全国山村振興連盟は、平成25年10月23日(水)午前10時30分から千代田区永田町の全国町村会館2階ホールにおいて平成25年度第2回理事会を開催した。
 最初に、中谷 元 会長から挨拶があり、次いで、副会長の宮腰光寛衆議院議員及び理事の吉野正芳衆議院議員から挨拶がなされた。
 来賓として出席された農林水産省農村振興局 米田博次 中山間地域振興課長、国土交通省国土政策局 木下一也 地方振興課長、総務省 出口和宏 地域力創造グループ地域振興室長及び林野庁森林整備部 原田隆行 森林利用課長から挨拶がなされた。
 その後議事に移り、竹ア一成会長代行が議長を務め、11月21日に開催される通常総会に提案する「第1号議案 平成26年度山村振興関連予算・施策の要望(案)に関する件」、「第2号議案 山村振興法の改正に関する特別要望(案)に関する件」及び「第3号議案 決議(案)」について審議が行われた。
 理事会の内容は、次の通りとなっている。

【中谷 元 会長 (衆議院議員)の挨拶要旨】

 本日は、本年度の第2回目の理事会の開催ということで、お忙しい中、全国各地で市町村長、地域の団体の長をされている皆様方にご出席いただきありがとうございます。皆様方は日頃から地域振興の責任者、リーダーとして、それぞれの地域で山村振興について大変なご尽力をいただいておりまして、心から感謝とお礼を申し上げる次第であります。
 また、国会議員の役員として、自由民主党の農林水産戦略調査会長代行の宮腰先生に出席いただいております。自民党では新しい農林行政を推進するということで、農地の管理機構、農業の多面的機能の問題などについて、宮腰先生が中心になって検討を進めていただいております。
 また、吉野先生は自由民主党の林業問題の責任者でありまして。森林経営計画等におきまして活用しづらい状態でありましたが、所有者・技術者が意欲をもって林業経営に当たられるにしようということで、取組んでいただいております。
 また、来賓ということで、課長さん、室長さんをはじめ関係省庁の方々に出席いただいていますが、日頃から、山村振興のためにご尽力いただいていることに感謝申し上げます。
 現在、台風が27号、28号と二つ来ており、複合して動きが読めない状況です。先の26号の台風によりまして、伊豆大島で44名の死者・行方不明者が生じ、懸命の捜索・救出活動が進められております。この状況を見まして、自然の猛威がいかにすごいものかを痛感します。派遣された自衛隊員に聞いてみますと、とにかく土砂の量が多く、二重三重に土砂崩壊があり、土砂が相当堆積して救出活動も非常に困難を極めているとのことでした。改めて森林の持つ防災機能、これが非常に重要であることが認識されており、国土保全機能を高めるためにも、国としても森林への対応をしていかなければならないと思います。しかし、残念ながら、国会での議論を聞いておりましても、未だに、公共事業は無駄だとの主張をされる議員がいまして、結局政府の方もや極力無駄使いはしないような公共事業にしますというような答弁になっています。地方においてはやらなければならない事業が沢山ありまして、そのための予算確保が重要なことであります。特に山村地域におきましても相当な予算を必要とされる事業がありまして、それらの事業を実現するために我々としても全力で対応していきたいと思います。
 今回の概算要求につきまして当連盟も政府へ要望を行っておりますが、政府の概算要求におきましては、山村集落の活性化のためのハード・ソフト事業の充実、手厚い鳥獣被害対策、山村地域に対する事業の実施の配慮、多面的機能発揮のための事業等が盛り込まれているところでありますが、引き続き、山村振興のための予算の実現に向けて要望等を行っていきたいと存じます。
 現在の山村振興法は平成27年3月に期限を迎えることになっています。山村振興のための法的根拠はますます重要性を増しておりますので、我々としては延長、内容の充実を図っていかなくてはならないと思っています。連盟としては、その内容の充実を如何に図っていくかということで検討会を立ち上げて、来年の夏頃に向けてその内容の取りまとめを行うこととしています。それを、政府、国会に働きかけていくことを考えています。
 その成り行きを全国の農林水産業関係の人々が心配をされているTTPにつきましては、現在、政府が交渉を進めていますが、我々としては選挙で約束したこと、国会で決議をしたことを踏まえて、党でも大事なものはしっかりと守って行くということで具体的に要望項目を揚げており、これらがしっかりと守れるように政府に対して申し入れをしておりまして、この方針はいささかも変わっておりません。今後交渉が煮詰まりますが、約束をしたとおりしっかり守っていきたいと思っています。
 総会に向けての理事会の議案がいくつかありますが、よろしくご審議を頂きますようお願いを申しあげまして、冒頭のご挨拶とさせていただきます。

【宮腰光寛 副会長(衆議院議員)の挨拶要旨】

 昨今の災害をみるにつけ、国土の3分の2を占める森林をしっかり守っていくことがいかに大事であるかを痛感しております。
 会長から紹介がありましたが、今、いろんなことを検討させていただいております。 林業関係に関しましては、先の通常国会で、間伐促進法を改正・延長し、引き続き、間伐に取組む場合には都道府県において起債ができることにしました。国の事業を全国一律の厳しい基準ではなくて地域にあった使い勝手のいい仕組みに切り替えるということと併せて柔軟な間伐ができるような形に改めさせていただいたところです。なお、復興予算で使われていた森林整備加速化基金の一部325億円については、中谷会長を先頭にして農林水産戦略調査会挙げて、補正予算が組まれる際には全力で全額復元をする努力をして参りたいと思っています。
 今の臨時国会に政府提案している農林水産省関係の法律案について申し上げます。
 一つは、民主党政権で提出していた「農山漁村における再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律案」は廃案になりましたが、政権に復帰させていただいて、相当修正をさせていただきました。農地が太陽光パネルのために乱暴に転用になるのではないかという懸念に対して歯止めをしっかりかけた上で、さらに農村にその利益の一部を還元するとういうことも追加し、さらには、例えば太陽光パネルが撤退をするといった時にその費用は誰が責任を持つのかということも視野に入れた修正を行い、法案の名称も「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律案」と変更して、地域にとって問題のない、それこそ地域の中で市町村においてしっかり誘導していただいて、地域の話し合いの中で農地の利用の整理がちゃんとできるという形にさせていただきました。
 もう一つの「農地中間管理事業の推進に関する法律案」につきましては、産業競争力会議などから中山間地域はどうでもいいんだ、平場の農地さえ民間の企業にどんどん貸し出してくれればいいんだ、という声もありましたが、そうではないという形にしっかりとピン止めをさせていただきました。
 自民党が野党時代に公約に掲げていました、先ほど中谷会長がおしゃっていた多面的機能等直接支払いを来年の通常国会に法案の形で提出するということにしております。農地が農地として利用されていれば、単価は違いますが、水田、畑地、樹園地、草地のいかんにかかわらず、多面的機能、国土保全、水源かん養、さらには集落機能を維持することによってその地域の伝統文化・芸能を守っていただいているとうこと、これらを評価してその機能を維持するコストに着目した形で多面的機能直接支払いを行うことについて、今、制度設計をさせていただいております。これまでの既存の直接支払いの仕組み、中山間地域等直接支払制度、農地・水保全管理直接支払交付金、環境保全型農業直接支払交付金、この三つの既存の直接支払いの仕組みも併せて法律にきちっと規定するという方向で検討をさせていただいております。私共の政策の柱は二つあります。一つはやはり産業政策として強い担い手をしっかりと育てていく、これと併せて、農業・農村が果たしている多面的機能をしっかりと評価して、農村で集落を守りながら、地域をしっかりと支えていけるような地域政策、この二つが政策の柱であると考えておりまして、それを実現するために中谷農林水産戦略調査会長を先頭にして、しっかりとした、現場を踏まえた仕組みを構築していきたいというふうに考えております。大事な時期になっておりまして、皆様方からの熱い思いもいただきながら頑張っていきたいと思っています。

【吉野正芳 理事(衆議院議員)の挨拶要旨】
 自由民主党の林政小委員長を仰せつかっています。今度の参議院議員選挙で二つの大きな公約をしました。
 一つは、民主党政権の下で森林経営計画という形で打ち出されましたが、それまでは施業計画という形で約30町歩という小さな単位で施業計画を出せばそこの森林整備等については補助金がついたわけであります。それが今度は広い面積、林班という概念が出まして100町歩くらいの広さ、そうして、2分の1の同意が絶対条件でありました。これらは、現実には至難の技であります。我々は公約においてこれをきちんと見直すということを掲げました。そうして、名前は森林経営計画のままですが、公約通りに、実質的には以前の施業計画と同様にしました。また、森林経営計画が作れない地域は間伐特措法を利用して補助金を受けることができる、そういうきめ細かな施策を講じたところであります。
 もう一つの柱は木材を使ってもらって、そのお金を山側に環元していこう、お金の大循環であります。
 その柱の一つが公共建築物等木材利用促進法であります。これは国は2階建て以下、軒下9メートル以下の建築物は木材で造らなければならないのでありまして、これから各省庁精査をして本当に守っているか検証してまいります。
 もう一つは、今年からを始まった木材利用ポイントです。410億円の予算です。
木材を使えばポイントを与えるという新しい制度でありまして、今、広く公募をしているところであります。構造材、柱、桁、土台に国産材を2分の1以上使えば30万ポイント、お金に換算すると30万円もらえる。また、内装に木材を使えば平方メートル当たりのポイントには差がありますが、最大30万ポイントがもらえる。併せて60万ポイントもらえるという素晴らしい制度を作りました。
 これらを大いに活用していただきたいと思います。

【米田博次 農林水産省中山間地域振興課長 挨拶要旨】

 農林水産省では本年1月に「攻めの農林水産業推進本部」を設置しました。その中で農林水産業を産業として強くする取り組みと、多面的機能の発揮を図る取り組みの一体的な推進に向けて取り組んでいるところであります。また、本年6月に閣議決定された「日本再興戦略」におきましても、農林水産業を成長産業として、今後10年間で6次産業化を進める中で農業・農村全体の所得を倍増させることとしているところであります。
 農林水産省においては、これらの指針に基づき、平成26年度概算要求において、前年度比13.6%増の2兆6千億円の要求を行っているところであります。
 農村振興局におきましては、活力ある農山漁村対策として、都市と農山漁村の共生・対流等に係る4つの省庁連携プロジェクトを行うということで、都市農村共生・対流総合対策交付金等を活用して「子ども農山漁村交流プロジェクト」、中山間地域でも増えている廃校を関係省庁と連携して多機能な拠点施設等として整備する「空き家・廃校活用交流プロジェクト」、「「農」と福祉の連携プロジェクト」、「「農」を楽しめるまちづくりプロジェクト」を実施することにしています。
 また、棚田・疎水など将来に残すべき農村景観・資源の保全・復元・継承をソフト・ハードの両面から支援するための新たな事業、野生鳥獣被害防止活動等を総合的に支援する交付金の増額等各種施策の充実について要求しているところであり、山村振興のための所要の予算の確保に全力を尽くしてまいります。
 山村地域の振興につきましては、これまで、山村振興法に基づき生活環境の整備等による地域格差の是正、農林水産業をはじめとする産業の振興等様々な施策を講じてきたところでありますが、平成26年度末には山村振興法の期限切れとなります。昭和40年の法制定以来、50年目の節目となる重要な時期を迎えることとなります。農林水産省としても、これまで実施してきた施策の効果の検証等を行いつつ、皆様のご意見も伺いながら山村振興施策が地域の実情に即したものとなるよう取り組んでまいりたいと考えておりますので、引き続きご指導の程お願いいたします。

【木下一也 国土交通省地方振興課長 挨拶要旨】

 国土交通省は、道路整備、治水事業をはじめとする社会資本整備あるいはまちづくり、住宅対策、観光振興といった様々な施策を推進することによりまして、地域づくりをを支援させていただいております。そういう政策を通じまして、離島、半島、山村、過疎といったいわゆる条件不利地域の振興も支援させていただいております。
 来年度の山村振興施策について、3点ご紹介させていただきます。
 まず第1点は、これからの山村の集落のあり方として、ふるさと集落生活圏を推進しているところあります。その中で、小さな補助事業でありますが、集落活性化推進事業ということで、廃学校などを活用して集落の公共的施設を集約をしていく、高齢の方も公共的サービスを使いやすい形で集落再編を進めていくことのお手伝いをする補助制度ですが、これについて、ふるさと集落生活圏あるいは小さな拠点というものを形成する場合に、さらに使いやすいような条件緩和、補助の対象の拡充を図るべく概算要求を行っているところです。
 第2点は、最近、山村集落などにおいて地域で地域ビジネス、内発的なビジネスを起こしていこうというような動きがありますが、地域の活性化を図る観点で、地域の自然、歴史、文化とかいう地域の力を発見し、これを地域ビジネスに結びつける、ひいては地域の活性化に結びつけることにできないかということで、NPOや民間企業あるいは地域の信用金庫などが協力をして地域ビジネス活動を支援していく体制づくりを行っていくための補助金の創設について現在検討しているところであります。
 第3点は、予算と少し離れますが、地域の住民の足の確保の問題です。地域住民の生活維持に必要な旅客輸送につきまして、市町村やNPOの方々が自家用車を用いて有償で運送できる、いわゆる自家用有償旅客運送制度が平成18年度に創設されております。これについて、現在、地方への権限委譲と併せて、さらに使い易い制度にならないか、制度設計を進めております。先般第1回の会議を開いて、過疎地域での有償旅客運送について使い易い制度設計に向けて検討を進めております。


【出口和宏 総務省地域力創造グループ地域振興室長 挨拶要旨】

 山村は水源のかん養や国土の保全といった意味で大変重要な役割を果たしていますが、高齢化・過疎化に伴いまして集落が深刻な状況にあると認識しております。構成員の方々が高齢化によりまして生活機能が段々と低下していく、また、人口が減少していく中で、それを支えていく生活支持機能が低下していく、そういった全体の集落の機能の低下を公的サービスをはじめとしていかに支えていくか、私共にとりまして大きな課題であります。
 総務省の施策として、平成26年度におきまして、まず、市町村の行政運営にとりまして重要な財源であります地方交付税、過疎債、辺地債の総額を確保していかなくてはいけないと思っております。
 また、ICTの関係につきましては、生活に欠かせなくなった携帯電話のエリア整備をはじめとして、超高速ブロードバンドの基盤整備も推進していきたいと思っています。
 さらに、地域の活性化の観点から、今年の2月に総務省において「地域の元気創造プラン」を作成し、現在これに基づいて政策を進めております。具体的には、従来から言われておりました産学官に地域金融機関の金を加えた産学官金が連携をして地域のモノやチエを活かし、人や投資を呼び込み新しい地域経済の仕組みを作っていかなくてはならないのではないか、こういった問題意識に基づいた取組を進めております。
 さらに地域の活動を進める上で不可欠であります人材の確保の面におきましては、三大都市圏をはじめとする都市部から地方の方々が人材を受け入れる取り組みを推進しております。
 集落の機能ということに関しましては、地域の集落の方々が交通手段の確保や生業の振興といった取り組みを行う上で必要な経費について支援する観点から、過疎集落等自立再生対策事業を行っていきたいと考えています。

【原田隆行 林野庁森林利用課長 挨拶要旨】

 林野庁の森林・林業施策としては、山村の最大の資源である森林をいかに活用していくのか、戦後営々と皆様方の努力により造成されてきた森林が今や成熟時期を迎えております。まさに、出口対策、木材を使って、また、植えて循環をさせていく、これが大変重要になっています。それがひいては山村に対する経済的なメリットにもなり、雇用も含めて一番の効果になるのではないかと、森林行政としては考えているところであります。そのために、様々な施策につきまして、先生方のご支援・ご協力をいただきながら、木材利用ポイント等も創設させていただき、施策を推進しているところであります。
 その中で、一点だけ、今までにも増して力を入れていきたいという点がありまして、是非とも市町村長さんにご理解・ご協力を頂きたいと思います。
 平成25年度に「森林・山村多面的機能発揮総合対策」(30億円)が予算化されましたが、平成26年度はこれを拡充して47億円要求しております。その拡充の事業内容の一つとして、「E林地情報整備タイプ 市町村が中心となって地域住民等の協力を得ながら行う不在村森林所有者等の探索・連絡、国土交通省の地籍調査等とも連携した境界明確化のための測量、得られた情報の共有・活用等の活動」があります。
 山の手入れをより合理的にやっていく、そして安定して木材を供給していくためには、山の施業をまとめていかなくていかなくてはなりませんが、その際にも重要でありますし、また、今後の地域政策、国土政策を考えていく上においても山村における森林の境界の不明あるいは所有者不明問題は大変課題になっていくといろんなところからご指摘を受けています。これまでも森林整備加速化基金等において森林境界の明確化に対する支援をしていますが、今回この対策の中でも拡充しまして、さらに積極的に国土交通省とも連携して、地籍調査につながるきちんとした境界の明確化に取り組んでいくことにしています。その際、所有者が不明でその探索に大変な経費がかかるとか、そういった取り組みをする際に森林組合とか事業者が声をかけると不安だという声もありますので、市町村もかんでいただいて、積極的に対策を取っていただく際には、できるだけご支援をさせていただきたい、ということを念頭においた拡充であります。現在財務省と折衝中ですが、拡充ができましたら、森林の境界の明確化にご協力いただければ大変ありがたいと思っています。
 振興山村の指定の基準自体が林野率0.75以上ですから、とにかく森林・林業の振興、とりわけ木材利用の推進につきまして、吉野先生のご指導も得ながら推進をしていきたいと思います。 

◎挨拶をいただいた方以外の政府関係の出席者(敬称略)

    林野庁山村振興・緑化推進室長         今泉裕治
    農林水産省中山間地域振興課調整係長    加藤邦彦
    国土交通省国土政策局地方振興課課補佐  後藤高広
    林野庁山村振興・緑化推進室企画係長    竹ア桂子
 
【議 事】
 竹ア会長代行の議長のもとに議事が進められた。
○ 第1号議案 平成26年度山村振興関連予算・施策の要望(案)に関する件
  岸事務局長が内容の説明を行い、原案通り承認された。
○ 第2号議案 山村振興法の改正に関する特別要望(案)に関する件
  岸事務局長が内容の説明を行い、原案通り承認された。 
○ 第3号議案 決議(案)
  岸事務局長が内容の説明を行い、原案通り承認された。


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