全国山村振興連盟メールマガジンNO174

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2022.5.6

全国山村振興連盟事務局

  • 2022年4月の農林水産行政

 

2022年4月の農林水産行政の主な動向は、以下のとおりでした。

 

1 ロシア産品に対する関税引上げや禁輸を実施

4月5日、政府はウクライナに侵攻したロシアへの経済制裁の強化に向けた関連法の改正案を閣議決定した。ロシアへの最恵国待遇を取り消し、関税を上げる措置であり2023年3月末までの間優遇のない元の税率に戻す。追加でかかる関税は年間39億円と試算される。 ロシアからの輸入品は21年に1兆5488億円 で、そのうち魚卵が2.1%の3201億円、ズワイガニが1.6パーセントの2401億円を占める。ベニザケの関税は 3.5%から5%に、ズワイガニは4%から6%に上がる。また 松材の一部は220億円を輸入しており、関税は 4.8%から8%に上る。

続いて4月19日、政府はロシアに対する追加制裁として、木材・ウオッカなどを含む38品目の輸入禁止を行なった。内訳は、ウオッカ・ビールを含むアルコール飲料6品目、丸太など木材4品目、自動車・自動車部品など機械類 28品目となっている。すでに契約を行っている品目については3ヶ月間輸入が認められる。38品目全体の輸入額は 2021年で150億円となっており、ロシアからの輸入額全体の1.1%に相当する。すでに高級車や宝飾品については禁止済みであり、それに上乗せをしたものである。

 

2 緊急経済対策で農林水産関係は751億円

4月28日、政府はウクライナ情勢に伴う物価上昇対策として、石油元売りへの補助金拡充や生活困窮者への現金給付を柱とする緊急対策を閣議決定した。予備費から 1.5兆円を拠出する。更に今後、今国会中に編成する補正予算で 2.7兆円の財源を確保することにより、合計6.2兆円の国費を充てる。民間支出を含めた全体の事業規模は、13.2兆円となる。

農林水産関係では、予備費から751億円が計上されることとなり、主な内訳は、①輸入小麦から国産小麦・米粉への切り替えに200億円、②国産小麦の生産拡大・生産性向上に25億円、③肥料の調達先多様化に100億円、④配合飼料の価格安定制度の補填金積み増しに435億円となっている。また、このほか、①水産加工業で カニ・ウニ・イクラなどロシア産に替わる原材料調達への支援、②木材について ロシアからの輸入一部禁止に伴う国産材活用の支援が含まれている。

 

3 日露サケ・マス漁業交渉が妥結

4月11日第38回日露漁業合同委員会が Web会議で開始され、ロシア産サケ・マスの日本排他的経済水域における漁獲量の協議が行われた。政府代表は水産庁から前田仁司資源管理部長、ロシア側からシマコフS.V.連邦漁業庁船舶・港湾・国際協力局長が担当した。

4月11日から22日の深夜までオンラインで協議して実質的に妥結。25日に正式に署名した。漁獲可能量の上限は昨年と同様の2050トン、漁業協力金の見込み額は 2億円から3億13万円の範囲と前年よりも下限を6000万円引き下げた。昨年の漁獲実績は約650トン、支払ったのは2億6000万円だった。例年よりも3週間ほど遅れたが、5月初旬には出漁できることとなった。

妥結した協議はロシアを母川とするサケ・マスの日本水域での漁獲についてであって、ロシア水域の交渉に関しては漁が最も盛んになる6月に向けて引き続き日程を調整しているという。

なお、サンマの漁業船全国団体は 本年5月から7月にかけて、公海でのサンマ漁を見送ることとした。ロシアの排他的経済水域に近い公海では 拿捕される恐れがあるのではないかと懸念したものであり、日露サケ・マス漁業交渉の行方も見守りながら、8月以降の対応につき考えたいとしている。

4 みどりの食料システム戦略の新法成立

4月22日、「みどりの食料システム戦略」を推進する新法が参議院本会議で全会一致により可決成立した。公布から6か月以内に施行し、施行から5年をめどに見直すこととされている。また改正植物防疫法の改正案も全会一致で可決成立した。

「みどりの食料システム戦略」は、2050年までに化学農薬の半減や化学肥料の3割減、有機農業を全農地の25%に拡大する、といった目標を掲げている。この新法では、国の基本方針において環境負荷低減の方針を示し、県や市町村の基本計画において具体的な取組内容を策定する。基本計画に沿って取り組む農業者について県が認定し、機械などを導入する際に税制や金融で支援する。

植物防疫法の改正は、総合的防除の推進計画を県が定め、病害虫の蔓延防止のルールに農家が従わない場合に、県が勧告・命令できることとなっている。

 

5 豚熱、鳥インフルエンザが連続して発生

4月13日、茨城県石岡市において豚熱が発生し、1000頭の豚が殺処分された。17県78例目であり、茨城県は51万頭を飼養する全国第6位の主産県であるので、警戒を強めている。発症したのはワクチン未接種の子豚であった。

続いて4月16日、北海道白老町と網走市の養鶏場において、高病原性鳥インフルエンザ H 5型 が確認され、白老町では52万羽、網走市では採卵鶏100羽とエミュー500羽の殺処分を行った。エミューへの感染が確認されたのは初めてである。 4月19日には秋田県大仙市の養鶏場でも高病原性鳥インフルエンザ が確認された。

北米をはじめ諸外国でも発生が続いており、鳥インフルエンザのシーズンがまだ終わっていないものとして、農林水産省は使用衛生管理の徹底を呼びかけた。

また、総務省は4月22日、高病原性鳥インフルエンザと豚熱の発生に伴う防疫措置の人員確保をめぐって、農水省に対して勧告を行った。自衛隊への派遣要請が増える一方で、県が定める防衛防疫措置の役割分担が明確でないことから、 自衛隊に要請する役割分担を定めるように求めた。現在役割分担を定めている県は45道府県中豚熱で10、鳥インフルエンザで13にとどまっている。

 

6その他

 

(1)農地の違反転用は農業者以外が7割

4月5日、農林水産省は政府の規制改革推進会議地域産業活性化ワーキンググループにおいて、農地の違反転用の調査結果を示した。2020年に違反状態だった9588の案件のうち7割が農業者以外によるものだった。農業者以外の者とは、土地持ち非農家や農業以外の事業者である。

2020年に新たに見つかった違反転用は 4187件であり、このうち7割以上は2016年以前に発生したものだった。発見が遅れるほど是正されていないことも分かった。事後的に追認した案件は、4870件。過失によるものも多いが、違反としていた案件も 54件あった。

農林水産省は、一般企業などへの制度の周知、パトロールの活性化、追認許可のルールの明確化などを対策として行うこととしている。

 

(2)米の特別枠の申請は12万トンにとどまる

コメの需給動向にかんがみ15万トンの特別枠が設定されて、長期保管・計画的販売を行うものとされていたが、全農においては17の集荷団体から12万トンの申請があった。令和4年3月からすでに事業がスタートしており、市場に影響を与えることのないよう中食・外食販売や子ども食堂へ供給することとされている。

特別枠15万トンについては、このため12万トンのみが対象となり、すべての枠を使うことなく販売が進んでいる状況となった。

農林水産省は こうした特別枠の存在や周年事業の拡充を契機として令和3

年産米の契約は大きく進展しており、市場環境の整備がなされつつあるものと している。

 

(3)米国産輸入牛肉の関税を 26.4%に引き上げ

米国から輸入される牛肉の関税は、日米貿易協定に基づき従量税で1 kg 当たり4.4セントとされているが、枠外では従価税で26.4%となる。低関税の関税枠は6万5005トンとなっており、4月6日、米国政府は全量を消化したと公表した。 このため 以後の関税は26.4%となった。

この背景としては、昨年の豪州の干ばつによりブラジルからの輸入が著しく増加していることがある。2021年には枠を消化したのは12月27日であった。 日本はアメリカからの輸出先としては第3位となっている。

 

(4)林業産出額2年連続減少で、2.9%減

農林水産省は、2020年の林業産出額が前年比2.9%減の4831億円となり、2年連続で減少したと発表した。木材の産出額は、前年比8.7%減の2464億円。うち8割程度を占める製材用素材が15%減と大きく落ち込んだ。コロナ禍による受注件数の減少で、2020年の新設住宅着工戸数は 1割減の 81万5340戸となったことを背景としている。