令和元年7月の理事会における今泉森林利用課長挨拶要旨

【今泉裕治 林野庁森林利用課長 挨拶要旨】

山村地域は豊富な森林資源を有しており、これを循環利用し、山村の振興、そして地方創生を図っていくことは林野庁としても大変重要な課題と認識しており、林業の成長産業化の実現に向けて様々な施策を推進しています。

また、山村地域の住民の皆様が身近な森林を協力して保全・管理していく取組みにも支援を行っているほか、都市部の住民や子供達、あるいは民間企業の社員などが山村を訪れて山村の豊かな自然に親しんで癒やされ元気になる、あるいは山村の文化に触れるといった都市と山村の交流機会を創出したり、森林・山村の大切さを都市部の人達にも理解していただけるように普及・啓発や情報発信に取組んでいるところです。

こうした中、本年4月から、昨年の通常国会で成立させていただいた森林経営管理法に基づく「森林経営管理制度」がスタートしました。また、これに併せて森林環境譲与税の譲与も始まります。森林環境譲与税は、一定の計算により算出された額が配布されることとなっており、都市部の自治体にも配布されます。林野庁としては、都市部に配布された森林環境譲与税について、木材の利用といったことは勿論ですが、山村地域との連携が実施されるよう、普及・啓発に努めているところです。

先月、「まち・ひと・しごと創生基本方針 2019」が閣議決定されました。こちらには、新たな視点として「定住に至らないものの、特定の地域に継続的に多様な形で関わる「関係人口」の創出・拡大に取組む。」と明記されています。新たな視点といっても、山村振興法では一足も二足も先に取り入れた概念ですが、こうした「関係人口」の創出にも、都市部に配布される森林環境譲与税が活用されることを期待しています。

新たな制度のスタートに当たりまして、山村自治体の皆様においては、何からどう取組んでいけば良いのかとお悩みのことも多いかと思います。林野庁においては、各都道府県で開催される説明会に担当官が出向いてきめ細かく説明させていただいたり、各地の色々な取組み状況や事例を調査し情報提供をさせていただいたり、あるいは、研修なども実施し、市町村において新しい制度の運用がスムーズに進むよう、サポートに努めているところです。

この4月には、林野庁森林利用課に「森林集積推進室」が新たに設置されました。森林経営管理制度と森林環境税・森林環境譲与税制度の的確な運用に向けたサポート体制も整いましたので、今後とも皆様のご意見を伺いながらきめ細かくサポートをしていきたいと思っております。

これらの新たな制度による取組みだけではなく、林野庁では、従来からの治山事業や森林整備事業をはじめとして、林業・木材産業の強化に向けた様々な施策を講じていますが、これらの予算の確保も大変重要だと考えており、全力で取組んでいきたいと考えておりますので、引き続き皆様方からも特段のご支援をお願い致します。また、都道府県における一般財源の確保についても、それぞれの都道府県に対し引き続き働きかけていただきますようお願い致します。
最後に「聞き書き甲子園」の高校生の受入れと「名人」の推薦に協力いただく市町村の公募に関してお願いさせていただきます。「聞き書き甲子園」は、もともと林野庁が開始した事業ですが、現在は、林野庁と文部科学省、環境省、水産庁が一体となり、民間の各種団体とも連携して取組んでいるもので、全国山村振興連盟にも後援していただいております。ファミリーマートをはじめとした企業の協賛もいただき、まさに官民協働の連携事業として実施しています。

毎年、全国から高校生を募集し、その高校生が、山村部あるいは漁村部で長年自然と向き合い農林漁業を生業として生きてこられた「名人」を訪ねて一対一でインタビューをし、その記録を作ってもらうという取組みです。今年度から、高校生の受入れと6~8人の「名人」の推薦に御協力いただく市町村を公募により決定する方式とし、今年度は12の地域に御協力いただき実施されます。

来年度の大会の開催にあたり、御協力いただく地域を募集しておりますので、皆様方の地域で6~8人の「名人」の顔が浮かぶようでありましたら、高校生の受入と「名人」の推薦に御協力いただきますようお願いいたします。まさに「関係人口」の創出につながる取組みだと思いますので、是非、積極的に手を挙げていただければと思っております。