令和元年7月理事会における中谷会長挨拶要旨

【中谷 元 会長(衆議院議員)挨拶要旨】

本日は、理事会の開催ということで全国各地からそれぞれの地域において山村振興のため努力をされておられる皆様方にご出席をいただき誠に有り難うございます。
今、鹿児島県、宮崎県、熊本県をはじめ九州地方において大雨が降り続いていまして、気象庁の方では自分の身は自分で守って下さいということで、かなり広範囲に避難指示、避難勧告が出ているようです。

高知でも昨年豪雨がありましたが、かなりこれまでの災害で河川の土壌、河床が3メートルくらい上がっていて、少しの雨でも氾濫する状況になっています。これもやはり、治水、治山、砂防といったおおもとの対応をしないといくら下流を整備しても水が溢れてしまうことになります。我々は、今日は公明党の石田政務調査会長もお見えになっていますが、予防防災、減災という観点で治山、治水事業を増やすというようなことで対策をしています。

山村集落はこういった防災の面において、人々がその地域に住むということがかなり災害を防ぐ役割を果たしていますし、また、実際に災害が起こった時には地元に人がいることが人命救助につながるということで、しっかりと山村を維持していくことが大事だと今改めて認識が拡がっているわけです。

今回の当連盟の役員人事におきまして、国会議員の中から新たに2名の方に役員になっていただきました。元復興大臣の吉野正芳議員には、今日は所要のため欠席ですが、副会長に就任していただくことになりました。もう一人、篠原 孝議員には、国民民主党所属ですが、非常に農林関係に造詣が深く熱心でございまして、理事に就任していただくことになりました。どうぞよろしくお願い申し上げます。
この4月から、森林環境税・森林環境譲与税が導入されたところでありまして、山村地域にも新しい時代の息吹がかんじられるということであります。

最近、国民の皆様が楽しく見ているテレビ番組があります。日曜の夜8時、NHKの「いだてん」ではなく、テレビ朝日系の「ポツンと一軒家」という番組で、山間部などの一軒家をスタッフが訪問するいう番組ですが、ゴールデンタイムの激しい番組競争の中で視聴率が20%ということで、一週間の中で第2位、ちなみに「いだてん」は6%です。お金をかけて俳優を雇って演出する番組ではなく、「ポツンと一軒家」は何の演出もなく、俳優もいません。スタッフがただそこを訪ねていくことでありますが、こういうことに現在の人々は非常に関心が深いということであります。

今、注目されているのは、移住、Iターン、Uターン、そして空家の活用ですが、こういった施策を今各省庁で考えていただいています。ようやく地方創生が動きだしてきたなという感じがあります。現に内閣府のアンケート調査結果によりますと、「農山漁村に移住したい」「条件が合えば移住してもよい」と答えた人が、20代に限りますと、38パーセントにも達しています。若者の田園回帰志向が強まっているということの表れです。「地域おこし協力隊」をはじめ農山漁村に住んでみたいという若者が増えていることは心強いことであります。こういった機運を利用して、就職の場、空き家活用などの居住面での対策、医療・福祉、教育、インフラ整備など様々な側面の充実に努めて行く必要があると思います。

IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、5G(第5世代移動通信システム)などによる技術革新によって、超スマート社会が出現するということで、「ソサエティ5.0」と呼ばれています。「狩猟社会」「農耕社会」「工業社会」「情報社会」に続く新しい5番目の社会です。この社会は決して都市がいいというものではなくて、むしろ人口が減少したり、遠隔地であったりする山村地域でこそ大きな効果を発揮するのではないでしょうか。5Gでは、その場にいなくてもリアルな情報が得られることになりますから、別に都市に行かなくても地方で仕事ができるということです。都市と山村が繋がって人混みの中にいなくてもいい時代です。
こうした中で先般の国会で「棚田地域振興法」が超党派で成立しました。

そして、お手元に資料を配布しておりますが、人口急減地域対策ということで、これは特定地域づくりの事業協同組合という組織を作って、その組織を支援する法案(「地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律案」)を議員立法として先の国会に提出しました。

まず、都道府県知事が、①自然的経済的社会的条件からみて一体であり支援が必要な地区であること、②特定地域づくりの事業の適正な実施が可能なこと、③地域社会の維持及び地域経済の活性化に特に資すること④組合・事業者団体・市町村との間の十分な連携協力体制があること、の4つの要件を満たした地域を認定します。その地域の特定地域づくり事業協同組合において人を雇用しておき、オーナーである漁協、農協、地元の商工会、商店街、観光協会、小売業者、介護業者が多額のお金ではなくある料金を払ってその人に仕事をしてもらうというのが基本です。原資は、総務省、財務省とも相談していますが、全国で大体400組合、1組合当たり3,464万円ということで、雇う人は大体8人、人件費が400万円程度、運営費が200万円程度ということで、1組合当たり1ヶ月12万円の経費が捻出できるということです。公明党の皆さんと手続きをして、先の国会に提出しております。これには、立憲民主党、国民民主党も賛成していただけるということで、次の国会が開かれましたら成立する運びになっていますので、来年度から事業が実施できます。

今日の理事会は、当連盟の平成30年度決算、令和2年度予算・施策に関する要望書の案をご審議いただくことになっております。忌憚のないご意見を賜り充実した理事会となりますよう、積極的にご意見、ご発言をいただければ有り難いと思います。
大変長くなりましたが、冒頭の会長からの挨拶とさせていただきます。