全国山村振興連盟メールマガジンNO111

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2021.2.5

全国山村振興連盟事務局

 

 

○ 2021年1月の農林水産行政の動向

2021年1月の農林水産行政の動向は、以下のとおりでした。

 

1 緊急事態宣言の発令で食料の安定供給に尽力

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、1月7日に1都3県で緊急事態宣言が発令され、また13日に7府県が追加となった。これを受けて野上農林水産大臣はメッセージを発出し、「食料品は十分な供給量の態勢を確保しているので、買い貯め・買い急ぎをせず落ち着いた購買行動するように」と国民に呼びかけた。またGo to eat キャンペーンについては、多くの都道府県で食事券の販売一時停止を行っている。

農林水産省は、緊急事態宣言に伴う影響について、調査・欠品対応・相談窓口の設置・影響把握や情報の発信を行っている。

1月末時点における食料の供給に対する影響としては、ホテル・贈答用向けメロン等の外食食材や大葉・わさび等のつまもの類の需要が減少し、価格が低下している一方で、巣ごもり消費の増加や寒波による生育の遅れにより、一般の野菜・果樹については価格が平年並みとなっている。また花きについては、結婚式やイベントの中止・延期・縮小に伴い、平年よりも価格が低下している。

こうした食料の安定供給に対して農林水産省は注視し、第3次補正予算によってネット販売や地域の販売促進について、第1次補正予算と同様に支援をすることとしている。また、花きの消費拡大のため、「花いっぱいプロジェクト2021」を開始した。

 

2 農林水産省の通常国会提出予定法案は4本

1月15日、農林水産省は自民党農林合同会議において、今通常国会に4本の 法案を提出することを説明し、了承を得た。

提出が予定されている順に、

  • 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部改正法案(2月上旬提出予定)

干ばつ促進のための交付金や地方債の特例について、令和2年度までから令和12年度まで10年間延長するもの。

  • 農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法の一部改正法案(2月下旬提出予定)

農業法人投資育成事業の対象となる法人として、林業・漁業法人、食品製造業者、輸出業者等を加えるもの。

  • 畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律案(新法)(3月上旬提出予定)

認定を受けた計画に基づく建築等利用に建築基準法の特例(規制緩和)を適用するもの。

  • 農林水産業協同組合貯金保険法の一部改正法案(3月上旬提出予定)

農林中央金庫が国際金融規制に対応するため、貯金保険機構による監督・貸付・優先出資の引受け等を定めるもの。

 

3 構造改革特区については期限を延長の上、調査することが決定

1月15日 国家戦略特区諮問会議において、兵庫県養父市で実施している「法人による農地取得」の特例措置に関し、

  • 期限を2年間延長するとともに、
  • 来年度中に、この特例制度のニーズ・問題点に関する調査を特区区域以外においても実施すること

を決定した。

昨年11月に自民党からは「全国展開や要件の緩和は全く必要なく、到底容認できるものではない」との決議が提出されていた。これに対して河野太郎規制改革担当相及び民間委員の数名は、全国展開を主張しており、一方、農相及び坂本地方創生担当相は全国展開に反対していた。こうした状況を踏まえ、この事案は12月に菅首相預かりとなっていたものである。

今回の決定を受けて農林水産省が調査を行うこととなるが、野上農相は「全国展開を前提にするものではなく、調査結果に基づいて調整される」とコメントしている。

 

4 鳥インフルエンザ・豚熱の発生が継続

1月13日、養鶏主産県である鹿児島県のさつま町で鳥インフルエンザが発生し、36例目の発生となった。1月23日には富山県小矢部市で38例目が発生。1月24日には千葉県のあひる農場で39例目が発生した。更に2月2日には、鶏卵全国1位である茨城県の城里町で、41例目が発生している。

一方、豚熱(CSF)については、12月25日 山形県鶴岡市で60例目、12月29日三重県伊賀市で61例目が発生、更に26日和歌山県で初となるかつらぎ町で62例目が発生しており、ワクチンを接種した農場で発生していることから、関係者は警戒を強めている。

農林水産省は1月19日「越境性動物疾病防疫対策強化推進会議」を開催し、 飼養衛生管理の徹底や早期通報、都道府県との連携につき、県関係者を含むテレビ会議を行ったほか、改正家畜伝染病予防法に基づき、使用衛生管理基準を遵守せず勧告・命令に違反した事業者名を公表することにつき検討することとしている。

 

5 その他

(1)吉川元農相の起訴に関連し農林水産省は第三者委員会を設置

1月15日 東京地検特捜部と広島地検は、全国鶏卵生産大手アキタフーズ・グループ元代表から現金500万円の賄賂を受領したとして、吉川貴盛元農相を収賄罪で在宅起訴した。また1月19日野上農相は会見で、吉川元農相・秋田元代表との会食に農林水産省幹部が同席していたことを発表した。

これらを受けて、農林水産省では養鶏・鶏卵行政の公正性について判断するため、1月29日、法曹・報道関係者ら4名による「養鶏・鶏卵行政に関する検証委員会」を設置し、2月3日に第1回会合を開催した。委員は、井上宏弁護士、酒井健夫日本大学名誉教授、榊田みどり農業ジャーナリスト、谷口将紀東京大学大学院教授の4名。

 

(2)大雪により農業用ハウスの倒壊・破損が489件

1月7日からの大雪により、北陸地方・東北地方の日本海側を中心に、農業用ハウスの倒壊など大きな被害が生じており、26都道府県から被害報告が提出され、25日までに70.7億円の被害額が判明している。農業用ハウスの倒壊・破損が1万759件(被害額51.1億円)、畜産用施設322件(同5.6億円)、野菜・果樹の損傷など農作物の被害は17府県で3億円等となっている。

野上農相は1月23日、新潟県上越市・南魚沼市を視察、1月24日には葉梨副大臣が秋田県横手市を視察し、被災農業者・知事・市長・関係者等による要請を受けた。

 

(3)サンマ漁獲量過去最低

近年サンマの不漁が続いているが、2020年のサンマ漁獲量は過去最低の 2万9566トン(前年比73%)だったことが分かった。水揚げ高は142億円で、前年比111%となっている。サンマ不漁の原因は、水温や海流の変化に伴いなど海洋の環境が変化したことにより、漁場が沖合化したり、稚魚の生育に影響が生じたりしている可能性があると考えられているが、農林水産省はさらに調査を強化したいとしている。

 

(4)ベルリン農業大臣会合で野上農相が分科会議長を務める

1月22日、ベルリン農業大臣会合(ドイツ主催の農業大臣会合)が90か国・機関の参加の下、「COVID19のパンデミックや気候変動の影響下における世界の食料確保に向けた協力の強化」を議題としてテレビ会議により開催された。設置された4つの分科会のうち、野上農相は「将来のパンデミック防止」に関する分科会」で議長を務めた。会合では「大臣会合宣言」が採択され、COVID19のパンデミックによる食料安全保障への影響を最小化するとともに、気候変動への緩和・適応のため農業大臣が連帯することが合意された。

このほか、1月29日にはスイス主催によりWTO非公式閣僚会合がテレビ会議により開催され、野上農相は、漁業補助金交渉の進め方について我が国としての考えを表明した。