平 成 14 年 度 版 観 光 白 書 国 土 交 通 省 |
「平成14年度版観光白書」は、去る5月31日に公表されているが、その概要は次のとおりである。 | |
1.観光の現状はどうなっているか | |
(1) |
観光の経済に与える影響 |
○ |
観光消費の経済波及効果は広い裾野をもっており、他産業の振興を牽引する21世紀のリーディング産業として期待されている。 |
○ |
諸外国に比べ、全産業に占める観光産業の規模は小さく、特に観光消費に占める外国人旅行者のシェアは小さい。 |
(2) |
国民の旅行に関する意識、経済環境の動向 |
○ |
国民のレジャー・余暇生活の充実、中でも旅行の潜在需要は大きい。 |
○ |
他方、自由時間関連支出、旅行関連支出は減少傾向にある。 |
(3) |
国内観光の動向 |
○ |
平成13年の国民1人当たり宿泊旅行は、平均2.26回(前年比11.7%減)、観光及び兼観光は、1.42回(前年比7%減)、景気低迷下、業務及び業務兼観光の宿泊が減少(約40%)した。 また、観光及び兼観光の消費額は、国民1人当たり53,500円(前年比7%減) |
2.21世紀における持続可能な観光に向けて | |
(1) |
休暇取得の促進 |
○ |
平成13年における労働者1人平均年次休暇の付与日数は18日(取得日数8.9日) |
○ |
平成15年からは「海の日」「敬老の日」を第3月曜日とする(祝日3連休の倍増) |
○ |
年次休暇を活用した「ゆとり休暇」の取得促進に向けて、広報を実施するとともに「長期休暇制度の普及と定着に関するシンポジウム」を開催した。 |
○ |
年次有給休暇完全取得による経済効果分析とともに、例えば現在1週間程度の夏季連続休暇を2週間程度に拡大する等具体的な取得のあり方について啓蒙活動や就学児童の家族旅行の促進のための環境整備を進めていく必要がある。 |
(2) |
持続発展可能な観光地づくりの取組み |
○ |
自然・文化遺産といった貴重な観光資源の世代を超えた継承を目指す持続可能な観光について、研究・普及が進められている。 |
○ |
地域住民が主体となって「観光資源」「地域の定住環境」「来訪者の満足」を調和させる「観光まちづくり」の取組みの支援が必要である。 |
(3) |
観光と情報通信技術革新 |
○ |
国際観光振興会はインターネットを活用した観光情報の提供を強化した。 |
○ |
「政府観光機関」としての情報への信頼性を最大限に活用し、インターネット上のホームページによる情報提供の強化が必要である。 |
○ |
旅行に関わる電子商取引市場の拡大に伴い、適正な広告表示が行われているかの点検、電子メールによる一方的商業広告の防止等消費者保護の措置を講じた。 |
○ |
インターネット取引に係る迅速な紛争処理システムの構築等により消費者保護対策を推進することが必要である。 |
3.国際観光振興の施策 | |
(1) |
魅力ある旅行先として明確なイメージの確立 |
○ |
「ものづくり」を中心とした工業国イメージを是正し、わが国固有の自然、芸術、伝統文化といった魅力ある観光目的地のイメージの広報を実施。 |
○ |
国際観光振興会は、海外を対象とした対象市場ごとに訴える観光魅力を相違させるマーケティング戦略に基づき、テレビスポット広告、新聞雑誌広告、ジャーナリスト招請など訪日促進キャンペーンを展開した。 |
○ |
インターネットを通じ多言語で観光情報を提供した(年間1,700万件のアクセス) |
(2) |
ことばの壁を越えた発見、交流の推進 |
○ |
円滑で快適な旅行が出来るよう語学面での対応、民間交流を推進した。 |
○ |
外国語の案内標識の整備、ホームページに善意通訳ガイドを中心としたボランティアが日本の観光情報を提供する電子掲示板を開設。 |
(3) |
高コスト観光の是正 |
○ |
物価の高い国というイメージを是正するため、観光関連業者はインターネットも利用して外国人旅行者向けの国内旅行商品の提供、宿泊における泊食分離の取組みが出てきている。 |
○ |
外国人旅行者が博物館、レジャー施設等で割引措置等を受けられる取組も拡大している。 |
4.国内観光振興の施策 | |
(1) |
観光地の魅力の向上 地域の特色ある自然、歴史、文化、伝統の相違に基づく地域の特徴を観光資源として掘り起こした個性ある魅力的な地域づくりの取組みを支援することが地域の活性化の観点から重要である。 |
○ |
観光資源の開発として、自然ガイドツアーの造成、地域伝統芸能を活用したイベント、撮影ロケ地として誘致するフィルム・コミッション、潜在的観光資源の発掘・整備等を総合的に実施するモデル事業を実施。 |
○ |
観光地の環境づくりとして、まちなみ景観、農村漁村景観、水辺景観、道路景観の形成事業を実施、観光地渋滞緩和のための交通マネジメント実証実験、高齢者・障害者等の円滑な移動の確保のための各施設へのエレベーター等の設置を推進した。 |
○ |
観光地の地域づくりとして、賑わいの道づくり、水辺プラザの整備、シンボルロード整備、身近なまちづくり支援街路事業、を通じ、地域の特色を活用した観光地の地域づくりを支援した。 |
○ |
自然を活用した交流の機会づくりとして、森林、農山漁村地域の廃校舎、農業関連施設、農家等を活用し、自然とのふれあい体験、農業体験等を行う事業を実施した。 |
○ |
文化遺産を活用した地域づくりとして、地域の歴史的・文化的なシンボルとなっている史跡等について、保存・整備活用を図る事業の実施をした。 |
○ |
情報提供として、道の駅における端末情報やパンフレット等による道路、観光、医療情報等の提供、都市部では駐車場案内システムの整備を推進した。 |
(2) |
旅行の多様化、低廉化 |
○ |
家族向けサービス向上のため、泊食分離による低廉料金、家族がくつろぎやすい部屋の設置、食事内容や方法の選択肢を増やすなどのサービスに取組んでいる。 |
○ |
各種航空割引運賃の設定、循環観光バスの運行、共通一日乗車券、空港からの定額運賃タクシーなどのサービス改善に取組んでいる。 |
(3) |
観光関係者の連携の拡大 |
○ |
平成13年11月に社団法人「日本ツーリズム産業団体連合金」が設立され、訪日外客数の大幅増加、経済波及効果を測定しツーリズム産業の重要性をアピール、長期休暇の実現の3本柱を事業目標に活動することとしている。 |
○ |
各地において観光を考える百人委員会開催される。 |
(4) |
北海道の観光振興対策の推進 |
○ |
平成13年の来道者数は1,329万人(前年比2.4%増) |
○ |
「北海道観光のくにづくり条例](平成13年10月)等を制定、北海道民の総意として観光振興に取組んだ。 |
○ |
観光振興支援として、観光基盤の整備、観光資源情報ネットワークの充実、自然体験型活動等を行った。 |
○ |
滞在型観光交流空間モデル事業、携帯端末へのリアルタイムでの観光情報提供の実証実験事業を実施した。 |
5.自然・文化遺産の保全 | |
○ |
自然公園の整備、森林等の保全管理、河川・湖沼の保全、山地流域の保全、海の環境保全、都市緑化の保全、温泉の保護、野生生物の保護などの自然の保全のための施策を推進した。 |
○ |
文化財の保護、歴史的風土の保存、世界遺産の保護など文化遺産の保全のための施策を推進した。 |
6.観光基盤施設の整備 | |
○ |
道路、鉄道、空港、港湾、道路交通、海上交通等旅客輸送施設の整備を推進した。 また、観光地の環境衛生施設の整備を推進した。 |
7.観光に係る安全確保対策 | |
○ |
外務省海外安全相談センター、国際観光振興会により事故・事件に遭った日本人に対する援護や安全情報の提供等により、日本人海外旅行者の安全確保を推進した。 |
○ |
鉄道、道路交通、航空、海上交通等旅客輸送施設の交通安全対策、宿泊施設の火災防止対策、林野の火災防止対策、観光地における自然災害防止対策を推進した。 |