地球温暖化対策推進大綱決まる |
地球温暖化対策推進本部(本部長:小泉首相)は、平成10年6月に決定した地球温暖化対策推進大綱を見直し、平成14年3月19日新たな地球温暖化対策推進大綱を決定した。また、林野庁はこの大綱のうち森林・林業分野における対策の内容を発表した。概要は、次のとおりである。 【地球温暖化対策推進大綱の概要】 |
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○温暖化対策への取組みが、経済活性化や雇用創出などにもつながるよう、技術革新や経済界の創意工夫を活かし、環境と経済の両立に資するような仕組みの整備・構築を図る。「環境と経済の両立」 ○節目節目(2004年、2007年)に対策の進捗状況について評価・見直しを行い、段階的に必要な対策を講じていく。「ステップ・バイ・ステップのアプローチ」 ○京都議定書の目標達成は決して容易ではなく、国、地方公共団体、事業者、国民といったすべての主体がそれぞれの役割に応じて総力を挙げて取り組むことが不可欠である。かかる観点から、引き続き事業者の自主的取組の推進を図るとともに、特に、民生・運輸部門の対策を強力に進める。「各界各層が一体となった取り組みの推進」 ○米国や開発途上国を含む全ての国が参加する共通のルールが構築されるよう、引き続き最大限の努力を傾けていく。「地球温暖化対策の国際的連携の確保」 |
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○我が国における京都議定書の約束(1990年比▲6%削減)を履行するための具体的裏付けのある対策の全体像を明らかにする。政府を挙げて100種類を超える個々の対策・施策のパッケージをとりまとめたもの。地球温暖化対策推進法改正案(今国会提出予定)に規定する京都議定書目標達成計画は、新大綱を基礎として策定することとしている。 ○▲6%削減約束については、当面、下記の(1)〜(5)の目標により達成していく。その際、(1)〜(5)の目標のうち、第1約束期間(2008年~2012年)において、目標の達成が十分に見込まれる場合については、こうした見込みに甘んじることなく、引き続き着実に対策を推進するとともに、今後一層の排出削減を進めるものとする。なお、京都メカニズム(国別の約束の達成に係わる柔軟措置として、他国における排出削減量、他国の割当量の一部を利用できる仕組み)の利用が国内対策に対して補足的であるとする原則を踏まえ、国際的動向を考慮しつつ、京都メカニズムの活用について検討する。 ○地球温暖化対策推進本部は、2004年、2007年に本大綱の内容の評価・見直しを行う。この際、本大綱の前提とした各種経済フレーム等についても必要に応じて総合的に評価・見直しを行った上で、柔軟に対策・施策の見直しを行う。 ○本大綱については、これまでの関係審議会等におけるパブリックコメントや審議の結果等を踏まえつつ、「関係審議会合同会議」での意見聴取を踏まえ、その策定作業を行ったところであるが、京都議定書目標達成計画の策定に当たっては、本大綱を基礎としつつ、さらに国民各界各層の意見を幅広く聴くものとする。 |
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(1)エネルギー起源二酸化炭素(±0.0%) *1990年度と同水準に抑制することを目標。 *部門毎の排出削減目標量については、様々な条件や前提の下に達成することができると試算される目安として設定するもの。 *対策の評価は、エネルギー需要構造全体の観点に立って一定の幅をもって行うべきもの。 *事業者等による京都メカニズムの活用も認められており、自らの削減をより費用効果的に達成するために活用されることが期待。 (1)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン、一酸化炭素(▲0.5%) *0.5%分の削減を達成することを目標。 (3)革新的技術開発及び国民各界各層の更なる地球温暖化防止活動の推進(▲2.0%) *2.0%分の削減を達成することを目標。 (4)代替フロン等3ガス(HFC, PFC, SF6)(+2.0%) *自然体でプラス5%をプラス2%程度の影響に止めることを目標。 (5)吸収量の確保(▲3.9%) *COP7で合意された▲3.9%程度の吸収量の確保を目標。 |
【地球温暖化対策推進大綱(吸収源対策分抜粋)】 |
第4 6%削減約束の達成に向けた地球温暖化対策の推進 |
7.温室効果ガス吸収源対策の推進 |
(1)森林・林業対策の推進 森林・林業基本法に基づき2001年10月に閣議決定された森林・林業基本計画に示された森林の有する多面的機能の発揮に関する目標と林産物の供給及び利用に関する目標どおりに計画が達成された場合、京都議定書第3条3及び4の対象森林全体で、森林経営による獲得吸収量の上限値(対基準年総排出量比3.9%、4,767万t - C02)程度の吸収量を確保することが可能と推計される。 上記は森林・林業基本計画に基づく試算であり、今後、算定方法等について精査、検討が必要である。また、現状程度の水準で森林整備、木材供給、利用等が推移した場合は、確保できる吸収量は対基準年排出量比3.9%を大幅に下回るおそれがある。 吸収量の確保は、政府はもとより、森林所有者、林業及び木材産業の事業者、更には地方公共団体や森林及び林業に関する団体を含め、関係者全体による多大な努力が必要である国民的課題であり、森林・林業基本計画の目標達成に必要な森林整備、木材供給、木材の有効利用等を着実かつ総合的に実施することが不可欠である。 わが国に必要な吸収量を確保するため、以下に示す施策を強力に推進するとともに、吸収量の報告・検証体制の強化を図る。 |
1)健全な森林の整備 ア 森林の機能区分に応じた、複層林化、広葉樹の導入等を含む多様な森林整備の展開。 イ 緊急に除間伐等の保育の実施が必要な森林において、必要な施業を推進。 ウ 伐採後の更新(再造林)、下刈等の推進。 エ 無立木地、荒廃地・自然災害を受けた森林・耕作放棄地等において、植林、保育等を推進。 |
2)保安林等の適切な管理・保全等の推進 ア 保安林制度等における転用規制や伐採規制による森林の永続性の確保と保安林の計画的指定等による森林の保全の推進。 イ 機能が低下した保安林については、治山事業等による保全対策を適切に実施。 ウ 病害虫等被害の防止。 エ 優れた自然の風景地を構成する森林や自然環境を保全することが特に必要な森林等については、自然公園法や自然環境保全法に基づく制度等を活用。 |
3)国民参加の森林づくり等の推進 ア 広範な国民の直接参加による森林の整備・保全活動の推進。 イ 森林環境教育の推進。 |
4)木材及び木質バイオマス利用の推進 ア 化石燃料の使用量を抑制し、二酸化炭素の排出抑制にも資するため、再生産可能な木材の有効利用に関する国民への普及啓発、木造住宅・公共施設への木材利用の推進、木材・木質材料の利用・加工技術等の向上等による木材の積極的な活用。 イ 林地残材、製材工場残材等の木質バイオマスエネルギーとしての活用。 |
(表10 森林・林業対策の推進) |
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地球温暖化防止を含む森林の有する多面的機能の発揮並びに林産物の供給及び利用に関する目標を示すとともに、森林及び林業に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための計画(森林・林業基本計画)を策定 ・森林の有する多面的機能の発 揮に関する現状(2000年) 〈森林面積> 育成単層林 1,030万ha 育成複層林 90万ha 天然生林 1,390万ha 合 計 2,510万ha 〈総蓄積〉 3,930百万m3 ・林産物の供給及び利用の現状 〈木材供給・利用量〉 20百万m3 |
地球温暖化防止を含む森林の有する多面的機能の発揮並びに林産物の供給及び利用に関する目標を示すとともに、森林及び林業に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための計画(森林・林業基本計画)を策定 ・森林の有する多面的機能の発揮に関する目標(2010年) 〈森林面積〉 育成単層林 1,020万ha 育成複層林 140万ha 天然生林 1,350万ha 合 計 2,510万ha (総蓄積) 4,410百万m3 ・林産物の供給及び利用に関する目標 〈木材供給・利用量〉 25百万m3 |
○森林・林業基本法及び森林・林業基本計画に基づく施策の展開 ◎2003年から第1約束期間の終了年である2012年までの10年間において、基本計画に基づく森林整備等を計画的に強力に推進。更に吸収量の報告・検証体制の強化 (地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策を展開) |
○健全な森林の整備 ・植 栽 4万ha/年 |
○健全な森林の整備 森林・林業基本計画の目標達成に必要な森林整備の実施 |
◎重視すべき機能区分(水土保全林、森林と人との共生林、資源の循環利用林)に応じた森林整備の推進 ○緊急間伐5カ年対策の実施 ○長期育成循環施業の実施 ◎公的な森林整備の拡充 ○間伐対策の推進 ◎複層林への誘導伐の促進 ◎「緑の再生」特別対策等の実施 |
○保安林等の適切な管理・保全等の推進 | ○保安林指定の計画的な推進 ○治山対策の推進 ○病害虫等被害の防止 ◎機能低下保安林緊急整備対策の推進 ◎山村等の防災情報を整備し、防災体制を強化 |
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○国民参加の森林づくり等の推進 | ○国民参加の森林づくり等の推進 | ○国民参加による森林の整備・保全活動の推進 ◎地域住民、NPO等の多様な主体の参加と連携の強化 ○森林環境教育の推進 |
○木材資源の有効利用の推進 ・林産物の供給及ぴ利用の現状 〈木材供給・利用量〉 20百万m3 |
○木材及ぴ木質バイオマス利用の推進 ・林産物の供給及ぴ利用に関する目標 〈木材供給・利用量〉 25百万m3 ・未利用木材資源の利用推進 |
○林産物の新規需要の開拓 ○建築及ぴ工作物における木材使用の促進 ○木材利用を促進するための総合的な対策の推進 ◎学校の内装や学校関連施設など地域材を利用したモデル的な施設の整備 ○木質バイオマスエネルギー利用対策の促進 ◎木質バイオマスエネルギー利用施設のモデル的な整備 |
現状程度の水準(1998〜2000年実績の平均)で森林整備、木材供給、利用等が推移した場合の人為活動の行われた森林の吸収量:約3,550万t-CO2 | 森林・林業基本計画に示された森林の有する多面的機能の発揮の目標と林産物の供給及び利用の目標どおりに計画が達成された場合の人為活動が行われた森林の吸収量:計約4,770万t-CO2 |
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京都議定書のCO2削減目標6%の達成には、森林吸収源対策による削減3.9%の達成が不可欠 |
現状程度の水準で森林整備等が推移した場合は、確保できる吸収量は3.9%を大幅に下回るおそれ |
昨年10月に閣議決定された森林・林業基本計画に基づき、森林整備、木材供給、木材利用等を計画的に強力に推進 |
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2003年から第1約束期間の終了年である2012年までの10年間において以下の対策を強力に展開、吸収量の報告・検証体制を強化 |
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(14.3.19 林野庁) |