国土庁長官 伊藤公介氏祝辞(要旨)

 大変お忙しいところこうしてお集まりをいただき、山村振興にご協力いただいておりますことを国土行政を預かるひとりとして、心から感謝を申しあげたいと思います。また、それぞれの地域で皆さんが、よいふるさとをつくろうと日々ご精進をいただいておりますことも併せて、心から感謝を申しあげたいと思います。
 今、現会長からお話がありましたが、実は、私も羽田先生と同じ長野県の生まれで、伊那の出身でございます。私の実家は、海抜1,050メートルという文字どおりアルプスの山の中腹にあるような所でございまして、じいさんが村長をやっておりました。うちのじいさんがあまりいい村政をしなかったものですから、今、超過疎でございまして、もう村の小学校も中学校も完全に廃校になりました。
 私も今度入閣をいたしまして、ふるさとへ帰りました。私の選挙区じゃないものですから、帰れと言われてひさしぶりに帰りました。小学校1年の時に、皆で小さな手で学校の校門に植えましたカラマツが、大体30年位経たところで切られておりまして、ああふるさとは変わったなあ、状況の変化を見てこれは大変なことだ、ちょっとこうさみしい思いもし、また、私は、じいさんが山村のしっかりした村づくりができなかった罪のつぐないを国土庁長官としてやらなければいけないということを改めて感じて帰ってきたわけでございます。
 たまたま私の選挙区は、東京の多摩ニュータウンを抱え人口が急増してきた最も都市化現象の進んでいる所が選挙区でございます。
 従って私は、ビジネスチャンスのある大都市、若い人達がいろいろな夢を持ってふるさとを後にして東京に集まる、そうした都会のよさも、また、この大都会が持っているさまざまな都市の問題点ということも承知をしているつもりでございます。また、ふるさとのあのアルプスを見たりすばらしい大自然に囲まれたふるさとの生活のよさ、しかしそこにはさまざまな生活の中における困難さもある、そういう都市と農村のいい点、あるいは問題点というものを私自身、自分の体験として抱えてきたつもりでございます。
 今、私は、国土行政を預かる責任ある立場で仕事をさせていただいているわけでありますが、まもなく夏前後しているいわゆるポスト四全総計画が策定される。昭和37年の池田内閣の時代、日本がいよいよこれから経済成長をして所得倍増といきごんでいた頃、我が国の全国総合開発計画がスタートしたわけでございます。
 振り返ってみると、歴代の内閣、総理大臣は皆、過疎と過密を解消して、そして心豊かな日本の国土行政を進めようといって列島改造、多極分散型の国土政策あるいは、ふるさと創生といったものを歴代の内閣が試みてきた。実態としてできたかというと依然として一都三県、この首都圏にそして、日本人の4人にひとりが太平洋ベルト地帯に生活をしている。実に7,500万人を超える人達が住んでいるわけであります。
 そこで私は、おそらく橋本総理も考えたと思うのですが産業が地方に行ってもらいたい、若者よ、あの農村に定着してもらいたいと。歴代のリーダー達は考えたけれども現実はそうならない。それなら政治が一歩踏みだそう、それが首都機能の移転だと思うのでございます。
 日本のパートナーであるアメリカは、政治都市はワシントンならビジネスの中心はニューヨークでございます。21世紀の主後になるだろうという隣国中国は、政治の中心は北京なら世界の人々が投資をし、新しい町づくりが行われている上海はビジネスの町であります。日本も20世紀から21世紀へ大きく転換の今、政治は新しい地方の時代にその一歩を踏みだすべく首都機能移転の法案が予算委員会に提出の後、国会で共産党を除くすべての政党の賛成で通ったわけです。実は今朝、臨時閣議がございました。そこで今、財政再建で日本を健康体にするのと平行して、首都機能移転で地方の時代への第一歩を、スローダウンはあろうけれどもこの計画を進めていこうと、たった今、閣議で決定し、私も記者会見をしてきたところでございます。
 3,23市町村、さまざまな都市にはそれぞれさまざまな町や村の顔があります。日本は戦後50年間、ずっとヨーロッパに追いつき追いこそう、皆同じになろうと我々は考えてきましたが、そろそろ日本人の生活も転換の時を迎えているのではないかと思います。ふるさとの四季折々の大自然の中で、私達はさまざまな感激を青春時代感じて育ってまいりました。私にとっては、両親が一番大切な、私共を育んでくれた人達だと思いますが、その次にといったらあのふるさとの大自然であります。
 1,195の山村市町村、日本の面積の約50%を占め人口はわずかに4.2%、我々国土庁では今、多自然型居住地域という発想のもと、この大自然の中で都会の人達が生活できる、エンジョイできるそうした国土行政に今、転換しようとしている時であります。これまでご支援をいただいてきた皆さんの熱意に心から感謝申しあげるとともに、私達は国土行政を新しい時代に向けてしっかりと、農村や山村あるいは半島や離島の人々が、どこにでも心豊かに住めるようなそうした国土行政に大転換をしていかなければ成らない時だと思います。これまで山村振興にご協力をいただきましたそれぞれ地域のトップリーダーの皆様方に、いっそうのご協力をいただきたいと思います。羽田先生を中心として衆・参の国会議員の先生方にこれまで大変なご協力をいただいてまいりました。また新会長のもとで、山村振興がたゆまざる国土行政の一環として大きな政策の中心になりますように一緒に取り組まさせていただきたいと思います。お忙しいなか、総会にご出席いただきました皆様方に心から感謝を申しあげて挨拶といたします。


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