山村振興通信NO27(全国山村振興連盟都道府県支部・会員の皆様へ)

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2019.5.17

全国山村振興連盟事務局

 

○「MaaS」とは何か。次世代の移動サービスが山村を変える

 

最近、「MaaS」(マース)という言葉をときどき耳にするようになりました。MaaSとは、どんな概念なのでしょうか。

MaaSは、「Mobility as a service」の略で、直訳すると「サー-ビスとしての移動」ということになります。それでは分かりにくいので、「移動のサービス化」という表現も用いられています。

「移動のサービス化」とは、どんなことなのでしょうか。MaaSという概念自体が新しいために、まだ定義は明確に定まっていませんが、次の3つの要素を持つもののようです。

  1. 自動車を所有しないで、企業等から移動サービスとして提供を受ける。
  2. スマートホンなどデジタル機器によって、移動サービスを注文したり、選択したり、代金を支払ったりする。
  3. ドアトゥドアの交通手段について、自動車に限らず鉄道・船舶などの移動手段を含み、シェアリング(相乗り)のような利用形態を含む。出発地から目的地まで最短時間のルートがパッケージとして利用者に提示される。

このMaaSという概念を提唱したのはフィンランドの企業「マース・グローバル」社ですが、実際に首都ヘルシンキでは、2016年から同社による移動サービスが提供されています。

利用者にとっては料金が気になるところですが、ヘルシンキの場合、例えば「都市通勤者用」というサービスを選択すると、月額95ユーロ(約1.2万円)で、①都市内の公共交通(9人乗りミニバスなど)、②タクシー100キロまで、③レンタカー500キロまで、④国内の公共交通1,500キロまでが、乗り放題で利用できるとのことです。自動車の保有コストや通勤の定期代などを含めて考えると、安価なサービスと言えそうです。

フィンランドだけでなく、イギリス・ドイツなどの各国でも取組みが広がってきています。また日本でも、JR、私鉄、トヨタなどによる検討が行われています。

MaaSの発展にはスマートホンをはじめITやAIの技術革新が欠かせませんが、同時に車両の自動運転技術の発達とも密接な関係があります。

 

少し将来の話になるかもしれませんが、理想的なMaaSの状況について想像してみましょう。

山村に住む高齢者が、遠くに住む孫の家に行こうと考えたと仮定します。高齢者はスマホに音声で用件を伝えますと、スマホからはすぐにルートと時刻と料金が提案されます。

その提案を選択すると、しばらくして自宅まで自動運転の無人車が迎えに来ます。ライドシェア(乗り合い)になっていて、他にも客が乗っているかもしれません。自動運転車は、離れたところにあるバス停まで連れて行ってくれて、そこで無人運転のバスに乗り換えます。当然バスもバリアフリーになっているでしょう。そしてバスは、数キロ先にある最寄りの駅まで連れて行ってくれます。

そして駅に着くと、まもなく電車がやってくるところでして、タイミングよく電車に乗り込むことができます。目的地の駅に着いたら、そこからは無人のバス又はタクシーで同じことをリレーすることになります。そして最短時間で効率的に孫の家まで到着することができるのです。

このルートは何日か前に予約することもできますし、代金の支払いはスマホ上で一括してできるようになっています。

こんな移動サービスが低料金で実現できたらいいですね。山村がずっと住みやすいものになるでしょう。

私たちも、MaaSや自動運転といった革新技術が、山村地域の生活の利便性を向上することとなるように、国の施策やルール作りを求めていきたいと思います。