォローアップする。また、国と地方の協議の場においても、地方の意見を聞きつつ議論を進める。

A

税源移譲は概ね3兆円規模を目指す。

B

国庫補助負担金改革については、税源移譲に結びつく改革、地方の裁量度を高め自主性を大幅に拡大する改革を実施する。このため、残された課題については、平成17年秋までに結論を得る。あわせて、国・地方を通じた行政のスリム化の改革を推進する。

C

税源移譲については、上記Bの結果を踏まえ、平成18年度税制改正において、所得税から個人住民税への税源移譲を実施する。その際、個人住民税所得割の税率をフラット化することを基本とする。

D

地方交付税については、累次の「基本方針」に基づき、国の歳出の見直しと歩調を合わせて、地方歳出を見直し、抑制する等の改革を行う。また、税源移譲に伴う財政力格差が拡大しないよう、適切に対応する。平成18年度においては、地域において必要な行政課題に対しては適切に財源措置を行い、地方団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の総額を確保する。あわせて、2010年代初頭における基礎的財政収支の黒字化を目指して、国・地方の双方が納得できるかたちで歳出削減に引き続き努める。また、交付税の算定方法の簡素化、透明化に取り組む。
また、地方財政計画の透明性・予見可能性を高める等、以下の取組を行う。

@

地方財政の決算状況を早期に開示する。また、経費の性質に応じて決算状況を分析し、国民への分かり易い説明に一層配意する。このような取組を進める中で、地方財政計画の計画と決算の乖離の是正を図り、重点強化期間内に解消の目途をつけるよう努める。このため、おおむね今後1年以内を目途に、経済財政諮問会議において解消に向けての選択肢、方法等について、議論し、整理する。

A

上記@及び今後の経済財政運営に係る見通しを踏まえつつ、地方財政の予見可能性を向上させ、地方公共団体が経営努力を発揮できるよう、「中期地方財政ビジョン」を策定する。

B

また、三位一体の改革を進めることを通じて、不交付団体(市町村)の人口の割合を大幅に高めていく。
あわせて、以下の取組を進めていく。

@

平成18年度から実施する地方債の協議制度の円滑な移行を図り、地方債の信用維持のため財政状況の悪化している地方公共団体に対して早期是正のための措置を講じつつ、地方の自主性・自己責任の強化を図る。その際、その趣旨を踏まえつつ、小規模団体等の資金確保に配慮する。また、基準財政需要額に対する地方債元利償還金の後年度算入措置を各事業の性格に応じて見直す。

A

徹底した情報開示により地方行政改革に強力に取り組む。「新地方行革指針」による「集中改革プラン」の公表、給与情報及び財政状況の公表システムの構築を平成17年度中に行う。また、全都道府県、政令市で連結貸借対照表を作成し、公表する。

B

地方分権推進計画を確実に仕上げるとともに、地方分権改革推進会議の意見等に盛り込まれた事項について、フォローアップを強化する。また、重点強化期間内に、地方公共団体が実施する事業への細部にわたる国の規制や関与などを大胆に撤廃する。

C

平成18年度までの三位一体の改革の成果を踏まえつつ、地方分権を更に推進する。
 また、市町村合併を引き続き強力に推進するとともに、将来の道州制の導入に関する検討を引き続き進める。また、地方分権のモデル的な取組としてのいわゆる「道州制特区」について、引き続き推進する。
3.人と組織を変える

(1)

国・地方の徹底した行政改革
 国・地方の双方について、行政改革をこれまで以上に徹底して進めることが必要であり、公務員制度改革を含め、「今後の行政改革の方針」、「新地方行革指針」平成17年3月29日)の着実な実施に向け、国と地方は歩調を合わせて強力に取り組む。
地方については、以下の取組を強力に進める。

@

「新地方行革指針」に基づき地方公共団体が住民に公表する「集中改革プラン」について、総務省は、改革の進捗状況を他団体と比較可能な形で、一覧できる適切な指標により、情報を提供する。また、地方公共団体の協力を得て、給与情報(給料・各種手当・級別職員数等)及び財政状況について団体間の比較分析を可能とする公表システムを平成17年度中に構築する。

A

市町村合併について、行政コスト効率化の効果を検証する。

第3章 新しい躍動の時代を実現するための取組−少子高齢化とグローバル化を乗り切る−
1.財政構造改革の強力な推進−歳出・歳入一体改革−

 2010年代初頭における国・地方を合わせた基礎的財政収支(2005年度、対GDP比 4%程度の赤字)の黒字化を目指す。
このため、国と地方が歩調を合わせて歳出・歳入一体改革を進め、基礎的財政収支改善に向けた中期的取組について、重点強化期間内にその結論を得る。その際、以下の3原則に則って改革を進める。

 i.「小さくて効率的な政府」原則:“歳出削減なくして増税なし”の考え方の下、歳出削減、行政改革を徹底し、必要となる税負担増を極力小さくする。
 ii.活力原則:経済活力と財政健全化の両立を図る。
 iii.透明性原則:改革の選択肢や将来の見通し等を国民に提示しながら検討する。

おおむね今後1年以内を目途に、政府の支出規模の目安や主な歳出分野についての国・地方を通じた中期的目標の在り方、さらには、歳入面の在り方を一体的に検討し、経済財政諮問会議における議論等を通じて、改革の方向についての選択肢及び改革工程を明らかにする。
 また、経済活力と財政健全化を両立させるため、歳出・歳入一体改革の経済に与える影響を十分に検討する。負担増を求める際には、経済社会に与える影響を勘案した負担の在り方を検討する。

2.国民の安全・安心の確保
 近年、地震、台風、集中豪雨等が続発し、大きな被害が生じている。また、公共交通に関する事故・トラブル等が頻発している。さらに、犯罪情勢も依然厳しい状態が続いており、これらが、国民の不安要因につながっている。
 こうした中で、国民の安全と安心を確保することは、政府の基本的な責務であるとともに、我が国の経済活性化の基盤である。
 公共施設及び住宅等の耐震化等の大規模地震対策、治山治水対策をはじめとした防災対策投資等を推進する。
3.持続的な社会保障制度の構築
4.次世代の育成
(少子化対策)
 人口減少社会を目前に控え、家庭・家族、地域の役割を重んじ、その連携を通じて、国民が安心して、子どもを生み、育てることができる社会を構築するため、国の基本政策として少子化の流れを変えるための施策を強力に推進する。特に、仕事と家庭・子育ての両立など仕事と生活のバランスを取りつつ、意欲と能力に応じた多様な働き方ができるよう、中小企業に配慮しつつ、環境整備の推進などを官民挙げての国民的な運動して取り組む。
5.人間力の強化
 我が国を支える基本は“人”である。今後我が国がグローバル化を乗り切り、力強く成長を持続するという観点からも、全ての人が能力を最大限に開花させ得る社会の実現が不可避であり、これに向けて取組を強化していく。
 食育基本法に基づき、食育推進基本計画を作成するとともに、関係行政機関等が連携し、国民運動として食育を推進する。
6.グローバル戦略の強化
 開かれた活力ある国を目指し、グローバル化に戦略的に取り組んでいく。
 経済外交、国内構造改革、地域経営、国際分業等を通じて、グローバル化への総合的かつ戦略的な取組を行うため、経済財政諮問会議において平成18年春を目途に「グローバル戦略〜我が国の世界戦略」(仮称)をとりまとめる。
あわせて、以下の取組を積極的に進めていく。

B

世界に通用する強い地域の形成を促進し、民需主導の経済成長の成果を地域にも広く浸透させるため、地域が自主的に活力を高めることを支援する。その−環として、世界に発信する地域をめざし、地域が持つ高度な環境・リサイクル技術を核とした世界発信型の先進拠点を整備し、アジアでの資源循環と人材育成を促進する。あわせて、地域再生、都市再生、構造改革特区の拡充、観光戦略の強化、文化芸術・スポーツの振興に向けて、取組を行う。

C

強い農林水産業を育てるために、「食料・農業・農村基本計画」等に基づき、構造改革を進める。さらに、農林水産物の輸出拡大に向けた取組を促進する。
(構造改革の内容:・食料自給率の目標を始め「食料・農業・農村基本計画」の実現に向け、工程管理を的確に行う。・品目横断的な施策の対象は、一定規模以上の経営主体に限定することとし、平成17年秋までに制度の内容を具体化するとともに、平成17年度中に法案を提出する。また、個人や株式会社等の新規参入を促進するとともに、担い手への農地の利用集積を推進する。・食品産業のニーズへの対応や生産から消費までのコスト削減を推進するほか、食料産業クラスターの形成、新たな需要につながる技術開発を進め、食料に関わる産業全体を活性化する。・農業委員会の機能の適正化及び関係行政機関等との連携強化を図り、農地の効率的利用を一層推進する。・農協を含めた多様なサービス提供主体での競争を促進し、流通の合理化・効率化を図るため、農協改革等を進める。・都市と農山漁村の共生・対流の一層の推進とともに、農業環境・資源の保全、木材利用の拡大、「緑の雇用」に引く継ぐ担い手の確保、ブランド化や省エネルギーによる水産業の経営革新、水産資源の持続的利用、若者の漁業への新規参入の促進を図り、農山漁村を活性化する。)

E

環境と経済の両立を図りつつ、地球環境問題への取組を強化する。京都議定書の削減約束の達成、脱温暖化社会の構築に向け、「京都議定書目標達成計画」に基づき、温室効果ガスの排出削減、森林の整備・保全等の森林吸収源対策等、京都メカニズムの活用に向けた取組を確実に実施するとともに、国民運動の展開、技術開発を進める。また、循環型社会の構築を目指す。あわせて、環境・エネルギー問題に総合的に対処する。このため、地球規模での長期的な温室効果ガス排出削減に向けてリーダーシップを発揮する。また、自然環境・景観の保全を通じた自然との共生、ヒートアイランド対策とともに、環境保全の理解を深めるため環境教育を推進する。

第4章 当面の経済財政運営と平成18年度予算の在り方
2.民需主導の経済成長を確実なものにするために−活性化のための政策転換−

(4)

活性化を目指した歳出の見直し
(公共投資の重点化・効率化)

公共投資については、「改革と展望」に基づき「景気対策のための大幅な追加が行われていた以前の水準」を目安にして重点化・効率化に取り組んできており、その目安は概ね達成されつつある。平成18年度予算においても、目標の達成に向けてのこうした取組を引き続き着実に推進する。(この場合、・重点4分野を中心に雇用・民間需要の拡大に資する分野に施策を集中する。その上で、我が国の競争力強化の観点や安全・安心の確保の観点、地域再生・都市再生を推進する観点を踏まえた重点化を進める。 また、引き続き、技術や品質による競争の促進等を進め、発注の適正化に取り組むとともに、コストの縮減等を図る。・国と地方の役割分担の観点を踏まえた重点化を進めるとともに、地方の自主性・裁量性の拡大に資するよう取り組む。・成果目標と予算の連携強化に取り組むとともに、事前・事後評価を厳格に実施する。)

農林水産分野においては、引き続き、公共投資から技術・人材への予算の重点化に取り組む。
3.平成18年度予算における基本的考え方
(聖域なき歳出改革の堅持・強化)

平成18年度予算は、重点強化期間最後の重要な予算であり、「改革の総仕上げ」のために、国・地方が歩調を合わせ、平成17年度に引き続き歳出改革路線を堅持・強化する。

また、国債発行額についても極力抑制する。

重点課題に対してはメリハリのある配分を行う。

各府省は予算要求にあたっては、各施策について、成果目標を掲げ、事後評価を十分行い得る基盤を整備するとともに、その必要性、効率性、有効性等を吟味する。
また、新規施策の要求にあたっては既存施策の廃止・縮減を行う。

なお、財政投融資については、民業補完の原則の下、対象事業の重点化・効率化に 努める。

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