全国山村振興連盟主催の「平成17年度山村振興実務研修会」が、去る6月9日(木)全国町村会館2階ホールにおいて開催された。今回の研修には、市町村、都道府県の山村振興行政・実務担当者等100名余が参加した。 研修会は全国山村振興連盟米田博正事務局長から開会挨拶、農林水産省農村振興局飯悟農村政策課長から来賓挨拶がなされた後、関係各省庁の6人の担当官からそれぞれのテーマについて講演が行われた。 |
【全国山村振興連盟 米田事務局長の挨拶要旨】 |
今回の研修のテーマは6つあります。その一つは「山村振興法改正後の山村振興対策」であります。今回の山村振興法の改正により、計画体系が変更され、都道府県が基本方針を定め、市町村が山村振興計画を作成するようになりました。また、地方自治体の施策について、改正前は、「国の施策に準じて山村振興に必要な事業が円滑に実施されるよう努める」と規定されていたのが、「その地域の特性に応じて云々」と改正されました。その意味でも山村振興に対する地方自治体の役割は、ますます高まってきております。 「元気な地域づくり交付金」のテーマですが、三位一体改革が昨年の大きな課題であり、当連盟としても山村振興の立場に立ってそのあり方について要請を行ってきました。農林水産省においては補助金の廃止ということではなく、補助金の改革ということで交付金化が進められ、山村振興の中核的な事業であります新山村振興等農林漁業特別対策事業についても「元気な地域づくり交付金」に集約されました。 「鳥獣害防止対策」のテーマは、今回の山村振興法改正に際し、配慮事項として追加された事項であります。この問題は山村地域にとり重要な課題であり、当連盟においては、昨年度、独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金から助成金をいただきまして鳥獣害に関する冊子の作成、セミナーの開催、ホームページへの掲載等の事業を実施しました。農林水産省では、山村振興法等に規定されたということもあり、検討会が開催されております。 「山村振興と道路の役割」及び「山村地域における情報化の推進」のテーマは、山村地域の振興によって引き続き重要な問題であります。 森林・林業と山村とは表裏一体の関係にあり、今回、「森林・山村の諸問題」のテーマを取り上げております。この課題を解決する上で重要なことはいかに財源を確保するかであります。環境税というようなものを是非創設していただき、その財源を山村振興なり森林整備に充当していただきたいと考え、要請活動を行っています。 なお、「中山間地域等直接支払制度」については今回のテーマとして取り上げていませんが、去る3月に農林水産省の水間 中山間地域振興室長から当連盟の会員である市町村長約20人に講演していただいた内容を整理した冊子を受付に用意してありますので、お持ち帰り下さい。その冊子には、総務省の務台 調整課長から講演いただいた「山村に係わる地方財政対策」の内容も三位一体の改革に関する極めて詳しい資料と共に入っています。 以上、本日の研修テーマについてお話しましたが、有意義な研修会となりますよう皆様のご協力をお願いします。 |
【農林水産省 飯農村政策課長挨拶要旨】 |
このたび、議員立法である山村振興法が首長さんをはじめ皆様方の国会方面に対する一生懸命な要請活動の結果10年間延長となり、内容も拡充されました。 改正法の内容としては、計画を今までは県が一つ一つ作っていたが、県はマスタープランを作って、一つ一つの山村振興計画については市町村が作成するとされたこと、また、認定法人制度が規制緩和されたこと、更には、さまざまな今日的に重要な事項が配慮事項として規定されたことであります。 大事なことは、今回の法律改正の過程において山村に関して根本論がいろいろと議論されたことです。山村は、高齢化、過疎化が進行していて守ろうとしても非常に困難である。特に、市町村合併が進む中では、都市部へ人口が移動して山村は守れなくなるし、守るとしても無理ではないかとの議論も一部にありました。 山は人手をかけて管理しないと荒れてしまいます。どうしても、そこに人が定住して生業を作り上げて、生活できる場を整備して、はじめて山村を守ることができるのです。 山村を守る理由は、当然ながら多面的機能だと思っています。例えば、木材とか、農産物は輸入できます。材としての木材とか食料、今は水なんかも海外から輸入しており、お金を払えば買えると思うのですが、それを作る過程が大切なのです。木を育てる、農業を行うといった人間の行為というか、活動を通じて水源かん養とか、国土保全とか、さまざまな公益的機能、多面的機能が発揮されます。 しかし、東南アジアとかカナダの木材を船に積んで輸入できても多面的機能を同時に積み込んで来るようなことは出来ないことです。従って、木材、食料が輸入されて、その結果、日本の第一次産業がさびれてしまうことで多面的機能も同時に失ってしまうという大変なことになります。 このことは、その地域に留まらないで、日本全体に影響が出る。山村は絶対守らなければならないという理屈であります。そういう共通認識の下で政治家が全会一致で、この法律を延長し、更に拡充するということに相成った次第です。 地球温暖化対策等山村の役割が今後非常に重要になってくると思います。 大事なことは、集落があって人がある程度いないと山村はなかなか守れないということです。 そのため、依然として、まだインフラにギャップが残っており、このギャップの解消が必要です。特に、21世紀の課題として情報通信のギャップがあります。 ギャップがあるインフラ整備ばかりでなく、地域ごとに多様性がありますので、多様性や地域性を利用してビジネスを起こしていただくことが大事であります。そのビジネスを起こしていく核となる認定法人は、実は、活動が低調であるため困っていましたが、今回規制緩和されました。 今までは、山を保全する業務をしないと税金の特例が受けられなかったが、山を保全する仕事は、利益が出ないため税金の特例があってもその適用を受けることが出来ないという事実上空振りの制度であったと言ってもあながち言い過ぎではないと思います。 山を保全する業務を必須条件から外しまして、そば打ち体験、山菜加工という商売を単独でやっても、なお、税金の特例、特別償却が受けられるというふうに改められました。是非、これを活用してビジネスという形で取り組んでいただきたいと思います。 それから、2007年問題、団塊の世代57〜59歳の方々が、この2〜3年間において700万人が企業等から出ていくわけです。この団塊の世代の人達は、もともと農山村から都会へ出て来た人達であり、ふる里がしっかりあるわけです。定年を迎えて回帰する場所、これを大きな転機と捉えて、我々としては是非農山村へ行っていただく。この方々は野球で言えば7回表くらいであり、要介護の人を迎えるわけではなく、まだまだ、バリバリ働けて十分活躍できる方々であります。このような方々にふる里へ帰っていただき山村の活性化に役立っていただきたいのです。実は、そういうことをチャンスを捉えて定住人口を増やしたいと考えております。いずれにしても山村を活性化するには人が必要です。そのための特効薬はなく、地味な取り組みですが、ふる里に戻ってもう一旗あげていただくということで考えております。 三位一体の改革ということで、非公共事業は補助金を殆ど廃止して交付金という形に切り替えました。まだ、始まったばかりですので、試行錯誤があると思っております。改める点は、やってみて改めたら良いと思います。今までのように箸の上げ下ろしまで、ごちゃごちゃ言うことはしない。その代わり、その結果、成果を見ます。逆に厳しくなる面があるのかもしれないけれど成果主義として切り替えて、地方が使いやすいように仕組みつつあります。 交付金を活用していただいて、活力ある農山村をつくっていただければと思っております。 |
【農林水産省農村振興局農村政策課 森山昌人課長補佐】 | ||
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「山村振興法改正後の山村振興対策について」 | |
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振興山村の現状、山村振興法の改正内容、認定法人制度の概要等について説明がなされた。 | |
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山村振興法の主な改正点としては、@平成27年3月31日まで10年間の延長 A計画体系の変更(基本方針は都道府県が策定し、それに基づき山村振興計画を市町村が作成) B認定法人制度の拡充 C配慮規定の追加・拡充である。 |
【農村水産省生産局農産振興課 安田修三課長補佐】 | ||
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「鳥獣害防止対策について」 | |
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被害の現状、被害対策に対する取組状況等について説明がなされた。 | |
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「鳥獣による農林水産業被害対策に関する検討会」の第1回が4月26日、第2回が6月7日に開催された。最終回が7月に予定されており、その際に報告が出る。 |
【総務省情報通信政策局地域通信振興課 岡村信悟課長補佐】 | ||
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「山村地域における情報化の推進について」 | |
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ユビキタスネット社会を実現する地域情報化戦略について、全国公共ブロードバンドネットワークの展開、次世代情報プラットフォームの構築、地域情報化推進等について説明された。 | |
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地域の自治体が学校、図書館、公民館等それぞれ作り上げているインターネットシステムをネットワークし、より利活用しやすいインターネット社会づくりを進める。 |
【国土交通省道路局地方道・環境課地域道路調整室 吉田敏晴課長補佐】 | ||
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「山村振興と道路の役割について」 | |
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地方道路を取り巻く環境、地方道整備の現状、地域再生の取組、道の多様な機能等について説明がなされた。 | |
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生活スタイルの多様化により日常生活圏が拡大し、単独市町村ではサービスが十分提供できない状況下にある。しかし、地方圏では道路交通による移動の依存度が高く、道路整備が必要である。地方道整備について、「1・5車線」のローカルルールで整備の延長を図る。 また、地域再生の取組みについて、地方公共団体が策定する地方道・農道・林道をパッケージ化した計画に向けて「道整備交付金」制度が創設された。 |
【林野庁森林整備部計画課森林総合利用・山村振興室 吉村洋課長補佐】 | ||
○ |
「森林・山村の諸問題について」 | |
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森林・林業・木材産業の現況、新しい森林・林業政策の推進、森林・山村に対する国民のニーズの変化と林政改革、林野行政における地域振興施策の位置付け、山村振興施策の方向、林野庁の山村振興施策(平成17年度)等について説明がなされた。 | |
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森林の有する多面的機能の発揮のため山村において林業生産活動が継続的に行われることが重要である。地域特産物の生産販売等を通じた産業の振興により就業機会の増大、生活環境の整備等、山村地域における定住促進に必要な施策を講ずる。 |
【農林水産省農村振興局地域振興課 富澤直満課長補佐】 | ||
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「元気な地域づくり交付金−中山間地域等振興−について」 | |
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元気な地域づくり交付金について、その内容、交付金のスキームについて説明がなされた。 | |
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30本の農山漁村振興関連事業(非公共事業)がハード、ソフトの2本のみに集約された。事業メニューの選択幅が拡大し、農地基盤整備対策から都市農山漁村交流対策まで地域の判断で進度を調整しながら実施できるような仕組になった。 |