全国山村振興連盟メールマガジンNO128

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2021.6.4

全国山村振興連盟事務局

 

2021年5月の農林水産行政の動向は、以下のとおりでした。

 

○2021年5月の農林水産行政の動向

 

1 緊急事態宣言延長に伴いGo to eatキャンペーンの期間を延長

昨年12月に決定された経済対策でGo to eatキャンペーンについては期限が6月末までとされていたが、緊急事態宣言の延長に伴い期間を延長することと改められた。食事券に関しては、4月から6月までの3ヶ月間の中で販売一時停止や利用自粛を呼びかけた地域について、7月から12月末までの間で最大3ヶ月間事業を実施することができることとした。またオンライン事業についてもポイント利用のため予約が入れられる期間を最大6月末までとなっていたものを各サイトにおいて最大12月まで延長することができるものとした。食事券についてはテイクアウトやデリバリーにも利用してほしいと呼び掛けている。

コロナ禍の長期化に伴う影響としては、和牛の枝肉価格が4月には3.5%上昇。 花きも価格が上がって4月には平年並みとなるとともに、野菜・果実のうち価格が下落していたメロン・つまものも、4月には平年並みに戻っている。一方で水産物のクロマグロ・キンメダイについては価格が低下している。

農林水産省では引き続き相談窓口を設けるとともに、影響を把握し関係者が行う販路の多様化・販売の促進に対して支援するとともに、政策金融公庫や農協系統機関に対して返済猶予・新規投資を行うよう要請を行う。

 

2 農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略フォローアップを策定

5月28日に行われた農林水産物・食品の輸出拡大関係閣僚会議において、2025年2兆円、2030年5兆円の目標達成に向けて、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略フォローアップ」が策定された。農林水産省は関係者からのヒアリング・意見交換に基づき整理した12の課題に基づき、①品目別団体の組織化、②事業者の設備投資への支援、③リスクへの対応についての具体策を検討することとした。また、物流や加工食品業者への支援も課題であるとしている。

総理からは「輸出促進法の改正につき検討を進めること」との指示があり、金融・税制・予算を含め、支援策につき検討をすることとなった。

また関係各国における日本からの食品輸入規制については、5月25日シンガポールとの首脳会談で、シンガポール側から撤廃が表明され、28日に撤廃された。残りは14カ国・地域となっており、総理から「すべての規制の撤廃のため政府一体で働きかけを強めてほしい」との発言があった。

 

3 みどりの食料システム戦略を策定

農林水産省は5月12日、「みどりの食料システム戦略」を策定した。これは、温暖化ガスの排出量実質ゼロに取り組むという政府全体の目標を踏まえ、農林水産業に先端科学技術を導入し組み合わせるという農林水産行政としての方針である。

同戦略によると、2050年までの目標として、①農業での二酸化炭素排出量を実質ゼロにすること、②有機農業を全農地の25%(100万ヘクタール)に拡大すること、③化学農薬の使用量を1/2に削減すること、④化学肥料の使用量を3割削減すること、⑤化石燃料を使用しない園芸施設に完全移行することを掲げている。また、⑥2040年までに農業機械の電化技術を確立すること、⑦2030年までに持続可能性に配慮した輸入原材料調達を実施すること、⑧エリートツリー (成長の速度の速い樹木品種)を林業用苗木の9割以上に拡大すること、⑨ニホンウナギ・クロマグロなどの養殖で、人工種苗比率を100%とすること、などが掲げられている。

本年6月から9月の間を周知期間とし、補助事業の要件化や関連制度の見直しを検討したいとしている。 その上で2030年度までに政策支援の対象を環境に配慮した取り組みに対して集中することとしている。

また今回の戦略では技術ごとに工程表が示されており、①22年度に病害虫の画像診断、②24年度に除草ロボット、③26年度以降に耐病害虫性を強めた品種の実用化などが掲げられている。

 

4 令和2年度の食料・農業・農村白書を閣議決定

政府は 5月25日、令和2年度食料・農業・農村白書を閣議決定した。特集テーマとして「新型コロナ感染症による影響と対応」を掲げており、消費・生産・販売への影響や緊急対策を詳述している。

またトピックスとしては、令和2年度における特徴的な動きとして、①農林水産物食品の輸出の新たな戦略、②みどりの食料システム戦略、③スマート農業実証プロジェクト、④農業・食料関連産業でのデジタル変革、⑤鳥インフルエンザ・豚熱への対応、⑥植物新品種の海外流出対策、⑦フードテックの現状が掲げられている。

特集テーマである新型コロナ感染症に関しては、地方への関心や働き方をに関する新たな動きを紹介するとともに、農林漁業・食品産業関係における対応では、緊急対策として①経営継続支援、②消費拡大支援、③労働力確保支援、④情報発、⑤品薄の際の円滑供給要請を紹介した。また各国の食料輸出規制や外国人材の入国制限あるいは国内売上減についても記述する一方で、新たな動きとして、①応援消費、②自宅での食事・宅配・持ち帰り等の増加、③テレワーク等による都市住民の農業への関心の増大などを掲げた。

外食については 2020年の売り上げは15.1%減少しており、その中でファストフードについては3.7%の減にとどまったものの、パブ・居酒屋については売り上げが5割減少しているの調査結果も紹介されている。

また5月28日、「令和2年度食育白書」も閣議決定され、①新型コロナ感染症の下での食育を中心に、②食文化の継承に向けた食育の推進、③第4次食育推進基本計画の概要(令和3年3月決定)についても記述している。

 

5その他

(1) 全国植樹祭に両陛下がオンラインにより出席

5月30日、島根県太田市で開催された第71回全国植樹祭において、天皇・皇后両陛下はオンラインにより出席され、赤坂御用地と式典会場が中継で結ばれた。陛下からは、「人々が連携・協力することにより、植えて育てて使い、また植えるといった『緑の循環』が広く実現することを期待します。」とのお言葉があった。両陛下のオンラインでの参加は初めてのことである。島根県での開催は昨年延期されていたものであり、全国植樹祭は2年ぶりの開催となった。陛下は御用地内で杉の苗木を植えられ、またエノキなどの種子を撒かれたところであり、後日島根県の三瓶山北の原に移して育てられることとなっている。

 

(2) カニ漁船転覆で3人死亡、底引き網漁船がロシアに連行

5月26日、北海道紋別市北東部23キロのオホーツク海で毛ガニ漁をしていた第8北幸丸(9.7 トン)が、ロシアの海産物運搬船アムール号(662 トン) と衝突し、第8北幸丸が転覆。乗組員男性5人がアムール号に救助されたが、3人が死亡した。乗組員はその後、紋別海上保安庁の巡視船に移され、紋別漁港へ 帰港した。

6月28日には稚内沖のオホーツク海で底びき網漁業をしていた第172栄宝丸(160 トン)がロシア当局の警備艇に信号弾を撃たれて停船を求められ、臨検を受けた上でサハリン南部のコルサコフ港へ連行された。第172栄宝丸は、僚船3隻と一緒に操業中だった。

 

(3) 不漁問題に関する検討会が中間とりまとめ

水産庁は、不漁問題に関する検討会を設けて、4月から有識者による検討を行ってきたが、5月13日、取りまとめに向けての骨子案を公表した。従来獲れていた魚が獲れず、獲れていなかった魚が獲れるといった問題を踏まえて、これは定期的に起こった従来の不漁とは異なり、温暖化や海洋環境の変化によるものであるとの認識の下に、環境対策への対応を考えなければならないとしたものである。

その内容としては、①中長期的な資源変化への生産対応、② ICT・漁場予測の活用、燃油使用量の削減、将来の漁船電化の研究・実装、③複数の漁法・魚種の多様化への対応などが提言されている。農林水産省は、今後、その内容を水産基本計画の見直しなどに反映していきたいとしている。

 

(4) コメの作付転換の大幅な上積みが必要

本年4月末時点における 2021年産の米の作付動向は、前年よりも3.7万ヘクタールの減少となっているが、政府がコメの需給均衡のために必要だとしている6.7万ヘクタールには遠く及ばず、関係者の更なる努力が必要となっている。4月末時点で、作付けを減少させる計画としたのが38県、前年並みとしたのが9県、 増加させるとした県はゼロだったものであり、農林水産省では一定の成果が出ていると評価しているが、一層の進展が必要だとして、6月末の営農計画書の提出期限に向けて、全国会議・産地説明会・キャラバンなどにより一丸となって関係者への呼びかけに努めるとしている。