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農林水産省では、野生鳥獣による農林水産業被害が全国的に深刻化している中で、各地域における野生鳥獣被害の防止対策を推進しているが、こうした中で、鳥獣被害対策に取り組み、被害防止に貢献している者及び団体に対する表彰を行い、このような取組を広く紹介することにより、各地域での被害防止活動の推進を図ることとしており、審査委員会における選考等を経て、平成24年度の受賞者が決定され、2月26日(火曜日)に全林野会館(東京都文京区)において表彰式が行われた。 表彰者は次のとおりとなっている。 農林水産大臣賞(団体の部) イノシシの捕獲から資源化まで取り組み、地域を活性化 おおち山くじら生産者組合 (代表者:組合長 品川光広) 島根県美郷町
主な取組 イノシシによる被害に対応するため、猟友会依存の体制を改め、農家や自治会関係者も含めた駆除班を編制し、主体的に活動。 休止していた既存の食肉処理施設をイノシシ処理施設として活用し、捕獲個体の資源化にも取り組んだことにより、捕獲鳥獣の処分負担の軽減にも繋がり捕獲頭数が増加。 また、イノシシを「おおち山くじら」と命名してブランド化。食肉として出荷するほか、町内の女性グループが中心となって食肉加工品や皮革製品を開発・販売するなど、捕獲したイノシシを有効利用して6次産業化を図り、地域活性化のツールとして活用。 このイノシシの捕獲から資源化までを行う取り組みには多くの町民が関わっており、獣害対策を契機とした地域づくりのモデルとなっている。 農林水産大臣賞(個人の部) 全国各地で捕獲技術を指導・普及、自ら捕獲器も開発 須永 重夫 氏 栃木県足利市
主な取組 須永氏は、足利市における捕獲の中心的な担い手として活躍しており、同市で捕獲されるイノシシの約2割は須永氏が捕獲したものであるなど、同市の鳥獣被害軽減に大きく貢献。 また、その高い捕獲技術や野生鳥獣に関する見識を活かし、農作物野生鳥獣被害対策アドバイザーとして県内はもとより全国各地で被害対策に関する助言・指導や研修会での講演等を行うなど、捕獲技術の指導・普及に積極的に取り組んでいる。 さらに、捕獲機材の開発にも取り組み、平成11年及び17年に捕獲檻及び捕獲わなに関する特許を取得するとともに、平成24年にはカラス被害を軽減する器具を開発し実用新案登録。須永氏開発の捕獲檻は、高い評価を得ており、各地で導入されている。 生産局長賞(団体の部) カワウの大量捕獲技術の開発による被害軽減 株式会社イーグレット・オフィス (代表者:代表取締役 須藤一成) 滋賀県米原市
主な取組 野生生物の調査を行う同社は、カワウの生態や被害軽減のための研究を行い、カワウの生息数を高精度で推定できる調査法を確立。 また、野生生物生態研究のノウハウを活かし、カワウの生態に基づいたエアライフルによる大量捕獲技術を開発。 同社では、地元の漁協等とも連携し、本技術を用いて県内の主要なカワウ営巣地において捕獲を実施。その結果、県内のカワウ生息数は平成20年の約7万5千羽から平成24年は約1万3千羽と大きく減少し漁業被害も軽減するなど、世界的にも事例が見られないカワウの個体数調整による被害軽減に成功。 生産局長賞(団体の部) イノシシの捕獲・棲み分け・防除による総合的な取組 武雄地区有害鳥獣広域駆除対策協議会 (代表者:会長 樋渡啓祐(武雄市長)) 佐賀県武雄市
主な取組 武雄市の「いのしし課」を中心として、農協、農業共済組合、森林組合等で「鳥獣被害対策チーム」を結成し、一体となって鳥獣害対策を推進。 近隣自治体(長崎県も含む)と連携し、 GISを活用したイノシシ対策情報システムを整備し、被害状況や捕獲状況等の情報を共有。 技術レベルの高い猟友会員で構成する「鳥獣被害対策実施隊(トッテクレンジャ-)」を組織化して捕獲活動を行うとともに、集落が一体となった農作物残渣の除去や緩衝帯整備、「いのししパトロール隊」による防護柵等の点検・巡回指導など、「捕獲・棲み分け・防除」の取り組みを総合的に実施。 さらに、捕獲したイノシシの特産品化を目指して食肉加工施設を整備し、食肉や加工品開発にも取り組んでいる。 生産局長賞(団体の部) 地域住民全員が主役となって被害防止活動を実施 片田地区獣害対策協議会 (代表者:会長 野田彌) 三重県津市
主な取組 サル被害を軽減するため、11の自治会、猟友会、 JA、消防団等で構成する広域的な協議会を設立。当初は行政依存だったが、約1年かけて地域の合意形成を図り、協力体制を整備。 「獣害対策5ヶ条」を策定して住民に対策を周知するとともに、各戸に追い払い記録簿やパチンコを備えるなど、全員が獣害対策の主役となって情報提供や追い払い等を実施。 また、捕獲したサルに発信器を付けて群れの動きを監視し、地区に侵入しようとする群れに対する追い払いや、サルの寝場所の攻撃(夜間の追い払い)を実施。その結果、サルの群れが同地区を避けるようになり被害が大幅に減少。 イノシシ等に対しても、地域ぐるみで電気柵の設置、捕獲活動、緩衝帯の整備等を実施し、被害を軽減。 |