農林水産省は、6月15日 第16回中山間地域等総合対策検討会を開催し、中山間地域等直接支払制度等について全国町村会、全国農業会議所、全国農業協同組合中央会、全国土地改良事業団体連合会の各団体からの意見聴取を行った。
 その中で、全国町村会を代表して振興山村、特定農山村地域である富山県朝日町長魚津龍一氏が「中山間地域等直接支払制度の拡充・継続に向けて」朝日町の取組み、成果と評価及び課題、改善点等について述べるとともに、本制度の拡充・継続を求めた。

 以下は魚津龍一氏の意見の概要である。


1.富山県朝日町における取組みと成果
・朝日町では、6集落が事業対象となり、集落会議等を通じ協定書の作成を行ったが、うち1集落では、初年度の12年度からの実施を見送り、次年度から実施した。
・当初は、いずれの地区も立ち上げと事務処理に苦労したが、今は軌道に乗っている。なお、共同取組み活動には、交付金の55〜60%を活用している。
・町内6地区の主な取組みや成果は、以下のとおり。

A地区

・遊休農地の復元 ・若手を中心とした農作業受託組織の樹立

B地区

・住民全体による一斉清掃 ・草刈による景観保全 ・大規模農家への委託

C地区

・農道や水路の補修、地区全体の景観保全 ・若者の参画

D地区

・長大法面の草刈の省力化、地区景観の向上 ・集落の話し合いの部屋の設置

E地区

・集落全体での農道水路の維持管理 ・認定農家への委託を前提とした農地の集約

F地区

・ため池の保全による安定した農業用水の確保 ・農業生産組織の再構築(若返り)


2.本制度の成果と評価
・全国の市町村や集落協定代表者へのアンケート結果を見ても、我が町と同様の取組み状況や成果が見られ、本制度は耕作放棄地の発生防止はもとより、農道や水路の共同管理、国土保全や良好な景観形成、農作業受委託組織や担い手の育成・明確化など持続的な農業生産に向けた取組み、さらには話し合いや共同活動の活発化による地域の活性化などに大きな効果が上がっている。
・また、本制度を活かし、都市との交流を進めるほか、炭焼きなどの新たな事業への取組みや左義長など集落の伝統行事の復活等に取り組んでいる事例も近隣町村をはじめ全国に見られ、地域づくり、地域振興に繋がっている。
・このように、本制度の成果は多岐にわたっているが、何よりも大きな成果は、自分の地域は自分で守るという話し合いと取組みが行われるようになってきたということであろう。
・本制度は、こういった農山村に昔からあった地域自治と地域住民が老若男女を問わず能力に応じ相互に支え合って生きる慣習を呼び戻すきっかけになったと言え、今後の高齢化の中で、本制度はより一層重要になっている。


3.本制度の課題、改善点
・対象農用地については、地域(集落)全体を対象とした活動を促すため、傾斜農地に限定することなく、これと営農上の一体性を有する平坦農用地も含めること。
・地域の特性に応じた対策を促進するため、市町村裁量については、対象農用地の指定や交付金の交付方法に関する裁量を拡大し、弾力的な制度運用を可能にすること。
・共同取組み活動に係る交付金を非課税とすること。
・交付金の市町村負担分(一般1/4、特認1/3)に係る地方財政措置の充実をはかること。また、事務手続きの簡素化をはかること。



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