全国山村振興連盟メールマガジンNO169

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2022.4.1

全国山村振興連盟事務局

新年度が開始致しました。

コロナ禍はまだ予断を許しませんが、極力、スケジュールに従って行事を行って参りたいと考えております。本年度もよろしくお願い致します。

 

○2022年 3月の農林水産行政

 

2022年 3月の農林水産行政の主な動向は、以下のとおりでした。

 

1 ウクライナ情勢を受けて、G 7 臨時農業大臣会合を開催

3月11日オンラインにより G 7の臨時農業大臣会合が開催され、金子農相が出席した。本年の G 7の議長国であるドイツの提案により開催され、ウクライナ情勢が及ぼす世界の食料安全保障への影響が議論された。採択された共同声明においては、ロシアのウクライナ侵攻は世界の食料供給網に深刻な影響を与えるとした上で、 世界、特にウクライナの食料安全保障を守ることとし、また、すべての国に食料の輸出を不当に制限しないよう求めた。

農林水産省では、ウクライナ情勢に関する相談窓口を設置して、農業・食品関係産業などの事業者に向けて、原油高騰対策、中小事業者向けの資金繰りなどについて支援を行い、ホームページ上でも情報を提供している。ロシア・ウクライナからの我が国の小麦の輸入はないものの、小麦の国際相場が上昇するなど、影響は大きい。

一方、ウクライナからは3月23日にゼレンスキー大統領が国会でオンライン演説を行った翌日、3月24日にコルスンスキー駐日ウクライナ大使が金子農相を訪問し、「農地に大きな被害が生じており、燃料・種子・肥料などを支援してほしい。また避難する国民への食料の確保を支援してほしい。」と訴えた。金子農相は、「G 7諸国や国内民間企業と連携をして支援を検討していきたい。」と語った。

 

2  金子農相が引退を表明

3月7日、金子原二郎農林水産大臣は長崎市内で記者会見を行い、来る参議院選挙に出馬せず政界を引退することを表明した。金子農相は、「若い人にバトンタッチをした方が良いと考えた。」と述べている。農相は77歳。長崎県議を経て1983年衆議院に初当選し5期務めた後、1998年から2010年までは長崎県知事を務めた。2010年から参議院議員に転じて、2021年岸田内閣で初入閣をした。

3月8日の閣議後会見では、「今国会で成立を目指す6本の法律案など、課題についてはちゃんと処理したい。」との意向を示した。

 

3 輸入小麦価格値上げ、13年ぶりの高水準

3月9日、農林水産省は2022年4月期(4月~9月)の輸入小麦の政府売渡価格を公表した。主要5銘柄の加重平均が1トン当たり7万2530円と、従来よりも17.3%の引上げとなる。13年ぶりに 7万円を突破する水準となった。小麦は政府が輸入する国家貿易品目であって、政府において売渡価格を決定して売り渡す。その際、直近6か月の政府買付価格、港湾経費等に輸入差益を加えて価格として設定する。

今回は北米地域での不作に加えてウクライナ問題も一部で影響をした。前期にも19%の引上げを行っており、1年間で計40%という大幅な引上げとなった。2008年10月の食料危機の際に7万6030円だったことに次ぐ過去2番目の高値となる。

 

4 燃油価格高騰に備えて対策を拡充

3月4日、政府は「原油価格高騰等に関する関係閣僚会議」を開催し、原油価格高騰に対する緊急対策を決定した。原油需給は、ロシアのウクライナ侵攻により、さらに逼迫することが考えられるため、これに備えて先手で対策を講じることとしたものとしている。

農林水産省関係では、①「施設園芸セーフティネット構築事業」において現行の発動基準である115%、130%、150% に加えて、新たに170% というメニューを追加した。②「産地生産基盤バックアップ事業」として、ヒートポンプなど省エネ機器を設置する場合の支援についての優先枠を10億円から20億円に拡充した。

3月29日、岸田総理より諸物価の上昇に対応する緊急経済対策の指示があり、4月末までに取りまとめることとされているので、対策の一層の拡充強化が検討されるものとみられる。

 

5 アサリの原産地表示適正化のため対策を強化

熊本県産と偽装したアサリが大量に出回っていた問題を受けて、消費者庁と農林水産省は協議を行ってきたが、3月18日、消費者庁は新たな対策として「食品表示基準 Q & A 」を改正し、原産地表示のルールを厳格化することとした。 従来から育成期間が最も長いところを原産地とするものとされているが、「育成期間に入れることができるのは区画漁業権に基づく養殖漁業のみ」ということに厳格化した。区画漁業権については免許があり、また育成期間の証明書類も作成可能であるとしている。

これを受けて農林水産省は、施行1か月後を目処に点検調査を行うとしている。今回行った追加的調査では、現状では熊本県産と表示しているアサリは販売が確認されず、中国産と表示されたアサリが7割を占めていたとしている。

なお、熊本県で実施している「純県産アサリの産地保証制度」については、水産庁の補助事業で支援することが可能であるとした。

 

6その他

  • 山口県・広島県の野生イノシシから豚熱の感染を確認

3月17日山口県岩国市、3月21日広島県大竹市で、両県初となる野生イノシシからの豚熱の感染が確認された。従来発生している最も近い地点から280 km 離れており、感染の広がりが懸念されている。

農林水産省では3月23日に牛豚等疾病小委員会を開催し、感染状況や野生イノシシの行動範囲などについて専門家の意見を聞き、対策を検討した。

 

  • 日米セーフガード協議 が実質合意

日米両政府は日米貿易協定に基づく米国産牛肉の緊急輸入制限措置(セーフガード、関税の引上げ措置)につき協議してきたが、3月25日、新しいルールに実質的に合意したと発表した。現行では輸入基準数量を超過した場合にセーフガードを発動することとなっているが、これに加えて「米国とTPP各国からの輸入合計量がTPPで定めた発動基準数量を超えること」が要件として追加された。

牛肉セーフガードは昨年3月に発動され、日米貿易協定の補足文書に基づき発動水準の協議が行われてきたものである。今回の合意については、秋の臨時国会以降に国会に提出して承認を得たいとしている。

 

  • 諫早湾開門命令を無効と高裁が判決

3月25日、国営諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門を開けるように命じた確定判決の無効を国が求めた訴訟(差し戻し控訴審)で、福岡高裁は、「現時点での開門の強制は職権濫用に当たる」として「開門は認められない」と、国側勝訴の判決を言い渡した。確定判決のあった2010年以降の状況の変化を踏まえ、漁業への影響は軽減した一方、災害防止・営農用水など堤防締め切りの公共性は増大したとしている。

開門を求めてきた漁業者は不服として、上告する考えを示した。