全国山村振興連盟メールマガジンNO198

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2022.11.4

全国山村振興連盟事務局

〇2022年 10月の 農林水産行政

 

2022年10月の農林水産行政の主な動向は、以下の通りでした

 

1 政府が総合経済対策を閣議決定

10月28日、政府は 物価上昇などに対応する総合経済対策を決めた。電気・ガス代の抑制策や子育て支援拡大などを盛り込み、2022年度第2次補正予算案の一般会計は29.1兆円程度、民間投資などを含めた事業規模は71.6兆円ほどとする。

農林水産関係では、「危機に強い食料品供給体制の構築」を柱として、 輸入依存度の高い肥料・飼料・穀物の国産化を進めることとした。①肥料対策では、ペレット堆肥の流通、下水汚泥の利用など未利用資源を活用するとともに、肥料原料について備蓄制度を新たに創設する。②麦・大豆・飼料作物の国産化を進めることとし、水田の畑地化、麦・大豆の本作化を加速するとともに、米粉の設備投資を支援する。③円安を生かした農林水産物・食品輸出の促進を図ることとし、 2025年に2兆円と掲げた政府目標の前倒しを実現するため、輸出産地を支援する。

 

2 基本法検証部会の初会合を開催

10月18日、農林水産省は食料・農業・農村政策審議会の基本法検証部会の初会合を開催した。テーマとして「輸入リスク」を設定し、農林水産省は、中国の購買力が高まる中で輸入穀物などが長期的に値上がりし、輸入の安定に関する政策が必要であるとした。また、① 1999年に基本法が制定された時点に比べ、食料の輸入をめぐっては、 中国の台頭などで日本の購買力が下がっていること、②基本法が生産資材の輸入に関する政策を想定していないことを指摘した。

また会議では、①国内の生産基盤が弱体化していること、②消費者の貧困問題が にも目を配る必要があることなどが議論された。

基本法検証部会は、年内は食料の安定供給の確保などをテーマに政策の検証や意見交換など行い、年明け以降それを踏まえて議論する方針である。

 

3 野村哲郎農相が農林水産委員会で所信表明

10月25日、野村哲郎農相は、衆議院・参議院の農林水産委員会で、就任後初めてとなる所信表明を行った。国内の生産基盤の弱体化や食料安全保障上のリスクの高まりを受け、「将来にわたって食料を安定的に供給していくためのターニングポイントを迎えている。」とし、①食料生産資材の輸入依存度の高い国内農業の構造を転換すること、②生産コストの適正な価格転換に向けた環境づくりを進めること、③「みどりの食料システム戦略」の推進に向け、化学肥料の 2割削減・化学農薬の1割削減など2030年目標の実現を目指すこと、④基本法をめぐり、農家の減少、食料安全保障リスクの高まり、海外市場の拡大など大きな情勢変化を踏まえ、検証・検討を進めていくことなどについて述べた。

 

4 2023年産米の適正生産量を 669万トンと設定

10月20日、 農林水産省食料・農業・農村政策審議会食糧部会で、米の適正生産量を含む需給見通しが了承された。需給見通しでは、2023年産の主食食用米の需要に見合った適正生産量を669万トンと設定した。2022年産の予想収穫量670万トンと 同程度の規模となる。

2023年産の米需給の見通しとしては、2022年産米が適正生産量よりも減産が進んだため、在庫見通しは適正水準の範囲内にあるとした。これを受けて23年産米については、需要量の見通しを680万とし、生産量を 22年産と同面積で 平年収量とすると669万トンとなるとした。22年産と同じ面積であっても生産量は需要量を下回り、需給が改善するとしているが、飼料用米をはじめとする転作作物の定着が課題である。

 

5 野村農相がASEAN +3 農相会合に出席

10月26日、日本・中国・韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国は、オンラインにより農相会合を開催した。 野村哲郎農相は、就任後初の国際会議への出席となった。

野村農相は、「みどりの食料システム戦略」を踏まえ、「日ASEANみどり協力プラン」を打ち出し、技術開発・実証・人材育成などで協力していくこととなった。具体的には、①水田の中干し期間の延長によるメタンガスの発生抑制、②ドローンでの効率的な農薬散布を通じた使用量低減、③ ASEAN 各国の大学と連携した食料関連分野の担い手育成などを挙げている。また日本からの支援として、 ①大規模災害などの際に米を融通する制度、②域内の食料需給を把握する 「ASEAN 食料安全保障情報システム」(AFSIS)などを継続していくことも表明した。

 

6その他

  • 全国和牛能力共進会を開催

10月6日から 10月10日、公益社団法人・全国和牛登録協会が主催する「全国和牛能力共進会 鹿児島大会」が 開催され、41道府県から過去最大の438頭が出品された。種牛の部で鹿児島、肉牛の部で宮崎がそれぞれ内閣総理大臣賞を受賞した。10月10日には岸田総理が来場し、内閣総理大臣賞を授与した。また総理、野村農相、森山裕衆議院議員(全国中央畜産会会長)と和牛生産者との間で意見交換会を行った。

 

  • 競馬法の一部改正法案を閣議決定

10月7日の閣議において、「競馬法の一部を改正する法律案」が閣議決定された。この法案は、地方競馬の経営基盤や馬産地の生産基盤の強化を目的として、① 競馬活性化計画の目的及び記載事項の見直し、②中央競馬会から地方競馬全国協会に対する支援措置等の恒久化及び延長、③競馬の公正かつ円滑な実施を確保するための措置の充実等の措置を講ずる内容となっている。

 

  • 農業補助金・林業補助金をめぐり会計検査院から指摘

会計検査院は、新型コロナで減収した園芸農家を支援する「高収益作物次期作支援交付金」をめぐり、算定の誤りなどを原因して約5835万円が過大に公布されていたと公表し、農林水産省に対し返還を求めるなどの改善を要求した。これらの給付金については、実際には減収していない品目を含めて算定するなど誤ったものがあったという。

また、新型コロナの感染拡大で需要が減少した木材の利用促進を図るため林野庁が行った「過剰木材在庫利用緊急対策事業」について、約33%に当たる 23億8515万円分、147事業者が、本来は対象外であったり、助成がなくても利用が見込まれていた不適切な交付だったと指摘した。助成業務を行った全国木材組合連合会に対する林野庁の説明が不十分だったり、要件設定に不備があったりしたことが原因だとし、会計検査院は林野庁に対して再発防止を求めている。

 

  • 岡山・北海道・香川で鳥インフルエンザが発生

10月27日、農林水産省は岡山県倉敷市の採卵鶏農場(飼養羽数約17万羽)で、高病原性鳥インフルエンザが発生したと発表した。また翌28日、北海道厚真町の肉養鶏農場(飼養羽数約17万羽)で高病原性インフルエンザが発生し、更に31日には、香川県観音寺市の採卵鶏農場(約4万羽)でも疑われる事例が発生したと発表した。

昨年までは 10月中に発生した例はなく、今までで最も早い時期の発生となった。2021年11月から22年5月にかけては、12の道県で25事例が発生し、約189万羽の家禽が殺処分された。例年よりも早い時期に広い範囲で発生したことから、農林水産省は「今後どこで発生してもおかしくない」として、家禽農場での警戒を呼びかけている。

 

(5)3日から7日を「さかなの日」に設定

10月28日、農林水産省は水産物の消費拡大に向けた官民の取組を推進するため、毎月3日から7日を「さかなの日」と制定すると発表した。「3から7」と「さかな」 を掛けたもの。11月3日から7日を「いいさかなの日」として活動強化期間とし、11月27日に開催される「FISH 1グランプリ」でキックオフイベントを行うこととなった。コンセプトは「さかな×サステナ」であり、カラフルなロゴを作成して商標登録を申請中である。